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第三部 ルートン王国交換留学編
婚約者が土下座して謝ってきたので、許さざるを得なくなりました
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「ちょっとアド、何しているのよ!」
私は慌てて、アドに駆けよった。
「フラン、疑って申し訳なかった」
再度アドが土下座してくれたのだ。
「いや、だから、土下座するの止めて!」
私が必死に頼む。
王太子を他国で公衆の面前で土下座させたなんて事が広まると、また、皆に白い目で見られる。フェリシー先生に知られたら2時間説教コースは確実だし、泣き虫シルビアらに知られたら、何を言われるかわかったものではなかった。
でも、既に遅かったのだ!
「ああああ! さすがフラン。自国の王太子に頭を下げさせている」
いつもは貴族用の食堂にいて、一般食堂には立ち寄りもしないシルビアが何故かここにいたのだ。
「殿下、フランにとってはいつもの事なんですのよ」
「そうです。フランは我が国でもいつも王太子殿下に頭を下げさせているのです。私、王太子殿下が不憫で」
いつもはいないグレースに次いで、ハンカチを取り出して目に当てながらピンク頭が言うんだけど、今迄散々その原因を作って来たお前が言うな!
私は叫びたかった。
「アド!」
私は頭を押さえた。
「えっ、許してくれる?」
こいつも完全に計算ずくだ! 許したくはなかったけれど、背に腹は代えられない。
「わかったから。許すから」
「有り難う、フラン!」
そう言うと、アドは私に抱きついてきたのだ。でも、私は抱きついてきたアドを軽く躱して食堂に入った。
クラスの人間の多くは、既に食堂の席に着いていた。
私もいつものごとく食事を山盛り取って席につく。
なぜか当然のごとくアドが私の隣に座ってくるんだけど。
私がムっとすると
「はい、これ」
私はアドに紙袋を渡された。
「何よ。これ?」
私が胡散臭そうにそれを見ると、
「ドットケーキの新作プチケーキ」
「えっ、そうなの」
「いらなかったら、他の人にあげるけど」
「いらないなんて一言も言っていないでしょ」
私は取られないようにそれをアドから隠した。
「殿下。ケーキ頂きました」
「ありがとうございます」
テオドラとルフィナがちゃっかりとお礼を言っているんだけど。
「いや、婚約者が皆にはお世話になっているからね。これはほんの感謝の気持だよ」
アドは母国でノエルらを食べ物で釣るのを覚えたみたいだ。早速クラスの面々にも私よりも前にお菓子を配っているんだけど。
「殿下、このお菓子って、ひょっとして殿下とフランを表しているんですか?」
テオドラが聞いていた。
このプチケーキ自体が私とアドが寄り添っているようにみえる。
「あっ、判った?」
嬉しそうにアドが言った。
「じゃあこの10という数字は」
「それはフランとの婚約10周年の記念のケーキなんだよ」
「あっ、そうだったんですね。フランは全然教えてくれなくて」
やたら10に拘っていたガスペルが納得していた。
「凄いですね。10年間も婚約者でいるなんて」
エドガルドが驚いている。
「まあ、子供の時からだからね。僕らはもう慣れているけれど」
なぜかとても嬉しそうにアドが言うんだけど。私はまだ完全に許していないのに・・・・
「子供の頃からの仲だから、フランの事もとても心配なんだ。もし、女たらしのこの国の王太子がフランに手を出そうとしたらすぐに教えてくれたら嬉しいな」
なんかアドが言っているんだけど、この国の王太子が私に接触してくる事って海賊対策のときだけだと思うけど。ヴァンに注意されたから、できる限り手は出さないでおこうと決めているから大丈夫だって。
私はアドにそう言ったのに、アドはなかなか納得してくれなかった。
アドが帰る時も散々心配していたけれど、アドの後ろの側近の人たちのほうが私は気になった。
なんか目に隈を拵えてとても大変そうなのだ。さっさと国に返して、通常のお仕事戻してあげないと。
帰るのが嫌だとゴネるアドを無理やり船に乗せて、一同は帰って行ったのだ。
最後にオーレリアンがアドになんか言われて頭を押さえていたけど、どうせ碌なことを言われていないはずだ。
煩いアドが帰って、やっと私はクラス対抗戦に集中できると思ったのだ。
「で、フラン、演劇、何やるか考えて来たの?」
「えっ、演劇って?」
意味がわからなくて私はメラニーに聞いていた。
「何言っているのよ。最初のホームルームで担任が、今年のクラス対抗戦は演劇だから次のホームルームまでに中身を考えて来いって言っていたじゃない」
「えっ、そうなの!」
しまった。ホームルールの時はどうやって皆と仲良くなろうか必死に考えていて、担任の話もよく聞いていなかったのだ。
そうか、演劇やるんだ。
それって私の得意な魔力や剣術は何の役にも立たないじゃない。これじゃ一学期のクラス対抗戦で魔術禁止を言い渡された時と同じだ。
そんな、せっかく今回は活躍できると思っていたのに・・・・
私はがっかりしてしまった。
私は慌てて、アドに駆けよった。
「フラン、疑って申し訳なかった」
再度アドが土下座してくれたのだ。
「いや、だから、土下座するの止めて!」
私が必死に頼む。
王太子を他国で公衆の面前で土下座させたなんて事が広まると、また、皆に白い目で見られる。フェリシー先生に知られたら2時間説教コースは確実だし、泣き虫シルビアらに知られたら、何を言われるかわかったものではなかった。
でも、既に遅かったのだ!
