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王女はトリポリ国王の愛人になって国を守るつもりでした

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リーナの部屋に戻ると

「すごいじゃないか。ソニア。ボフミエ魔導国の内務卿から親書をもらってくるなんて」
ルドラは現金なもので手の平返して褒めてきた。

しかし、私はすぐに許してやることなんて出来なかった。

そのルドラを睨み返す。

しかしね有頂天のルドラは全く気にしていなかった。

「リーナ様。これでトリポリの言いなりにならなくてすみますね」
「ルドラ、何言っているの。ボフミエ魔導国は今は魔王との戦いで精一杯のはずよ。こんな国の事なんてかまってくれている暇はないわ」
「えっ、いや、そんな、せっかく親書まで送ってくれているのだから、もう少ししたらなんとかなるだろう」
慌ててルドラは言った。

「そんな暇あると思うの?この国は父も亡くなったのよ。もう待ったなしよ。いつ王妃たちが暗躍するか判らないわ。幸いなことにトリポリ国王は手を貸していただけるとおっしゃっているのよ。この国をマエッセンに乗っ取られるわけには行かないわ」
リーナの言葉に私は何を言っているのかよく判らなかった。

「すいません。リーナ様。何をおっしゃっていらっしゃるんですか?判るように説明していただけませんか」
私は説明を求めた。

「えっ」
リーナが黙りこくった。

「ルドラ。どういう事?」
仕方がないのでルドラを見る。

「国王陛下が亡くなった今、カビーア王子を国王にしようとマエッセンが暗躍している。このままでは情勢は厳しい。それを打開するために、殿下はトリポリ国王の側室になられて援助を願おうとされているのだ」
下を向いて、ルドラが言った。

「はん!何を言っているの。嘘でしょ」
私は信じられなかった。

「トリポリ国王陛下は国王陛下と同じくらいの年ではないですか。それに多くの愛人を抱えていらっしゃるのも有名ですよね。そもそもルドラ、それで良いの?」
「良いわけ無いだろう。でも殿下は聞いていただけないのだ」
私の言葉に心の底から絞り出すようにルドラが言った。

「リーナ様。どういうつもりなんですか」
私はリーナの傍に座っていった。

「仕方ないじゃない。父も急になくなったのよ。それまで元気だったのに、いきなりよ。王妃に毒をもられたに違いないわ。このまま手をこまねいていても、彼らには勝てない。でも、黙ってマエッセンの言いなりになったら、今度は私がマエッセン王の側室にされてしまうのよ。それだけは嫌」
姫が言い切った。

「それは王妃様がマエッセンの襲撃で亡くなったからですか」
私が聞きたいと思っていたことを聞いた。

「えっ、リーナ、どこで聞いたの?」
「ボフミエの魔導クラスの子に聞きました」
「なんでボフミエの子が知っているの」
「そんなの知りませんよ。でも、そこにいた子らみんな知っているようでしたけど。そんな事より事実だったんですね」
私の言葉にリーナはすまなさそうに頷いた。

やはり私が見た夢は事実だったんだ。

「ソニア、今まで黙っていてごめんなさいね。私は15歳の成人の時に聞いたの。お母様が亡くなられたのは馬車の事故ではなくて、武装集団の襲撃だったって。

母は元々この北の国パルの王族の出身だった。父と婚姻する前はマエッセン王からも望まれていたけれどうちの父を選んだの。でも、マエッセン国王は人妻となった母を執拗に求めていたらしいの。その襲撃の時は里帰りしていた母を国境地帯で傭兵を使って襲ったのよ。

父が駆けつけた時には生きているものは一人もいなかったと。
私の母のためにあなたのご両親が亡くなったとはとても言えなかったの。ごめんなさいね」
リーナ様は私に頭を下げてきた。

