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第4話 ー文化祭サイトの呪いー ②
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夕方になるころには、教室の床一面に広がっていた段ボールが、ざっくりとした壁の形をとり始めていた。
「ここ、もうちょっと暗くしたいな。天井に黒い布かけられないかな?」
「それは明日、先生に相談だなー」
恋が額の汗をタオルで拭きながら言う。窓の外は、相変わらず細かい雨が降り続いている。グラウンドは水たまりだらけだが、教室の中にはペンキの匂いと、誰かが持ってきたスナック菓子の匂いが混ざっていた。
「真白、疲れてない? ずっと座って図面描いたり、サイト見たりしてたでしょ」
「疲れてるのは、絶対に恋のほうだよ。ずっと動き回ってたし」
「まぁねー。でも、こういうの嫌いじゃないから」
恋はそう言って、窓の外をちらりと見た。
「雨、止まないね」
「うん」
「でもさ、雨音ってさ、なんかお化け屋敷っぽくない? 静かな中で、ぽつぽつって聞こえてくる感じ」
「それ、多分恋だけだと思う……」
冗談混じりに返しながらも、真白は雨音に耳を澄ます。ざあざあと一定のリズムで降る雨。その向こうに、遠く車の走る音や、部活動の掛け声がかすかに混ざっている。
(音って、雰囲気を作るんだな)
ふと、そう思った。
「ねえ、恋」
「ん?」
「お化け屋敷の中のBGM、どうする?」
「お、いいとこ突くね。やっぱり、かすかな風の音とか、どこからか聞こえる足音とか……?」
恋が一気にテンションを上げる。真白はノートPCを起動しながら、静かに続けた。
「無料の効果音サイト、前に調べたことあるから。雰囲気に合いそうな音源、探してみようか。環境音をミックスして流せば、そんなに難しくないと思う」
「マジで!? さすが真白、頼りになる~!」
恋が大げさに両手を広げて見せる。その姿に、周りのクラスメイトたちも「じゃあ照明はどうする?」「懐中電灯も何本か必要だよな」と次々にアイデアを出し始めた。
真白は、そんな賑やかな空気の中で、キーボードを叩きながら小さく息を吸う。
(こういう雰囲気、いいな。それに、技術の使い道が、“誰かを楽しませる”ための演出なら……)
モニタに並ぶ音源サイトのリストを見つめながら、真白は心の中でそっと呟いた。
(こういう使い方なら、少しくらい、胸を張ってもいいのかもしれない)
帰り道、雨は相変わらず止む気配を見せない。
校門を出たところで、恋が自分の傘をくるりと回しながら言った。
「今日はお疲れさまでした、相棒」
「相棒って……。わたし、ほとんど座ってただけだよ?」
「座ってたからこそ、全体見えてたんでしょ。真白の図面がなかったら、段ボールの壁、絶対迷路になってたって」
「それはそれでお化け屋敷っぽいけどね」
「でも、出口までたどり着けないお化け屋敷はちょっと……」
ふたりで笑い合う。
駅までの道は、朝と同じようにグレーに煙っていた。車のヘッドライトが水滴に反射して、ぼんやりと光の筋を描く。
「そういえばさ」
恋がふと思い出したように口を開く。
「文化祭のサイト、問題なさそうだった?」
「うん。ログインもできたし、クラス企画のページも編集できそうだったよ。アクセス数も表示されてて……ここ数日、ちょっと増えてるみたい」
「おー、さすが清能北。IT高校って感じするわー」
恋は感心したように目を丸くした。
「でも、あんまり“IT高校”とか言うと、なんかハードル上がらない?」
「大丈夫、大丈夫。ハードル上がった分、真白がしゅぱっとくぐってくれるから」
「……ハードルなのにくぐるっていうの、なんか違わない?」
そんな他愛もない会話をしながら、ふたりは駅へ向かって歩き続けた。
真白の胸の奥には、ほんの少しだけ、不安が残っている。
(サイトのログイン……レスポンスが、ほんの少しだけ重かった気がする。でも、文化祭時期でアクセスが増えてるなら、その程度のことなのかもしれない)
考えすぎだ、と自分に言い聞かせる。
今日は文化祭準備の初日で、恋とクラスメイトたちと一緒に過ごした、ただそれだけの日だ。クラスSNSの亡霊も、なりすまし課題も、今日の教室には影を落としていない。
(そうだよね)
真白はわずかに首を振った。
(せっかくの文化祭。何も起こらないほうが、きっと……いい)
その願いは、雨音に紛れて誰にも聞こえない。
ただ、帰宅してから寝る前に、真白は一度だけスマホで文化祭特設サイトを開いた。トップページには、さきほど教室で見たのと同じ写真が、同じテンポで切り替わっていく。
「……」
画面下の小さなカウンターに、「本日のアクセス数:128」と表示されていた。
(思ったより多いな。みんな、楽しみにしてるんだ)
