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2章 王立学園編

モブストーカー、王立学園へ入学する 3

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 ちょっと本当に待って。

 どうしてモブの私がゲームすら始まってない時期に隠しキャラの王太子殿下であるジュリアン様を攻略完了してるの?

 全くもって意味がわからない。

 私はヒロインじゃないのよ、ゲームに全く関係ない存在なのにどうしてこうなった!

 理解不能の展開に私は背中に冷たい汗を感じる。

 どーすりゃいいのコレ。

 と、とりあえず落ち着け私。

 今一番大事なのは……なんだ?

 正直、ヒロインちゃんが王太子殿下ルートを選ばなければ私はストーリー自体壊さずに済むのかな?

 ストーリー通りならヒロインちゃんが一番に選ぶのは同じクラスになるはずのフレディ様。

 彼女が転生者ならジュリアン様を攻略してくる可能性もあるけれど、それならそれで好都合だ。

 私は自分の都合の為に王太子×ヒロイン推しなのだから。

 うん。そうだ。それで行こう。

 ジュリアン様に好きだと言われてちょっと、ちょっとだけ心が揺れたけれど私は自分の推しの幸せを見守る事が幸せだから貴族的幸せは必要ないんだ。

 ジュリアン様には悪いけれど、この婚約利用させて貰うわ。

 そう言う考えに至ると、少し顔がニヤけてしまった。



「兄上、スーが何かよからぬ事を考えてますよあの顔は」

「あぁ、あれは良くない顔だな。スーは逃げ道を作るのが得意だけど少々詰めが甘い所があるからもっと私から離れられないようにするしかないな」

「兄上、あまりしつこいと本格的に嫌われますよ。まぁ嫌われたらスーは俺が妻にするのでどんどん嫌われていただいて構いませんけどね」

「うわー弟が堂々と私の婚約者に横恋慕するって宣言するぅ。ま、横取りしたのは私の方だからスーから愛想をつかされないようにせねばならないね。あー楽しみだな」

「スーも可哀相だなぁ……こんな騙し討ちするような人に捕まっちゃってさぁ。兄上ほどほどにしておいてくださいね」

 
 と、私がヒロインちゃんにジュリアン様をどうやって押し付けようかと考えている間に王太子と王子である2人が不穏な話し合いをしているとは全く知る事はなく私は機嫌よくニヨニヨしていた。






 そしてちょうど一時間が過ぎた頃、学園の教師が入学式を始めるので講堂へ来て欲しいと迎えに来てくれた。

 何故か新入生ではないジュリアン様とフレディ様の2人にエスコートされ講堂へ入る流れになった事でまたもや騒ぎの原因を作ってしまった事は……想像の範囲内だろう。

 それにしても、私はモブよね?モブのはずよね?

 なのにどうして、どこで何を間違えたんだぁぁぁぁぁ!

 
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