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エピローグ
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卒業後、レグルスは本当に9か月でCランクに登りつめ、任務をこなしながら拠点をロマーノに移すための準備を始めた。
イースターの休暇にロマーノを訪れ、キャサリンと同棲するための物件を探した。ロバート商会からちょっとした収入を得ているらしいキャサリンと家賃を折半し、大学と冒険者協会からちょうどいい具合の距離にあるアパートメントを借りる契約をした。
そして、その翌月からレグルスはロマーノで暮らし始め、大学の夏期休暇に寮を引き払ったキャサリンが合流して二人で暮らし始めた。
同棲すると報告したとき、もちろんキャサリンの父であるヘンリーが荒れに荒れた。
「同棲だなんて!君がロマーノで暮らすのはいいが、別々に暮らすべきだ!キャサリンもわざわざ大学から離れたアパートなんかに住む必要はない!」
「お義父さんのご心配はごもっともです。では、ちゃんと責任をもって、同棲前に入籍をします。」
「結婚なんて絶対に許さん!!」
ということで、なんとか同棲を認められた。
キャサリンは優秀な成績で四年かかるところを三年で大学を卒業した。
「実は交流プログラムでお世話になった先生にヒューゲンの商会で働かないかって誘われているの。実は海洋貿易に興味があってね。」
大学で自分の書いた論文の話をし始める姿は、かつて自分のお気に入りのお店を語りつくしていた姿に重なる。やりがいを感じている様でレグルスも嬉しい。魔法学園で基礎の経営と経済を勉強しておいたおかげで、大まかにはキャサリンの話もわかる。
キャサリンもレグルスに説明をするのが楽しいようだ。
「わかった。次はヒューゲンになりそうなんだな?問題ない。」
歴代最速のスピードでAランクまで登っていたレグルスがロマーノを去るのはロマーノ支部の人々に大変に惜しまれたが、レグルスの一番はずっとキャサリンなので、徐々にヒューゲンでの仕事を増やし、キャサリンの就職と共にヒューゲンに移住した。
ヒューゲンで五年働いたキャサリンは、新規事業の立ち上げや旧事業の立て直しで大いに活躍し、また彼女をヒューゲンに誘った偉い先生との連名で論文を書き、それが有名となって賞を取った。業界でそこそこ名の知れた有名人だ。
そのころには歴代最速のスピードでレグルスは数人しかいないSランク冒険者になっていた。拠点にしていたロマーノとヒューゲンはやってくる魔法使いも少なく、国を守る特別な結界があるわけでもない。つまり、大型の任務でガンガン実績を積むことができたのだ。
しかし、Sランクになってしまうと、支部から国をまたいだ大きな任務に年に二度ほど駆り出されるようになる。つまりは、キャサリンを置いて世界を飛び回らなければならない。
たったの年に二度なのに、キャサリンに会えない時間が増えてきて冒険者を辞めようかとまで思った大げさなレグルスだったが、仕事が落ち着いたキャサリンが予定が合えば「外国の流行りを知りたい」と言って一緒に任務に着いてくるようになって悩みは解消した。
冒険者協会は数少ないSランク冒険者を失わずに済んだ。
そして、母国からキャサリンに、魔法道具を隣国に売り出す事業立ち上げの仕事依頼が来て、二人はそろって国に帰った。
結局、レグルスがキャサリンと正式に結婚したのは卒業から九年、婚約してから十年後だった。それも、帰国して落ち着いて再会した友人や同僚、親族から説得されてのことだった。節目節目に結婚の話は出ていたが、そのたびにどちらかに新しい仕事が舞い込み、そのうちに、一緒にいるのだからどちらでもいいか、と気にしなくなってしまっていたのだ。
強硬に反対していたヘンリーが「結婚してもいいからこのままこの国に定住しておくれ…。レグルスくん、キティを説得してくれ…。」と泣きついてきたというのもある。
「結婚式って疲れるのね。」
「でもやってよかったな。お義父さん、ぼろ泣きだったし。」
すっかり大人の女性になったキャサリンは大仕事を終えてお疲れ気味の様子でレグルスの肩に頭を乗せてソファーでくつろいでいる。すっかり大人になったレグルスの手の中にあるのは今日の写真だ。
現在セドリック魔法商会で開発中の魔法カメラはすっかり画質がよくなっていた。もともと出来上がりのスピードが通常のカメラよりも段違いに早いのに画質までよくなれば、最高の商売道具になるだろう。
「今日のキティは最高に綺麗だった。」
レグルスがキャサリンに愛情を伝えるのに、全く躊躇しなくなったのはいつのことだろうか。
「レグもかっこよかった。……今日は初夜だよね?」
キャサリンがその手のことをあまり恥じらわなくなったのもいつのことだったか。
「本当の初夜からもう数えきれないぐらいイチャイチャしてるけどな。」
流れるようにキスをする二人は着実に大人になり、魔法学園にいた頃のようなケンカップルではなくなったのだ。
「あのね…。私……、赤ちゃんがほしいの!」
「…………え?まじか。」
「え?もしかしてレグ、嫌なの?」
「そ、そ!俺たち、結婚したばかりだぞ!!もう少し二人でいようぜ!!」
「今までもずっと二人だったじゃない!!私は好きだけど子供はいらないっていうの!?」
「お前に似た子ならほしいに決まってんだろ!!バカ!!」
「じゃあ…!」
「獣人の血の強さを舐めるな!俺に似た素直じゃないガキばっかりになるぞ!!」
