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レオンハルトのキス現場を目撃してから一か月が経った。結婚式まであと二か月となった今日、私は衝撃の事実を知らされた。

「暇を出したですって……!?」

レオンハルトは顔をしかめてこう言った。
「フランケンは一人の使用人にすぎない。僕がいつクビにしようが勝手だろう」

「フランケンはあなたの側近でしょ……なにしてんの……」

今日はフランケンの姿が見えないと思ったら、なんとレオンハルトがフランケンを家から追い出していたのだった。

レオンハルトは私を非難してきた。
「エリーゼ。君はあのお茶会の日からおかしくなった。婚約者の僕と会う用事にかこつけて、フランケンといかがわしい関係を続けた」

「どこにもやましいところなんてないわ。楽しくお喋りしてただけよ。ていうか……平民とのキスを私に見せつけてきたあなたがよく言えたもんだわ!」

「……僕はたとえ君以外の女性とキスしたとしても、本気で好きになることはない……。僕の恋はいつも仮初めなんだ。でも君は、フランケンに本気だったろう?」

「……」

本気か、本気じゃないかと言われると、よくわからなかった。遊びでないことは確か。だからあくまでプラトニックに、私の心を満たすためにフランケンと接していた。でもそれは……レオンハルトが思うようなふしだらな関係とは違うはずよ。

レオンハルトは真剣な顔をしている。
「僕も今までの行いを反省しているんだ……。君には本当に悪いことをしてきたと思っている。だからあの日からずっと自重している。わかってもらえているかな……?」

レオンハルトが言うことは事実だった。最近のレオンハルトは社交場に行っても女性と恋を楽しむ様子がなく、私も自分の目で確認した。すべてを見てきたわけではないけど、周りの人たちが「レオンハルトは変わった」と噂するくらいの変貌ぶりである。


でも、レオンハルトの変化よりも……今日フランケンに会えない自分の辛さを実感してしまうのだった。


「いまさらなによ……。あなたが変わったことと、フランケンを追い出すこととは、関係ないはずでしょ」

レオンハルトは懇願するように、弱々しい態度だった。
「君にずっと言えなかったことがあるんだ。でも……今の僕になら言える。エリーゼのことを誰よりも、世界で一番愛してる。だから君も、僕だけを見てほしいんだ」

私はレオンハルトの子犬のような目にも、か細い声にも迷わなかった。
「そんな安っぽい甘い言葉で、今までのあなたを取り戻せると思ってるわけ? あなたはフランケンに嫉妬しただけの間抜けな人間よ。私の婚約者なんだったら、正々堂々と戦いなさい。まあ……貧弱なあなたには無理な話だろうけどね」

実際、レオンハルトの槍の腕はからきしダメで、一方のフランケンはめっぽう強い。レオンハルトの家に雇われていたフランケンは強さがあまり知られていないけど、国で有数の強さだと言う人もいる。それに加えて博学で優しくて性格もいいのだから……レオンハルトなんて目じゃないわ。


レオンハルトは暗い表情で肩を落とした。


……ここまで言えば、さすがにわかったでしょ。何もかも思い通りになると思ったら大間違い。私の前で堂々と浮気したことを死ぬまで後悔しなさい。

あとは、大事なことをきいておかねば。

「フランケンは――今どこにいるの?」
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