拗らせ恋の紡ぎ方。


「結城は友達。な?」


 初めて好きになった男の子は周囲から“王子様”と慕われていた。顔立ちが整っているのはもちろん、文武両道でパーフェクトな彼。


「当然でしょ。ビー太郎が彼氏なんて嫌よ」


 対する私は、柔道一筋の武道一家の末娘。あだ名はその体型から“ゴリラ”と呼ばれる始末。


 王子様とゴリラ。


 何故かウマが合い、教室ではよく話す。だけど、自分でもちゃんと分かってる。


それが釣り合ってないことを。


だからこの恋は一生の秘密。
心の奥に閉まって、いつしか存在そのものが無くなればいい。


そう思っていたのに。


「結城さん、週末の会食リスケして」

「承知しました」


 二十年以上経った今、彼と私は上司と部下。彼の秘書をしている。毎日顔を合わせるせいで、閉じ込めた想いが時々儘ならない。


おまけに、

「ビー太郎、あれはないわ」

「だよなー」

「何がだよなー、よ。フォローする私のことも考えなさいよ」


 彼とは気の合う飲み仲間。
お互い、恋人はいてもいなくても、そのラインは崩れない。


「やっぱ結城といるのは楽だわ」


「それは同意ね」


 いつか来るその時まで。
彼に似合う女性が彼の隣に立つその日まで。


どうか、このまま彼を想っていたい。
それ以上は決して望まない。




主な登場人物

結城綾乃(ゆうきあやの)秘書

木下雅(きのしたみやび)副社長




二十年以上も拗らせた初恋は果たして………?!


※他社サイトに掲載した作品を改稿してアップしております。




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