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狂乱
鎮圧(エロ度☆☆☆☆☆)
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「兄上~!!」「秀頼!」「ちちうえ!」
裏内の中央の俺の屋敷に入ると、母上やお千、お梅が抱きついてくる。
周りにいる側室達も同様にしてくれてもいいのだが、敢えて抑えているようだ。ただ、俺の顔を見たことで、一つ安堵の息をついている。
しかし、お駒だけは・・・・・・。
俺の視線に気づき、母上がお千を、お梅は桜が手を引いて離してくれる。お梅は久しぶりの母親の登場に歓喜し、キャーキャーと騒いでいる。桜も娘の無事を確かめるようにギュッと抱きしめ離さない。
その様子を横目に見ながら、俺は一人お駒に近づいて行く。
「お駒、義光は立派な最期だった」
「・・・・・・ありがとうございます」
一瞬、その言葉の意味にビクリと肩を震わせ、それでも胸に抱き眠ったままの赤ん坊を起こさぬようにしながら礼を言ってくる。さんざん泣いたのであろうその目はウサギの様に真っ赤でいたたまれない。
「その子が白寿か?」
「はい。・・・・・・抱いてやってください。父が、守ってくれた子です」
「ああ」
お駒に差し出され、自分の長男を抱きしめる。小さな、小さな命。生きているのが不思議なくらいに・・・・・・。
「お駒、少し早いがこの子の元服した際の名は秀光と決めた。義光の様な槍働きはいらんが、同様の素晴らしい男と成れるように育ててくれ」
「はい。ありがとうございます」
その言葉に再びお駒が泣き出してしまう。そして、母の泣き声に反応したのか、ふと気づくと白寿が目を覚まし、不思議そうに俺の顔を見つめている。
「お、目覚めたな俺がお前の父――」
「ぅ、び、びぇえっぇえぇえええ!」
と、突然俺の腕の中で泣き出してしまう。
「ちょっ、おいおい」
「あ~、義母上様、兄上が白寿を泣かせました」
「あらあら天下人があんなに慌てて」
母上とお千がこちらを見て笑いだす。けど、俺も割と困っているので何とかしてほしい。
「ちょ、どうすればいいのさ!?」
「秀頼様、大丈夫です。こうやってゆっくり揺すってやってください」
お梅がいるのに、何故抱き方も知らないのかと思うかもしれない。だが、あの頃の俺はたかだか9歳。自分でも力がないことが分かっていたから、敢えて抱いたりしなかったのだ。そんなお梅ももう6歳だが・・・・・・。
「ちょ、お駒。何か生温かい」
「あ・・・・・・。す、すいませぬ白寿が粗相を・・・・・・」
「う、まぁ、赤子だし仕方ないけど。ああ、もう! まだ一応合戦中なのにほんわかしちゃったじゃないか!」
念のために言えば、天守は未だ前田軍が占拠している。
まったく、これでは締まらないではないか。だが、一連の騒ぎの中で思わずといった感じでお駒も笑っている。白寿には感謝しなきゃな、なんて思ってしまう。
しかし、母上は先程の俺の言葉を拾い、心配そうに見つめてくる。
「秀頼、まだ戦に向かうのですか?」
「・・・・・・ええ。どうやら投降してきている者も多いようですが、投降しても減刑など認めません。必ず苦しめたうえで殺します。関わった者全て一族郎党に至るまで皆殺しに――
「兄上!」
突然、お千に呼び掛けられて、顔が憤怒の色に染まっていることに気付き、慌てて我に戻る。足元にまで近寄って来ていたお千にしゃがみ込んで目線を合わせる。
「ど、どうしたお千?」
「怖い顔してる! そんなのメッ!」
そう言って怒られてしまう。お千だってまだ10歳。その娘が俺の暗い考えをそう言って止めようとしてくる。まるで――
「まるで、秀次殿の時の貴方のようですね」
「・・・・・・お千には敵いません。私は自分で言葉に出来なかった」
「何を言っています。あの時あなたは3つだったのですよ。でも、私の気持ちもお千と同じです。貴方には恐怖で縛るのではなく、慈愛で日の本を統べてほしい」
「綺麗事ばかりではありません」
「もちろん分かっています」
「私の指示でもう何万人も殺しました」
「ええ、そうですね」
ふわりと母上に抱きしめられる。しゃがんでいたから、ちょうど胸に頭が収まる。
「もう、私の方が大きいのに」
「幾ら大きくなろうと、私はお前の母です」
幼い頃から変わらぬ母上の香りに心癒されてしまう。暗い感情が少しずつ消えていくのを感じる。
・・・・・・かつて、義母上が言っていた。自分に戻れる場所を大切にしなさい、と。いっそ領民全てを殺しつくしてやろうとまで考えていた自分が恥ずかしくなる。しかし、罪には罰を、見せしめも必要なのは事実だ。
「母上、ケリを付けてきます」
「・・・・・・ええ。無理はいけませんよ?」
「もちろんです」
無理などするつもりはなければ、その必要もない。既に彼我の戦力差は六十倍。あとは天守に居座る茂勝本人を捕まえ、黒幕を探り、乱に携わった者全ての腹を切らせる。ただし、茂勝の一族の男は全員腹を切らせ、女は全て尼にする。それが俺の最大限の譲歩。
