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-第一章-スプリングフィールド王国編-
-第一章六十節 マサツグの扱いとリコの扱いとリンの扱い-
しおりを挟む宝石の実の殻を割る・割らないで大揉めになり、結局割らずに保管して
置く事に決まってはマサツグがアイテムポーチの中へと仕舞い込む。
その際…宝石の実程では無いものの珍しい木の実とリンが言うので
妖精の国でのお土産と言って渡し、リンはギルドに持って帰って植えて
育てると喜ぶのだが、それとこれとは別と言った様子でジッとモツと
一緒に監視する様にマサツグを見詰め始める。
__ジィ~~~~!……
「……そんなに見詰めなくてもちゃんと仕舞うよ!!…
何でそんなに凝視する!?…疑う!?…」
「……マサツグ(さん)なら見えないところでやりかねないと…」
「え?…俺そんなに信用無いの?…」
凝視されるマサツグはモツとリンに戸惑いを覚えては二人にツッコミを
入れるのだが、そのツッコミを聞いた二人は徐に顔を見合わせ始めると
再度マサツグの方を向き、声を揃えてマサツグに返答するとその言葉に
ショックを受ける。そしてアイテムポーチに宝石の実を仕舞った所で話は
マスターオーダークエストの指定アイテムの納品の話に戻り始めるのだが、
ここでもまた厄介な事が起きたと言った様子で話がややこしくなる。
「……とにかくこれで指定のアイテムは揃った訳だから…
一度クランベルズに戻って納品するか?…
何処で取れるかって言う情報をギルドが欲しがっているみたいだし…」
「え!?…あぁ…うん…そうなんだけど…」
「あっ!…ならさっさと向かいますか?…
丁度……ッ!…あったあった!…これを!…」
モツがクエストの話を切り出し、ギルドに納品及び情報提供の提案を
マサツグにすると、マサツグはその情報提供の部分で難色を示した
表情を見せる。何故なら…それらのアイテムを集めたのは確かに
マサツグなのだが、厳密に入手したのはマサツグでは無く…
迷いの森の主・盗賊に襲われボコボコにされていた商人達・妖精達と…
不確定要素ばかりで情報と呼べる程の物では無かったからである。
そんな出来事を情報と呼んで良いのか分からず、マサツグが困惑して
居るとギルドに行くならと言った様子でリンが制服のポケットを
ゴソゴソと弄り出し、ポケットから取り出したアイテムをマサツグ達に
差し出すと、それを見たマサツグが途端に青ざめ始める!…
__ッ!?……サアアアァァァァ!…
「ハーピィの羽が有りますので!!…
……って、如何したんですか!?…何でそんなに真っ青に!?…」
「え?…あぁ…それはだな…まぁ……
高い所が駄目なんだ…マサツグは…」
マサツグがハーピィの羽を見て青褪め始め、リンがそれぞれ一つずつ配ろうと
した時にマサツグの顔をチラッと見て、驚いた表情を見せる。何故なら
その時のマサツグの表情はただ青褪めるだけで無くこの世の終わりの様な表情を
しており、そんな表情を見せるマサツグにリンが慌てて何が有ったのかと
尋ねるのだが、マサツグはハーピィの羽を見詰めたまま何も答えずカタカタと
震え始める。そんなマサツグを見かねてモツが呆れた様子で戸惑いながらも