そう思った瞬間、胸の中の不安は少しだけ薄れた。
雨音を背景に、真白はスマホの画面を閉じる。ベッドに潜り込み、暗闇の中で目を閉じた。
文化祭のざわめきと、雨の匂いと、恋の笑い声。
それだけを考えながら眠りに落ちていく自分に、真白はほんの少しだけ安堵を覚えた。
翌朝も、雨だった。
窓ガラスを叩く細かい雨粒の音を聞きながら、真白はスマホを枕元から手繰り寄せる。まだ制服には着替えていない。ぼんやりした頭で、昨夜と同じように文化祭特設サイトを開いた。
「……ん?」
トップページのレイアウトは、昨日と変わらない。写真が決められたテンポで切り替わっていく。ただ、一つだけ違うものが目についた。
画面下の小さな文字列。
『本日のアクセス数:003』
「三件……?」
まだ朝の七時前だ。昨日の「128」と比べれば当然少ない数字だけれど、それでも「ゼロ」ではない。真白はなんとなくその数字を見つめ、それからふっと笑った。
(実行委員とか先生たちかな。それとも、もう楽しみにしてる生徒がいるのかも)
そう思うと、少しだけ気分が明るくなる。
布団から抜け出し、カーテンを少しだけ開ける。曇天の薄い光が部屋に流れ込み、雨に濡れたベランダの床が灰色に光っていた。
(今日も、文化祭の準備。お化け屋敷のレイアウト、もう少し詳しい図作らないと)
そんなことを考えながら制服に袖を通し、鞄に昨夜印刷したレイアウト案のコピーを入れる。
スマホの画面は、まだ文化祭サイトを映している。トップページの下にある「クラス企画」リンクに、真白は指を伸ばしかけて──少し考えてから、画面を閉じた。
(クラスページは、衣装とかセットがもう少し形になってからでいい。焦らない、焦らない)
そう自分に言い聞かせて、部屋の電気を消した。
雨の中を歩いて学校へ向かう道は、もうすっかり身体に馴染んでいた。
「おはよー真白!」
いつものように坂の途中で恋と合流し、いつものように傘をぶつけ合う。恋は今日は珍しくポニーテールにしていて、揺れる髪が少しだけ元気そうに見えた。
「昨日さ、帰ってからずっと考えてたんだけどね」
「うん?」
「お化け屋敷の一番最後の部屋、どうするかって話」
恋は楽しそうに身振り手振りを交えながら語り出す。最後の部屋は“しんと静かな空間から、突然何かが飛び出してくる”系がいい、とか、怖がりな人用の“途中退場ルート”も用意しよう、とか。
真白は合いの手を入れつつ、心のどこかで別のことを考えていた。
(文化祭サイトのこと、担任に何か言っておいたほうがいいかな。共通IDはともかく、クラスごとのパスワード、紙で配るのはちょっと……)
紙に印刷されたパスワード。落としたり、写真を撮られたりしたら、そのまま第三者の手に渡ってしまう。そんな基本的なことが気になってしまう自分に、真白は苦笑する。
(でも、先生たちに「もっと安全な配り方にしてください」なんて言ったら、絶対「そこまでしなくていいよ」って笑われる)
実際、これまで何度もそういう反応をされてきた。過剰反応だと感じられるのもわかる。けれど、一度「影」を知ってしまった目には、どうしても危うさが映ってしまうのだ。
「真白? 聞いてる?」
「……ごめん、ちょっと考え事してた」
「また“セキュリティおばあちゃん”になってた?」
「誰がおばあちゃん……」
恋の命名センスに苦笑しながらも、肩の力は少し抜けた。こうやって茶化してくれるから、真白は自分の神経質さを少しだけ笑って受け入れられる。
ふたりはそんな会話を続けながら、雨の校門をくぐった。
その日のホームルームは、少しだけいつもと違う空気で始まった。
教室の前に立った担任が、「おはよう」と挨拶したあと、すぐにこう切り出したからだ。
「えー……まず最初に、文化祭特設サイトの件でお知らせ」
「え、何かあったんですか?」
前のほうの席の男子がすかさず手を挙げる。担任は軽く首をかしげた。
「まあ、“何かあった”といえばあったし、“何もない”といえば何もないんだが」
「どっちですかそれ」
クラスに小さな笑いが起きる。しかし、真白の胸の奥には、説明しづらいざわつきが広がっていた。
(文化祭サイト……)
担任は手に持ったタブレットを操作しながら、続けた。
「さっき、職員室で主任の先生から連絡があってな。朝のうちに、文化祭サイトのトップページがちょっとだけ“いたずら”されたらしい」
「いたずら?」
「って言っても、変な広告が出たとか、ウイルスに感染したとか、そういうのじゃない。単に、トップの文章の一部が書き換えられただけ、なんだが」
クラスのあちこちから、ざわざわとした声が漏れる。
「ねえそれ、誰がやったの?」
「サイトに入れるの、先生たちだけじゃないの?」
「ハッカー? ハッカー来た?」
半分は冗談、半分は本気の声。
真白の喉が、ごくりと鳴った。
(文章の一部が……書き換えられた?)
