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番外編
68.番外編-5.寿命 side ロイディール
しおりを挟むミニトカゲと化したヴォリーを肩に乗せて招集場所へ向かう途中だった。
野営地で飯を食って、テントに入ったらヴォリーから話を切り出された。
「今回俺が同行したのは、お前と話をしておきたかったからだ」
トカゲの姿では表情は変わらないが、つぶらな瞳が真剣だった。
「なんだ?」
「ロイド、お前はこの先一生アーリアと共にいたいと思っているんだろう?」
当たり前だ。アーリアのいない未来なんて想像しただけで絶望しそうだ。
「お前、ソイルと知り合ってどれくらい経つ?」
兄貴と会ってから?オレが12の時からだからもう20年だな。
そう言うと、ソイルはどれくらい変わったか、と問われる。
どういう意味だ?
「20年前ならあいつは当時20歳だな?」
・・・20歳?そうだったか?あの時すでに30代の風格があった気がする・・・だが、ガキから見れば20も30も一括りに『大人』だから分からない。
「そして今40のはずだ。40に見えるか?」
「なんだよヴォリー、何かあるならはっきり言ってくれ。」
そこで聞いた衝撃の事実。
亜人は寿命が長い・・・だと?
「そうだ。亜人ってのは魔人に近い。成熟するまでの成長は早く、それからの老化が遅い。
種族や性別によってその速度は変わるが、男はだいたい17.8年で人間で言いう30前後になる。女は15.6年で20前後になるな。体力的にその年代が一番脂がのっているだろう。
そこからは人も亜人も老化していく一方だが、亜人はその速度が普通の人間の半分程度になる。」
「・・・だが・・・アーリアは」
「あいつは16までの栄養状態が最低だった。16で俺のところに来た時、12.3程度にしか見えなかったが、たった3年であそこまで成熟したのはやはり亜人だからだろうな。」
「けど・・・そんな話聞いたことないぞ」
「年齢の割に老けて見える・若く見えると言われはしても寿命が違うなど普通は思いつきもせんだろ。
60、70になる頃に自分が人と違って年の取り方が遅いことに気付く、、はずだ。
だが。50年前までは亜人は使い捨てられていたからそこまで長く生きる者がいなかった。人の手を逃れた者もいるだろうが、その者たちは絶対に人前に出てこんだろう。明らかな差別を禁止したからと言って亜人を公言する者はおらんだろうしな。
人付き合いを避け定住を避け・・・だから人には知られていない。」
そんな・・・それじゃあオレは・・・
「そこで最初の質問に戻る。ロイド、お前はこの先一生アーリアと共にあるか?」
「アーリアは・・・アーリアと兄貴は、オレの倍生きるってことか?戦闘で負けたり事故にあったり、、そういうことがないままオレがジジイになって死んでいくとき、あの二人は今とあまり変わらない見た目のまま、その先100年生きるのか?」
「そうだ」
「オレは・・・・・・・・・・・」
そのまま何も言えなくなって、しばらくヴォリーは黙って様子を見ていたが 今日はもう寝ろ、と言って自分も寝床に入っていった。
テントの中で横になってみるが寝られるわけがない。
ヴォリーの言葉をひたすら反芻して朝を迎えた。
もうほとんど無意識で出立準備をして、山を歩き、小物の魔物を倒して・・・また夜になっていた。
「ヴォリー」
「なんだ?」
「オレは、それでもアーリアといたい。もしかしたら自分だけが思うように動けなくなっていく頃に後悔するかも。それに、アーリアを泣かせることになるかも。残される方が辛いから・・・。
それでも、今はあの娘のそばを離れるなんて無理だ。それくらいなら今死んだ方がましだ。」
オレにとっては一世一代の決心だったのに。
ヴォリーはカハハと笑って そうか、と言うだけだった。
「それだけ?もっとこう、慰めてくれてもよくないか?」
そう言ったが、よく考えたら、ヴォリーはもう数えきれないほど残されてきたんだ。この世界に最初に生まれた命で、この先も終わることがない。
「いや、ごめん。無神経なことを言った・・・」
「カハハ、気にするな。慰めてやってもいいが・・・あいつらと共に最期まである方法を教えてやってもいいぞ。」
「は?」
「ま、この方法はお前というよりアーリアとソイル次第だから、まだお前には教えん。あいつらに言う前にお前がどうしたいか聞いておきたかったんだ。」
「な!?」
「とりあえず、今お前にできることはない。仕事に集中してさっさと済ませろ。」
せいぜい頑張れと笑うヴォリーに、もう何も言えなかった。
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