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49.閑話 まさか

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あれから3年が過ぎた。
準備は万端だ。

神官長を務めながら体を鍛え、30年ぶりに魔術の訓練も再開した。
幸い神殿には歴代の神官長、神殿長たちが残した文献が山とあった。
以前のそれらは私にとって定期的に整理をしなければならない邪魔な荷物でしかなかったが、
まじめに向き合ってみれば宝の山だった。
・・・一番欲しかった土地神の弱点に関する資料はついぞ見つけられなかったが。

昔の神官たちは国を守り民を助けるために日夜研鑽を積んでいたのだな。
今の神殿など、男娼と娼婦の斡旋場のようなものだ。
私も以前はあちら側の住人だった。だが姫が、女神のごとき私の姫が、私をあの色欲地獄から救ってくれた。

次は私が彼女を救う番だ。

10のときに親を亡くし、魔力が高く見目が良いという事で前神官長に飼わ、、引き取られて以来40年暮らしたこの神殿を出るというのに何の感慨もない。
早く彼女に会いに行こう。

そうは言っても相手は腐っても神格だ。
まずは腕試しから。
自分の実力のほどを確認し、仲間を集めたら洞窟へ向かおう。


こうしてなってみれば
とんとん拍子でAランク冒険者となった。

さすが私だ。
姫に選ばれただけのことはある。

仲間も集まった。
さてどうやってこの仲間たちを土地神退治に向かわせるかだな。姫を奪った邪神だが、邪神でも神殺しには違いない。
上手く誘導せねば。



そう思案している時だった。


「あんたが神官長から冒険者になったっていうやつか?」
いかにもといった風貌の男がいきなり声をかけてきた。

「・・・何か用か?」

「いやー俺はチクリ拠点のパーティーで剣士をしているんだがな、あんたの噂を聞いて感じ入ってしまってな。イクスクの方が魔物の質も高いし、よければ俺をあんたのパーティーに加えてもらえないかと思ってさ。会いに来たんだよ。」

「残念だがメンバーはもう集まった。これ以上は不要だ。」

「なんだよ・・・。そうか。まあダメもとだったしな。仲間たちからもどうせ戻ってくるんだろうと言われているからいいさ。空きが出たら声をかけてくれよ。チクリのギルドに来てくれれば大抵いるからよ・・・ま、なんだ。せっかく会いに来たんだし、よかったら一杯飲まねえか?奢るぜ!」
 ・
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「いやぁーほんと、あんたすげぇよ!男だよ!いや、漢だな!!」
すっかりできあがった男が馴れ馴れしく肩をバンバンと叩いてくる。
いい気はしないが、悪い気もしない。嫌味がなく称賛を素直に受け取れる。

「それにしても、元神官が神殿を追いやられたわけでもねえのに自主的に冒険者になるたぁね!時代かねぇ。」
時代など関係ないし、時の移ろいを見てきたかのようにしみじみとした雰囲気で言っているが、こいつはどう見ても20代だ。

「こないだもよぉ!すんっっげぇ美人が冒険者になっててよぉ!たまげたぜ!!ほんと綺麗なんだよ。あんなのとパーティー組めたら毎日毎晩・・・たっっまんねぇよなぁ!!
肩も腰も細っせぇのに、プルップルのおっぱいしててさぁ。村ん中にいる恰好だったから拝めなかったけど、あれでビキニアーマーなんて着てみろよ!やべえなんてもんじゃねぇぜ!!」

「・・・美人、ね。ふん。私の姫より美しい女などおらん。興味ないな。」

「お、そうそう!深窓のご令嬢だろ!?かわいそうになぁ・・・。けど、あんた意外と年いってそうだよな?その人もあんたと同年代か?ご令嬢ってわけじゃなさそうだな?」

「いや、彼女は若かった。今なら19になるかというところだな。その美しさのせいで男が苦手なようで・・・彼女が笑顔を見せたのは後にも先にも私だけでな。その愛らしい笑顔を見て、年甲斐もなく私が守らねばと思わされたよ。」

「そっか、そっか。やっぱ女の笑顔はイイよな。あの彼女も、すっげぇ綺麗な笑顔を向けてくれるんだよ。もう胸を通り越して腰にクるっつーの?」
・・・結局自分の話に戻ったな。

「こんなこと言っときながら、俺まだ女を抱いたことねぇんだよなあ。あんたは?女を知ってるか?男の尻とどれくらい違うんだ?一度知ったらやめられねぇって聞くけどよ、娼館も高けぇしなあ・・・。」

「ふん、愛した者でなければ男も女もかわらん。ただの穴だ。」

「そのお姫さんはどうだったんだ?」

「彼女と会ったとき、私は神官だったのだ。彼女の純潔を奪うことなど許されなかった・・・・ただ、私といると体が疼く、と。・・・慰めてほしい、と、懇願されて愛撫をしたことはあった。彼女の感触は今でも忘れられない。」

「っかぁああ!!まじかよ!?女にそんなこと言われるなんて男冥利に尽きるってもんだな!やっぱりあんたは漢だな!そこまで言われて最後までせずに我慢できるなんて!すげぇよ!!
一度でいいから言われてみてぇなぁ・・・それがあんな美女だったらもう、死んでもいいわ。
あぁ、あの金だかプラチナだかピンクだかの不思議な髪の中に手を入れてみてえ。下の毛もあの色なのかなぁ・・・。冒険者だし剃ってんのかなぁ?剃ってんだろうなぁ・・・どっちもアリだな・・・見てみてぇなぁ・・・。あの黒い瞳に俺のイチモツが映り込んでたら、、エロいだろうなぁ・・・」

後半はほぼ独り言だったが、はっきり聞こえたぞ!
「おいっ!!!不思議な髪色に黒の瞳の美人だと!?」

「え?あ、あぁ。光の当たり具合によってキラキラ色が変わるんだ。・・連れが言ってたが・・・なんだったか・・・あぁシャンパンゴールドだ。シャンパンゴールドって色だな・・・。瞳は、うん、黒だった。・・・なんだよ、知り合いか?いい女の知り合いが多いなぁ、うらやましいぜ」

何か言っているがもう聞こえない。




まさか彼女なのか・・・?

アーリア、君なのか!?!?
なぜ?
いや、そんなことはどうでもいい!!

確かめなければ!!!今、会いに行くからな!!!!




■■■■■■■■■■
かなり自分に都合よく変換された記憶をお持ちです。



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