担任は「落ち着け」と手を振りつつ、スクリーンに向き直った。
「とりあえず、今はもう元に戻ってるし、原因の調査は情報科の先生たちが協力してやってる。あんまり騒ぎにするような話じゃないんだが……ほら、さっきキャプチャを見せてもらったから、見たいか?」
「見たい!」
クラスのほとんどが即答した。好奇心と、少しの恐怖が混ざったような声。
担任がプロジェクターを起動すると、スクリーンに文化祭特設サイトのトップページのスクリーンショットが映し出された。
真白は、呼吸をひとつ置いてから目を凝らす。
上部のロゴ、「清能北高校 文化祭特設サイト」。その下のメインビジュアルには、去年の文化祭の楽しげな写真。そこまでは昨日見たときと同じだ。
違うのは、その下にあるテキストだった。
『清能北高校文化祭へようこそ。光と影のフェスティバルで、皆さんをお待ちしています。』
──と、書かれているはずの場所に。
『この学校は呪われている。光は、やがてすべて影になる。』
という赤い文字が、どん、と表示されていた。
一瞬、教室が静まり返る。
「こわ……」
誰かが小さくつぶやいた。
黒っぽい背景に、血のような赤。フォントは明朝体で、その細い線がかえって不気味さを増している。テキストの下には、小さなフォントでこう付け加えられていた。
『──真実を知りたいなら、文化祭の日まで待て。』
「なにこれ、ガチじゃん」「普通にホラーなんだけど」と、あちこちから声が上がる。
恋は、隣の席で半笑いのような表情を浮かべていた。
「演出としては、かなりいい感じだと思うんだけどなぁ……」
「恋」
真白は小さくたしなめるように名前を呼んだ。その声には、自分でも気づかないくらいの緊張が混じっていた。
(文章だけ……とはいえ、これは“ちょっとしたいたずら”で済ませていいレベルじゃない)
学校の公式サイト上に、「呪われている」なんて言葉が載る。たとえ一時的であっても、それを見た人の中には不安になる人もいるはずだ。
担任は咳払いをして、説明を続けた。
「まあ、見ての通り、“呪われてる”とかなんとか、そういう文言だ。これが朝の六時半から七時過ぎくらいまで表示されてたらしい。今はもう元に戻ってる」
「誰の仕業なんですか?」
前列の女子が、心配そうに手を挙げる。
「そこがまだはっきりしない。ログは取ってあるから、情報科の先生たちで調べてる。現時点では、“悪意のある第三者による攻撃の可能性もゼロじゃないが、身内のいたずらの可能性が高い”って話だ」
「身内の……」
「つまり、学校関係者ってこと?」
クラスのざわめきが、一段階深くなる。
真白はスクリーンの隅々まで目を走らせる。フッター部分には、小さな文字で「Powered by ○○ CMS」と書かれている。
(○○……聞いたことある。海外製のオープンソースのCMS。確か、去年大きな脆弱性が発見されたやつ)
ネットの記事で読んだ記憶がよみがえった。しかしそれが“今ここで”関係あるのかどうかまでは、まだわからない。
(でも、少なくとも言えるのは──)
これは、「文化祭の演出」などではない。
「先生、これってさ、文化祭の宣伝の一環とかじゃないんですか?」
後ろのほうの席から、やや呑気な声が飛んだ。担任は苦笑する。
「そんなわけあるか。公式にこんなこと書いたら、保護者から苦情の嵐だぞ」
「じゃあやっぱり、誰かが勝手に……」
「そうだな。とにかく、今みんなに言っておきたいのは二つ」
担任は教室全体を見回しながら、指を二本立てた。
「ひとつ、変に騒ぎ立てないこと。SNSで面白がって拡散したり、無責任に“誰々がやった”とか言いふらしたりするな」
「……はい」
「もうひとつ。文化祭サイトのログインIDやパスワードを、人に教えないこと。これは当たり前の話なんだが、紙を机の上に放置するとか、写真撮ってどっかに上げるとか、そういうのは絶対ダメだ」
その言葉に、教室の何人かがバツの悪そうな顔をした。恋が真白の方に顔を寄せる。
「ね、真白の言ってた通りになったね。パスワードの管理とか、ちゃんとしないとって」
「……別に、予言したわけじゃないけど」
真白は小さくため息をつく。
