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23.SUB DROP
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疲れのせいもあった。
ついはずみで突き放すようなことを言ってしまったのは、桐原らしからぬ失態だった。
「お前とは仮採用だって言ったろ」
ただでさえ他のDOMーーしかも完成されたDOMとの遭遇でナーバスになっていた犬飼があからさまに傷ついたのがわかった。
「前も言ったと思いますが僕は桐原さんが好きなんです。確かに僕は未成熟なDOMで、グレアも不安定かもしれないですが、桐原さんもプレイの時はよさそうにしていますよね。なんでだめなんですか?」
「それは・・・お前の気持ちは、プレイして同調して気持ちいいのを混合しているだけだ。そもそも、部下のお前とこうなったのが間違っていたのかもしれない」
淫らな夢を思い出して、ぞわっとする。
自分もそうしたいのだろうか。
自分がどうしたいのか、どうすべきなのかもはっきりしていない状態でなぜ今こんな面倒な話し合いをしなければいけなくなったのだろうと、桐原はイライラしてきた。
まさに恐れていた通りになってしまったが、深入りしてしまったというのが正しいのだろう。
「何でそんなこと言うんででも、プレイしたからといって普通SUB SPACEにそう簡単には入らないって、もう桐原さんはわかってるでしょう?それって、僕のことを信頼しているってことじゃないですか?」
俺はお前が好きじゃない、とか、お前とはもうパートナーは解消とか何か言わないといけないと思うが、なぜか言葉が引っかかって出てこない。
「・・・」
徐々に犬飼の雰囲気はいつもより昏みを増していた。
「…桐原さん、何か"言って"!」
犬飼の言葉が不意に強い力を持ち、桐原に作用した。
感情が昂りコントロールを失った犬飼の放った言葉がコマンドになり桐原の口を無理やり開かせようとしたのだ。
いつものコマンドより何倍も強いそれを、桐原はまともにくらった。
本能がそれを遂行させようとしたが、桐原は抗った。
「…っう!」
強い頭痛がしして貧血を起こした時のように目の前が暗くなる。
心臓がぎゅうっとして体がこわばり、体が急に重く冷たく沈んでゆくように感じた。
起こしたことはないのに、命令に逆らったことでのSUB DROPを起こしかけてるとわかった。
「…その力を使って言わせるな」
唸るように言うと、犬飼がはっと息をのんだ気配がした。
それで、わざとでなく無意識下の事だとわかる。
「桐原さん!!桐原さん!?」
支えようとする犬飼を押し返したものの、桐原はテーブルに手をついたものの崩れ落ちそうになる。
「大丈夫…抑制剤が棚に…あるから…もってこい」
目の前がぐにゃぐにゃと歪む中、僕のせいですみません、すみませんと言う犬飼の必死な声がする。
肩を支えられるのを感じ、身体がベッドに横たえられたのを感じた。
横になったので少し楽にはなったが、吐き気と目眩がひどく耐えていると、犬飼が薬を持ってきた気配がした。
「飲めますか?」
返事をする気力もなく虚ろになって脱力していると、犬飼の唇が重なり、水と薬が流し込まれた。
口付け未満のそれが気持ちよくて、朦朧としながらも桐原は思わず唇を追った。
「・・・少ししたら薬効いてくる。…ケアしろ」
「嫌じゃないんですか?」
犬飼は一瞬戸惑ったようだが、再度求めに応じて唇を合わせてきた。そのすき間からためらいがちに舌が忍んできて、嫌がられていないとわかると丁寧に舌がからまり、中をまさぐってくる。
快感もあったが、何よりプレイを重ねて慣れてなじんだ犬飼の熱が身体に染みて、安心感が生れる。
それだけでも少し気分がよくなる気がした。
冷たくなった指先を犬飼の大きな手が包んで温めてくれている。
このままもっと温もりが欲しい気がしたが…さ、とにかく疲れていてぐちゃぐちゃな気分だった。
そのまま眠るつもりはなかったのに、目をつぶると意識はあっけなく消失した。
目覚めると犬飼はもういなかった。
