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-第六章-ウィンタースノー連邦-スノーピース~霊峰ウルフハウリング・前編-

-第六章十二節 招かれざる客人と幼女で魔王と寂しがりや-

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フィロとシルビィーナが誰にも悟られる事無く宿屋の外へと出て行くと、そこには

月明かりに照らされて居る街の様子が…そしてそれと同時にその光を浴びて輝く

霊峰の姿が目に映り!…何ならいつの間にか町の方へと降りて来た謎の狼達の姿も

見つけて行くと、二人は静かに構え始める!…それはやっぱり…と言った表情で

呆れて見せると、フィロは狐火を量産して見せ!…シルビィーナはデッキブラシを

手にスンと立ち!…と、その降りて来た狼達もピンポイントで宿屋の前に!…さも

分かって居る様子で身構える二人の前へと急に立ち止まって見せると、一戦交える

雰囲気を見せて居た…


__ザザァ!!…ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!…


「…はぁ~……面倒じゃのう?…

五月蝿い上に身の程知らずとは?…救い様が無い…

…お主も苦労したのでは無いのかえ?…」


この時よく見てみると普通の狼達の他に何やら人型の姿もチラホラ…顔を布で覆い

隠しては身構えて居り!…明らかに何か疚しい感じがその全身から伺えると、

フィロは徐に溜息を零す!…と言うのもそんな連中を目の前にしてもただ面倒!と

しか思っていない様子で、馬鹿にするよう言葉を漏らすとシルビィーナに同意を

求め…と言うよりかは決めつけ!…さもシルビィーナとこの狼達が関係している

様子で言葉を掛けて行くと、シルビィーナもデッキブラシを手にしたまま同意…

やはり呆れた様子を見せて行く!…


「…無いと言えば嘘になりますね?……」


「ッ!…くふふ!…そうか!…

では、すまぬがあの雑魚の方は任せても良いか?…

わっちは後ろで只吠えている駄犬共を黙らせてやるがゆえ!…」


「…かしこまりました……」


それは何かを思い出す様にして言葉を漏らすと、心の底から呆れて居る様な!…

狼達に視線を向けると次には人型達にも視線を向け!…まるで誰が差し向けて

来たのかを把握した様子で辺りを見回し!…フィロもそんなシルビィーナからの

返事に思わず笑ってしまった!とばかりに反応をすると、次にはシルビィーナに

協力を求める!…その際自身は人型の相手をする様に声を掛けると、狼達の方を

任せる!と…するとそのフィロの指示にシルビィーナも同意をして見せ!…徐に

持って来たデッキブラシをスッとビリヤードのキューを構える様な体勢で構えて

見せると、次にはその構えにフィロが…


「ッ!…あの構えは!?……ほほぅ!…

まさかお主がまだ生きて居ったとは!…」


「…ッ?…失礼いたしますが…

私は過去にフィロ様とご面識が御座いましたでしょうか?…

私の記憶が正しいければ無い様に感じるのですが?…」


「ッ!…あぁ、別に気にせんでも良い!…確かに直接的な面識はない!…

しかしわっちはお主に覚えがある!…それだけじゃ!……それに…

お主にとっても最も忌むべき記憶じゃろうからな?…」


「ッ!…なるほど…かしこまりました……」


フィロはそのシルビィーナの構えに覚えが有るのか?、若干驚いた様子で言葉を…

何ならまた見られるとは思っても居なかった具合でポロッと零し!…そんなフィロの

言葉にシルビィーナもハッとした様子で反応をすると、次にはフィロに質問をする…

と言うのもこの構えを知って居るのか?と口にすると、直接面識があったか?に

ついても尋ねて行くが…しかしフィロはそんな質問に対して何でも無い!と…

シルビィーナに不敵に笑いながら返事をすると、何故か言葉を曖昧に!…さも思い

出したくも無いだろう?と言った様子で気遣い出す!…するとこのフィロの返事に

シルビィーナもハッと察した様子で返事をすると、次には狼達の群れに向かって

視線を…と、戻した所で狼達も動き出し!…一斉にシルビィーナへ向かい襲い

掛かると、一気に間合いを詰めに掛かる!…


__ヴァウ!!ヴァウ!!!…ダダッ!!…


「ッ!…参ります!!…」


__ダッ!!…


狼達が吠からから一斉にシルビィーナへ向かい走って行くと、シルビィーナも

ハッとした様子で反応して見せ!…そこからはそのデッキブラシを手に突貫

し出し!…逆に狼達を自身の間合いに入れて行くと、そこから掃除をする様に

猛威を振るう!…この時まだシルビィーナの格好と言うのはメイド服姿!…

しかもロングスカートのクラシカルな物でハイヒールと!…だがそんな動き

難そうな様子を全く感じさせず!…果敢に狼達の群れに向かって突っ込んで

行くと、その様子にフィロも思わず感心!…やはり覚えがある様子で言葉を

零す!…