(やっぱり、こういうことが起こると、“心配しすぎ”って笑われなくなる代わりに、“じゃあどうすればいいの”って視線が集まるんだよね)
実際、数人のクラスメイトが、ちらちらと真白の方を見ていた。情報に強いというイメージが、こういうときに形を持って浮かび上がる。
担任はプリントを配りながら、締めくくった。
「というわけで、あくまで文化祭準備は予定通り進める。特設サイトも、今は一時的に一般公開を止めてるが、問題がなければ明日には復旧する予定だ。何か気づいたことがあったら、すぐに先生か情報科の先生に報告するように」
「はーい」
一応の返事は教室に響いたが、誰の顔にも、さっきまでの「文化祭モード」の浮かれた表情は戻っていなかった。
ホームルームが終わると同時に、教室のあちこちで一斉にスマホの画面が光り始めた。
「見て見て、サイトのスクショ回ってきた」「うわ、ほんとにこれだったんだ」「加工じゃないの?」
休み時間の教室は、ミニSNS会議室と化す。クラスSNSやグループチャットには、すでに「呪いのメッセージ」のスクリーンショットが複数枚貼られていた。
恋も自分のスマホを開いて、眉をひそめる。
「うへぇ……こうして見ると、余計に怖いね。なんか、“本当に何かあるのかも”って気になってくる」
「恋は、こういうの信じるタイプ?」
「自分が怖い思いしない範囲では信じておくタイプ」
「それ、ずるい……」
真白は苦笑しながらも、転送されてきた画像の細部に目を凝らした。文字のにじみ方、背景のノイズ。ぱっと見た限りでは、画像加工ではなく、実際にサイトのHTMLが書き換えられているように見える。
(当たり前か。担任の撮ったキャプチャなんだし)
別のグループチャットでは、こんな話題も上がっていた。
『これって、文化祭の仕込みだったりしないのかな?』
『そうだとしたらやりすぎ。親とか先生とか、絶対怒るでしょ』
『てかさ、“真実を知りたいなら文化祭の日まで待て”って、意味深じゃない?』
『お化け屋敷の宣伝じゃね?』
その最後の一文に、数人の視線が真白と恋に向けられる。
「ねえねえ、C組のお化け屋敷の仕業ってことはないよね?」
「ないです」
真白は即答した。恋も慌てて首を振る。
「むしろ、そんなことしたら、真白にどやされるし。やるとしても、もっと平和な仕掛けにするから!」
「“むしろ”は余計……」
やや黒い冗談を飛ばしつつ、恋はすぐ真顔に戻った。
「でもさ、真白。これ、本気で誰かに文化祭ぶち壊されたら嫌だよね」
「……うん」
(文化祭そのものというより、誰かが“情報”を勝手にいじることが、嫌だ)
そう言いかけて、真白は口をつぐんだ。
自分が感じているのは、「イベントを台無しにされたくない」という感情だけではない。もっと根っこの部分で、勝手に他人の場に入り込んで好き勝手する行為そのものへ向けられた拒否感だった。
「とりあえず、落ち着いて様子を見るしかないね」
恋は、そう締めくくるように言う。
「真白、今日も放課後準備あるし、そのとき先生から追加情報聞けるかもよ?」
「……そうだね」
真白は頷いたものの、胸のざわめきは完全には収まらなかった。
「ここ、もうちょっと暗くしたいな。天井に黒い布かけられないかな?」
「それは明日、先生に相談だなー」
恋が額の汗をタオルで拭きながら言う。窓の外は、相変わらず細かい雨が降り続いている。グラウンドは水たまりだらけだが、教室の中にはペンキの匂いと、誰かが持ってきたスナック菓子の匂いが混ざっていた。
「真白、疲れてない? ずっと座って図面描いたり、サイト見たりしてたでしょ」
「疲れてるのは、絶対に恋のほうだよ。ずっと動き回ってたし」
「まぁねー。でも、こういうの嫌いじゃないから」
恋はそう言って、窓の外をちらりと見た。
「雨、止まないね」
「うん」
「でもさ、雨音ってさ、なんかお化け屋敷っぽくない? 静かな中で、ぽつぽつって聞こえてくる感じ」
「それ、多分恋だけだと思う……」
冗談混じりに返しながらも、真白は雨音に耳を澄ます。ざあざあと一定のリズムで降る雨。その向こうに、遠く車の走る音や、部活動の掛け声がかすかに混ざっている。
