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うなだれているレオンハルトは、
「さあ……」
と言うだけで、何も教えてくれない。

私はイラッとして怒鳴った。
「負け犬になりたくないなら、顔を上げてはっきり物を言いなさい! もう一度だけきくわ……フランケンはどこ?」

レオンハルトはようやくこちらを見た。
「どこに行くかは本当に聞いていない。でも……あいつは貧民街出身だから、生まれた家に帰ったんじゃないだろうか」

レオンハルトの目に嘘はなさそうだった。
「そう……。わかったわ。教えてくれてありがとう」


(フランケン……突然暇を出されて、生活は大丈夫なのかしら。次に行くあてはあるのかしら……?)


「今日は帰るわ」


そう言って去ろうとした私を、レオンハルトは「待って」と止めた。

「エリーゼ……君に無茶な恋をさせるわけにはいかない。相手は平民だ。本気になってはいけない」

説得するような口調だった。
私が恋しているとして……その恋を邪魔する理由は何?

私も冷静に答えた。
「結婚はするから、安心しなさい。でも結婚さえするなら、あとは私の自由よ。あなただってそのつもりだったでしょう? あるべきかたちになったの」

レオンハルトは熱くなって言い返してきた。
「フランケンの幸せは考えないのか!? フランケンは立場上、君を拒みにくかっただけだ。君は……立派な貴族の令嬢なんだよ……。フランケンにはフランケンにふさわしい平民の女性がいるはず。たとえ君に好かれたところで、迷惑にしかならない!」

「うるさいわね! フランケンはしかたなく私と喋っていたって言いたいの!? 浮気を繰り返してきたあなたに何がわかるっていうのよ」

私は抵抗した。すんなりレオンハルトの言いなりになんてなるもんですか。

レオンハルトの家を出た。顔も見たくなかった。




家に帰り、すぐに腕っぷしのいい従者を二人呼んだ。貧民街に行くにはそれなりの対策をしておかないといけないからだ。

部屋の引き出しから地図を取り出し、貧民街の場所を改めて確認した。近くを通ったことはあったけど、実際に行ったことはない。

「行くわよ」

私は動きやすくてなるべく質素な洋服に着替え、従者にそう言った。

「あの……どちらまで行くんですかね?」

「貧民街よ」
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