リンに青くなっている理由を話し出すと、リンは戸惑った様子で口に手を当てて
驚いた様子を見せるのだが、次にマサツグの方に振り向くと切れ味の有る言葉を
口にする。
「えぇ!?…で、でも!…あの御前試合の時マサツグさんは確か!…
騎士団長さんの攻撃を逆手にとって!…」
__グサッ!!…
「すっごく高い所からダイブして!!…」
__グサグサッ!!…
「カッコ良く騎士団長さんを降参させたじゃないですか!?…
それなのに高所恐怖症っておかしくないですか!?…」
__グサグサグサッ!!!…
リンは騎士団長の一騎打ち戦を引っ張り出して来て、その場面を見ていたのか
最後のトドメのシーンを話し出し、高所恐怖症の人間が出来る攻撃では無い!!と
マサツグが隣で青ざめている中…力説して見せ、その言葉が鋭くマサツグの心に
突き刺さると何とも言えない感情に襲われ始める。確かにあの時のマサツグは
無我夢中で高さの事など全く頭に入って来ていなかったのだが、改めてその事を
言われてマサツグがショックを受けていると、モツがハッと思い付いた様な表情を
してはリンの乗っかり始める。
「……ッ!……そうなんだよなぁ?……
俺もアーカイブで見ただけなんだけどさ…
そん時のマサツグって明らかに高い所を克服した様な
真剣な表情をしていてさ?…」
__ピクッ!…
「騎士団長に斬り掛かって行く時のマサツグ…かっこいいなぁ…
…って、思ってたのにいざ蓋を開けて見たら高所恐怖症……
おい嘘だろ!?…って、思ったもんなぁ?…」
__ピクピクッ!!…ッ~~~~~!!!!…
モツはリンの話に乗っかりマサツグの高所恐怖症についておかしいと
言い出す際、何故かマサツグの事をチラチラと様子を伺う様に幾度と
確認しては、マサツグの事を煽るようガッカリしたと言った様子で
言葉を口にし始める。そしてそのマサツグはと言うと青ざめた表情で
項垂れてはモツの言葉にピクピクと反応して見せ、徐々に先程とは
違う様子でプルプルと震え出しリコを自身の膝から降ろして木の根元に
寝かせるよう置くと、徐に立ち上る。
__……スッ……ザッ…スッ…
「ッ!…え?…え?…」
起こさない様にリコを寝かせたまま立ち上がり、マサツグは俯いた様子で
リンの手からハーピィの羽を手に取ると、グッと握り締める!…
そんな様子を見せるマサツグにリンが戸惑った様子で仁王立ちする姿を
見詰めるのだが、モツはこの瞬間を待って居たんだ!…とチャンスを伺って
言った様子で突如マサツグにこう話し掛け始める!…
「マサツグ!…」
__ッ!………
「左で投げろや?…」
「ッ!?…ッ~~~!!!!…
やってやろうじゃねぇかこの野郎!!!!」
モツがまるで某・野球盤の煽りを入れる様にマサツグの事を呼んで、マサツグが
俯いたままの状態かつ無言でモツの方を振り向くと、更にモツは煽る様に
左手で投げる仕草を見せては悪い笑顔でマサツグを囃し立てる!それを聞いた
マサツグは最期の糸が切れたと言った様子でモツにお決まりの文句を言っては
左手にハーピィの羽を握り、クランベルズの方角に向き思いっきりハーピィの
羽根を投げると、マサツグはそのままクランベルズへと飛んで向かい始める!