(音って、雰囲気を作るんだな)
ふと、そう思った。
「ねえ、恋」
「ん?」
「お化け屋敷の中のBGM、どうする?」
「お、いいとこ突くね。やっぱり、かすかな風の音とか、どこからか聞こえる足音とか……?」
恋が一気にテンションを上げる。真白はノートPCを起動しながら、静かに続けた。
「無料の効果音サイト、前に調べたことあるから。雰囲気に合いそうな音源、探してみようか。環境音をミックスして流せば、そんなに難しくないと思う」
「マジで!? さすが真白、頼りになる~!」
恋が大げさに両手を広げて見せる。その姿に、周りのクラスメイトたちも「じゃあ照明はどうする?」「懐中電灯も何本か必要だよな」と次々にアイデアを出し始めた。
真白は、そんな賑やかな空気の中で、キーボードを叩きながら小さく息を吸う。
(こういう雰囲気、いいな。それに、技術の使い道が、“誰かを楽しませる”ための演出なら……)
モニタに並ぶ音源サイトのリストを見つめながら、真白は心の中でそっと呟いた。
(こういう使い方なら、少しくらい、胸を張ってもいいのかもしれない)
帰り道、雨は相変わらず止む気配を見せない。
校門を出たところで、恋が自分の傘をくるりと回しながら言った。
「今日はお疲れさまでした、相棒」
「相棒って……。わたし、ほとんど座ってただけだよ?」
「座ってたからこそ、全体見えてたんでしょ。真白の図面がなかったら、段ボールの壁、絶対迷路になってたって」
「それはそれでお化け屋敷っぽいけどね」
「でも、出口までたどり着けないお化け屋敷はちょっと……」
ふたりで笑い合う。
駅までの道は、朝と同じようにグレーに煙っていた。車のヘッドライトが水滴に反射して、ぼんやりと光の筋を描く。
「そういえばさ」
恋がふと思い出したように口を開く。
「文化祭のサイト、問題なさそうだった?」
「うん。ログインもできたし、クラス企画のページも編集できそうだったよ。アクセス数も表示されてて……ここ数日、ちょっと増えてるみたい」
「おー、さすが清能北。IT高校って感じするわー」
恋は感心したように目を丸くした。
「でも、あんまり“IT高校”とか言うと、なんかハードル上がらない?」
「大丈夫、大丈夫。ハードル上がった分、真白がしゅぱっとくぐってくれるから」
「……ハードルなのにくぐるっていうの、なんか違わない?」
そんな他愛もない会話をしながら、ふたりは駅へ向かって歩き続けた。
真白の胸の奥には、ほんの少しだけ、不安が残っている。
(サイトのログイン……レスポンスが、ほんの少しだけ重かった気がする。でも、文化祭時期でアクセスが増えてるなら、その程度のことなのかもしれない)
考えすぎだ、と自分に言い聞かせる。
今日は文化祭準備の初日で、恋とクラスメイトたちと一緒に過ごした、ただそれだけの日だ。クラスSNSの亡霊も、なりすまし課題も、今日の教室には影を落としていない。
(そうだよね)
真白はわずかに首を振った。
(せっかくの文化祭。何も起こらないほうが、きっと……いい)
その願いは、雨音に紛れて誰にも聞こえない。
ただ、帰宅してから寝る前に、真白は一度だけスマホで文化祭特設サイトを開いた。トップページには、さきほど教室で見たのと同じ写真が、同じテンポで切り替わっていく。
「……」
画面下の小さなカウンターに、「本日のアクセス数:128」と表示されていた。
(思ったより多いな。みんな、楽しみにしてるんだ)
そう思った瞬間、胸の中の不安は少しだけ薄れた。
雨音を背景に、真白はスマホの画面を閉じる。ベッドに潜り込み、暗闇の中で目を閉じた。
文化祭のざわめきと、雨の匂いと、恋の笑い声。
それだけを考えながら眠りに落ちていく自分に、真白はほんの少しだけ安堵を覚えた。
翌朝も、雨だった。
窓ガラスを叩く細かい雨粒の音を聞きながら、真白はスマホを枕元から手繰り寄せる。まだ制服には着替えていない。ぼんやりした頭で、昨夜と同じように文化祭特設サイトを開いた。
「……ん?」
トップページのレイアウトは、昨日と変わらない。写真が決められたテンポで切り替わっていく。ただ、一つだけ違うものが目についた。