これでもこの時代にしてはかなり優しい判断だろう。三成あたりはまた渋い顔をするはずだ。
「しかし、今回の黒幕は一体誰だ?」
裏内の中央の俺の屋敷に入ると、母上やお千、お梅が抱きついてくる。
周りにいる側室達も同様にしてくれてもいいのだが、敢えて抑えているようだ。ただ、俺の顔を見たことで、一つ安堵の息をついている。
しかし、お駒だけは・・・・・・。
俺の視線に気づき、母上がお千を、お梅は桜が手を引いて離してくれる。お梅は久しぶりの母親の登場に歓喜し、キャーキャーと騒いでいる。桜も娘の無事を確かめるようにギュッと抱きしめ離さない。
その様子を横目に見ながら、俺は一人お駒に近づいて行く。
「お駒、義光は立派な最期だった」
「・・・・・・ありがとうございます」
一瞬、その言葉の意味にビクリと肩を震わせ、それでも胸に抱き眠ったままの赤ん坊を起こさぬようにしながら礼を言ってくる。さんざん泣いたのであろうその目はウサギの様に真っ赤でいたたまれない。
「その子が白寿か?」
「はい。・・・・・・抱いてやってください。父が、守ってくれた子です」
「ああ」
お駒に差し出され、自分の長男を抱きしめる。小さな、小さな命。生きているのが不思議なくらいに・・・・・・。
「お駒、少し早いがこの子の元服した際の名は秀光と決めた。義光の様な槍働きはいらんが、同様の素晴らしい男と成れるように育ててくれ」
「はい。ありがとうございます」
その言葉に再びお駒が泣き出してしまう。そして、母の泣き声に反応したのか、ふと気づくと白寿が目を覚まし、不思議そうに俺の顔を見つめている。
「お、目覚めたな俺がお前の父――」
「ぅ、び、びぇえっぇえぇえええ!」
と、突然俺の腕の中で泣き出してしまう。
「ちょっ、おいおい」
「あ~、義母上様、兄上が白寿を泣かせました」
「あらあら天下人があんなに慌てて」
母上とお千がこちらを見て笑いだす。けど、俺も割と困っているので何とかしてほしい。
「ちょ、どうすればいいのさ!?」
「秀頼様、大丈夫です。こうやってゆっくり揺すってやってください」
お梅がいるのに、何故抱き方も知らないのかと思うかもしれない。だが、あの頃の俺はたかだか9歳。自分でも力がないことが分かっていたから、敢えて抱いたりしなかったのだ。そんなお梅ももう6歳だが・・・・・・。
「ちょ、お駒。何か生温かい」
「あ・・・・・・。す、すいませぬ白寿が粗相を・・・・・・」
「う、まぁ、赤子だし仕方ないけど。ああ、もう! まだ一応合戦中なのにほんわかしちゃったじゃないか!」
念のために言えば、天守は未だ前田軍が占拠している。
まったく、これでは締まらないではないか。だが、一連の騒ぎの中で思わずといった感じでお駒も笑っている。白寿には感謝しなきゃな、なんて思ってしまう。
しかし、母上は先程の俺の言葉を拾い、心配そうに見つめてくる。
「秀頼、まだ戦に向かうのですか?」
「・・・・・・ええ。どうやら投降してきている者も多いようですが、投降しても減刑など認めません。必ず苦しめたうえで殺します。関わった者全て一族郎党に至るまで皆殺しに――
「兄上!」
突然、お千に呼び掛けられて、顔が憤怒の色に染まっていることに気付き、慌てて我に戻る。足元にまで近寄って来ていたお千にしゃがみ込んで目線を合わせる。
「ど、どうしたお千?」
「怖い顔してる! そんなのメッ!」
そう言って怒られてしまう。お千だってまだ10歳。その娘が俺の暗い考えをそう言って止めようとしてくる。まるで――
「まるで、秀次殿の時の貴方のようですね」
「・・・・・・お千には敵いません。私は自分で言葉に出来なかった」
「何を言っています。あの時あなたは3つだったのですよ。でも、私の気持ちもお千と同じです。貴方には恐怖で縛るのではなく、慈愛で日の本を統べてほしい」
「綺麗事ばかりではありません」
「もちろん分かっています」
「私の指示でもう何万人も殺しました」
「ええ、そうですね」
ふわりと母上に抱きしめられる。しゃがんでいたから、ちょうど胸に頭が収まる。
「もう、私の方が大きいのに」
「幾ら大きくなろうと、私はお前の母です」
幼い頃から変わらぬ母上の香りに心癒されてしまう。暗い感情が少しずつ消えていくのを感じる。
・・・・・・かつて、義母上が言っていた。自分に戻れる場所を大切にしなさい、と。いっそ領民全てを殺しつくしてやろうとまで考えていた自分が恥ずかしくなる。しかし、罪には罰を、見せしめも必要なのは事実だ。
「母上、ケリを付けてきます」
「・・・・・・ええ。無理はいけませんよ?」
「もちろんです」
無理などするつもりはなければ、その必要もない。既に彼我の戦力差は六十倍。あとは天守に居座る茂勝本人を捕まえ、黒幕を探り、乱に携わった者全ての腹を切らせる。ただし、茂勝の一族の男は全員腹を切らせ、女は全て尼にする。それが俺の最大限の譲歩。
これでもこの時代にしてはかなり優しい判断だろう。三成あたりはまた渋い顔をするはずだ。
「しかし、今回の黒幕は一体誰だ?」
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