__ブォン!!!…ふわぁ!…バシュン!!…
「ッ!?!?…え?…えぇ!?…ちょ!…モツさん!?…」
「…いやぁ~…あぁでもしないと徒歩で帰る事になるし…
マサツグも踏ん切りがつかないし…」
「えぇ~……」
マサツグが一人先にクランベルズへと飛んで行きその様子をモツとリンが
見送っていると、リンが慌てた様子でモツに声を掛けようとするが思う様に
言葉が出て来ない。ただリンは慌てた様子でモツの名前を呼んでは何故煽った
のかと尋ねようとし、モツが先にリンの疑問を汲み取ってか苦笑いし始めると、
後頭部に手をやりその理由を話し出す。その理由を聞いてリンはもはや
戸惑った様子で返事をするしか無く、ただ困惑した目でモツを見詰めて座って
居ると、モツもハッと気が付いた様子でマサツグの後を追う様にリンの手から
ハーピィの羽を一つ手に取る。そしてクランベルズの方角を向いて
空に投げようとするのだが、思い出した様に一度リンの方を振り向くと
クラリスからの伝言を口にし始める。
__グググッ!……ッ!…
「そうだ!…クラリスに伝言を頼まれてた!…」
「え?…」
「用件が済んだら戻って来いだってさ?…
多分余計な事してないで早く帰って来いって意味だと思うけど…」
「ッ!?……モ、モツさん!?…
い…一緒に早く帰りましょう!!!…
今一人で戻ったら確実に私恐ろしい事になります!!」
__ビクゥッ!?……コ、コクリッ…
モツがリンにクラリスからの伝言が有ると言うと、その言葉にピクっと
警戒した様子で反応し、モツが伝言の内容を伝えると今度はリンの表情が
青ざめ始める。その伝言を伝える際モツは自身が思うクラリスの心情を
踏まえてリンに話すと、リンはその言葉に恐怖した様子で震えてはモツに
縋る様に目に涙を溜めては一緒にギルドへ戻る様にお願いし、モツが
今だリンに警戒した様子を見せつつ戸惑いながらも無言で頷くと、リンは
ホッと安心した様子でモツから離れ始める。
「……はあぁ~…よかった~…もし断られたら如何しようかと…」
{…え?……クラリスってそんなに怖いの?…}
「どっこいしょっと!……ッ!…
そうだ!…帰る前に!…すぅ~~……」
リンが安心した様子でポロッと呟いたその一言にモツは思わずそんな場面が
あったか?とクラリスに対して疑問を感じるのだが、幾ら思い返した所で
その様な感情が湧いた所など一度としてない!…経験有るとするならクエストの
受付など一般業務位でそんな怯える様な所等…何度考え直しても思いつかない
モツであるが、リンは妙にホッとした表情を見せては次にはハッとした様子で
立ち上る。そして思い付いた様に先程までお世話になって居た農家のおじさんが
居る畑の方を振り向き、大きく息を吸い込むと農家のおじさんに声を掛け始める。
「おじさ~~ん!!!…」
__ッ!?……ッ!…クルッ……
「私ぃ~~!!…急用が出来たので戻りまぁ~~す!!!…
また挑戦しても良いですか~~~!!!」
「ッ!!……うるっさ!!…」
農家のおじさんに向かい大きな声で叫び出し、その声が聞こえたのか農家の
おじさんがリン達の居る方に振り返ると、リンは自分が町に帰る事を大声で
伝え始める!その際木の根元で寝ていたリコが慌てた様子で目を覚まし、
リンはまだ凝りていないのかまたニンジンに挑戦すると言い出し…その言葉に
モツが耳を塞ぎながら戸惑い…リンの声のボリュームに驚かされていると、
農家のおじさんもリン達に聞こえる程の大声で負けじと返事をする!
「おぉ!!!…いつでもまた挑戦しに来ると良いさ!!!…
まぁ!!…ワシとしてはまたあの素晴らしい捕獲プレイを
見せて欲しいもんだがな!!…ガッハッハッハッハ!!」
「ッ!?!?…なッ!!…こらぁ~~~!!!…
セクハラですよぉ~~!!!!…撤回しなさ~い!!!!!…」
「え?…え?…あれ?…もう一人のお兄ちゃんは?…」
農家のおじさんがリンに笑いながら返事をする際、バニーガールキャロットを
捕まえた時のマサツグとの連係プレイを思い出させるよう、自身の胸に手を持って
