逃げた先に、運命

夢鴉

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五章 アルファの家系

32-3 頼りになる幼馴染②

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「匠海……」
「アルファだからとか、幻滅されるからとか、とりあえず置いておけ。まずはお前が身軽にならないと、どこにも進めないだろ」
「……そう、だよな」

 そうだ。
 俺たちはバース性に囚われた判断をしない。そう約束したんだ。

(差がついたから、なんだ)
 その差を埋めるために、使えるものは使わないと駄目だろう。

 俺は顔を上げる。匠海は「ようやくお前らしくなったな」と微笑んだ。
 少し恥ずかしかったが……まあいい。
 その分、お前の知識をもらうぞ。

「匠海。実はな――」

 俺は祖父の出した条件の話をした。
 匠海は最初穏やかに聞いてくれたものの、最後には眉間に皺をこれでもかと寄せていく。
 話終わった後、匠海は心底嫌そうな顔で「クソだな」と呟いた。

「なんだそれ、無理難題にもほどがあるだろ」
「俺もそう思った。でも、おじい様の言うこともわからなくないんだ」
「だからって百五十パーセント超えは……」
「それは同感」

 でも、言っても仕方ない。
 あの人の中には『アルファ=完全無欠』という式が成り立っているのだから。

「それより、何か思いつくことないか? 俺一人じゃ、出せる案もそろそろ限界で。明日にはレストラン側と施策の打ち合わせをしないと、クリスマスまで間に合わない」
「クリスマスまでって、あと一週間ちょっとじゃないか」
「ああ。だから、そんなに大規模なことはできない」

 出来るのは精々、乗り遅れた情報戦を強引に掴みに行くことと、話題性だ。
 クリスマスだけじゃない。クリスマスから年末年始、もしくは冬の期間全てで出来る催しで考えるしかないのだ。
(でも、季節色が強い日本で、イベント事に乗っからない店は少ない)
 それでは目標の売り上げを出すことは叶わないだろう。

「勝負はクリスマス期間の二日間だけってことか……」
「ああ。だから、知恵を貸してほしい」

 他人の知恵を借りるなんて、アルファ至上主義の祖父が聞いたら怒り狂いそうだけど。
(アルファ同士なら、まだ)
 認められずとも、贖罪にはなるんじゃなかろうか。

「……はあ、仕方ないな。お前がそこまで言うなら、協力してやるよ」
「! 本当か!」
「ああ。ただし、報酬はちゃんと請求するからな」

 にやりと微笑む匠海。俺は「もちろん」と頷いた。

 俺は匠海の分のコーヒーを注文し、歴代のイベントを再びパソコンの画面に映し出す。
 匠海はああでもない、こうでもないと、一緒に施策を考えてくれた。

 そしていくつかの案を出した時にはもう、日は沈み切っていた。
 店を後にして、帰路を歩く。月が輝く空を見上げながら、俺は今日の夕食に思いを馳せた。
 足元の残った雪がしゃくりと音を立てる。

(そういえば、匠海と居る時はストーカーの目、感じなかったな)
 気にならないくらい考え事に没頭していたのか。
 それとも、ストーカーは匠海が苦手なのか。

「後者なら都合がいいんだけど……」

 まあ、かといって四六時中一緒に居るわけにもいかない。
 俺は纏わりつく視線を振り切る為、街中を走り出した。

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