全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

77.お前は?

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 こうして僕らは街から離れて、指示された砦を目指して森に向かった。

 これからコーインクルリズ様に会うんだと思うとますます緊張してきて不安になりそう。持ってきた会議の資料をぎゅっと握り締めてしまう。

 すると、隣を歩く殿下が元気付けてくれた。

「落ち着け! トルフィレ!!」
「で、でも…………」
「向こうがこちらをどう思っていようが、俺たちはコーインクルリズを助けて会議を開くんだ!! せっかく練習したんだろう!」
「は、はい!!」

 僕が答えると、アンソルラ様も「頑張ろうな!」って言ってくれる。

 絶対にコーインクルリズ様に会う!!

「殿下……この森を越えていったあたりが、指定された砦ですよね?」
「ああ…………近くに魔物の気配はないな……」

 話しながら歩いていたら、先頭を歩いていた猫の姿のフーウォトッグ様が立ち止まって僕らに振り向いた。

「お静かに……」
「ど、どうし……」

 言いかけて、気づいた。僕らが向かう先の草木が揺れている。誰かが、こっちを見ているんだ。

 慌てて僕は、書類をしまった。

「……て、敵……でしょうか……」

 殿下もすでに気づいていたらしく、鋭い視線でそちらを睨んで言う。

「あまり……敵意があるようには思えないな…………トルフィレ。俺の後ろにいろ」
「そんなのダメです! 殿下のことは、僕がお守りします!!」

 言って、僕は短剣を抜いた。

 敵……とは限らないけど……何者なんだろう……

 構えるていると、草むらから男たちが出てくる。数人の男たちで、みんな、冒険者のようななりをしていた。

 アンソルラ様とフーウォトッグ様も構える。

 けれど、飛び出して来た人は、僕らに駆け寄って来て言った。

「……おいっっ!! 大丈夫か!?」
「……え?」
「道に迷ったんじゃないのか? その格好……冒険者か何かか?」
「へ!??」

 あ、そうか……そう見えるのか……

 深い森を抜けてコーインクルリズ様のところに行くと言うことで、僕は以前、パーロルットさんにもらった冒険者風の装備に着替えていて、殿下も似たような格好をしている。

 アンソルラ様は小さな竜の姿で、背中にたくさんパンを入れたリュックを背負っていて、先頭を歩くフーウォトッグ様は猫の姿。

 あんまり領主の一行には見えないかもしれない。

「え、えっと……僕らは……」

 言いかけた僕の口を、背後から殿下が塞ぐ。

「ああ。そうだな……ついさっき、魔物に襲われたんだ。逃げていたら、こんなところにたどり着いていた」

 え? え?? なんでそんなことを言うんだ??

 不思議に思ったけど、よく考えてみれば、まだ相手が誰なのか分からないんだ。森を警備している魔法使いには見えないし、護衛を連れた商人のようにも見えない。

 けれど、男たちは僕らに敵意があるわけではないみたい。殿下が言ったことを聞いて、先頭にいた男が、「そうか……やっぱりな」と言って頷いていた。

「この辺りは魔物が多い。回復するなら、魔物から身を隠すのに、いい場所がある。来ないか?」
「え…………え、え……えーっと…………あ、あなた方は……?」
「俺はテアティリル。冒険者みたいなもんだ。お前らは……兄弟か?」
「え…………」

 き、兄弟……そうか。そういうふうに見えるのか…………婚約者……には見えないよな……

 すると、殿下が僕を抱き寄せていった。

「俺は傭兵のロウィス。こっちは魔物退治のバイトのトル。そして、兄弟じゃない。トルは俺の婚約者だ」
「え……」

 びっくりして見上げたら、彼は僕に微笑んでいた。

 な、なんだか、急に恥ずかしい…………こ、婚約者って、言ってもらえた……

 テアティリルさんは、少し驚いたみたい。

「そ、そっか……悪かったな…………」
「お前たちの方こそ、本当に冒険者か?」

 殿下に聞かれて、テアティリルさんの目が鋭くなる。

「……そうは見えないか?」
「そうだな。魔物退治を目的とした一行にしては、装備が足りていないようだし、護衛をしているようにも、素材が目当てのようにも見えない。どういった依頼でここにいる? 依頼の達成に手間取っているなら、手伝ってやってもいいぞ」

 すると、テアティリルさんは首を横に振った。

「……いいや……俺たちはそんなんじゃない…………この辺りに住み着いているんだ」
「森にか?」
「ああ……だから、あまり不用意にこの辺りを歩かれると、魔物が寄ってくる可能性があるだろう? だから正直、お前たちには早く出ていってほしい……やけに親切で、警戒したか? 俺たちは自分達の縄張りを守りたいだけだ」
「なるほどな…………」
「そう言うお前たちの方こそ、どんな依頼でここにいるんだ?」
「俺たちは、向こうの砦に荷物を運ぶ途中だ」
「砦…………?」
「ああ……回復するなら、いい場所があるといったな? 案内を頼めるか?」

 殿下に微笑んで言われて、彼は少し戸惑ったみたい。だけど、すぐに微笑んで「もちろんだ」って言った。
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