虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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5.あなたには負けません!

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 ここから森を抜けて、いくつかの街を超えたところに、岩山ばかりの荒れた地がある。そこでは魔物が増え始めていて、かなり困っているらしい。そこは、領地自体はひどく荒れているが、強い魔法を生み出す素材に溢れた、大切な土地だ。

 そこの管理は、強力な魔法を操る第四王子、クノレジ殿下に任されているが、最近魔物が増えたので増援が欲しいと、王城に要請が来たらしい。

 しかし、魔物が増えているのはどこも同じで、しかも、そこは強力な魔物が多いことで有名。誰も行きたがらない。

 困った王家は、魔物と戦う力を持った魔法使いのいる警備隊に話を持って来た。誰か、荒野の討伐隊に参加できる魔法使いはいないかと。

 だけど、誰も志願しない。

 城の魔法使い部隊の隊長も交えた会議の席で、手をあげたのは僕一人。誰も行きたがらない危険な地への派遣に、僕が手をあげて、みんな驚いているようだった。

 けれど僕は、一度は王族を陥れようとしたと疑われた身。そんなものを行かせるわけにはいかないと、反対意見も出た。

 しかし、当のクレノジ殿下から、レクレットで構わないと、許可が出たらしい。

 クレノジ殿下は、ライイーレ失脚の際に起こったことの真相を知っている。その上で、使える魔法使いならなんでもいいからよこせと言ったらしい。僕なら、たとえ魔物に食いちぎられて死んでも構わないし、向こうも、便利に使える魔法使いが欲しいんだ。

 僕は、飛び上がって喜んだ。ここから出て行けるって。

 そこで魔物を退治して名を上げれば、少なくとも、今よりマシな生活が手に入るかもしれない。
 魔物討伐に欠かせない魔法使いになれば、淫魔だ反逆者だと罵られ、搾取されることもなくなるはずだ。

 そう思って討伐隊に志願したのに、何で今さら王族が出てきて僕の邪魔をするんだ……!

「あ、あの…………殿下は王族でしょう? そんなところに、なぜ行こうとするのです? ぼ、僕が行きますっ……!」
「……民を守るのは王家の役目だ」
「い、今更っ……そんなっ……!! で、殿下がそんな危険なところへ行くとなれば、誰もが反対するのでは…………」
「確かにされたが、貴族たちは説得した。あそこへは俺が行く」
「そんな……で、では、そちらにはパーティを率いて行かれるのですか?」
「そんなものいらん。護衛を一人押しつけられたが、あそこへ行くのは、俺一人で十分だ」
「はっ……!?」

 ご、護衛一人だけ連れて、王子が魔物退治に向かうのか!? 何の冗談だよ!! そんなに腕に自信があるのか!??

 だが、自信があったとしても、そんなの困る! 討伐隊に加わるのは僕だ!!

「あ、あのっ……っ!! 王家の方が行かなくても、僕が行きます!! き、危険ですしっ……!! 僕が行った方がいいに決まっています!」
「俺が行く。レクレット、貴様は必要ない」
「そんな……」
「そう言うつもりだったが……」

 ロヴァウク殿下は、ニヤリと笑って、先ほど魔物が出た窓の方に振り向く。

「貴様の魔物退治の腕は、なかなかのものだ」
「……」
「それに、自ら志願した貴様の気持ちも、王族としては、無下にはできない。クレノジは、荒野の城までくれば、使えそうな方を討伐隊に参加させると話している」
「…………使えそうな方……? そ、それって……ぼ、僕でもいいってことですか……?」
「ああ。あの男はいつもそうだ。戦えるものがいなくてずいぶんと困っているのだろう」
「だったら、僕が行きますっ……!」
「……お前に、向こうに辿り着くことができるのか?」
「で、できますっ……!! お、王子殿下こそ……危険なことは、お分かりになるはず……でしたらっ……!」

 僕が言いかけると、警備隊長が「黙れ!」と言って、僕を怒鳴りつける。

「レクレット!! 貴様、どういうつもりだ……! 王子殿下に無礼な口をっ……! 殿下はこうして、民のために危険な魔物討伐に向かうとおっしゃっているのだぞ!」
「警備隊長……し、し、しかしっ……殿下に何かあったら……どうなさるおつもりですか……?」
「……」

 隊長は黙ってしまう。当然だ。彼だって、どっちつかずの対応をしているのは、本心からは賛成できないからだ。

 できるはずがない。何かあれば、今ここで反対しなかった彼のせいになるかも知れないんだから。

 ここの警備隊のみんなだって、危険極まりない任務に、僕が自ら志願して幸運だったと、そう思っていたはずだ。それなのにっ……! 邪魔なんだよ! 王城に帰れ! って言いたい!!

 けれど言えない僕に、ロヴァウク殿下は振り向いて、ニヤリと笑う。

「貴様も来ればいい」
「……え……」
「クレノジは、荒野の城に辿り着くことを、討伐隊に参加させる条件にしている。俺たちは明日出発する。貴様も行けばいい」
「…………あの……僕が先についたら、討伐隊に参加するのは僕ですか?」

 思いっきり無礼な質問をする僕を、警備隊長が声を上げて制止するが、ロヴァウク殿下は「貴様は黙っていろ」と言って警備隊長を黙らせる。

 ロヴァウク殿下は嬉しそうに笑って言った。

「俺に喧嘩を売るとは、面白いじゃないか……捨て人族」
「す、捨て人族って言うの……やめてくださいっ……!! レクレットです!!」
「では野良犬」
「……」
「貴様が向こうに俺より遅く辿り着いたら、貴様は俺の従者になれ」
「は? …………そ、そんなことっ……なんで言うんですか!? 何でっ……! 僕をっ…………!」
「なんとなくだ。さっき魔物を倒しただろう。それを見て気に入った」
「……あ、あれは、ただ仕事だからそうしただけです!! あの程度、僕でなくても倒せました!」
「だが、気づいたのは貴様が俺の次に早かった」

 お前、気づいてなかっただろーが……見栄張ってんじゃねえぞ! クソ王子!!

 ……って言いたい!! 相手が王族でなきゃ言えたのに! 絶対それを知ってて言ってるんだ……落ち着け僕……キレたら罰を受けるのは僕だ。

「そんなの……たまたまです…………」
「明日の朝までに出発の準備をしておけ。せっかくだ。一緒にここを発つぞ」
「…………ぼ、僕はっ……」
「黙れ。貴様の意思など、どうでもいい。何度も言わせるな」
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