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第7章 ーノエル編ー
26 オールディ訪問
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オールディの聖女たちの仕事は、祈りの結界の補強である。建国祭で大聖女様が張る全土を覆う結界を、日々祈りを捧げることで補強している。
また、個々人や建物などに小規模の結界を張る場合もある。
「うーん、ここまで駆け足で調べて回ってきたけど、すべての聖女が魔力もちで属性は不明または光だね。光属性持ちは必ずハロルドが指摘したような反応に間があるね。」
南方の教会を三つめぐり、最後はオールディ有数のリゾート地で一泊することとなった。明日は王都に戻る。
「聖女の親族の魔力測定と属性調査もしたいね。」
「かしこまりました。今日すぐに会える者がいると思うので手配します。」
旅に同行してくれていたセシルがすぐに教会に打診してくれた。地方に勤める聖女はその付近の出身である場合が多いそうだ。
近隣の親を訪ねる手配がなされ、そう大勢で押しかけるのは迷惑だろうとノエルとハロルドは観光でもしていなさいとお留守番になった。
「ノエル、どこか行きたいところある?」
「海!」
ノエルは生まれてから海を見たことがなかった。これまでも調査調査で海を見る機会がなかったのだ。
「海、見たことないの?」
「ハロルドはあるの?」
「ヒューゲン側の海ならね。」
二人で宿泊しているホテルの受付に海を見に行くこととおすすめの観光地をきくと…。
「お二人はニルスは初めてですか?海に行かれるならサンダルをお買いになられて方がいいですよ?」
ノエルはクロエが用意していたピンクのウエストを絞った可愛いワンピースに着替えていたが、ハロルドの格好はふさわしくないとあれよとリゾートウェアのショップに連れていかれた。
服を選べないハロルドのために大ぶりな花柄の短パンを選んで与えてやる。
そうしてようやく海にやってきた。
甘い飲み物を買ってきて、店員さんに教えられた穴場から海を眺める。日差しがキラキラと反射し、どこまでも続く海の青とあわさってとても綺麗だった。
カメラで写真を撮ってみるが、目で見た方が何倍もきれいだ。
「僕、ノエルに聞きたいことがあるんだけど…。」
「…何?」
「ノエルの属性検査、オールディの聖女たちと同じように、一瞬の間があった後に白く変わったよね?覚えてる?」
ハロルドはノエルと同じ部屋で属性検査をしていた。もちろんばっちり覚えていた。
「ノエルの目はキラキラと青いし、ルロワ本家に近づくほど瞳がキラキラするらしいって聞いたよ。それに一年生の時に、モーリーンを捕まえるためにノエルが歌ってた時のことも思い出した。」
歌は建国祭の大きな見どころの一つに関わるのだ。
「大聖女は”祈りの結界”を歌で張るんだ。聖女たちも月に一度は歌による結界の補強を行うらしいし、心を奪われるような見事な歌を披露するそうだよ。
あの日のノエルの歌も学園中を虜にしたよね?」
ハロルドが真剣な目でこちらを見ている。ノエルも隠しておけないだろうと出自を話すことに決めた。
「私の母は現大聖女様の異母妹にあたるらしいの。」
「亡くなったっていう母上?」
「そう。それで私も大聖女になる資質があるそうなの。」
「大聖女の選定基準は確か、ルロワ家出身で青い瞳の女性であることと、強化術を扱えることだったよね?もしかしたら結界術は未知の属性から、強化術は光属性からきているのかもしれない。」
ノエルははっとした。となると母が結界術を使えなかったのは未知の属性を持っていなかったからなのではないか。光属性だけを持っていたから強化術しか使えなかったのだ。
ふとハロルドを見ると何やら嬉しそうな顔でこちらを見ている。
「…なんで笑ってるの?」
「いや、またノエルの秘密を一つ知って嬉しいなと思って。」
ふとノエルはハロルドに告白を越えてプロポーズされていたことを思い出して赤くなる。あまりハロルドのアピールは激しくはないがたまに確かに好かれていることを思い知らされて照れてしまうのだ。
…変人のハロルドに。
どこかで聞きなれたにゃーという声がして辺りを見るがそこにオズマはいなかった。
ハロルドに目線を戻してまた考える。ハロルドに、母の謎を全部話してみようか…。もしかしてその謎を解いてくれるかもしれない。
「ハロルドに聞いてほしい話があるの。これは他の人には内緒にしてほしいんだけど。」
そこでノエルは、母がルロワ家の生まれでありながら結界術が使えなかったこと、強化術のみが使えたこと、それにより王都を追い出されたこと、数年後に未来視に目覚めたことを話した。
「うん。結界術の件は属性で説明がつくと思う。」
