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(2)回想~
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25歳の誕生日を迎えた7月27日。
恋人になった博人先生に祝ってもらうはずだった。
でも、博人先生は急遽ドイツへ行った。祖父がまだ生きてて、その祖父が危篤状態という連絡が入ったからだ。
でも、ドイツから戻ってきたのかどうか、連絡がなかったので分からなかった。
8月には福岡へ帰る予定にしてたが、誕生日の翌日には実家へ帰った。
病院で診断書を書いてもらい、それを持って。
そして、母と一緒に香港旅行をした。
その時、母の値切る姿を見ては驚いたものだ。
いやー…。
英語の達者なこと。
通訳してやろうと思ってたのに必要なかったので、私は自分のを物色して楽しんでいた。
その時、大学時代の仲間だったワンの父親と再会し、話をする機会に恵まれた。
香港では有名な人で、病院経営者でもあるミスター・王(ワン)は、自分の経営してる病院に勤務しないかと声を掛けてくれたのだ。
ミスターは、香港では病院経営者だけではなく他の仕事もしている。
そのうちの一つである、日系病院の方に、との事だった。
同席していたお母ちゃんは、チャンスが目の前にきたねと言ってくれたが、卒業してまだ一度も就職してない事を言ったら、ミスターは驚いていた。
その時、初めて他人に言った。卒業して先月まで入院してたことを。
実は・・・と、前置きしてミスターは言ってくれた。
日本にも病院を経営進出してることを教えてくれたが、東京ではなく福岡だと。
「ミスター、私は福岡出身ですよ。」
「おや、それはラッキーだね。是非、そこで働いてもらいたい。」
香港旅行は、明日の午後の便で福岡に帰る。
明後日には、教えてもらった病院に面接に行くことにした。
自宅通勤をしようと思えばできる距離に、その病院はあった。
そして、そこで5年間の契約を結んだ。
終身雇用でないのは、ただ経営者が香港流でやりたがっていたからだ。
あっという間の5年間だった。
そこで仲良くしてくれたのは、日本人ではなくドイツ人のアンソニーだった。
年齢も近いということもあり、色々と教えてくれた。
この病院に通院や入院してくる患者は、ほとんどが観光客だ。
そのせいか、多国語を喋れる医師を募集していた。
ちなみに、日本語を話せる医師はいても、彼らは日本人ではない。
でも、日本人医師は1人も居なかったのには驚いたものだ。
だから、日本人である私が入ると、日本語の機微とか些細なニュアンスとかで通じるものがある。
アンソニーも日本語は話せるが、機微とか些細な点には程遠かった。
でも、アンソニーはドイツに戻れば、『ボス』という位置が決まってるらしい。
大学卒業しての初勤務先が、福岡の家の近場の病院だ。
お母ちゃんは、どっかを借りて住みなさいと言ってきたが、却下した。
だって、家が近くにあるんだからいいじゃない。
ねー。
最初の3年間は色々と覚えるのが大変だった。
4年目になると、少しは余裕がでてきたので少しは楽になったが、気を緩めることはできない。
大学時代は、6年間ずっと仲間が動いてくれてた。
そのツケが回ってきた。
大学とは違う、誰かが動いてくれるものではない。
自分から率先して動くべきだ。
そこに勤務して4年目が終わろうとしてた矢先に、次なる契約のオファーが掛かった。
米国人と結婚した日本女性が入院してきた。
たまたま、その女性を担当したのが私だった。
入院期間が5ヶ月という長期入院だった為に見舞客も泊まり込みで来てた。
その内の1人であるアメリカ人の男性に、声を掛けられた。
「うちの病院で働かないか。」と。
でも、私にはまだ1年間も契約期間が残っているので、即答で断った。
そしたら、そのアメリカ人は…ここの病院のトップクラスの人間に話を持ちかけたみたいだ。
数日後、ボスも同席しての契約だった。
「ここでの契約が切れるまで1年、私は待つ。今度は、シンガポールで。
私の病院に来てほしい。」
それは、書面での正式契約書だった。
ボスの返事は、こうだった。
「トモは、頑張り屋だ。
虐められても自分で活路を見出してやっていく。
こっちで頑張った分、1年後にはそちらでも頑張るだろう。」
その言葉に対し、その男性は満足な顔をしていて聞いていた。
その様子にボスは続けて言ってくれる。
「ただ、彼には一生治らない怪我がある。
それだけは忘れて欲しくない。
先日、ここの経営者であるミスターからも言われたと思うが…。
頭を縫い、ドクターストップがあるので、スポーツは出来ない。」
その男性は頷くと書類を差し出してきては、これを読んでサインを、と言ってきた。
まずはボスが、次は私が読み納得してサインをした。
そして、1年経ち30歳になった8月下旬。
私は、シンガポールに飛んだ。
今度は、ここで3年間、メスを持っての医師としてやっていく。
いわゆる、オペドクターだ。
その時点では、まだ何もわからなかった。
