狐に嫁入りいたします。

鈴屋埜猫

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壱 【★】

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 物音に気付いたのは、それが酷く大きな音として響いたからだ。元々、由奈ゆなの眠りが浅い方なのもあるだろうが、音に続いて聞こえてきた声に、完全に眠りから覚めてしまう。
 横になったまままぶたを押し上げると、そこにいつも寝ていた祖母の姿はなく、壁だけが見えた。だが、いつもなら真っ暗なはずなのに、どこからか月明かりが射している。

「おい、静かにしろよ」
「悪い……」

 音の発生源はどうやら玄関口のようだ。聞こえた男の声は二人のもの。その声に、由奈は聞き覚えがあるような気がしながら、上体を起こそうとした。だが。

「起きてたのか、くそっ」
「お前が大きな音を立てるからだろ……!」

 慌てた様子で上がり込んできた、二人の男に組み敷かれる。壊されたらしい玄関の扉から目の前の畑と、空に浮かんだお月様が見えた。
 月の光を背にした彼らの顔は、あまり良く見えない。だが、正体を隠すためなのか、口元を手拭いで覆っているのが見てとれた。

「こんなボロ屋に、一人でいるお前が悪いんだぞ」

 掛け布団を剥ぎ取りながら、由奈に覆い被さった男は興奮気味に鼻息を乱している。大きな声でもあげて抵抗したいが、由奈の頭の側に回ったもう一人の男が素早く口内に布を突っ込んできた。そして、両手首をまとめて紐状のもので縛られてしまう。

「おい、早くしろよ」
「分かってるよ。でも、やっと拝めるんだ。じっくり味わおうじゃないか」
「んんーーーっ!」

 目の前の男の手が着物の合わせに伸びる。由奈は悲鳴を上げかけたが、口内の布に阻まれて、くぐもった呻き声しか上がらなかった。

「……思った以上だ」

 あらわになった由奈の胸元に、男たちの喉が鳴る。
 十五歳の由奈の胸は、同年代の少女たちの中でも群を抜いている。望んだわけでもないのに、身長に行って欲しかった栄養は全て胸に持っていかれたのだ。そして、これにより同性からは忌み嫌われ、異性からは好奇の目に晒されることになった。
 中でも由奈の胸のことをからかってくるのが、夕方に訪ねてきたガキ大将。地主の息子▪権田孝一郎だった。成長するにつれ、親がいないこと以外に体のこともからかわれるので、由奈は外に出る際には必ずサラシで胸を潰すようになっていた。だが、さすがに寝る時は苦しいので、今は何も着けていない状態だった。

「お前がサラシなんぞ巻くから、作業中に時々見えるお前の乳が見れなくなってよぉ。俺らは欲求不満だったんだ」
「ったく、権田のせがれが余計なこと言わなきゃ……」
「……っ」

 ぐちぐちと言いながら、彼らの視線はたわわな由奈の両胸に注がれている。穴が開くのではないかと言うくらい見つめられて気持ちが悪いが、同時に孝一郎が由奈に言ったことは、こういう視線から守る意味があったのかもしれないとチラと思った。
 まぁ、単に彼が不快に感じていただけ、という可能性も捨てきれないが。

「おぉ……やわらけぇ……」
「本当かっ、俺も……っ」

 二人の男は片方ずつを、それぞれ鷲掴みにした。正面の男はやわやわと感触を楽しむように揉んでいたが、もう一人は完全に揉み潰すので痛いことこの上ない。
 思い思いに堪能しているらしい男たちに怒りが込み上げるが、抵抗しようにも自由なのは足くらいだ。だが、正面の男が骨盤辺りにのし掛かっているので、辛うじて動かせるのは足先だけだった。

「ちゃんと気持ち良くしてやるからな……」

 そう言った正面の男が覆面を外す。だが、その顔を由奈が確認する前に、覆い被さってきた男は彼女の胸に食らい付いた。

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