来ると何かをクイクイっ!と上下させる様な動きをして見せ、その様子にリンが
顔を赤くするとセクハラと言って農家のおじさんに文句を言う。そしてリンの
大声で飛び起きたリコはと言うと辺りを見渡してはマサツグが居ない事に
気が付き、残っているモツとリンを慌てた様子で見詰め出して居ると、モツが
リコの視線に気が付き振り返ってはハッと徐に思い出した様な表情を見せる。
「……ッ!…そうだ!…リコちゃん!…これを…」
「ッ!…え?…」
__ジャラ…
「ッ!…これって!!…」
モツがリコの名前を呼んでは徐に今起きたばかりのリコへと歩き出し、
突然呼ばれた事にリコが困惑しモツを見詰めて居ると、モツは自身の懐から
布の子袋を取り出すとリコにその子袋を手渡す。子袋の中からはジャラジャラと
まるで硬貨同士がぶつかる音が聞こえ、リコもその音と独特の重さ…袋越しでも
分かる中の物の形状物を感じ取ると、モツの顔を見上げて戸惑った表情を見せる。
そんな表情を見せるリコにモツは優しく笑い掛けると、その渡した物について
簡単に説明する。
「……その中には宿代が入っているから女将さんに渡しといてくれないかな?…」
「で、でも!……えっ…えっとぉ…
…ッ~~~!!!…」
モツはリコに子袋の中身を説明するとリコは更に戸惑った表情を見せる。
何故ならその子袋の中には明らかに三人分の一泊料金を超えたお金が
入っており、リコが袋を開けずに重さだけでそれを理解しては子袋を
持ったまま悩み出すと、まだ思う様に計算が出来ないのかとにかく慌てた
様子で子袋を開けては中身を確認し始める。そして片手の指を順々に
折り曲げては中の硬貨を計算し出し、途中で何度か計算を間違えたのか
詰まった様子を見せると表情が一層慌てた物になる。それを見てモツが
瞬きするとリコの様子が可笑しかったのか笑いながら汲み取った様子で
こう言い出す。
「…ッ!……ぷっ!…ククククッ!…
あぁ!…おつりは要らない!…」
「え?…で、でも!……」
「遠慮は要らない!…って、言いたいけど…
その表情は納得していないみたいだな?…あぁ~っと……ッ!…
じゃあ余ったお金で有りっ丈のおやつを買いなさい!…
そのおやつをお母さんと一緒に食べる事!…これなら如何かな?…
君にお願いするお仕事だ!…お母さんと仲良くな!…」
「え?……ッ!……あ、ありがとう!!…じゃなくて!!…
確かに受け賜りました!!!……ッ……」
モツがリコの様子を察してかお金は返さなくて良いと言うと、リコはその言葉に
戸惑った表情を見せながらも折り曲げた指をそのままにモツを見詰める。
ちゃんと女将さんの教育が行き届いているのかリコはジッと困惑した様子で
モツを見詰め、モツが大丈夫と言ってお金を受け取る様に言うがリコは納得して
いないのか一向に受け取ろうとしない!…そんなリコの様子に逆にモツが
困惑するのだが、直ぐにパッとお仕事として有る事を思い付くとリコに
お願いし始め、そのお仕事を聞いてリコが若干悩んだ様子を見せるも、モツが
笑顔で頷くと理解したのかパァッ!と明るい笑みを浮かべてお礼を言う。
その際ハッと気が付いた様子で再度お仕事を受けたと言った様子で言い直し、
リコは嬉しそうな笑みを浮かべては子袋を見るのだが、それも直ぐにパッと
消えると直ぐに物悲しそうな様子を見せる。恐らくはモツ達との別れを
惜しんでいるのか、リコがその事をモツへ悟られない様にするのだがモツが
それを察すると優しくリコの頭を撫で始める。
__……ポンッ…ッ!……
「これが最後じゃないんだからそんな顔しない!…
また遊びに来るよ!!…絶対!!…」
「ッ!!……うん!!!」
__…ッ!……うるうるうるうる!…
モツが頭を優しく撫でながら物悲しそうな表情をするリコを元気付ける様に
言葉を掛け、再度遊びに来る事をリコに笑顔で約束すると、リコはその言葉を
信じたのか目を一瞬見開ては笑顔でモツに返事をする。そうしてリコに
お別れの言葉と宿代を渡し、再会を誓った様子で互いに笑顔を見せて居ると、