「今思うと、あの頃のレグ、可愛かった。」
「へあ!?!?おおおお、男に可愛いなんて言うんじゃねー!!!!」
……そんなこともなかった。
イースターの休暇にロマーノを訪れ、キャサリンと同棲するための物件を探した。ロバート商会からちょっとした収入を得ているらしいキャサリンと家賃を折半し、大学と冒険者協会からちょうどいい具合の距離にあるアパートメントを借りる契約をした。
そして、その翌月からレグルスはロマーノで暮らし始め、大学の夏期休暇に寮を引き払ったキャサリンが合流して二人で暮らし始めた。
同棲すると報告したとき、もちろんキャサリンの父であるヘンリーが荒れに荒れた。
「同棲だなんて!君がロマーノで暮らすのはいいが、別々に暮らすべきだ!キャサリンもわざわざ大学から離れたアパートなんかに住む必要はない!」
「お義父さんのご心配はごもっともです。では、ちゃんと責任をもって、同棲前に入籍をします。」
「結婚なんて絶対に許さん!!」
ということで、なんとか同棲を認められた。
キャサリンは優秀な成績で四年かかるところを三年で大学を卒業した。
「実は交流プログラムでお世話になった先生にヒューゲンの商会で働かないかって誘われているの。実は海洋貿易に興味があってね。」
大学で自分の書いた論文の話をし始める姿は、かつて自分のお気に入りのお店を語りつくしていた姿に重なる。やりがいを感じている様でレグルスも嬉しい。魔法学園で基礎の経営と経済を勉強しておいたおかげで、大まかにはキャサリンの話もわかる。
キャサリンもレグルスに説明をするのが楽しいようだ。
「わかった。次はヒューゲンになりそうなんだな?問題ない。」
歴代最速のスピードでAランクまで登っていたレグルスがロマーノを去るのはロマーノ支部の人々に大変に惜しまれたが、レグルスの一番はずっとキャサリンなので、徐々にヒューゲンでの仕事を増やし、キャサリンの就職と共にヒューゲンに移住した。
ヒューゲンで五年働いたキャサリンは、新規事業の立ち上げや旧事業の立て直しで大いに活躍し、また彼女をヒューゲンに誘った偉い先生との連名で論文を書き、それが有名となって賞を取った。業界でそこそこ名の知れた有名人だ。
そのころには歴代最速のスピードでレグルスは数人しかいないSランク冒険者になっていた。拠点にしていたロマーノとヒューゲンはやってくる魔法使いも少なく、国を守る特別な結界があるわけでもない。つまり、大型の任務でガンガン実績を積むことができたのだ。
しかし、Sランクになってしまうと、支部から国をまたいだ大きな任務に年に二度ほど駆り出されるようになる。つまりは、キャサリンを置いて世界を飛び回らなければならない。
たったの年に二度なのに、キャサリンに会えない時間が増えてきて冒険者を辞めようかとまで思った大げさなレグルスだったが、仕事が落ち着いたキャサリンが予定が合えば「外国の流行りを知りたい」と言って一緒に任務に着いてくるようになって悩みは解消した。
冒険者協会は数少ないSランク冒険者を失わずに済んだ。
そして、母国からキャサリンに、魔法道具を隣国に売り出す事業立ち上げの仕事依頼が来て、二人はそろって国に帰った。
結局、レグルスがキャサリンと正式に結婚したのは卒業から九年、婚約してから十年後だった。それも、帰国して落ち着いて再会した友人や同僚、親族から説得されてのことだった。節目節目に結婚の話は出ていたが、そのたびにどちらかに新しい仕事が舞い込み、そのうちに、一緒にいるのだからどちらでもいいか、と気にしなくなってしまっていたのだ。
強硬に反対していたヘンリーが「結婚してもいいからこのままこの国に定住しておくれ…。レグルスくん、キティを説得してくれ…。」と泣きついてきたというのもある。
「結婚式って疲れるのね。」
「でもやってよかったな。お義父さん、ぼろ泣きだったし。」
すっかり大人の女性になったキャサリンは大仕事を終えてお疲れ気味の様子でレグルスの肩に頭を乗せてソファーでくつろいでいる。すっかり大人になったレグルスの手の中にあるのは今日の写真だ。
現在セドリック魔法商会で開発中の魔法カメラはすっかり画質がよくなっていた。もともと出来上がりのスピードが通常のカメラよりも段違いに早いのに画質までよくなれば、最高の商売道具になるだろう。
「今日のキティは最高に綺麗だった。」
レグルスがキャサリンに愛情を伝えるのに、全く躊躇しなくなったのはいつのことだろうか。
「レグもかっこよかった。……今日は初夜だよね?」
キャサリンがその手のことをあまり恥じらわなくなったのもいつのことだったか。
「本当の初夜からもう数えきれないぐらいイチャイチャしてるけどな。」
流れるようにキスをする二人は着実に大人になり、魔法学園にいた頃のようなケンカップルではなくなったのだ。
「あのね…。私……、赤ちゃんがほしいの!」
「…………え?まじか。」
「え?もしかしてレグ、嫌なの?」
「そ、そ!俺たち、結婚したばかりだぞ!!もう少し二人でいようぜ!!」
「今までもずっと二人だったじゃない!!私は好きだけど子供はいらないっていうの!?」
「お前に似た子ならほしいに決まってんだろ!!バカ!!」
「じゃあ…!」
「獣人の血の強さを舐めるな!俺に似た素直じゃないガキばっかりになるぞ!!」
「今思うと、あの頃のレグ、可愛かった。」
「へあ!?!?おおおお、男に可愛いなんて言うんじゃねー!!!!」
……そんなこともなかった。
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