丁寧な字で書かれたメモが置いてあり、謝罪と、出社があるので帰宅することが書いてあった。
ついはずみで突き放すようなことを言ってしまったのは、桐原らしからぬ失態だった。
「お前とは仮採用だって言ったろ」
ただでさえ他のDOMーーしかも完成されたDOMとの遭遇でナーバスになっていた犬飼があからさまに傷ついたのがわかった。
「前も言ったと思いますが僕は桐原さんが好きなんです。確かに僕は未成熟なDOMで、グレアも不安定かもしれないですが、桐原さんもプレイの時はよさそうにしていますよね。なんでだめなんですか?」
「それは・・・お前の気持ちは、プレイして同調して気持ちいいのを混合しているだけだ。そもそも、部下のお前とこうなったのが間違っていたのかもしれない」
淫らな夢を思い出して、ぞわっとする。
自分もそうしたいのだろうか。
自分がどうしたいのか、どうすべきなのかもはっきりしていない状態でなぜ今こんな面倒な話し合いをしなければいけなくなったのだろうと、桐原はイライラしてきた。
まさに恐れていた通りになってしまったが、深入りしてしまったというのが正しいのだろう。
「何でそんなこと言うんででも、プレイしたからといって普通SUB SPACEにそう簡単には入らないって、もう桐原さんはわかってるでしょう?それって、僕のことを信頼しているってことじゃないですか?」
俺はお前が好きじゃない、とか、お前とはもうパートナーは解消とか何か言わないといけないと思うが、なぜか言葉が引っかかって出てこない。
「・・・」
徐々に犬飼の雰囲気はいつもより昏みを増していた。
「…桐原さん、何か"言って"!」
犬飼の言葉が不意に強い力を持ち、桐原に作用した。
感情が昂りコントロールを失った犬飼の放った言葉がコマンドになり桐原の口を無理やり開かせようとしたのだ。
いつものコマンドより何倍も強いそれを、桐原はまともにくらった。
本能がそれを遂行させようとしたが、桐原は抗った。
「…っう!」
強い頭痛がしして貧血を起こした時のように目の前が暗くなる。
心臓がぎゅうっとして体がこわばり、体が急に重く冷たく沈んでゆくように感じた。
起こしたことはないのに、命令に逆らったことでのSUB DROPを起こしかけてるとわかった。
「…その力を使って言わせるな」
唸るように言うと、犬飼がはっと息をのんだ気配がした。
それで、わざとでなく無意識下の事だとわかる。
「桐原さん!!桐原さん!?」
支えようとする犬飼を押し返したものの、桐原はテーブルに手をついたものの崩れ落ちそうになる。
「大丈夫…抑制剤が棚に…あるから…もってこい」
目の前がぐにゃぐにゃと歪む中、僕のせいですみません、すみませんと言う犬飼の必死な声がする。
肩を支えられるのを感じ、身体がベッドに横たえられたのを感じた。
横になったので少し楽にはなったが、吐き気と目眩がひどく耐えていると、犬飼が薬を持ってきた気配がした。
「飲めますか?」
返事をする気力もなく虚ろになって脱力していると、犬飼の唇が重なり、水と薬が流し込まれた。
口付け未満のそれが気持ちよくて、朦朧としながらも桐原は思わず唇を追った。
「・・・少ししたら薬効いてくる。…ケアしろ」
「嫌じゃないんですか?」
犬飼は一瞬戸惑ったようだが、再度求めに応じて唇を合わせてきた。そのすき間からためらいがちに舌が忍んできて、嫌がられていないとわかると丁寧に舌がからまり、中をまさぐってくる。
快感もあったが、何よりプレイを重ねて慣れてなじんだ犬飼の熱が身体に染みて、安心感が生れる。
それだけでも少し気分がよくなる気がした。
冷たくなった指先を犬飼の大きな手が包んで温めてくれている。
このままもっと温もりが欲しい気がしたが…さ、とにかく疲れていてぐちゃぐちゃな気分だった。
そのまま眠るつもりはなかったのに、目をつぶると意識はあっけなく消失した。
目覚めると犬飼はもういなかった。
丁寧な字で書かれたメモが置いてあり、謝罪と、出社があるので帰宅することが書いてあった。
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