リンがその様子を見て感動したのか目に涙を溜め始める。静かにその様子を
見詰めては自分でも気付いて居ない様子を見せるのだが、リコがリンの様子に
気が付くとリンに泣いている理由について質問し始める。
「……?…あれ?…如何したのおねえちゃん?…
何で泣いてるの?…」
「え?……あっ!…」
リコは最初…普通にリンが泣いて居る事に気が付いた様子で質問をし、
突如その質問を受けた事にリンが戸惑いながらも徐に目に手をやると、
そこで自分が泣いて居る事に漸く気付いた様子を見せる。そして慌てた
様子で涙を拭ってはリコに何でも無いと言い訳をしようとするのだが、
幾ら涙を拭いた所で次から次に涙が溢れ出しては思う様に喋れず、
焦りが焦りを産んで出て来る言葉もしどろもどろになる。
「…こ、これはその…」
__……ッ!…チラッ……
「……ッ!?…分かった!!さてはおじさんのせいね!!!…
おじさんと別れるって話になって修羅場なのね!?」
「えッ?……」×2
喋りたいのに涙が邪魔で喋れないリンの様子をリコがジッと見詰めて居ると、
何を思ったのか徐に農家のおじさんの方を確認し始める。農家のおじさんの方は
別れの挨拶も終わった事で今から荒れた畑を元に戻そうと鍬を手に農作業に
入ろうと真剣な表情をしており、それを見たリコは何を誤解したのかリンは
農家のおじさんとお付き合いしておりその別れ話で泣いて居るのだと
一人勘違いし始める。そして何故か農家のおじさんに対して怒った様子を
見せてはリンに修羅場と言う…子供らしからぬ単語を口にし始め、明らかに
何か誤解している様子とその単語を口にした事にモツとリンの二人が
戸惑いの声を漏らしていると、リコは更に暴走した様子でリンに話し掛ける!
「大丈夫だよ!!…私がおじさんを怒って上げるから!!!…」
「ちょ!…ちょっと待って!?…リコちゃん!?…
その前に何でそんな誤解を!?…それに何処でその言葉を!?…」
「……?…だって、お姉さん…
いつもこの村に来たらおじさんの家に行ってたんだもん!…
畑でいつもおじさんと楽しそうに話して居たし…
一緒にニンジンを追い駆けてたし!!…」
「あっ!…」
リコが今にも農家のおじさんに向かって駆け出して行き、リンの事で文句を
言いに行こうとすると慌ててモツとリンの二人が止めに入る!そしてリコが
何故そんな誤解をしているのかについてモツが慌てた様子で質問をし始めると、
リコはリンの今までのサボり…行動を見ていた様に畑での出来事をモツに
話し出し、その話を聞いてモツが思わず納得してしまうと一言漏らしては
徐にリンの居る方を振り向く。
__……クルッ…スフ~~♪…フス~~~♪…
「…吹けてねぇし……はあぁ~~~…
こりゃ弁明の余地無しだな?…」
「ッ!?…そんな!?…後生です!!モツさ~~ん!!!…」
「だあああぁぁぁぁ!!!!」
リンはモツに対してそっぽを向いては下手な口笛を吹いており、明らかに何かを
誤魔化そうとしている様子にモツがツッコミを入れて呆れた様子で溜息を吐くと、
リンの弁明を降りようかと考え始める。そしてその言葉はしっかりとリンの耳に
入ったのか、リンは慌てた様子でモツに再度抱き着くと今度は違う意味で
涙を流してはモツに泣き付き始める!…それはまるで怨霊の様に…モツの脚に
しがみ付いては地面に引き込もうとする様に腕を伸ばし出し、モツが面倒臭そうに
その場で吠えているとその間にリコは一直線に農家のおじさんに向かって
突貫し始める!
__ダッ!!…ブンブンブンブン!!…
「こらぁぁ~~~~!!!!お~じ~さ~ん!!!!…」
「あっ!…リコちゃ!!…待った!!!…」
リコは腕を振り上げぶん回し農家のおじさんに向かい一直線!…
モツもそれを見て慌ててリコを止めに行こうと声を掛け追い掛けようとするが、
リンがモツの脚に縋り付くと思う様に動けない!…そうして農家のおじさんが
リコによる理不尽なお説教を貰い始めようとして居ると、リンが必死にモツの
脚にしがみ付いては何度も助けを求めるよう訴え始める!
