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1章 幼少期編

乙女ゲーム運命の君に口づけを

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 重要な話の途中だが、大事な事なので少し整理させてほしい。

 私、茅ヶ崎緋彩が転生したのは生前プレイしていた乙女ゲーム

『運命の君に口づけを』の世界だった。

 プレイヤーの中では君キスと呼ばれたこのゲームはベッタベタな王道の乙女ゲーム。
 1周目で攻略出来るのは5人。
 第2王子、王弟の息子の公爵令息、獣人の伯爵令息、魔術師団長の息子の侯爵令息、隣国の王太子のこの5人。
 2周目になると第1王子の王太子殿下が加わり、6人のルートを全攻略すると隠しキャラである騎士団長の息子で次期騎士団長の侯爵令息が加わる。
 なぜ騎士団長の息子が隠しキャラかというのはまぁ隠し玉を持ってるって事ですよ。

 で、このゲームのヒロインの名前は、ルーナ・アッカーマン。
 彼女は誰のルートに突入するかで彼女の出自が微妙に変わる。
 
 どのルートも初めは市井で暮らしていたけれど、膨大な魔力を持つことが分かり彼女が育った領地の男爵家に引き取られる。
 彼女は自分の魔力が認められ王都の魔術学校に立派な魔術師になる為に入学する所からはじまる。
 その学園で出会うのが1周目で出会うキャラクター達。
 ヒロインはそれぞれのイベントをこなしながら交流を深め、攻略対象者の愛を得るというゲームだけど……。
 
 こっち側の人間になるとヒロインは害悪でしかないのよね。
 だって、婚約者の居る男性に粉かけて婚約者から奪うなんて娼婦と変わらないよ。
 日本で暮らした私とすれば、略奪も逆ハーも気持ち悪い。

 略奪も逆ハーもゲームだから成立する話しだし、実際そんな事になって誰かと共有するなんて吐き気がする。

 ゲームの時は自分がヒロインサイドだったから見えなかったものも今ならわかるな。本当悪役令嬢可哀そうだったもん。

 って大事な事を思い出したんだった。

 このゲームのヒロインと同じくらい人気のあった孤高の完璧悪役令嬢であるクラウディア・フィールズ侯爵令嬢。
 彼女は完璧すぎた。
 どのルートでも彼女は現れるんだけど、いつも何も間違った事は言ってないのになぜかいつも婚約者に歪曲して取られる残念さを持っていて、彼女の人生は涙なくては語れない。

 だから私はゲームでヒロインをやりながらもクラウディア様を応援していたものね。
 この世界がゲームの世界ならいつか絶対クラウディア様に会えるはずだからそれは楽しみにしてよう。
 そして出来ればお友達になりたい。


 で、ここからが大事な事だからね。

 私、スカーレット・ブルームフィールドはモブだ!!

 もう一度大事な事だから言うね。

 私、スカーレット・ブルームフィールドはモブだ!それもモブ中のモブ。

 名前すら出てこないモブだよ。
 だって、自分のお兄様が攻略対象者だと思い浮かばないのは自分が名前すら存在しないモブだったからだよ。
 大体、アスター・ブルームフィールドに妹がいたなんか攻略本にもなかったんだもん。

 それにしても乙女ゲームに転生しても、モブとはヒロインは絶対にイヤだけどせめて名前だけでも登場する……

 ちょっと待てよ。

 モブってよくね?モブって事は物語に何の関与もしない。

 と、言う事は好きに生きていいって事よね?

 そう言えば神様も好きに生きていいって言ってたよね。

 しかもただのモブじゃない、実家はそこそこの権力とお金持ちなのに特に強制されるのは政略結婚ぐらいときたら。

 モブ最高じゃん。

 神様モブにしてくれてありがとうございます。

 なんだか楽しくなってきた。

 

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