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75.せめてあと少しくらいは
呼ばれて赴けば、私が部屋をノックするなり、ジレスフォーズ様が外に飛び出して来て、私を部屋に引き入れた。クリエレスア様も驚いていたようだけど、遅れて部屋に入ってくる。
そしてジレスフォーズ様が始めたのは、早速夜会の話。
「リリヴァリルフィラン。夜会に出てほしい」
「私が……夜会に……ですか?」
「ああ。必ず出席してほしい。できるな?」
「……でも……」
「いいから出席してくれっっ!! 頼む!! 出席するんだっっ!!!!」
鬼気迫った様子で言われると、さすがに怖くなる。そして何をなさるかと思えば、ジレスフォーズ様はその場で頭を下げてしまう。
「ち、ちょ、あのっ……ジレスフォーズ様!? や、やめてください!」
領主にそんなことをさせるわけにはいかない。慌てて近づくと、ジレスフォーズ様はガバッと顔を上げた。
「夜会に出るな?」
「へっ……!!?? えっ……えっと、えーっと……け、けれども、ジレスフォーズ様……わ、私はもう貴族ではありません。それに、夜会になど、ほとんど顔を出したこともございませんし……無礼なことをしてしまうかもしれませんので、できれば、城を守る方に回していただけると嬉しいのですが……」
「夜会に出てくれ。城なら私が守る」
「領主が夜会で警備に回るわけにはいかないでしょう……」
「私の代わりなど、なんとでもなる!」
「何をおっしゃっていますの!? あなたは領主ですよ!?」
「いいか! 夜会に出るんだ!!」
「え……ええ……」
「すでにあなたが夜会に出る準備ならしてある。夜会の席にいればいい。出たくないなら、その場に立っていればいい。とりあえず、いてくれ。そこにいるだけでいい」
「えっと…………いなくても構わないのでは……」
戸惑う私ですが、ジレスフォーズ様はそんなことまるでお構いなしに、私を追い詰めるように近づいてくる。
「夜会に出るな?」
「へっ……!??」
「夜会に出るな? 夜会に出るだろう? 夜会に出るんだ! 夜会に出ろ……夜会出てくれっっ!! 夜会に出てるんだっっ!!」
「お、落ち着いてください!! ジレスフォーズ様!!」
「嫌がることはないだろう! 夜会には、使者の方々……イールヴィルイ様やトルティールス様もいらっしゃる!! 知っているだろう!! なぜ嫌がるんだ!」
……だから嫌なんですっっ!
閣下が夜会に出席されることは、閣下からのお手紙で知っている。会えるのを楽しみにしている、なんて言われたけれど、そんなの、出席できるはずがない。
今の私は、伯爵家から追い出され、ジレスフォーズ様に城を守る魔法使いとして召し抱えていただいている身。それなのに、そんな場にノコノコ出ていけば、出席者に「あれは何だ」と言われ、顔を顰められてしまう。それでは、ジレスフォーズ様や閣下にまで恥をかかせてしまうかもしれない。
だいたい私は夜会に参加したことなんて、ほとんどない。
トレイトライル様と婚約した直後には、何度か無理矢理連れて行かれたけど、端っこの方で立っているだけ!! あの時は、誰も私になんて興味ありませんでしたし、私だって、夜会になんてまるで興味なかった。だから、だれに見られようが、失敗しようが、どうでもよかった。
完全にいないものとして扱われていた私が、ただ立っているだけの夜会の最中に考えてたことなんて、ご飯美味しそー、とか、焼きたてのパン食べたい、とか、肉汁すごい、とか……
令嬢のすることじゃない……むしろ今は令嬢でもなんでもない!
閣下の前でとんでもないことをしでかしてしまったら……そう考えると……絶対に嫌だ! せめて後少しくらい、令嬢の皮をかぶっていたいんです!!
「じ、ジレスフォーズ様……できれば、私は夜会の警備に……」
「……夜会に出るな?」
「……」
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