「お願いします!!…モツさん!!!…
先輩って怒ると怖いんですよ!…お仕置きも痛いし!!…」
「そこ等辺については普段の行いの結果だと思うが?…」
「うぐっ!?…」
助けを求めるリンに対しモツが完全に呆れた様子でツッコんで、リンは
その言葉が刺さった様子でショックを受ける。もはやこれ以上の言葉は
無いと言った様子でモツが頭に手をやっては再度溜息を吐き、リンが
モツの言葉にショックを受けしがみ付いたまま固まって居る一方では
農家のおじさんがリコにその場で正座させられては滾々と謎のお説教を
受けていた。
__ガミガミガミガミ!!…
{…何故ワシは今怒られているのだろう?……}
そんな疑問を農家のおじさんが覚える一方で、マサツグの後を追う為さっさと
話しを終わらせようとリンに諦めて怒られるようモツが話し掛けようと
して居ると…
「全部自分の身から出た錆じゃないか…諦め…」
__ガッ!!…ッ!?…
「だずげでぐだざい~~!!
ごのままだどおじおぎが…おじおぎがぁ~!!」
「ッ!?…だああぁぁぁぁ!!!…
分かった!…もう分かったから!!…
一緒に謝ってやるからそのグズグズの顔を如何にかしろ~!!」
モツの言葉に反抗するようリンが更にガシッとモツの脚にしがみ付くと、
必死に号泣でモツに助けを願う様に説得し始める!…そこにはもはや
ただ手の掛かる巨大な子供が居る様にしか見えず、泣き顔でボロボロの顔を
近付けられているモツは驚きと戸惑いを覚えると再度その場で吠え始める!
そしてその顔を近づけて来るリンに対し分かった!と言っては宥め始める
のだが、そこからリンが落ち着きを取り戻すまでに更に数十分の時間が掛かる。
落ち着きを取り戻したリンが涙を拭い、鼻をかんで漸く準備をするとモツと
一緒にクランベルズに向かいパーピィの羽を投げては飛んで行くのだが、
この時点でモツの状態は疲労困憊に近い状態になっていた。
__グググ!…ブォン!!!…ふわぁ!…バシュン!!…
「……はああぁ~…ここまで辿り着くのに時間が…
マサツグも大変だったろうな…」
「へ?…如何かしました?…」
「いや…別に?…」
リンと一緒にクランベルズへ向かい飛び始めては、ただの移動だけで時間と体力を
消耗した事にモツが項垂れた様子で呟く。ただただリンの扱いが難しいと言った
様子で溜息を吐き、普段からリンの相手をしていると言っても過言ではない
マサツグに対してある種の尊敬の念を抱くと、そのモツの様子にリンが疑問を
持った様子で質問をし、その質問に対してモツは何でも無いと答える。その答えに
対してリンは不思議そうな表情を見せては首を傾けて見せるのだが、モツは
疲れた様子でただ項垂れてはクランベルズはまだかと先を見詰め、徐々に見えて
来た街にモツがホッと安堵して居ると、その町の玄関口で見覚えの有る人影が
目に付く。
__ゴオオォォ!!…
「……ッ!…あれは?…」
「…ッ!…あれ?…マサツグさん?…
如何してあんな所で?…何か有ったのでしょうか?…」
「……大体は想像付くが…」
徐々に近づく街と一緒に見えて来たのは先にクランベルズへ移動した筈の
マサツグの姿…クランベルズの町の玄関口前で仁王立ちしてはピクリとも
動かず、ただ立ち尽くしては項垂れて嫌に不気味な雰囲気を辺りに
漂わせていると、町の玄関からは警戒した様子でマサツグの事を見詰める
兵士達の姿が…そんな様子を上空から見たリンとモツがそれぞれ違う反応を
見せる中、二人もクランベルズの町の玄関口前に着地をするとその兵士達に
警戒されているマサツグへ近付き声を掛け始める。