「頭をあげて下さい。リーナ様。

でも何で国王陛下はそんな憎き国から王妃を娶られたのですか」
私は聞きたいと思ったことを聞いた。

「当時マエッセンの力は凄まじく父も即位したてで抵抗しようがなかったのよ。父としては母と白い結婚で済まそうとしたんだけれど、とある時に薬を飲まされて事に及ばれたそうよ」
「それで王子が出来たんですか。本当に国王陛下の子供なんですか」
私にはそうとは信じられなかった。マエッセン出身の王妃とついてきた貴族の子かもしれない。

「でも、父の子ではないという証拠はどこにもないわ」
悔しそうにリーナは言った。

「しかし、どこからトリポリが出てくるのですか」
「皆で色々と回りの国もあたったのだけれど、援助してくれそうな国がなくて、トリポリ国王は元々おりにふれて贈り物を色々くれていたのよ。
父が亡くなった時も慰問の使者をくれたのよ。その時に使者からこれは内密だが、もし、困っているならば助けようかと。その代わり陛下の側室になってほしいと言われたのよ」
リーナ様は淡々と話した。

「リーナ様。それはなんとも不確かな情報ではないですか。トリポリ国王の側室になってこのインダル国が守られるのですか。そもそもマエッセンがトリポリに取って代わられるだけですよね。それにそもそも、リーナ様を側室にするためだけに甘い話をしている可能性がありますけれど」
「そんな事はないわよ。現にトリポリ国王は魔王討伐のためにクロチアに軍を率いて参戦しているそうよ。そのついでに我が国に寄れるように今国境近辺まで軍を持ってきていただいているらしいわ」
「それは変ですね。私、トリポリまでそのトリポリ王国の皇太子殿下にスカイバードで送っていただいたのですけれど、そんな話は一言も出ませんでしたよ」
タールは私にはそんな話は一切しなかったし、もしそんな話がしっかりと決まっていたなら、私にもっと護衛の兵士等をつけて中に入り込むはずだ。

「えっ、あなたトリポリ王国の皇太子殿下と知り合いなの?」
リーナ様が驚いて聞いてきた。

「はい。クラスメートだったんです。今まではそんなに親しくなかったんですけれど、クリスって言う友人の恋人で、ボフミエの内務省に勤務しているオウって人にインダルまで帰りたいってお願いしたら、紹介して頂いたんです」

「すごいのね。ソニア。そんな方々とクラスメートなんて」

「これもボフミエに留学させていただいたリーナ様のおかげです。でも、トリポリの王族は軽いのではないですか。私にも行くところが無かったら自分のところに来ないかって言われたくらいですから」

「えっ、そんな事言われたの」

「はいっ、国王のところだと愛人しか無理なんだけど、殿下はまだ婚約者もいないし今なら后だとか訳のわからないことをおっしゃっていらっしゃいましたけど。

リーナ様も婚姻するならばせめて年の近い皇太子殿下にすべきです。それなら王妃になれるし共同統治という形も取れると思うんです。リーナ様ほどの美貌ならば問題ないと思いますよ。それくらいならば筆頭魔導師様も口を聞いてくいただけると思うんです」

「ソニア、ボフミエの筆頭魔導師様とお話したことあるの」
驚いてリーナ様が聞いてきた。それは驚くよね。私も話したことは信じられないけれど。

私は友達にお守りのハンカチを持っていった時にたまたま会えたこと。その後ハンカチのお礼に学園に来てくれて話したこと。今は内政干渉は出来ないけれどできるだけ力にはなると約束してくれたことを話した。

でも、リーナ様は話半分しか聞いてくれなかったみたいだけれど、途中から私は眠くなってきてあんまり覚えていなかった。1週間の慣れない旅で疲れ切っていたのだ。また、明日詳しい話はしようということになってその日はお開きになった。

でも、そんな時間的な余裕は全く無かったのだ。その日のうちに宮殿を逃げ出さなかったことを私は後悔した。

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ここまで読んで頂いてありがとうごさいます。

次は王女らを捕まえようと王妃が暗躍します。

今夜更新予定です。
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