シンガポールでの勤務が、自分にどんな影響を及ぼすのか。
自分の道が、まさかあんなになるとは・・・。
この時点では露ほども分からなかったのだ。
仲の良かったアンソニーは、私より2年早く契約が切れ、ドイツへ帰郷をしていた。
恋人になった博人先生に祝ってもらうはずだった。
でも、博人先生は急遽ドイツへ行った。祖父がまだ生きてて、その祖父が危篤状態という連絡が入ったからだ。
でも、ドイツから戻ってきたのかどうか、連絡がなかったので分からなかった。
8月には福岡へ帰る予定にしてたが、誕生日の翌日には実家へ帰った。
病院で診断書を書いてもらい、それを持って。
そして、母と一緒に香港旅行をした。
その時、母の値切る姿を見ては驚いたものだ。
いやー…。
英語の達者なこと。
通訳してやろうと思ってたのに必要なかったので、私は自分のを物色して楽しんでいた。
その時、大学時代の仲間だったワンの父親と再会し、話をする機会に恵まれた。
香港では有名な人で、病院経営者でもあるミスター・王(ワン)は、自分の経営してる病院に勤務しないかと声を掛けてくれたのだ。
ミスターは、香港では病院経営者だけではなく他の仕事もしている。
そのうちの一つである、日系病院の方に、との事だった。
同席していたお母ちゃんは、チャンスが目の前にきたねと言ってくれたが、卒業してまだ一度も就職してない事を言ったら、ミスターは驚いていた。
その時、初めて他人に言った。卒業して先月まで入院してたことを。
実は・・・と、前置きしてミスターは言ってくれた。
日本にも病院を経営進出してることを教えてくれたが、東京ではなく福岡だと。
「ミスター、私は福岡出身ですよ。」
「おや、それはラッキーだね。是非、そこで働いてもらいたい。」
香港旅行は、明日の午後の便で福岡に帰る。
明後日には、教えてもらった病院に面接に行くことにした。
自宅通勤をしようと思えばできる距離に、その病院はあった。
そして、そこで5年間の契約を結んだ。
終身雇用でないのは、ただ経営者が香港流でやりたがっていたからだ。
あっという間の5年間だった。
そこで仲良くしてくれたのは、日本人ではなくドイツ人のアンソニーだった。
年齢も近いということもあり、色々と教えてくれた。
この病院に通院や入院してくる患者は、ほとんどが観光客だ。
そのせいか、多国語を喋れる医師を募集していた。
ちなみに、日本語を話せる医師はいても、彼らは日本人ではない。
でも、日本人医師は1人も居なかったのには驚いたものだ。
だから、日本人である私が入ると、日本語の機微とか些細なニュアンスとかで通じるものがある。
アンソニーも日本語は話せるが、機微とか些細な点には程遠かった。
でも、アンソニーはドイツに戻れば、『ボス』という位置が決まってるらしい。
大学卒業しての初勤務先が、福岡の家の近場の病院だ。
お母ちゃんは、どっかを借りて住みなさいと言ってきたが、却下した。
だって、家が近くにあるんだからいいじゃない。
ねー。
最初の3年間は色々と覚えるのが大変だった。
4年目になると、少しは余裕がでてきたので少しは楽になったが、気を緩めることはできない。
大学時代は、6年間ずっと仲間が動いてくれてた。
そのツケが回ってきた。
大学とは違う、誰かが動いてくれるものではない。
自分から率先して動くべきだ。
そこに勤務して4年目が終わろうとしてた矢先に、次なる契約のオファーが掛かった。
米国人と結婚した日本女性が入院してきた。
たまたま、その女性を担当したのが私だった。
入院期間が5ヶ月という長期入院だった為に見舞客も泊まり込みで来てた。
その内の1人であるアメリカ人の男性に、声を掛けられた。
「うちの病院で働かないか。」と。
でも、私にはまだ1年間も契約期間が残っているので、即答で断った。
そしたら、そのアメリカ人は…ここの病院のトップクラスの人間に話を持ちかけたみたいだ。
数日後、ボスも同席しての契約だった。
「ここでの契約が切れるまで1年、私は待つ。今度は、シンガポールで。
私の病院に来てほしい。」
それは、書面での正式契約書だった。
ボスの返事は、こうだった。
「トモは、頑張り屋だ。
虐められても自分で活路を見出してやっていく。
こっちで頑張った分、1年後にはそちらでも頑張るだろう。」
その言葉に対し、その男性は満足な顔をしていて聞いていた。
その様子にボスは続けて言ってくれる。
「ただ、彼には一生治らない怪我がある。
それだけは忘れて欲しくない。
先日、ここの経営者であるミスターからも言われたと思うが…。
頭を縫い、ドクターストップがあるので、スポーツは出来ない。」
その男性は頷くと書類を差し出してきては、これを読んでサインを、と言ってきた。
まずはボスが、次は私が読み納得してサインをした。
そして、1年経ち30歳になった8月下旬。
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その時点では、まだ何もわからなかった。
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