私が転生したのは腐女子に優しい世界でした

支倉りおと

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兄はヒロイン、妹はイベント泥棒でフラグクラッシャー?

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 脳内会議が終了したので私は重く閉じていた瞼を開く。
 薄ぼんやりとした意識の覚醒と共に私の瞳に映ったのは自分の知る天井じゃなくて見た事のない天井と微かに香る消毒液の匂い。
 私は、入学式の途中に倒れたはずだから病院?と言うよりは多分保健室だろう。
 ゲームの世界にも保健室ってあるんだ。なんて思っていたらどこかで誰かが話す声が聞こえる。

 カーテン越しに聞こえるのは何やら男性同士の会話?ボソボソ声でよく聞こえない。
 お耳をダンボにして聞いていると。

「……かな?心配なんだよ」

「大丈夫……から俺の事信じろ」

 何やら意味深な会話が聞こえる。

 え??BLの波動を感じる!!何?もっと私に聞こえるように話して!!
 興奮状態の私は勢い余って今まで居たベッドから転げ落ちてしまった。

 ドッターンと激しい音を立てながら、頭から床に変な体勢で派手に転んだ私、立ち上がる間もなく引かれていたカーテンが勢いよく開いた。

「陽菜っ!!」

 真っ先に飛び込んで来てくれたのは

「お兄ちゃん……」

 変な体勢でいる私をすぐに抱き起こすと、そのままお姫様抱っこでベッドの上に優しく降ろしてくれた。
 頭から突っ込んだ衝撃で、どうやらオデコを擦りむいていたらしい。一緒に居たなっちゃんがすぐに消毒の準備をしてくれて事なきを得た。

「もう、何やってるんだよ陽菜は。心配しただろう」

 言葉とは裏腹に、私に向ける瞳は優しい。私のお兄ちゃん優しい。

「うう……ごめんなさい。ご心配おかけしました」

 素直に謝ると、隣に座っていたなっちゃんに抱きしめられると頬にちゅっとキスしてきた。

「陽菜ぁ。俺も心配したよー!陽菜ってばいきなり倒れるんだもん、慌てちゃったよ俺」

 話を聞く限り、私は入学式で理事長の挨拶の途中倒れてしまい騒然とする中舞台上にいた理事長が颯爽と降りてきて私をここまで運んでくれたらしい。
 
 マ・ジ・デ・ス・カ

 何故理事長自ら私を運ぶんだ?え?ちょっと待ってコレってイベントじゃないっけ?
 確か、ゲーム二周目以降に出てくる隠しキャラの東城至。唯斗の中等部の入学式で同じように貧血を起こし倒れた唯斗を至が保健室まで運ぶと言うのが至と唯斗の出会いイベントだ! 
 なんで私がイベント起こしちゃってるのよ?私は唯斗の妹であってこのゲームのヒロインじゃないのよ?
 これじゃ、お兄ちゃんと東城至のイベントが発生しないじゃない!

 と、言う事は東城至ルート消滅なの?嘘でしょ。
 至ルートは心の冷え切った至と交流する事で至の心の傷を癒し、至からの溺愛に溺愛を受けラブラブハッピーな恋人になれるのに何私がフラグ折ってるのよ。
 馬鹿馬鹿私のバカっ!!
 
 顔面蒼白になって固まる私に

「陽菜?陽菜?大丈夫か?どうせ今日はもう解散だからこのまま帰るか?帰るならナツん家の車出して貰えるからちょっと待ってろ。ナツ任せたぞ」

「あぁ、任せろ陽菜の事は俺が見てるから」

 そう言うとお兄ちゃんはなっちゃん家に連絡してくるって保健室を出て行った。

 自分の予想外の展開が起きていて私はショックで何も考えられなくなっていた。
 少し前にこの世界はお兄ちゃんの為の世界だと理解したばかりなのにイベントを起こすはずなのはお兄ちゃんなのに、私がイベントを起こしてどうするのよ。
 
 ゲームの展開をめちゃくちゃにしてしまったと思った私は、このBLゲームの思い出せるだけのストーリーやイベントを脳内からかき集めるのに必死で、隣に居たなっちゃんの言葉も行動も頭に入らず、なっちゃんの言うがままに流されて、裸に剥かれそうになった所を戻ってきたお兄ちゃんに現行犯で目撃された私たちは激怒された。
 いつもならなっちゃんだけを怒るだけなのになぜか被害者である私までお兄ちゃんに説教された。

 何故だ?解せない?そんな顔をしていたら

「陽菜……もっと自分を大事にしなさい。そんなんじゃ気が付いたらナツに妊娠させられるぞ」

「え?陽菜、俺の子供産んでくれるの?嬉しい!!じゃぁ今すぐ子作りしよー「だぁほ!!」

「ナツ、マジで勘弁してくれ俺、お前とまだ友達辞めたくないんだから」

 ハァーと深いため息をつくお兄ちゃん。

「もー唯斗ってば、大丈夫だよちゃんと分かってるから。俺が就職して陽菜が大学卒業するまではちゃんと避妊するよ。あ、結婚しても2人きりの時間も欲しいから結婚して2年くらいは2人きりでいようかな。その後は陽菜が孕むまで俺頑張るからね義兄ちゃん」

 にこやかに爆弾を投下するなっちゃんはド天然だ。

「違う、ナツそうじゃない。俺が言いたいのは、俺はお前の義兄じゃないし、大切な妹に手を出すな殺すぞって事だ」

 本気の殺気を纏ったお兄ちゃんは死ぬほど怖い。
 先ほどまで軽口を叩いていたなっちゃんですら固まる程だ。

 さすがこの世界のヒロイン様最強すぎる。

「陽菜、帰るぞ。ナツ車かりるな」


 そう言うとお兄ちゃんは私を連れて保健室を出た。

 いまだに固まり続けるなっちゃんの方に振り返ると口パクだったけど

「ごめんねなっちゃん」

 そう言うと私は家路を急いだ。



 


 

 
 
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