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私の意思に関係なく各国共同でエスカール王国に鉄槌を下すことが決まってしまいました

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それからがまた大変だった。

我が方の被害は軽微だったのだが、イェルド様が
「今回の襲撃は、各国から参列された王族の方々をも狙ったものだった」
と大大的に発表したのだ。

直ちに号外が出て
『エスカールの魔の手がオースティン国王にも』
その記事には、笑って陛下に剣を向けるエスカール国王の絵が書かれていた。

『ドクラス国王めがけて放たれる爆裂魔術』
には魔術師扮したエスカール国王に攻撃されて逃げ惑うドクラス国王が描かれていたし、

『デン王国王太子エスカールの騎士に襲われる』
には騎士に扮したエスカール国王に襲われるデン国王対しの姿が書かれていた。

イェルド様は各国向けにデカデカと記事を書き上げて一斉に号外として配ったのだった。

「陛下。エスカールが陛下のお命を狙うなど言語道断ですな」
イェルド様がオースティンの国王陛下に言うんだけど、

「イェルド、いや、大国の宰相に呼び捨てはないかなイェルド殿」
陛下が言い直す。

「いえ、私などまだまだ若輩者ですから。陛下はご自由にお呼びください」
私は女王就任と同時にイェルド様を宰相に、クリストフ様を外務卿に、ロヴァミエ伯爵を内務卿にそれぞれ任命したのだ。宰相補佐には二クラスを当てたのだか、果たしてイェルド様の下で耐えられるのだろうかと思わないでもなかったが・・・・

私の筆頭補佐官には婚約者のフィル様を、補佐官にエルダとイングリッドを任命していた。

「まあ、宰相殿。エスカールが我が国に手を出してくる余裕など無いように思うが」
陛下がやんわりと反論されるが、
「いやいや、これを機に、オーステンまで支配下に置こうとしているのではありませんかな。カールソン公爵閣下」
「ほ、本当ですな。エスカールの此度の所業許すまじと私は思います」
イェルド様はクリスティーン様を取り返したいカールソン公爵に振ったのだ。カールソン公爵は賛成してくれたら、クリスティーン様に許してもらえるように力になるとかなんとか絶対にイェルド様に言われているのだ。必至にイェルド様におもねようとしているのが目で見て判った。

「左様ですわ。陛下。ここはぜひともエスカールに鉄槌を下さねばなりますまい」
オールソン公爵夫人がここぞとばかり言ってくれるんだけど。

イェルド様としてはここまで散々スカンディーナに干渉してきたエスカールを、これを機に一気に叩くつもり満々みたいだ。

でも、私としては、スカンディーナだけでも大変なのに、そこまで手を伸ばしたくないというのが本音だ。

しかし、オースティン国王が命を狙われたとの報は、イェルド様の手によってあっという間にオースティン全土に広まって、エスカールに出兵すべしという意見も沸き起こっているとのことだった。

ドクラス王国でも、デン王国でも自国の王族が命を狙われたとの報に、エスカールを共同して攻めるべきだとの論調が強くなっていると聞く。

「うーん、しかしな、公爵夫人。戦は狂気というではないか。儂だけが我慢すればよいのならば、我慢しようと思うのだが」
しかし、陛下はエスカールへの出兵には慎重な姿勢だ。

「左様でございますな。陛下。しかし、陛下のお命が狙われたという事はオースティン王国がエスカールに蔑ろにされたということです。これをただ見過ごすわけにも行きますまい。私めが領内の兵を率いてエスカールに我が国の力を見せつけたいと存じますが」
カールソン公爵がそう言った。

「左様でございますか。それはとても頼もしいですな。カールソン公爵が1万の軍勢で征伐に加わって頂けるとは」
その言葉尻を捉えてイェルド様が黒いオーラ満載で言うんだけど。

「宰相殿、私はまだ、いくら出すとは申しておりませんが」
慌ててカールソン公爵が口を挟むが、

「何をおっしゃるのですか。既にドクラス王国はじめ近隣諸国の方々には各国1000名の派遣頂けることになっておるのです。大国オースティン王国が1万以下など考えられませぬ」
「えっ、そうなのですか」
カールソン公爵は驚いた顔で各国王を見るが、イェルド様の言葉に各国の国王は顔を少し青くしている。初めて聞いたようだ。しかし、イェルド様にそう言われたら、断るのは難しそうだった。

「さよう。オースティン王国が1万の軍勢を出して頂けるのならば、我が国は千出しましょう」
「我が国もそうさせて頂きます」
「我が国も」
各国が雪崩を起こしたように賛同しだしたのだ。というか、完全にイェルド様に言わされている。オースティン国王陛下は苦い顔をしていた。
「オールソン公爵家も千の軍勢を出していただけるそうです」
「はっ、イェルド、その様な約束は・・・・」
公爵が慌てて反論しだすが、イェルド様が一言小声で話すと、急に黙ってしまった。エルダの件で絶対に何か言われたのだ。

「バーマン侯爵家も同じくらいは出していただけますよね」
「ま、まあ、公爵家がそうされるのならば」
イングリツドの父も言わされていた。
「我が家も当然出しますぞ」
「我が家も」
私のクラスメートの父達も慌てて言い出した。皆子供たちに許してもらおうと大変だった。

「左様でございますか。皆様が我が国のためにそのような事をして頂けるなど、感謝の言葉もございません。陛下もそう思われますよね」
「本当に感謝の言葉もございませんわ」
私はイェルド様に振られてそう答えるしか出来なかった。

私やオースティン国王の考えなど関係なしに、いつの間にか国際エスカール征伐軍が結成されてしまったのだった。
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