画面下の小さな文字列。
『本日のアクセス数:003』
「三件……?」
まだ朝の七時前だ。昨日の「128」と比べれば当然少ない数字だけれど、それでも「ゼロ」ではない。真白はなんとなくその数字を見つめ、それからふっと笑った。
(実行委員とか先生たちかな。それとも、もう楽しみにしてる生徒がいるのかも)
そう思うと、少しだけ気分が明るくなる。
布団から抜け出し、カーテンを少しだけ開ける。曇天の薄い光が部屋に流れ込み、雨に濡れたベランダの床が灰色に光っていた。
(今日も、文化祭の準備。お化け屋敷のレイアウト、もう少し詳しい図作らないと)
そんなことを考えながら制服に袖を通し、鞄に昨夜印刷したレイアウト案のコピーを入れる。
スマホの画面は、まだ文化祭サイトを映している。トップページの下にある「クラス企画」リンクに、真白は指を伸ばしかけて──少し考えてから、画面を閉じた。
(クラスページは、衣装とかセットがもう少し形になってからでいい。焦らない、焦らない)
そう自分に言い聞かせて、部屋の電気を消した。
雨の中を歩いて学校へ向かう道は、もうすっかり身体に馴染んでいた。
「おはよー真白!」
いつものように坂の途中で恋と合流し、いつものように傘をぶつけ合う。恋は今日は珍しくポニーテールにしていて、揺れる髪が少しだけ元気そうに見えた。
「昨日さ、帰ってからずっと考えてたんだけどね」
「うん?」
「お化け屋敷の一番最後の部屋、どうするかって話」
恋は楽しそうに身振り手振りを交えながら語り出す。最後の部屋は“しんと静かな空間から、突然何かが飛び出してくる”系がいい、とか、怖がりな人用の“途中退場ルート”も用意しよう、とか。
真白は合いの手を入れつつ、心のどこかで別のことを考えていた。
(文化祭サイトのこと、担任に何か言っておいたほうがいいかな。共通IDはともかく、クラスごとのパスワード、紙で配るのはちょっと……)
紙に印刷されたパスワード。落としたり、写真を撮られたりしたら、そのまま第三者の手に渡ってしまう。そんな基本的なことが気になってしまう自分に、真白は苦笑する。
(でも、先生たちに「もっと安全な配り方にしてください」なんて言ったら、絶対「そこまでしなくていいよ」って笑われる)
実際、これまで何度もそういう反応をされてきた。過剰反応だと感じられるのもわかる。けれど、一度「影」を知ってしまった目には、どうしても危うさが映ってしまうのだ。
「真白? 聞いてる?」
「……ごめん、ちょっと考え事してた」
「また“セキュリティおばあちゃん”になってた?」
「誰がおばあちゃん……」
恋の命名センスに苦笑しながらも、肩の力は少し抜けた。こうやって茶化してくれるから、真白は自分の神経質さを少しだけ笑って受け入れられる。
ふたりはそんな会話を続けながら、雨の校門をくぐった。
その日のホームルームは、少しだけいつもと違う空気で始まった。
教室の前に立った担任が、「おはよう」と挨拶したあと、すぐにこう切り出したからだ。
「えー……まず最初に、文化祭特設サイトの件でお知らせ」
「え、何かあったんですか?」
前のほうの席の男子がすかさず手を挙げる。担任は軽く首をかしげた。
「まあ、“何かあった”といえばあったし、“何もない”といえば何もないんだが」
「どっちですかそれ」
クラスに小さな笑いが起きる。しかし、真白の胸の奥には、説明しづらいざわつきが広がっていた。
(文化祭サイト……)
担任は手に持ったタブレットを操作しながら、続けた。
「さっき、職員室で主任の先生から連絡があってな。朝のうちに、文化祭サイトのトップページがちょっとだけ“いたずら”されたらしい」
「いたずら?」
「って言っても、変な広告が出たとか、ウイルスに感染したとか、そういうのじゃない。単に、トップの文章の一部が書き換えられただけ、なんだが」
クラスのあちこちから、ざわざわとした声が漏れる。
「ねえそれ、誰がやったの?」
「サイトに入れるの、先生たちだけじゃないの?」
「ハッカー? ハッカー来た?」
半分は冗談、半分は本気の声。
真白の喉が、ごくりと鳴った。
(文章の一部が……書き換えられた?)
