追放される俺を憧れの魔法使いが拷問しようとしているらしいんだけど多分気のせいだと思いたい。やっと再会した人がストーカー気味なんて嘘だよな!?

迷路を跳ぶ狐

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10.俺から逃げようなんて、命知らずにも程がある

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 さっきから心臓が高鳴ってるのに、ウィンルゼンド様は俺の胸に触れてしまう。

「…………っっ!! 離れてっ……くださいっ…………!」

 もう無理だっ……

 拘束されてなかったら、この部屋を飛び出していた。
 だけど、今の俺は鎖で繋がれて逃げられないし、そもそも、もう力が入らない……抵抗なんて、できそうにない。

 こんなの、ウィンルゼンド様が初めてに決まってる。
 ほんの少しでいいから手を緩めて欲しいのに、ウィンルゼンド様はわざわざ俺の耳をくすぐるように囁く。

「真っ赤だね」
「…………っっ!!!??」
「それに、体も熱い。胸も…………そんなにドキドキした?」
「………………」
「だったら、一緒に王都へ行こう?」
「…………で、でもっ……」

 俺は、ウィンルゼンド様を見上げた。

 一緒に王都に行けたら、どれだけ幸せだろう。

 だけど……

「……それは……でっ……できません……」

 俺が断ると、彼は俺に触れていた手を離した。

 そして、さっきの熱っぽい声とはだいぶ違う、どこか冷徹さを含んだような口調で問いかけてくる。

「なんで?」
「……だ、だって…………俺、まだ半人前だし…………今だって、左遷されて行くんです…………」
「……そんなこと、気にしなくていい。君を左遷するような馬鹿な連中の言うことなんか」
「そ、そんなわけにはっ……参りませんっ……向こうに行ったらっ…………素材集めの任務もあるしっ……そんなことにウィンルゼンド様を付き合わせるわけにはいきませんっ…………!」
「…………俺は付き合いたいけど?」
「ダメですっ!!」

 叫んだ時には、俺は、彼から目を背けて俯いていた。

 ウィンルゼンド様の顔を見ていたら辛くなる……

 本当は、俺だって断りたくなんかない……

 すぐそばで、ウィンルゼンド様の冷淡な声がする。

「…………頑なだねー…………命知らず」
「わ、分かってます…………王都での素材集めの任務が危険なことくらい……」
「任務の話じゃないんだけど……」
「で、でもっ……! 俺っ……絶対もっと魔法を使えるようになって帰ってきます!! 剣士としての腕も磨いてっ…………そしたらっ……あのっ……! ウィンルゼンド様にっ……恩返しをしたいんです!」
「俺に?」
「はい!! おっ……俺をっ……雇っていただけませんか!?? 警備の下っ端の召使いで……や、雇っていただけるならなんでも構いませんっっ!!」
「…………」
「も、もちろん……ウィンルゼンド様のような大貴族のお屋敷に、そう簡単に雇っていただけるなんて思っていません…………だからっ……そのために王都に行って、魔法と剣技を磨きたいのです!!」

 叫ぶと、なんだか……苦笑いされた??

「……あ、あの……ウィンルゼンド様?」
「…………もう一度言うけど、フィリレジレクに今よりさらに魔法を教えることができるのは、俺くらいだと思うよ? 剣技だって……どっちも君にまだ教えることがあるとは思えないな……それに、いつか俺に雇われて護衛するなら、今俺が一緒に行っても構わないよね?」
「えっ……? い、いやっ……今はっ……」
「明日の朝、一緒に出発しよう?」
「だめです!!」
「…………本当に……頑なで命知らず…………」
「俺っ……王都での任務っ……危険でも頑張ります! だからっ……」
「そうじゃないよ」

 強く言って、ウィンルゼンド様が俺と目を合わせてくる。

 いつも優しくて紳士的だったウィンルゼンド様が、冷淡な目をしているようで、俺は怖くなりそうだ。

 なんで怖いんだよ……相手は……ウィンルゼンド様なのに…………

「フィリレジレク…………俺は、俺に敵う魔法使いなんていないのに俺から逃げようなんて命知らず過ぎるって言ってるんだよ?」
「…………え……? に、逃げるなんて…………」
「だって今、俺の誘いを断って、ここを去る気なんだろう?」
「それはっ……はい……だ、だって…………」

 俺は今日、ここを出ていかなくてはならない。

 そうだ……今日中にこの町を出なくてはならないんだ!!

 それなのに、外はもう真っ暗じゃないか!!

 し、しまったっっ……!! ウィンルゼンド様に夢中で、すっかり忘れてた!!

「あっ……あの! 今っ……何時ですか!??」

 焦ってたずねると、ウィンルゼンド様は少し驚いたみたい。

「壁に鎖で繋がれた状況で、なんで時間を気にできるかな……」
「だっ……大事なことですっ……! ウィンルゼンド様といられて嬉しくてっ…………俺っ……忘れててっ……」
「………………本当に……無自覚にそういうこと言うんだから……」
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