私が転生したのは腐女子に優しい世界でした

支倉りおと

文字の大きさ
10 / 15

幼馴染その2は実力行使がお好き

しおりを挟む
「佐々倉陽菜です。昨日は具合が悪くて途中から保健室で休んでいました。今日から一年間よろしくお願いします」

 本当なら昨日の入学式の日に自己紹介する予定だったけれど、私が保健室に運ばれた為に気を使ってくれた担任によって今日の朝のHRでクラスメイト全員で自己紹介する事になった。
 入学早々迷惑を掛けてしまい申し訳ない。

 私の次に挨拶するのはふーちゃんだ。彼が立ち上がった時の女子の騒めきが凄い。いや、女子だけじゃなく男子の声が混ざっていたのを私は聞き逃さなかった。
 さすがふーちゃんイケメンのイケメン力(?)は凄いな。

「進藤冬月です。佐々倉陽菜とは幼馴染です。陽菜が可愛いからって手を出そうもんなら僕と3年の陽菜の兄と僕の兄がお相手しますので、度胸のあるやつはどうぞ」

 ん?ふーちゃんは何を言ってるの?そう自己紹介するふーちゃんをあんぐりと口を開けながら私は見ていた。
 私と幼馴染だと言う情報特に要らなくない?そして私可愛くないからね。お兄ちゃんの傍にいたら霞んで見えなくなるくらいモブ顔じゃん。たまに人に認識されない事もあるの知ってるよね?
 それより何の心配だよっ。誰がお兄ちゃんとかなっちゃんとかふーちゃんみたいな超絶イケメンが傍にいて私なんか好きになるんだよ。
 それこそその人趣味がおかしいよ。
 そう思って呆れていると。

 謎の自己紹介をしたふーちゃん。そんなふーちゃんを見て色めきだっていた女子たちが急に大人しくなった。
 きっと、こんな可愛くもない幼馴染に執着している事に引いたんだろうなぁ。
 あーあ。ふーちゃんもイケメンなんだけど、なぜか私を可愛いと思い込む魔法にかかっている残念イケメンの一人だ。
 私なんかを大事にするより、周りを見れば可愛い子はより取り見取り選び放題だろうに。
 まぁ、だからって急に私の傍からいなくなるのは……寂しいから少しずつなら。うん離れて行っても我慢できるよ。

 ふーちゃん達は私の運命の唯一ではないからいつかは離れて行くってわかっているけど、みんな唯一を見つけて私だけ置き去りにされると思うと、急に寂しくなった。

 そんな私の悲しみを察知したのかふーちゃんが私の席までやってくると私を抱え上げた

「え?どうしたの」

 ふーちゃんの謎の行動に教室の中が止まった。

 私を抱え上げたふーちゃんは、おもむろに私の席の後ろにあるふーちゃんの席に連れて行くと、なんの躊躇もなく私を自分の膝の上に座らせるとぎゅっと抱きしめて来た。
 そして、悲しくなっていた私の潤んだ瞳から零れたしずくをペロリと舐めとると。

「陽菜?大丈夫?何か悲しい事があったの?僕に出来る事ある?もしダメでもナツ兄でもゆい兄でも陽菜の憂いは払ってくれるよ。だから何かあったのなら言って」

 へにゃぁと困ったように眉が下がっている。いつもキリっとしているのにふーちゃんの眉が下がるのはよく有る事だ。それは私の事を本気で心配してくれている時だ。

「やだなぁふーちゃん何もないよ」
 
 安心させるようにそう言うけれどそんな誤魔化しでごまかされてくれるような相手ではなかった。

「そんな訳ないでしょ、陽菜が悲しんでるのをずっと一緒にいる僕が分からないわけないでしょ」
 
 そう言いながら私の顔へのキスがやまない。正直周りが凍り付きだしているのにふーちゃんは我関せずだ。

 ついには私の耳元で

「理由を隠して言わないんならお口にちゅーするよ。陽菜の腰が砕けるくらい激しいのを」

 そう私に囁いたふーちゃんの顔は妖艶な空気を纏った男の顔だった。
 ゾクっとした私は観念して

「えっと……ふーちゃんとかお兄ちゃんやなっちゃんが、いつかは自分の唯一を見つけて私の前からいなくなる日が来たら寂しいんだろう……な。とか思ったらちょっと、ちょっとだけ悲し……」

 最後まで私は言い訳を言う暇もなくふーちゃんに唇を塞がれていた。
 はじめは優しく唇を塞がれるが、息継ぎをする合間を狙いふーちゃんの舌が私の唇をアッサリ割ると口の中に入って来るや否や私の口の中でふーちゃんの舌が私の舌を絡めとり蹂躙する。

 ふーちゃんからの激しすぎるキスで意識が朦朧としだした私の力が抜けてふーちゃんに力なく抱きついたタイミングで唇が離れると、ふーちゃんはどちらの唾液かわからない濡れた私の唇を舌で舐めとり離れがたそうに軽くちゅちゅと数回キスをし、離れると自分の口についた唾液をペロリと舐めた顔が色っぽくて思わずドキドキしてしまった。

 そこで、ココが教室だと言う事に気が付いた私は、思わず固まってしまった。

 正直、今一番気まずいのは私やふーちゃんじゃなくて、初対面の人間のイチャイチャやキスを見せられた方だと思う。
 本当に申し訳ない。
 絶望感でいっぱいになってる私だけど、ふーちゃんはどこ吹く風で私を撫でながら

「陽菜かわいい、陽菜かわいい、陽菜かわいい」とつぶやいている。

 暫くすると、ようやくクラスメイトや担任教師の意識が戻ったようで自己紹介が再開された。
 
 皆さんの予想通りとても気まずい雰囲気はどうにもできなかったけれど、振り切れていた私とふーちゃん。
 はじめこそ驚かれていたけれど、いつの間にか慣れてしまいふーちゃんと私のイチャイチャはこのクラスの名物のように扱われるようになった。

 何故だ解せない。

 拒否されるよりはマシだけど、受け入れてくれるこのクラスメイト達は貴重だなとさすがの私でもわかる。

 それにしてもBLゲームの世界のはずなのに一向にBLの波動が感じられないのはどういう事なんだろう?
 
 


 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...