担任は「落ち着け」と手を振りつつ、スクリーンに向き直った。
「とりあえず、今はもう元に戻ってるし、原因の調査は情報科の先生たちが協力してやってる。あんまり騒ぎにするような話じゃないんだが……ほら、さっきキャプチャを見せてもらったから、見たいか?」
「見たい!」
クラスのほとんどが即答した。好奇心と、少しの恐怖が混ざったような声。
担任がプロジェクターを起動すると、スクリーンに文化祭特設サイトのトップページのスクリーンショットが映し出された。
真白は、呼吸をひとつ置いてから目を凝らす。
上部のロゴ、「清能北高校 文化祭特設サイト」。その下のメインビジュアルには、去年の文化祭の楽しげな写真。そこまでは昨日見たときと同じだ。
違うのは、その下にあるテキストだった。
『清能北高校文化祭へようこそ。光と影のフェスティバルで、皆さんをお待ちしています。』
──と、書かれているはずの場所に。
『この学校は呪われている。光は、やがてすべて影になる。』
という赤い文字が、どん、と表示されていた。
一瞬、教室が静まり返る。
「こわ……」
誰かが小さくつぶやいた。
黒っぽい背景に、血のような赤。フォントは明朝体で、その細い線がかえって不気味さを増している。テキストの下には、小さなフォントでこう付け加えられていた。
『──真実を知りたいなら、文化祭の日まで待て。』
「なにこれ、ガチじゃん」「普通にホラーなんだけど」と、あちこちから声が上がる。
恋は、隣の席で半笑いのような表情を浮かべていた。
「演出としては、かなりいい感じだと思うんだけどなぁ……」
「恋」
真白は小さくたしなめるように名前を呼んだ。その声には、自分でも気づかないくらいの緊張が混じっていた。
(文章だけ……とはいえ、これは“ちょっとしたいたずら”で済ませていいレベルじゃない)
学校の公式サイト上に、「呪われている」なんて言葉が載る。たとえ一時的であっても、それを見た人の中には不安になる人もいるはずだ。
担任は咳払いをして、説明を続けた。
「まあ、見ての通り、“呪われてる”とかなんとか、そういう文言だ。これが朝の六時半から七時過ぎくらいまで表示されてたらしい。今はもう元に戻ってる」
「誰の仕業なんですか?」
前列の女子が、心配そうに手を挙げる。
「そこがまだはっきりしない。ログは取ってあるから、情報科の先生たちで調べてる。現時点では、“悪意のある第三者による攻撃の可能性もゼロじゃないが、身内のいたずらの可能性が高い”って話だ」
「身内の……」
「つまり、学校関係者ってこと?」
クラスのざわめきが、一段階深くなる。
真白はスクリーンの隅々まで目を走らせる。フッター部分には、小さな文字で「Powered by ○○ CMS」と書かれている。
(○○……聞いたことある。海外製のオープンソースのCMS。確か、去年大きな脆弱性が発見されたやつ)
ネットの記事で読んだ記憶がよみがえった。しかしそれが“今ここで”関係あるのかどうかまでは、まだわからない。
(でも、少なくとも言えるのは──)
これは、「文化祭の演出」などではない。
「先生、これってさ、文化祭の宣伝の一環とかじゃないんですか?」
後ろのほうの席から、やや呑気な声が飛んだ。担任は苦笑する。
「そんなわけあるか。公式にこんなこと書いたら、保護者から苦情の嵐だぞ」
「じゃあやっぱり、誰かが勝手に……」
「そうだな。とにかく、今みんなに言っておきたいのは二つ」
担任は教室全体を見回しながら、指を二本立てた。
「ひとつ、変に騒ぎ立てないこと。SNSで面白がって拡散したり、無責任に“誰々がやった”とか言いふらしたりするな」
「……はい」