__シュウゥゥン…スタッ!……ポンッ!…
「…おぉ~い!…マサツグさん?…
大丈…」
__グラァ……ドサァ……
「ッ!?!?…」
モツがまず初めにマサツグに近付き声を掛けると、その様子を見た兵士達が
警戒を解く。何故ならそのモツと一緒にハーピィの羽で飛んで来たのは
一目瞭然のギルド職員で、ギルドの関係者であると認識されたからである。
そうして警戒が解けた所でモツが軽くマサツグの肩を叩くのだが、
マサツグは返事をする事無くそのまま前屈みに倒れ出しては受け身を取らずに
地面に倒れ、その様子を見たモツとリンが戸惑った様子で反応し始めると
マサツグを抱き起し慌てた様子で声を掛ける。
「ちょ!?…ヤブ!?…え?…如何した!?…
何か有ったのか!?…敵襲にでも遭ったのか!?…」
「マサツグさん!!…しっかりして下さい!!!…
一体!…一体何が!?…」
__ブツブツブツブツブツブツ…
「え?…何だって?…」
モツが慌ててマサツグを抱き起した際…マサツグの目は死んだ魚の様に
ハイライトが消えて何処か遠くを見詰めており、表情もまるで仏の様に
達観した表情をしては目尻も鼻もピクリとも動いている様子を見せないで居た。
だが唯一口元だけは何かを譫言の様に繰り返し喋っている様に見え、モツが
戸惑いながらもマサツグの口元に耳を近づけてその内容をよく聞いてみると、
マサツグはこう話して居た。
「……こわかったよぅ…」
「……は?…」
「何で今日に限って今回に限って何であんなに低空飛行するんだよ…
お陰で途中の森に墜落しかけるし…
急上昇したと思ったら直ぐに垂直落下し始めるし…
本当……死ぬかと思った……」
「………。」
マサツグの言葉にモツがゆっくりと耳を放し、マサツグに顔を向けると
困惑の言葉と表情を見せる。その時のモツの表情は本当に何を言って居るんだ?…
と完全に困惑した表情をしており、マサツグも徐々に喋れる様になって来たのか
何が有ったのかを表情そのまま…静かに涙を流し出しながら説明し始めると
モツはその説明にただ何も言わず困惑し続ける。リンもその話が聞こえたのか
疑問を感じた様子で自身の制服のポケットからパーピィの羽を一つ取り出すと
マジマジと観察し始め、玄関口ではそんな様子が見れるとあってか
謎のギャラリーが集まり始めていた。
__どよどよ…がやがや…
「もう!…もう二度と!……俺はハーピィの羽は使わない!…
絶対にだ!!…あんな思いをする位なら!!…俺は!!…歩く!!!…」
「……ど、如何反応すれば良いんだ?…
ま、まぁ…とにかく…ヤブの決意は伝わったよ…」
「…うぅ~ん……低空飛行をした?…
ハーピィの羽で今までそんな事例は一件として無かった筈ですが?…」
マサツグがモツの服を力強く掴んでは涙ながらにハーピィの羽は使わない!!…
と誓い、モツがそのマサツグの様子に困惑しながらも今度からは歩くか…と
マサツグに合わせる様子で同意すると苦笑いをする。その一方でリンは今だ
原因が分からないと言った様子でハーピィの羽を見詰めては悩んだ表情を
見せており、ただ町の玄関口である種の感動的場面の再現シーンの様な光景が
繰り広げられていると、何処からか黄色い悲鳴が聞こえ始める…
たかがハーピィの羽…されどハーピィの羽…ハーピィの羽でこの様な
訳の分からない出来事が起きたのはスプリングフィールド王国でこの事件が
最初で最後であった。
応援ありがとうございます!
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