ハロルドは眼鏡をかけて顎に手をやりながら言った。
「これは僕の推測だけど、強化術も強力ではなかったそうだし、もしかしてノエルの母上は魔力が少なかったんじゃないかな?魔力が少ないと複数属性は持ちにくいからね。
これはルロワ公爵家の魔力調査をしてみないとわからないけど、ルクレツェンで起きていることを考えると、由緒正しい生まれであるほど魔力が弱まっているからね。
大聖女様の異母妹だったこと、長く期待されていたことを考えると、血筋が大聖女様よりもいいのかもしれない。」
なるほど。由緒ある血縁で生まれてきたために過剰に期待をかけられてきた可能性があるのか。それなら辺境でも見張られていた可能性もある。
母の未来視に気づかれたのにはそういう背景があったのかもしれない。
「未来視については、僕にもわからない。占いを生業にしていたのは古代の魔女たちだからね。彼女たちには未来を見通す力のあるものまでいたとか。
東洋の島国では予知の技なんてものがあったって話もある。そのメカニズムはよくわかっていないんだ。
血筋によるならルロワ家の家系図を見せてもらえれば何かわかるかもしれない。」
そうか、ハロルドでもわからないことか…。未来視のことは大聖女様に聞いてみる必要がある。
「でも、話してくれてよかった。」
「え?」
「もしかしたらノエルは連れ去られるかもしれないだろう?父上は一般市民でも血筋は確かなんだ。もし大聖女システムに何か問題があったら…もしくは今回の調査でノエルにとっては都合が悪い何かがでてくるかもしれない。
僕も気を付けるけど、ノエルも気を付けた方がいい。」
ハロルドに「手出して」と言われて右手で飲み物を持って左手のひらを上に向けてハロルドの方に出すと、ハロルドに手のひらを下向きにされて薬指に何かをはめられた。
見れば透明な小さな石のついた指輪である。
「…これは?」
「セドリック魔法商会の却下になったマジックアイテムだよ。こっちの指輪と連動していて、魔力を流すと持ち主の居場所を示すんだ。」
ハロルドが持つ指輪は「ほら」という言葉と共に石が赤くなり、小さく光線のようなものが出てノエルの方を指す。…すごい。
「この小さな魔石にはこれ以上の効果はつけられなくて、発売は断念したんだけど。」
…すごい。すごいが。ノエルは薬指から指輪を抜き、別の指にはめなおす。ハロルドが「あ」と言うが気にしない。ハロルドは残念そうに自分もノエルと同じ指に指輪をはめた。
「…どうしてこのアイテムを持ってたの?」
「ノエルから告白の返事をもらったら、すぐに渡そうと思って。」
また、個々人や建物などに小規模の結界を張る場合もある。
「うーん、ここまで駆け足で調べて回ってきたけど、すべての聖女が魔力もちで属性は不明または光だね。光属性持ちは必ずハロルドが指摘したような反応に間があるね。」
南方の教会を三つめぐり、最後はオールディ有数のリゾート地で一泊することとなった。明日は王都に戻る。
「聖女の親族の魔力測定と属性調査もしたいね。」
「かしこまりました。今日すぐに会える者がいると思うので手配します。」
旅に同行してくれていたセシルがすぐに教会に打診してくれた。地方に勤める聖女はその付近の出身である場合が多いそうだ。
近隣の親を訪ねる手配がなされ、そう大勢で押しかけるのは迷惑だろうとノエルとハロルドは観光でもしていなさいとお留守番になった。
「ノエル、どこか行きたいところある?」
「海!」
ノエルは生まれてから海を見たことがなかった。これまでも調査調査で海を見る機会がなかったのだ。
「海、見たことないの?」
「ハロルドはあるの?」
「ヒューゲン側の海ならね。」
二人で宿泊しているホテルの受付に海を見に行くこととおすすめの観光地をきくと…。
「お二人はニルスは初めてですか?海に行かれるならサンダルをお買いになられて方がいいですよ?」
ノエルはクロエが用意していたピンクのウエストを絞った可愛いワンピースに着替えていたが、ハロルドの格好はふさわしくないとあれよとリゾートウェアのショップに連れていかれた。
服を選べないハロルドのために大ぶりな花柄の短パンを選んで与えてやる。
そうしてようやく海にやってきた。
甘い飲み物を買ってきて、店員さんに教えられた穴場から海を眺める。日差しがキラキラと反射し、どこまでも続く海の青とあわさってとても綺麗だった。
カメラで写真を撮ってみるが、目で見た方が何倍もきれいだ。
「僕、ノエルに聞きたいことがあるんだけど…。」
「…何?」
「ノエルの属性検査、オールディの聖女たちと同じように、一瞬の間があった後に白く変わったよね?覚えてる?」
ハロルドはノエルと同じ部屋で属性検査をしていた。もちろんばっちり覚えていた。
