私が転生したのは腐女子に優しい世界でした

支倉りおと

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この世界は私に優しい世界なだけではなかった

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 あれは、前世の私の記憶だ。
 今まで今世の私が全く疑問を感じずそれが普通だと受け入れた為に変な事すら変だと思わなくなっていた。

 だから気がつかなかったんだ。


 前世の記憶の中に、私が好きでずいぶんとのめり込んでいたゲームがある。
 それは、皆さんの予想通り男性同士が恋愛をするのを楽しむ所謂、B Lゲーム。しかもバッチリ18禁だ。
 アラサーだったんだもん18禁でも問題なし、普通にプレイしてたわ。むしろ推しのグッズ買いまくってたわ。
   
   前世の私の記憶によるとこのゲームは主人公の男の子がとある学園に入学してから3年間の出来事で攻略対象者と共に、交流を深めていくゲームだ。
   攻略対象者ごとにハッピーエンド、ノーマルエンド、バッドエンド、トゥルーエンドと数パターンのエンドが用意されていて分岐さえ間違えなければとても良い恋愛が出来るゲームだった。

 でも……この記憶を思い出した時私は倒れていたけれど、さらに倒れそうな事実に白目を剥いた。



 それは、このゲームの主人公である男の子の事を思い出したからだ。

 
 記憶を思い出す前も思い出してからも、いつもなにかに引っかかっていた。
 でも思い出せなくて、分からなくて、めんどくさがりの私が考えるのを放棄していた罰なのか?

   

 そう、このゲームの主人公は



 佐々倉唯斗

 


 そう、私の兄はBLゲームのヒロインでした。

 


 私がヘビーユーザーだったBLゲームの世界が、私が今、生きている現実の世界だったなんて……。
 どうしてあんなに好きだったゲームを思い出せなかったんだろう?
 こんなにもヒロインの近くにずっと居たのに。
 
 しかも、一度死を迎えた私が転生した転生先があのゲームのヒロインの妹なんて思いもしなかった。
 どうしてヒロインの、お兄ちゃんの名前を思い出せなかったんだろう?

 お兄ちゃんの名前もだけど、今落ち着いて考えてみても佐々倉唯斗に妹がいたと言う設定はあったけれど、名前まで公表されてなかったから自分の名前すら引っかかりもしなかったって訳なのか……な?
 
 それにまさか私が、テンプレ通りのBLゲームに転生してるなんて一ミリも思わなかったんだもん。
 私の知るラノベや同人誌での転生先の定番は乙女ゲームや少女漫画の世界、だからまさか自分がBLゲームの世界に転生するなんて考えた事なかったよ!

 だから結局、隠しキャラである東城至のビジュアルと名前を視覚と脳内が認識した瞬間、この私に優しい世界の意味を理解した。
 
 この世界は私に優しい世界だったけど、現実は私の兄、佐々倉唯斗をヒロインとしたお兄ちゃんの為の世界だ。


 普通の精神状態の子なら、慌てて何か策を講じる所だけど、私の場合。BLゲームにおいて女の子のキャラは単なる当て馬か酷くても好きな人に振られるルートだけだ。
 特に何か対策なんて必要ない。むしろ大人しくしているべきだ。

    断罪も、ざまぁも、国外追放も、監禁陵辱もない。
    だから落ち着いて考えれば何も怖い事はない。
    むしろ、あんなにドハマりしたゲームを主人公と攻略対象者のラブい事柄を間近で盗み見出来る環境なんだよ!
    レアスチル見放題とかもうなんのご褒美なの?逆にありがとうございますの世界ですよ。

 そうか、これはBLゲームの世界。

 でも。このゲームってフリー恋愛の世界線だったかしら?
 単純に男性同士の恋愛を楽しむアレだったよね?


 何かが少しずつ違うと思いながら私は重く閉じた瞼を開けるのだった。
 
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