「ああああ! さすがフラン。自国の王太子に頭を下げさせている」
いつもは貴族用の食堂にいて、一般食堂には立ち寄りもしないシルビアが何故かここにいたのだ。
「殿下、フランにとってはいつもの事なんですのよ」
「そうです。フランは我が国でもいつも王太子殿下に頭を下げさせているのです。私、王太子殿下が不憫で」
いつもはいないグレースに次いで、ハンカチを取り出して目に当てながらピンク頭が言うんだけど、今迄散々その原因を作って来たお前が言うな!
私は叫びたかった。
「アド!」
私は頭を押さえた。
「えっ、許してくれる?」
こいつも完全に計算ずくだ! 許したくはなかったけれど、背に腹は代えられない。
「わかったから。許すから」
「有り難う、フラン!」
そう言うと、アドは私に抱きついてきたのだ。でも、私は抱きついてきたアドを軽く躱して食堂に入った。
クラスの人間の多くは、既に食堂の席に着いていた。
私もいつものごとく食事を山盛り取って席につく。
なぜか当然のごとくアドが私の隣に座ってくるんだけど。
私がムっとすると
「はい、これ」
私はアドに紙袋を渡された。
「何よ。これ?」
私が胡散臭そうにそれを見ると、
「ドットケーキの新作プチケーキ」
「えっ、そうなの」
「いらなかったら、他の人にあげるけど」
「いらないなんて一言も言っていないでしょ」
私は取られないようにそれをアドから隠した。
「殿下。ケーキ頂きました」
「ありがとうございます」
テオドラとルフィナがちゃっかりとお礼を言っているんだけど。
「いや、婚約者が皆にはお世話になっているからね。これはほんの感謝の気持だよ」
アドは母国でノエルらを食べ物で釣るのを覚えたみたいだ。早速クラスの面々にも私よりも前にお菓子を配っているんだけど。
「殿下、このお菓子って、ひょっとして殿下とフランを表しているんですか?」
テオドラが聞いていた。
このプチケーキ自体が私とアドが寄り添っているようにみえる。
「あっ、判った?」
嬉しそうにアドが言った。
「じゃあこの10という数字は」
「それはフランとの婚約10周年の記念のケーキなんだよ」
「あっ、そうだったんですね。フランは全然教えてくれなくて」
やたら10に拘っていたガスペルが納得していた。
「凄いですね。10年間も婚約者でいるなんて」
エドガルドが驚いている。
「まあ、子供の時からだからね。僕らはもう慣れているけれど」
なぜかとても嬉しそうにアドが言うんだけど。私はまだ完全に許していないのに・・・・
「子供の頃からの仲だから、フランの事もとても心配なんだ。もし、女たらしのこの国の王太子がフランに手を出そうとしたらすぐに教えてくれたら嬉しいな」
なんかアドが言っているんだけど、この国の王太子が私に接触してくる事って海賊対策のときだけだと思うけど。ヴァンに注意されたから、できる限り手は出さないでおこうと決めているから大丈夫だって。
私はアドにそう言ったのに、アドはなかなか納得してくれなかった。
アドが帰る時も散々心配していたけれど、アドの後ろの側近の人たちのほうが私は気になった。
なんか目に隈を拵えてとても大変そうなのだ。さっさと国に返して、通常のお仕事戻してあげないと。
帰るのが嫌だとゴネるアドを無理やり船に乗せて、一同は帰って行ったのだ。
最後にオーレリアンがアドになんか言われて頭を押さえていたけど、どうせ碌なことを言われていないはずだ。
煩いアドが帰って、やっと私はクラス対抗戦に集中できると思ったのだ。
「で、フラン、演劇、何やるか考えて来たの?」
「えっ、演劇って?」
意味がわからなくて私はメラニーに聞いていた。
「何言っているのよ。最初のホームルームで担任が、今年のクラス対抗戦は演劇だから次のホームルームまでに中身を考えて来いって言っていたじゃない」
「えっ、そうなの!」
しまった。ホームルールの時はどうやって皆と仲良くなろうか必死に考えていて、担任の話もよく聞いていなかったのだ。
そうか、演劇やるんだ。
それって私の得意な魔力や剣術は何の役にも立たないじゃない。これじゃ一学期のクラス対抗戦で魔術禁止を言い渡された時と同じだ。
そんな、せっかく今回は活躍できると思っていたのに・・・・
私はがっかりしてしまった。
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