私が転生したのは腐女子に優しい世界でした

支倉りおと

文字の大きさ
2 / 15

転生しても腐女子街道を爆走する

しおりを挟む
 さて、皆さんは前世の記憶という物を信じるだろうか?
 私、佐々倉陽菜ささくらひなは5歳の誕生日にケーキのロウソクを吹き消した瞬間。
 前世の記憶を思い出した。

 死ぬ前に見ると言われる走馬灯のように前世の私だった人の記憶が蘇る。
 前世の私はアラサーのバリバリのキャリアウーマンだった。
 そんなバリキャリは擬態で、その裏の本当の彼女の姿はオタク。
 それも腐女子と言われるBL専門のオタクだった。
 リアルの恋愛よりBLと言われる、男性同士の恋愛に萌える性癖を抱えていた前世の私は、仕事をバリバリこなすのはBLの新刊を買い漁る為だった言っても過言ではない。
 
 腐女子街道爆走中だった前世の私。
 
 思い出した最後の記憶が30歳の誕生日に行きつけの本屋さんでBLの新刊を買い漁り、これまた行きつけのbarに向かうと、仲良しのバーテン兼オーナーのイケおじに誕生日酒をサービスされて上機嫌になり、いつもよりお酒が進んだあの日、ちょっとふらつく足元だったけれど気にせず最寄り駅まで行く途中の歩道橋で後ろから来た人にぶつかったのと、手に抱えていた本の重量、その上ふらつく足元と3つの悪い事が重なり伸ばした手が空を切り私は歩道橋の階段から転がり落ちた。

 

 それが思い出した前世の私の最後の記憶。
 
 
 その記憶を思い出した私は
 
 そうか……。

 前世の私は死んだのだ。

 そして佐々倉陽菜として転生したのだと理解した。
 

 この記憶を思い出した時、ずっと抱えていたモヤモヤの理由を私は息をするより簡単に納得した。
 

 前世の記憶を思い出した当時の私は、5歳の女の子だった。だから初恋の一つや二つ……いや初恋は一つだな。
 あってもおかしくはないのに、私は自分が対象となるような色恋事に、何それオイシイの?レベルで全く興味がなかった。
 それよりも身近に存在する自分の兄とその男の子の幼馴染が仲良く遊んでいる所を、影に隠れてニヤニヤを抑えながら傍観者の立場で眺めている方がとても楽しくて幸せを感じていた。
 なんで男の子同士が仲良くしてるのを見るのが楽しいのか、子供ながらに理由はわからないけれど、なによりも楽しかった。

 正直他の人が見ればなんと不気味な子供だっただろうと思う。

 だから、前世の記憶が蘇った時。私の中で燻っていたモヤモヤの理由、感情、思考や性癖。今まであった全ての謎がストンと腑に落ちた瞬間だった。

 

 私は前世から生粋の腐女子で、腐女子として英才教育サラブレッドだったと。


 記憶が蘇ってから実に7年。現在12歳になった私は皆さんの期待通り腐女子の道を爆走中。

 そして前世の頃と何よりも違うのが、この世界では恋愛に男女の縛りがないフリー恋愛の世界だった。
 男性同士、女性同士の恋愛も何の障害もない。結婚だってもちろん可能だ。

 その現実を知った当時私は歓喜した。
 
 だって、ここはBLが普通に認められる世界だ!異性間恋愛だけが多数派じゃない。
 だからもしかしたらと思って、前世で流行っていたジャンルのオメガバースとか番制度とかあるんじゃないかと調べたけれど、この世界にオメガバースの概念はなかった。だから同性同士の妊娠とか夢のような話はさすがに存在しなかった……残念だけどまぁそれはいい。
 
 でも、番制度に似たようなカップルの運命の絆?みたいなものはあるらしい。
 
 それにしてもなんて腐女子に優しい世界なんだ!コソコソと密やかに楽しむ事しか出来なかったBLの世界が、誰にも遠慮せず堂々と楽しめるなんて腐女子万歳!そして心の中では盛大にリオのカーニバルが開催される程喜んだ。

 なんて腐女子の私に都合の良い世界なんだ。
 幸せすぎる。

 前世では腐女子である事を公に公言することは憚られたけれど、世界が認める愛のカタチだから私の性癖をおかしいと言う人がいないのが最大の救いだ。

 前世の私の記憶を思い出した時は混乱したけれど、実に私に都合の良すぎる世界すぎて多少不安もあったけれど、ご都合主義の私はすべてを受け入れた。
 何も世界が認めている事を私が否定する必要はない!
 だから私は自分が幸せだと思う世界で生きる事が不幸なわけがない。

 よしっ私はツイてる。

 そう納得した5歳の私。
 
 あれから7年後の12歳の私がこの世界がおかしい事に気が付くのは中学生になったあの日だった。

 

 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

処理中です...