「もうひとつ。文化祭サイトのログインIDやパスワードを、人に教えないこと。これは当たり前の話なんだが、紙を机の上に放置するとか、写真撮ってどっかに上げるとか、そういうのは絶対ダメだ」
その言葉に、教室の何人かがバツの悪そうな顔をした。恋が真白の方に顔を寄せる。
「ね、真白の言ってた通りになったね。パスワードの管理とか、ちゃんとしないとって」
「……別に、予言したわけじゃないけど」
真白は小さくため息をつく。
(やっぱり、こういうことが起こると、“心配しすぎ”って笑われなくなる代わりに、“じゃあどうすればいいの”って視線が集まるんだよね)
実際、数人のクラスメイトが、ちらちらと真白の方を見ていた。情報に強いというイメージが、こういうときに形を持って浮かび上がる。
担任はプリントを配りながら、締めくくった。
「というわけで、あくまで文化祭準備は予定通り進める。特設サイトも、今は一時的に一般公開を止めてるが、問題がなければ明日には復旧する予定だ。何か気づいたことがあったら、すぐに先生か情報科の先生に報告するように」
「はーい」
一応の返事は教室に響いたが、誰の顔にも、さっきまでの「文化祭モード」の浮かれた表情は戻っていなかった。
ホームルームが終わると同時に、教室のあちこちで一斉にスマホの画面が光り始めた。
「見て見て、サイトのスクショ回ってきた」「うわ、ほんとにこれだったんだ」「加工じゃないの?」
休み時間の教室は、ミニSNS会議室と化す。クラスSNSやグループチャットには、すでに「呪いのメッセージ」のスクリーンショットが複数枚貼られていた。
恋も自分のスマホを開いて、眉をひそめる。
「うへぇ……こうして見ると、余計に怖いね。なんか、“本当に何かあるのかも”って気になってくる」
「恋は、こういうの信じるタイプ?」
「自分が怖い思いしない範囲では信じておくタイプ」
「それ、ずるい……」
真白は苦笑しながらも、転送されてきた画像の細部に目を凝らした。文字のにじみ方、背景のノイズ。ぱっと見た限りでは、画像加工ではなく、実際にサイトのHTMLが書き換えられているように見える。
(当たり前か。担任の撮ったキャプチャなんだし)
別のグループチャットでは、こんな話題も上がっていた。
『これって、文化祭の仕込みだったりしないのかな?』
『そうだとしたらやりすぎ。親とか先生とか、絶対怒るでしょ』
『てかさ、“真実を知りたいなら文化祭の日まで待て”って、意味深じゃない?』
『お化け屋敷の宣伝じゃね?』
その最後の一文に、数人の視線が真白と恋に向けられる。
「ねえねえ、C組のお化け屋敷の仕業ってことはないよね?」
「ないです」
真白は即答した。恋も慌てて首を振る。
「むしろ、そんなことしたら、真白にどやされるし。やるとしても、もっと平和な仕掛けにするから!」
「“むしろ”は余計……」
やや黒い冗談を飛ばしつつ、恋はすぐ真顔に戻った。
「でもさ、真白。これ、本気で誰かに文化祭ぶち壊されたら嫌だよね」
「……うん」
(文化祭そのものというより、誰かが“情報”を勝手にいじることが、嫌だ)
そう言いかけて、真白は口をつぐんだ。
自分が感じているのは、「イベントを台無しにされたくない」という感情だけではない。もっと根っこの部分で、勝手に他人の場に入り込んで好き勝手する行為そのものへ向けられた拒否感だった。
「とりあえず、落ち着いて様子を見るしかないね」
恋は、そう締めくくるように言う。
「真白、今日も放課後準備あるし、そのとき先生から追加情報聞けるかもよ?」
「……そうだね」
真白は頷いたものの、胸のざわめきは完全には収まらなかった。
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