誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐

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番外編

97.何かの間違い

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 僕はすごく怒っているのに、フュイアルさんは相変わらずどこ吹く風だ。飄々とした態度で、ふざけたことを言い出す。

「だって、俺は寂しいんだよ。トラシュが構ってくれなくて。昨日は仕事中、俺に黙ってどっか行って他の男とコーヒー飲んでただろ?」
「そんなことしてない!! 言いがかりだ!」

 昨日は仕事が長引いて、しかもその間中フュイアルさんにえっちな意地悪されて、ムカついてフュイアルさんの隙をついて給湯室に行ったら、同じ職場で働くズモアルケがいた。あいつは僕を嫌っていて、僕も一緒にいたくなんかないけど、出ていくのも癪で、そいつと一緒に、コーヒー淹れてたんだ。

 だけど別に、仲良く二人で並んでコーヒー飲んだわけじゃない。「いつまで人族がここにいるんだ」とか言うからムカついて、「永遠にいます。ここにいる魔族の皆さんが頼りないので」なんて言い返して、睨み合いになってた。そんな風に言い合いをしていたら、いつのまにか全員分のコーヒーを淹れていて、仕方なく、オフィスのみんなにもコーヒーを配った。
 フュイアルさんは、それも気に入らないらしい。

 だけど、僕は何も悪いことはしていない。むしろ先に僕に「旅行に行ってエッチなことしよう」なんて言い出して、ムカつかせたのはフュイアルさんの方だ。

 そもそも、それを言うなら、フュイアルさんだって、僕じゃない人と二人きりになったりするくせに!!

 それなのにフュイアルさんは、キッチンで卵わりながら、僕を糾弾するようなことを言い出す。

「しかも飲み会の前、男に声かけられてたよね? 一人で街を歩いちゃダメって言ってるのに」
「知りません。そんなの。道歩いてたら、勝手に向こうが声かけて来ただけです」

 昨日は、仕事が終わってから、一緒に飲み会行こうって言ってたフュイアルさんを無視して、先に職場を出たんだ。
 フュイアルさんを出し抜けて、意気揚々と歩いていたら、魔族の男が声をかけて来た。どうやらそいつは、僕のこと知っていたらしい。
 魔界の城へ行って、魔族の王にもあったことがある僕に、魔族たちは目をつけている。そいつも、僕を廃屋に連れ込んでレイプして連れていく気だったらしい。
 もちろんそんなことさせないし、あんな奴くらい僕一人で焼き尽くせる。どうせならその気があるふりして近づいて、魔族を殴り倒すヒントでももらえないかなーって思って、少し返事をしただけなのに、振り向いて「仕方ないなー」の「しか」くらいまで言ったところで、僕にしつこく声をかけていたその男は、空の上まで吹っ飛んで、帰ってこなかった。背後から走ってきたフュイアルさんに書類で殴り飛ばされたからだ。

 フュイアルさんに気づかれずに脱出できたと思ってたのに、あっさり気づかれていたらしい。
 そして、フュイアルさんはいつも、どこからともなく現れては、僕に近づく男を消していく。

 もう怖い。

「それにさー。最近、ウィウントの誘いを真剣に聞いてるって、本当?」
「しつこいから話を聞いてあげただけです」

 ウィウントは、フュイアルさんの知り合いの魔族。僕の魔力を知って、魔界の城に来ないかなんて誘ってくる。もちろんそんなの、行く気ない。

 僕が踊り場でそいつの話を聞いたのだって、フュイアルさんの周りをチョロチョロして、僕のことちょうだいって言ってるのが気に入らなくて、僕が呼び出して二人きりになったときに、直接言っただけだ。僕はどこにも行かないって。

 フュイアルさんの言い方だと、僕が延々ウィウントと二人きりで話してたように聞こえそうだけど、オフィスの踊り場に呼び出して二人で話したのは五分程度。

 無茶苦茶言ってるのはこのゲス野郎の方だ!

