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43.こんな奴の罠には嵌らない!
しおりを挟む「離せ!! フュイアルさん!!」
いくら暴れても、僕がフュイアルさんに勝てたことはない。僕だって、それなりの魔力を持った魔法使いなのに、なんで勝てないんだろう。
僕を無理矢理抱き上げ空を飛んだフュイアルさんは、自分のマンションの部屋の窓まで来ると、魔法で窓を消して中に入っていく。
「離せって!! この変態!!」
怒鳴りつけて、フュイアルさんを振り払う。
なんとかそいつの腕の中からの脱出には成功したけど、これでこの部屋から逃げられるわけじゃない。
すでに、消された窓は元に戻っている。
フュイアルさんは、しょっちゅう僕を無理矢理この部屋に連れ込んでは、無理矢理ひどいことをする。
すぐに逃げ出さなきゃならないんだけど、下手に逃げたところで、またフュイアルさんに鎖で縛られて転がされる。
隙を見て逃げるか殺す。それしかないんだ。
僕は、フュイアルさんを睨みつけた。
フュイアルさんは、警戒する僕を無視して、僕に背を向けさっさとキッチンに向かう。そして、なぜかコーヒーを入れ出した。
「座ってて。コーヒーいれるから」
「いりません。フュイアルさんのいれたものなんか、飲めません。死んでください」
「トラシュは、ホットミルクのほうがいい?」
「子供扱いしないでください!!」
何を言っても、こいつは僕の話なんか聞かない。そして僕を逃しもしない。
もう、キッチンにいる隙に、後ろから魔法で撃ち殺そう。キモいから。
僕は、ソファの上で背もたれに隠れて、じっとフュイアルさんの背中を睨みつけた。
僕が正面から向かっていっても、フュイアルさんには勝てない。それは分かっている。
それなら、なんとか隙を見て、後ろから襲いかかるしかない。
僕も毎回、考えなしに突っ込むだけじゃないぞ。
僕は、構えた。
今ならあいつは、僕に背を向けていて、振り向く気配がない。
こっそり、体の中の魔力を呼び起こす。右手に魔力を溜めて、いつでも魔法を撃てるようにしておく。
フュイアルさんは、僕に振り向かない。魔法をつかったり、魔力を呼んだりする気配もない。完全に油断しているんだ。
今なら、僕でもあいつに勝てるはずっ……!
僕は、魔法の剣を作り、ターゲットの男に後ろから飛びかかった。
振りかぶった刃がフュイアルさんに届く。そう思ったのに、剣は、振り向いたそいつの目の前で消えてしまう。
「へっ……!? うわっっ!!」
突然丸腰になった僕は、フュイアルさんに抱きしめられてしまう。
「嬉しいよー。トラシュが俺に抱きついてくれるなんて」
「抱きついてない!! 離せよ!!」
振り払って振り返ると、フュイアルさんは、僕にミルクの入ったマグカップを差し出した。あったかい湯気がふわふわ浮かんでいる。
「どうぞ」
「いりません。何か入れてるくせに」
「いれてないよ」
フュイアルさんはにっこり笑って、頼んでもいないミルクを、ソファのそばのテーブルにおいて、またキッチンに戻っていく。
そいつの後ろ姿を見送ってから、マグカップに向き直る。
何もいれてないはずない。だって僕、さっき毒盛る気満々だったし。フュイアルさんは、その仕返しをするはずなんだ。
マグカップに鼻を近づけても、何の香りもしない。
ちらっとキッチンに振り向くと、フュイアルさんは僕に背を向けている。
こっち見てないな……
こっそりミルクを一口。
甘くて美味しい……何にもいれてないんだ……
油断させる作戦かな? こんなので油断する僕じゃないのに。
こっそり、ミルクをもう一口。
何度か繰り返していたら、すぐそばで声がした。
「おいしい? トラシュ」
「は!?」
声のした方に振り向けば、フュイアルさんが、ソファの後ろで僕を見下ろし笑っている。
いつの間に背後に回り込んでたんだ!!
「べ、別にっ……! お、美味しくない! まずい!」
慌てて言う僕に、フュイアルさんは、にっこり笑って言った。
「お風呂、入ってきたら?」
「なんでだよ。罠だな!」
「罠なんてないよ」
「……」
何か企んでいるんだ。気味の悪い笑顔はやめてほしい。
一体、どういうつもりなんだろう。
聞く前に、そいつは僕に背を向ける。
フュイアルさんはずっとこうだ。なぜか僕に構って、僕がどれだけ拒否しても、こうして、部屋に無理矢理連れて来て逃してくれない。
なにを企んでいるのか知らないけど、こんな奴の罠に嵌るもんか。
憎い男の背中を睨みつける。
……とりあえず、風呂に入ろう……
入って、そこでフュイアルさんを倒す作戦を考えよう。
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