「ノエルの目はキラキラと青いし、ルロワ本家に近づくほど瞳がキラキラするらしいって聞いたよ。それに一年生の時に、モーリーンを捕まえるためにノエルが歌ってた時のことも思い出した。」
歌は建国祭の大きな見どころの一つに関わるのだ。
「大聖女は”祈りの結界”を歌で張るんだ。聖女たちも月に一度は歌による結界の補強を行うらしいし、心を奪われるような見事な歌を披露するそうだよ。
あの日のノエルの歌も学園中を虜にしたよね?」
ハロルドが真剣な目でこちらを見ている。ノエルも隠しておけないだろうと出自を話すことに決めた。
「私の母は現大聖女様の異母妹にあたるらしいの。」
「亡くなったっていう母上?」
「そう。それで私も大聖女になる資質があるそうなの。」
「大聖女の選定基準は確か、ルロワ家出身で青い瞳の女性であることと、強化術を扱えることだったよね?もしかしたら結界術は未知の属性から、強化術は光属性からきているのかもしれない。」
ノエルははっとした。となると母が結界術を使えなかったのは未知の属性を持っていなかったからなのではないか。光属性だけを持っていたから強化術しか使えなかったのだ。
ふとハロルドを見ると何やら嬉しそうな顔でこちらを見ている。
「…なんで笑ってるの?」
「いや、またノエルの秘密を一つ知って嬉しいなと思って。」
ふとノエルはハロルドに告白を越えてプロポーズされていたことを思い出して赤くなる。あまりハロルドのアピールは激しくはないがたまに確かに好かれていることを思い知らされて照れてしまうのだ。
…変人のハロルドに。
どこかで聞きなれたにゃーという声がして辺りを見るがそこにオズマはいなかった。
ハロルドに目線を戻してまた考える。ハロルドに、母の謎を全部話してみようか…。もしかしてその謎を解いてくれるかもしれない。
「ハロルドに聞いてほしい話があるの。これは他の人には内緒にしてほしいんだけど。」
そこでノエルは、母がルロワ家の生まれでありながら結界術が使えなかったこと、強化術のみが使えたこと、それにより王都を追い出されたこと、数年後に未来視に目覚めたことを話した。
「うん。結界術の件は属性で説明がつくと思う。」
ハロルドは眼鏡をかけて顎に手をやりながら言った。
「これは僕の推測だけど、強化術も強力ではなかったそうだし、もしかしてノエルの母上は魔力が少なかったんじゃないかな?魔力が少ないと複数属性は持ちにくいからね。
これはルロワ公爵家の魔力調査をしてみないとわからないけど、ルクレツェンで起きていることを考えると、由緒正しい生まれであるほど魔力が弱まっているからね。
大聖女様の異母妹だったこと、長く期待されていたことを考えると、血筋が大聖女様よりもいいのかもしれない。」
なるほど。由緒ある血縁で生まれてきたために過剰に期待をかけられてきた可能性があるのか。それなら辺境でも見張られていた可能性もある。
母の未来視に気づかれたのにはそういう背景があったのかもしれない。
「未来視については、僕にもわからない。占いを生業にしていたのは古代の魔女たちだからね。彼女たちには未来を見通す力のあるものまでいたとか。
東洋の島国では予知の技なんてものがあったって話もある。そのメカニズムはよくわかっていないんだ。
血筋によるならルロワ家の家系図を見せてもらえれば何かわかるかもしれない。」
そうか、ハロルドでもわからないことか…。未来視のことは大聖女様に聞いてみる必要がある。
「でも、話してくれてよかった。」
「え?」
「もしかしたらノエルは連れ去られるかもしれないだろう?父上は一般市民でも血筋は確かなんだ。もし大聖女システムに何か問題があったら…もしくは今回の調査でノエルにとっては都合が悪い何かがでてくるかもしれない。
僕も気を付けるけど、ノエルも気を付けた方がいい。」
ハロルドに「手出して」と言われて右手で飲み物を持って左手のひらを上に向けてハロルドの方に出すと、ハロルドに手のひらを下向きにされて薬指に何かをはめられた。
見れば透明な小さな石のついた指輪である。
「…これは?」
「セドリック魔法商会の却下になったマジックアイテムだよ。こっちの指輪と連動していて、魔力を流すと持ち主の居場所を示すんだ。」
ハロルドが持つ指輪は「ほら」という言葉と共に石が赤くなり、小さく光線のようなものが出てノエルの方を指す。…すごい。
「この小さな魔石にはこれ以上の効果はつけられなくて、発売は断念したんだけど。」
…すごい。すごいが。ノエルは薬指から指輪を抜き、別の指にはめなおす。ハロルドが「あ」と言うが気にしない。ハロルドは残念そうに自分もノエルと同じ指に指輪をはめた。
「…どうしてこのアイテムを持ってたの?」
「ノエルから告白の返事をもらったら、すぐに渡そうと思って。」
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