年下クンと始める初恋

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　だが、数歩も行かないうちに、葉一はバランスを崩した。振り返ると、ジャケットの袖を茉歩が掴んでいるのが見えた。

「茉歩姉？　どうし……」
「楽しかったよ、デート」

　一瞬、何を言われたのか分からなくなる。だが、今にも泣きそうな茉歩の顔を見て、葉一は息を飲んだ。

「春江おばあちゃんにも会わせてくれて……水族館も久しぶりで楽しくて……でも、あの人が……綺麗で、私なんかと違って大人っぽいあの人が、葉ちゃんとお似合いに見えて……すごく、自分が惨めになった」

　胸を押さえ、言葉を紡ぐ茉歩の顔が歪む。涙を必死に堪えている彼女を、葉一は今すぐ抱きしめたい衝動に駆られた。だが、まだ彼女の話は続いている。その話の腰を折ってはいけない気がして、伸ばしかけた手をぎゅっと握った。

「葉ちゃんには、何あの人みたいな女の子がお似合いだと思う……でも……一つだけ聞かせて」
「……何？」

　喉がカラカラだ。何を聞かれるのか、と葉一は身構える。
　茉歩は深く息を吸うと、伏せていた目を上げた。そして真っ直ぐに葉一を見上げた。