悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
249 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

【書籍化発売記念】 アド視点11 フランの機嫌を取るために新作ケーキを持って行ったら古代竜に横取りされました

しおりを挟む
「うーん」
俺は悩んでいた。しかし、なかなかいい案が思いつかない。

「ちょっと殿下、仕事してくださいよ」
俺の後ろから側近のジルベールが文句を言ってきた。

しかし、今は仕事よりも、フランとのよりを戻すのが大切だ。

古代竜がフランの近くに出現したとの報に、俺は慌ててフランを助けようと飛び出したのだが、俺が駆けつけるよりも前に、フランはあっさりと古代竜をやっつけて、あろうことかペットにしてしまったのだ。

そして、夜通し駆けつけてきた俺に向かって
「で、この忙しい時に何しに来たの?」
と宣ってくれたのだ。

俺は何も言い返せなかった。

側近たちにはそら見たことかとか、フランが竜なんかに負けるわけがないとか、散々言われたんだけど。フランはどこか抜けたところがあるから心配なのだ。
「フラン様は抜けててもその無敵の魔力で負けるわけは無いのに」とか言ったオーレリアンに罰ゲームとしてトラクレール公爵の所に雑用として残してきたのは言うまでもないのだが。

祖母にまで、直ちにシュタインに戻って、仕事をしなさいと言われる始末だ。

俺は直ちにシュタインに戻って、矢のような速さで懸案事項を片付けると、王都に戻ってきたのだ。

しかし、今度は今までたまっていた第一王子としての仕事が山積みだった。
それも父が母と一緒に北の国に避暑を兼ねて外交に出てしまったので、その両親の分までこちらに回ってきたのだ。

本当にやってられない。

これではフランの所に行ってよりを戻す時間もないではないか!


「いっそ、フランソワーズ様に手伝ってもらえばどうですか? そうすれば教えるついでに仲良くなれるかもしれませんよ」
リシャールが言ってくれたが、

「いや、リシャール。それは流石にまずくないか」
「そうだよな。仕事が却って倍に増えるかもしれないし」
側近たちは好きに言ってくれるが、その事に俺は少しムッとしたが、考えるまもなく、それは十分にありえた。弟のジェドがかつて風邪の時に姉にやってもらって、却って仕事が倍に増えたと愚痴っていたのも聞いているし。

まあ、基本はフランは戦闘に特化しているのだ。
細かい文章作業は苦手だ。

「うーん、それは未来の王妃様としては良くないのでは」
ジルベールがボソリと言うが、

「もし、フランソワーズ様が王妃になられたらメラニーらが付くからその辺りは大丈夫なのでは」
「そうそう。今でもフラン様の傍には優秀な人間が多くいるし、彼女はいてくれるだけで、帝国や周辺可諸国には十二分に抑えになるからな」
リシャールらの言葉には俺はなんとも言えない顔になるが、まあ、事実そうだ。

「まあ、今後のエルグラン王国の安定のためにもぜひとも殿下にはフラン様を捕まえておいてもらわないと」
「という事で俺は出てくる」
俺はそのリシャールの言葉尻を捉えて行動に移すことにした。

「えっ」
「ちょっとアドルフ」
慌てる側近共をほって俺は執務室の外に飛び出したのだ。

やはり、困った時のハッピ堂頼みだ。

フランのために特別なお菓子を作ってもらおう。

俺はハッピ堂カフェに乗り付けると、特製のケーキを作ってもらったのだ。

これで絶対にフランの機嫌は直るはずだ。

俺は自信を持ってケーキの箱とともに王都に帰ってきたフランの公爵家のタウンハウスに駆けつけたのだ。

しかし、タウンハウスに入ろうとした時だ。俺の手からケーキの箱が瞬時に無くなったのだ。

「えっ?」
俺は何が起こったか判らなかった。

頭上を見るとなんと古代竜がケーキの箱を咥えていた。

「おい、こら、ケーキを返せ」
俺は叫んでいた。

しかし、古代竜の野郎はフンッと俺を無視してくれたのだ。

ここでオーレリアンがいれば囮として残してケーキを取り上げたのに。今はトラクレール公爵の下で日々書類仕事に追われている。
こんな事ならば連れてくれば良かった。俺は後悔した。

しかし、いつまでも見ていても仕方がない。

「この野郎!」
俺は魔術をお見舞いして竜からケーキを取り返そうとした時だ。

目の前に巨大な足が出現したのだ。

「えっ?」
俺は次の瞬間、屋敷の外に放り出されていたのだ。

なんと古代竜の前足で弾き飛ば連れたのだ!


そして、

ドボンっと

俺はフランの屋敷の傍のため池に頭から飛び込む形になってしまったのだ。
山の中の清流ではないので、池の水は緑色に濁っていた。
俺の折角の王子としての正装も台無しになってしまった。


「どうかしたのギャオギャオ?」
フランが部屋から顔を出すと、なんと古代竜は俺から取り上げたケーキの箱をフランに差し出してくれたのだ。

「えっ、これはハッピ堂の新作ケーキじゃない」
フランは目を輝かせて箱を開けてくれたのだ。
俺は目の前でフランのその俺に向けられる笑顔が見たかったのに、今は古代竜に横取りされてしまった。

「そうか、オーナーが届けてくれたのね」
フランが勝手に納得してくれるんだけど、違う。届けたのは俺だ!

しかし、古代竜にコケにされたまま、このずぶ濡れの状態で出ていく訳には俺のプライドが許さなかった。

「美味しい!」
フランは美味しそうにケーキを食べている。

そして、あろうことか
「ギャオギャオも食べる?」
「ギャオ!」
喜んで口を開けた古代竜の口の中にケーキの塊をフランは入れてやってくれたのだ。

俺と一緒に食べるはずだったケーキが……

なんと古代竜は俺の方を見下したように見下ろしてうまそうに食べだしたのだ。

この野郎!

絶対に許さん!

俺は歯ぎしりして悔しがるしかなかったのだ。

絶対にこの仇は取ってやる!

俺は心に誓った。

****************************************************

ここまで読んで頂いて有難うございます。
なかなかうまくいかないアド、最強のライバルギャオギャオの登場です。

この物語の第一巻全国の書店様、ウェブ書店様にて絶賛発売中です。
https://www.regina-books.com/lineup/detail/1056603/9532

まだの方いらっしゃいましたら是非とも手に取って読んで頂けたら嬉しいです!



『ヒロインに転生したのに悪役令嬢の侍女やらされています!神様から授かったチート能力はド派手な衣装の魔法少女にならないと使えませんでした』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/878785114

完結しました

両方ともこの下にリンク張っています。

しおりを挟む
感想 334

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。