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恋人の泉にアル様と一緒に何も知らずにコイン投げをしました
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翌日はお休みだった。
今日は王都のスイーツが食べられるのだ。私は朝からご機嫌だった。母とかに連れて行ってもらったことはあるけれど、友達と行くのは初めてだし、アル様ご推薦のところなら、絶対においしいに違いない。それにものはチョコレートパフェ、私は前世はパフェには目がなかったのだ。前世のものとどれだけ違うんだろう?
私は朝からとっておきのワンピースを着て、おめかししていた。
「あれ、姉さん、今日は休みのはずなのに早いね」
起きてきた弟のエリアンが驚いて行った。
「デートするみたいよ」
母がからかって言う。
「えっ、姉さんが?」
馬鹿にしたように弟が言ってくれた。
「食い気しかない姉さんがありえないよ」
「な、何よ、その言い方。私もデートくらいすることはあるわよ」
ムッとして私は言い返した。
「姉さんが? 無い無い。どのみち、友達と甘いものでも食べに行くのが関の山だよ」
弟の言うことは、そのとおりなのだが、一応、男子もいるんだけど。もっとも私とアル様はタチアナ様とクンラートのデートの付き添いで、金魚のフンみたいなものだけど・・・・
私はムッとするとさっさと集合場所の中央広場に行くことにしたのだ。
朝10時ともなると結構人通りも多くなっていた。
中央広場は王都の中心部にあって四方から街道が集まっているところだった。その横に大きな広場があって公園になっているのだ。
ちょっと早めに出てきてしまったので、まだ誰もいないと思っていたらアル様がいらっしゃって驚いた。
「おはようございます。お早いんですね」
私が驚いて言うと、
「おはよう、シルフィも早いね。早く出てきて良かったよ」
アル様が笑って言われた。うーん、今日もアル様の笑顔は眩しい。
「この辺りに来るのは久しぶりなので、早めに出てきちゃいました」
私は正直に言う。少し方向音痴のけが私にはあるのだ。道に迷ってしまって友達を30分待たせたことがあって、それからはいつも早めに行くようにしているのだ。
そう言うと
「ああ、シルフィらしいね」
と笑われてしまった。
うーむ、私らしいってどういう意味なんだろう?
広場を見渡すとなんか男女が並んでいて、後ろを向いてコインを泉の女神像に投げているのが見えた。
「あれは何をしているんですか?」
「ああ、あれは後ろ向いてコインを投げて、女神の掌にコインが乗れば願いが叶うらしいよ」
アル様が教えてくれた。
「へええええ」
私は面白そうだと思った。
「やってみるか」
「えっ、良いんですか」
私があまりにもやりたそうにしているように見えたのだろうか。
私達は並ぶことにした。
「いやあ、シルフィは私服も可愛いね」
アル様がいきなり褒めてくれた。さすがお貴族様。貴族界では異性に出会ったらさり気なく褒めるという事を礼儀作法の授業で習ったところなのだ。
「アル様もカッコイイです。どこの商会の御曹司かと思ってしまいました」
私も褒め返した。白いシャツに茶色のスラックスを着こなしているアル様は皆の注目の的だった。隣りにいるのが私では役不足だけれど。
「じゃあ、シルフィが、まず、やってみる?」
そう言うとアル様が手を繋いできたのだった。
えっ?
私は真っ赤になっていた。
「手をつなぐ必要があるんですか?」
「だって皆繋いでいたよ」
なるほどそういうものなんだ。私はその時は何も知らなかったのだ。この泉の意味を。
運動音痴の私がやってもうまくいくわけ無いんだけど。
私はタチアナ様とクンラートがうまくいくようにとお祈りして
「えいっ」
って後ろにコインを放り投げた。
アル様に手を繋いでもらって慌てたからだろうか、珍しくコインは大きく飛んだ。
そして、ズバッと女神様の掌ではなくて頭の花輪に突き刺さってしまったのだ。
どっと見ていた皆が湧いた。
「えっ?」
「凄いな。シルフィは。女神様の頭の上に乗せるなんて普通できないよ」
アル様が褒めてくれるんだど、うーん、少しバカにされたような気がする。
「じゃあ今度は俺がやるよ」
アル様は後ろを向くと左手でコインを掴むと投げていた。
そしてそれは放物線を描くと広げた女神様の掌の上に見事に乗ったのだった。
今度はすごい歓声がわいた。
「やったよシルフィ」
「す、凄いです」
私が言うとアル様は、一瞬だけど喜びのあまり私を抱きしめたのだ。余程大切なお祈りをしていたんだろう。でも、それで私を抱きしめるのは止めてほしいんだけど。私が真っ赤になっていると周囲から口笛が飛ぶ。
何故かアル様は皆に喜んで手を振ると私の手を引いてその場を離れたのだ。
私はその泉の謂れをよく知らなかったのだ。知っていたら絶対にアル様と一緒にコイン投げなんてしなかったのに・・・・。
今日は王都のスイーツが食べられるのだ。私は朝からご機嫌だった。母とかに連れて行ってもらったことはあるけれど、友達と行くのは初めてだし、アル様ご推薦のところなら、絶対においしいに違いない。それにものはチョコレートパフェ、私は前世はパフェには目がなかったのだ。前世のものとどれだけ違うんだろう?
