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2章 王立学園編

モブストーカー、入場だけで既にぐったりする

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 あれから暫くして私を迎えに来たジュリアン様が部屋のドアを開けた瞬間固まった。

 ぶわわわわわわわ音がしたような気がするほどの勢いで顔を赤くするジュリアン様に私が驚いていると。

 
「えっと……ジュリアン様?」

 はっ、もしかして予想以上に残念な仕上がりすぎてショックを受けてらっしゃるのかしら?

 やっぱりモブ顔は何を着ても似合わないって事よね。ドンマイ私。

 と、俯きがちになる私の手が引かれると、私はジュリアン様に抱きしめられ腕の中にいた。

「ふぇぇ?」

 どうしてこんな事になっているのかわからずにオロオロしていると、ジュリアン様の唇が私の耳に触れ。

「スー可愛い。可愛すぎる。誰にも見せたくないこのまま仲良しして、スーの事食べちゃいたいよ」

 そう耳に直接囁くと、そのまま私の耳をはむっと甘噛みした。

 びっくりしすぎて今度は私が硬直してしまうと。

「なーんてね。こんなに美しく着飾ってくれたスーを誰にも見せたくないけれど、私のスーだと自慢しないわけにはいかないからね」

 ウインクをすると、そのまま私の頬にキスをした。

 ひぇぇぇぇぇ。


 なに?何が起っているの?

 あわわわわわとしている私の手を取ると、とても嬉しそうな顔をしたジュリアン様にエスコートされ私は歓迎パーティーの会場である学園のダンスホールへと向かった。


 

 学園がパーティーや行事で開くダンスパーティーなどの特別な行事の時に使うダンスホール。

 パーティーに相応しい煌びやかな内装と装飾品が、王宮にあるダンスホールと引けを取らない造りの豪華なダンスホールに私は思わず見惚れてしまった。

 会場に集まる生徒達のこの日の為に着飾ったドレスとキラキラと輝く笑顔が会場を明るくしていた。

 私も早くそっちに行って混ざりたい。そこならこのモブ顔が場所に溶け込む事が出来るからっ。

 しかし、そんな事が許されるはずもなく私はジュリアン様にエスコートされダンスホールへと入場した。


 ジュリアン様の姿を見た生徒が黄色い悲鳴を上げた。そしてジュリアン様が誰かをエスコートしていると気が付いた瞬間会場の温度が急激に下がった気がした。

 今まで見た事のないような蕩けるような笑顔をして私をエスコートするジュリアン様。

 そのジュリアン様に戸惑いながらも王太子殿下に恥をかかせるわけにはいかないので、どうにか笑顔を作るとジュリアン様と共に舞台の端までたどり着く。

「スー。私は今から開会の挨拶をしなくてはならないからここでフレディ達と待っていて。決して勝手にどこかへ行ってはいけないよ」

 生徒会長を務めるジュリアン様にはパーティーの開会の挨拶があるので私はココで一旦待たなくてはいけない。

 いや、子供じゃないんだから無駄にちょろちょろしたりしないですけど……とちょっとムっとしちゃったよ。

 ジュリアン様がこの場から離れると、フレディ様やクラウディア様が私の傍に来てくれた。

「スー綺麗だ。兄上が散々悩んでいただけあってよく似合ってるよ」

 ツンデレだったはずのフレディ様なのに最近ツンがほとんどいなくなった。素直に育ったものだわ。

「ありがとうございますフレディ様」

「スカーレット様、そのお召し物とても素敵ですわ。さすが王太子殿下ですスカーレット様がこの会場で一番輝いていましてよ」

 いやいやいや、クラウディア様それは言いすぎでしょ。しょせんモブ顔ドレスに着られてるに違いない。

「まあ、そんな事ありませんわ。クラウディア様こそ素敵なお召し物ですわ」

 本当にクラウディア様に良く似合っているドレスだ。シンプルだけど銀糸で細かく刺繍が入っていて動く度にキラキラと輝く。

 あーこの2人といると落ち着くわー。

 先ほどから、堂々と王太子殿下であるジュリアン様にエスコートされ入場をしてきた私は全方位から飛んでくる明らかに攻撃的な視線に針の筵状態。

 思わずため息が出てしまうよ。




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