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1章 幼少期編

八つ当たりはほどほどに、最狂の騎士団の誕生とともに

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 ドゴーン、バキーン、ガチャーン……。

 王都にあるブルームフィールド邸の地下にあって自領が誇る騎士団の訓練施設に異様な破壊音が鳴り響く。

 それはもう、側に控える騎士が真っ青になるくらいの荒れっぷりに皆が騒然とした。
 普段から自前の騎士団の訓練にもよく参加するスカーレット、いつもはここまで酷く荒れる事はなくこの歳にしては完璧な魔法制御をするのにこの日は違っていた。

 訓練施設に入ってきた時から禍々しいオーラを身に纏い、親の仇の如く初めから魔法攻撃を連発していた。
 途中から、施設に来た騎士団長が慌てて防御結界を展開するがこの日のスカーレットはかなりの暴走状態にあり力が制御出来ていない状態だった。

 団長自身もかなりの魔力保持者だが、無尽蔵な魔力を持つスカーレットに誰もついて行けるわけもなくこれ以上は邸自体が危ないと踏み荒れ狂うスカーレットを止めた。

「ちょ、姫タイム!これ以上は防御結界が保たない休憩して!」

 慌てて、我が家の騎士団長が半泣きで止めに入る。

 散々魔法と剣で暴れまわったのに息が弾む事もなく、スカーレットの周りには彼女について行けず倒れ込む騎士団の面々。
 怒りに満ちての強行に相手をさせられるのはいくら猛者揃いの騎士団でも理性を無くした魔力が無尽蔵なスカーレットの相手は荷が重い。

 ある程度の所で団長が声を掛けると同時に鳩尾に軽く当てると、ようやくスカーレットの動きが止まりその場にへたりこんだ。

 そこでようやく理性を取り戻したスカーレット。最後に地面を一突きしへこませると。


「ユリウス許すまじ。次会ったらぶっ飛ばす」

 何やら不穏な言葉を口にしながら一応満足したのか、皆にお辞儀をし訓練施設を後にした。

 騎士団の面々もスカーレットの人並外れた魔法と剣の力は周知していたが、今までどれだけ手を抜かれていたのかと思うとゾッとしてしまう。

 守るべき主人より弱いなんて、精鋭の揃ったブルームフィールド家の騎士団の名折れ。
 この日から彼らはなお一層の鍛錬に励むようになった。

 二度と、守るべき主人より弱いなんてあってはならないと。
 騎士団の士気は一層あがり、ブルームフィールド家の騎士団は最狂の騎士団と呼ばれるようになる。

 今まで、白金の精霊姫と騎士団の騎士に可愛がられそう呼ばれていたが、この日のスカーレットの暴れっぷりを目の当たりにし、震え上がる騎士達に狂戦士姫バーサーカーと呼ばれるようになることを後々知る事になる。

 そして、強くなりたいという騎士団の願い。そのきっかけを作ったスカーレットは次の日から騎士団の面々に直々に稽古を頼まれる事となり、結果的にフリードリヒ様の観察を邪魔される事になり更に不機嫌な日々は続く事になった。



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