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21.責任なんて
しおりを挟むどうしよう……僕は、また何か失敗したらしい。
レヴェリルインは、僕の前をどんどん歩いていく。何だか怖い目をしていたし、また何か、僕は不快なことをしてしまったらしい。
一体何をしてしまったんだろう……レヴェリルインは、僕を処分しないでおいてくれた。それなのに、彼に嫌な思いをさせてしまうなんて……
僕の手を握ったまま、どんどん先を歩いていくレヴェリルイン。街へ行って、必要なものと服を買うって言ってたけど、僕の服より、魔物を近づけないための魔法具を買った方がいい。それだって、まだ言えてない。レヴェリルインたちが危ない目にあうかもしれないのに。それを知りながら、そんなことも言えない。
長く歩いていると足が痛くなってくる。レヴェリルインに追いついて、ちゃんと話したいのに。
しばらく行くと、レヴェリルインは、僕には振り向かずに言った。
「……もうすぐ街だ」
「は、はいっ…………あ、あのっ……!」
「……なんだ?」
「あ、あのっ……! あっ……!!」
話すことに気を取られて、僕は転んでしまう。足からは、血が出ていた。
すぐに駆け寄ってきたレヴェリルインは、僕に回復の魔法をかけてくれる。僕が勝手に転んだのに。
……なんでレヴェリルインは、僕にこんなによくしてくれるんだろう……
僕のせいで、レヴェリルイだって後ろ指を指されてきたのに。
それなのに、あんなにむきになって処分に反対した。
それに、城だって。
腹が立ったからって、城を吹き飛ばしたりするかな……??
レヴェリルインは、僕の手を握って歩き出す。
もしかして、何か別に理由があったのか??
………………僕が、失敗作になったことに責任を感じていた……とか……
僕が失敗作になったのは、彼のせいじゃない。僕だって、力が欲しくてうなずいた。
失敗したのは僕のせいだ。
それに、レヴェリルインには感謝している。彼らのおかげで、僕はあの屋敷を出られた。兄たちの魔法の練習の的にされる日々から逃れられたのに。
それなのに……王子に逆らって、僕の処分に反対するほどに責任を感じているのか!? ま、まさか、城を吹っ飛ばしたのも、僕を処分させないために……
ど、どどどどうしよう……
やっと気づいて、体がガクガク震えてくる。
レヴェリルインが、そんなに責任を感じて気に病んでいたなんて…………違うって言おう! 言って謝ろう!! いや待て。謝ってすまないだろ!! レヴェリルインは、爵位も城も、全部失ったのに!!
……と、とにかく誤解だけでも早く解かなきゃっ……!!
「あ、あのっ……! マスター!!」
「見えてきたぞ」
そう言って、レヴェリルインは僕に振り向く。
見えたって、何が?
レヴェリルインが指す方を見遣れば、森が開けて、屋根が並んでいた。街だ……初めてくる街だ!
レヴェリルインは、行くぞって言って、先に歩いていっちゃう。慌てて追いかけるけど、レヴェリルインの方が圧倒的に足が速い。どんどん間があいていく。追いかけるのが精一杯だった。
馬になった伯爵が「乗ってく?」って聞いてくれたけど、マスターは歩いているのに、乗って行くなんて言えない!!
街に入ると、通りを幾人もの人が行き交い、すごく賑やかだ。
いくつも家屋が並ぶ住宅街を抜けると、大通りが広がっている。道路沿いには、食べ物を売る店や、日用品を売る店、魔法具や魔法の書物を売る店が並んで、露店もいくつも出ている。歩いている人の種族も様々だ。
有名な魔法使いで、魔法の研究にも精通した伯爵家の領地には、自然と、魔法に関するものが集まった。この街は、その象徴みたいな街だ。街の住人には、魔法使いや、それを志す人たちが多くて、街から少し離れたところには、学園もある。珍しい魔法具を売る店が並んでいるため、遠方からここまでその買い付けのために足を運ぶ商人も多い……っていう話を、バルアヴィフが歩きながらしてくれた。
それを聞きながら人混みをかき分けながら前を歩くドルニテットとレヴェリルインに追いつこう急ぐ。彼らは、何か話し込んでいるようだった。
「あ、あのっ……あ、あの! あのっ……ま、マスターっ!!」
なんとか声をかけるけど、レヴェリルインは振り向かない。僕とは話したくないのかな……
いや、もしかしたら、街の雑踏の中で聞こえてないだけなのかも。
だって周りはすごい人。
こんな中じゃ、僕が手を伸ばしても届かないくらい先を歩くレヴェリルインに、僕の声なんて聞こえないだろう。
早く追いつかなきゃ。
周りに人が少なくなって、僕は走ってスピードを上げて、レヴェリルインに駆け寄った。そしたら彼は急に立ち止まって、僕はその背中にぶつかってしまう。
いた……しまった。こんなこと、するつもりじゃなかったのに。
「も、も…………申し訳……ございません……」
顔を上げると、レヴェリルインは振り向いて、僕を見下ろしていた。
「……追いかけてきたのか?」
「は、はい!」
「……」
僕が答えると、レヴェリルインは口元に手を当てて、僕から顔を背けてしまう。
「……行くぞ」
レヴェリルインが僕の手を握り、通り沿いの店に入っていく。そこは、ショーウインドーでマネキンが綺麗な服を着た店だった。
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