私は朝からとっておきのワンピースを着て、おめかししていた。
「あれ、姉さん、今日は休みのはずなのに早いね」
起きてきた弟のエリアンが驚いて行った。
「デートするみたいよ」
母がからかって言う。
「えっ、姉さんが?」
馬鹿にしたように弟が言ってくれた。
「食い気しかない姉さんがありえないよ」
「な、何よ、その言い方。私もデートくらいすることはあるわよ」
ムッとして私は言い返した。
「姉さんが? 無い無い。どのみち、友達と甘いものでも食べに行くのが関の山だよ」
弟の言うことは、そのとおりなのだが、一応、男子もいるんだけど。もっとも私とアル様はタチアナ様とクンラートのデートの付き添いで、金魚のフンみたいなものだけど・・・・
私はムッとするとさっさと集合場所の中央広場に行くことにしたのだ。
朝10時ともなると結構人通りも多くなっていた。
中央広場は王都の中心部にあって四方から街道が集まっているところだった。その横に大きな広場があって公園になっているのだ。
ちょっと早めに出てきてしまったので、まだ誰もいないと思っていたらアル様がいらっしゃって驚いた。
「おはようございます。お早いんですね」
私が驚いて言うと、
「おはよう、シルフィも早いね。早く出てきて良かったよ」
アル様が笑って言われた。うーん、今日もアル様の笑顔は眩しい。
「この辺りに来るのは久しぶりなので、早めに出てきちゃいました」
私は正直に言う。少し方向音痴のけが私にはあるのだ。道に迷ってしまって友達を30分待たせたことがあって、それからはいつも早めに行くようにしているのだ。
そう言うと
「ああ、シルフィらしいね」
と笑われてしまった。
うーむ、私らしいってどういう意味なんだろう?
広場を見渡すとなんか男女が並んでいて、後ろを向いてコインを泉の女神像に投げているのが見えた。
「あれは何をしているんですか?」
「ああ、あれは後ろ向いてコインを投げて、女神の掌にコインが乗れば願いが叶うらしいよ」
アル様が教えてくれた。
「へええええ」
私は面白そうだと思った。
「やってみるか」
「えっ、良いんですか」
私があまりにもやりたそうにしているように見えたのだろうか。
私達は並ぶことにした。
「いやあ、シルフィは私服も可愛いね」
アル様がいきなり褒めてくれた。さすがお貴族様。貴族界では異性に出会ったらさり気なく褒めるという事を礼儀作法の授業で習ったところなのだ。
「アル様もカッコイイです。どこの商会の御曹司かと思ってしまいました」
私も褒め返した。白いシャツに茶色のスラックスを着こなしているアル様は皆の注目の的だった。隣りにいるのが私では役不足だけれど。
「じゃあ、シルフィが、まず、やってみる?」
そう言うとアル様が手を繋いできたのだった。
えっ?
私は真っ赤になっていた。
「手をつなぐ必要があるんですか?」
「だって皆繋いでいたよ」
なるほどそういうものなんだ。私はその時は何も知らなかったのだ。この泉の意味を。
運動音痴の私がやってもうまくいくわけ無いんだけど。
私はタチアナ様とクンラートがうまくいくようにとお祈りして
「えいっ」
って後ろにコインを放り投げた。
アル様に手を繋いでもらって慌てたからだろうか、珍しくコインは大きく飛んだ。
そして、ズバッと女神様の掌ではなくて頭の花輪に突き刺さってしまったのだ。
どっと見ていた皆が湧いた。
「えっ?」
「凄いな。シルフィは。女神様の頭の上に乗せるなんて普通できないよ」
アル様が褒めてくれるんだど、うーん、少しバカにされたような気がする。
「じゃあ今度は俺がやるよ」
アル様は後ろを向くと左手でコインを掴むと投げていた。
そしてそれは放物線を描くと広げた女神様の掌の上に見事に乗ったのだった。
今度はすごい歓声がわいた。
「やったよシルフィ」
「す、凄いです」
私が言うとアル様は、一瞬だけど喜びのあまり私を抱きしめたのだ。余程大切なお祈りをしていたんだろう。でも、それで私を抱きしめるのは止めてほしいんだけど。私が真っ赤になっていると周囲から口笛が飛ぶ。
何故かアル様は皆に喜んで手を振ると私の手を引いてその場を離れたのだ。
私はその泉の謂れをよく知らなかったのだ。知っていたら絶対にアル様と一緒にコイン投げなんてしなかったのに・・・・。
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