「もうフュイアルさんには何も言いません! とにかく、服よこせ!」
「嫌。俺に恥ずかしい格好を強要されて顔を赤らめる可愛いトラシュに夢中になりたいから」
「死ね!! もう死ねよ!!」

 なんなんだよ。こいつ。本当に。頭おかしい。

 付き合い始めてから、フュイアルさんはずっとこんな感じだ。

 もうこんな奴に何を言っても無駄だ。

 僕は魔法で、オフィスに置きっぱなしにしてある服を呼び寄せた。フュイアルさんに服を取られた時用のものだ。
 手枷と首輪は魔法で焼いた。
 ついでにフュイアルさんも炎の魔法で包んでやるけど、相変わらずこの人だけ不燃物。ちっとも燃えない。これは、僕とフュイアルさんの力の差らしい。悔しい……

 僕は、フュイアルさんを睨みつけた。

「フュイアルさんって、どうやったら燃えるんですか……」
「トラシュが俺を焼くなんて無理だよー。魔力が全然違うんだから」

 むっかつく……なんで僕、こんな奴と付き合ってるんだ。

 僕がどれだけ腹を立てても、フュイアルさんは素知らぬ顔で、僕の前にフレンチトーストが乗った皿を持ってくる。

「俺があーんで食べさせてあげるね?」
「いらない。死ね」

 できるだけ冷たい声で言って、僕はフュイアルさんからフレンチトーストの乗ったお皿を奪い取った。

 甘い、いい匂いがする。

 早速席についてフレンチトーストにフォークを刺す。

 僕、なんでこんな奴と付き合っているんだ? 何かの気の迷いだったんじゃないかな?? こんな変態魔族を好きだなんて。

 フュイアルさんは、遅刻しちゃうから急いでね、なんて言ってるけど、そもそも遅れそうなのだって、フュイアルさんのせいだ。

 フレンチトーストは美味しいけど、僕は怒っているんだ。

 それなのに、僕の向かい側の席に座るフュイアルさんは、相変わらずニコニコしてる。
 だけど、彼の前にはお皿がない。魔族だから、食べなくても平気らしいけど、お腹が空くと死んじゃう僕は、なんとなく気になる。

「……食べないんですか?」
「俺はもう食べた。トラシュが起きなかったら、抱っこして連れて行かなきゃならないから」
「だ、抱っこなんてしなくていい!! みんなにからかわれる……」

 職場のみんなも、僕とフュイアルさんが付き合っていることを知っている。みんな、「フュイアルがトラシュのそばにいるから安心」なんて言うけど、どういう意味だ。僕は一人でも全然平気なのに。

 絶対に別れてやる……

 別れる、けど……その前に……

「あの……フュイアルさんも、食べませんか? ふわふわとろとろで美味しいから……」

 フォークで刺したフレンチトーストを差し出すと、フュイアルさんはにこにこ笑いながら咥えてくれる。

 ちょっと彼が顔を近づけてきただけなのに、その唇が僕のフォーク咥えただけで、動揺してしまう。

 昨日、僕の体を弄んだ男の唇なんか見てたら、全部思い出しちゃいそう。泣きながら後孔に男根を突き立てられことも、枷をされて、抵抗もできずにいくつも肌に痕を残されたことも。

 ……こういうのが嫌だ。僕は怒っているのに。

「……ら、落書きも消してください! 僕の体に、わざわざ魔力使って描いたやつ!!」
「トラシュ、旅行はどこがいいか決めた?」
「話逸らすな!!」

 こいつ……僕の話を全然聞いてない!!

 最近のフュイアルさんは、もうすぐ連休だからと言って、旅行に行こうってうるさい。行きたいけど、誰が行くか、そんなの。

 だって、一緒に旅行行こう、なんていうから、僕は喜んだのに、提案されたのは、俺と一緒にリゾートへ行って地下牢でえっちな拷問される旅と、俺と温泉地に行って拷問部屋で犯され続ける旅と、古代の魔族の遺跡を首輪つけてえっちな悪戯されながら巡る旅、どれがいい? だ。

 誰が行くか! そんな旅行!!

「なんでわざわざリゾート行って地下牢に連れてかれなきゃならないんですか!! 温泉行ったら温泉に入りたいし、悪戯されながら遺跡ってなんだ!! 旅行なんて絶対に行かない!! 落書き消せ!!」
「トラシュがそう言うから、俺と一緒に珍しい魔獣を見に行って、動物に扮した俺に獣姦され続ける旅、なんていうのも考えてみたんだけど……」
「死ね!! 行かない!!! 絶対に行かない!!」

 どの旅もやること変わらないじゃないか! こいつ……もう絶対別れる!!
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