「ッ!…ほほぅ!…やはり流石よなぁ?…

…まぁ、あれ位は出来て当然じゃがな?…」


__ダダダ、ズザァァ!!!…ヴァウ!!!!…バッ!!!…


その華麗に動くシルビィーナの姿にフィロが感心!…そして人型の狼達に対して

圧を放ち!…と、その一方でシルビィーナはデッキブラシを手に上半身だけを

横に捻り!…さも敵を薙ぎ倒す様に!…そのままの体勢で突如狼達に対して

スライディングを敢行すると、これには狼達も驚き!…思わず跳ねる様にして

避けようとして見せる!…中にはそのままシルビィーナに飛び掛かろうとする

勇敢な狼の姿も在るのだが、シルビィーナはそれを待って居た!とばかりに

デッキブラシを!…


「ッ!……フッ!…」


__グオン!!…ドガガガガ!!!…ドサッ!!…キャインキャイン!!…


「…ッ!…ッ……フッ!!」


__シュパアアアアァァァァ!……


迷う事無く横一閃!…見事にその飛んでいる狼達!…並びに飛び掛かってこよう

として来た狼達を捉えて行くと、軒並みそのまま三塁打!…流し打ちで仕留めて

行く!…それはそれぞれ吹き飛ばされた様に低空を舞うと、次にはドサッと重い

音を…中には一撃で仕留め切れずに悲痛の叫びを!…そしてその場から逃亡を

図り!…シルビィーナも後味が悪い!とばかりに苦虫を噛んだ様な表情を見せる

と、次には右足を畳み込んで大きく踏み込み!…そこからムーンサルトを決めて

行く!…その際他の狼達の群れの頭上を飛んで行くと、これまたフィロが喜んで

見せ!…


「おぉ!…あの状態から良く飛ぶのぅ!!…

さすがはと言ったところか!!…」


__ヒュウゥゥゥ…シュタッ!!…


姿勢を崩す事無く宙を舞う姿は美しく!…月夜と相まってかそのシルビィーナの

綺麗な銀髪が輝きを放つと、辺りを魅了し!…それはまるで絵画の様な!…

何とも言えぬ美しさに思わず人型達!…並びにフィロが喜んで言葉を漏らして

居ると、シルビィーナはそのまま狼達の群れの真ん中に!…難無くスチャッと

着地を決める!…それはまるで一々単体で撃破するのが面倒と言った様子で構え

直すと、纏めて来い!とばかりに狼達を睨み!…と、そんなシルビィーナの

静かな殺気に狼達も当然警戒!…ジリジリと後退をし始め!…明らかに逃げ腰の

様子を露わにすると、次にはシルビィーナが呆れた反応を…


「…ふぅ……

誰の命でここに来たのかは知りませんがこのまま

私達の邪魔をすると言うのなら容赦は致しません…

全員…お仕置きを受けて貰います!!…」


シルビィーナは一息吐く様に溜息を漏らすと徐に辺りを見回し…と言うのも狼達の

戦意喪失を確認して行き!…次に言い聞かせるよう狼達に声を掛けて見せると、

まだやるのか?とばかりに言葉を続ける!…何なら更に殺気を放ってキラッと

シルビィーナの目が妖しく輝く様子を見せると、そのシルビィーナの目に狼達が

委縮し!…と、その一方でシルビィーナは構わず宣戦布告!…お仕置きをする!

と狼達に向けて宣言をすると、その瞬間辺りの空気が!…まるで寒さが増した様に

引き締まり!…シルビィーナの様子もまるで暗殺者の様に冷酷で残忍なモノに

変わって行くと、次には狼達が逃げ出し始める!…


__…ゾクゾクゾクゾクウゥッ!?!?!?……キャインキャイン!!!…


「……ん?…何じゃもう仕舞いか?…

もう少し楽しめると思ったのじゃが…」


まるでヤバいモノと出くわした様に怯えて見せると、各々がシルビィーナに対して

背を向けて逃げ出し!…と、シルビィーナもその様子を見てそのまま放置…決して

追い駆けると言った事はせず、狼達が逃げて行く様子を見詰めて居ると、次には

退屈そうに…シルビィーナに終わりか?と声を掛ける。何なら終始その様子を見て

楽しむ様に、もはや観客と化して居て!…では人型の狼達は如何なったのか?と

言うと、いつの間にか地面を這い!…まるで重圧に動けない!…何やら可笑しな

倒れ様を見せて居ると、シルビィーナもシルビィーナでフィロに返事…終わった

とばかりに話しを続ける…


「…あの狼達も自分の命が危ないと感じればさすがに逃げ出します…

…ただ、誰かの指示を聞いて動いていただけで…あの子達に罪は有りません…

…問題が有るとするなら…あの子達を差し向けて来たその張本人で……」


「ッ!…あぁ、それなら当には解決しておる。」


「ッ!…え?…ッ!?…」


__ジタバタ!…ジタバタ!…


この時まだシルビィーナは地面を這う人型達の様子に気付いて居らず、ずっと狼達の

後姿を見送っており…その際命まで取らなかった理由を話し出し!…ただ操られて

居ただけである事も続けて話すと、問題は別にある!と続ける…何でもその狼を差し

向けて来た連中が居る事を口にすると、今後も警戒をしなければならない様な話を

して見せるのだが!…しかしフィロはその話を聞いてケロッとした様子!…と言う

のも既に解決して居る!とシルビィーナに話し!…その話にシルビィーナもえ?…

っとばかりに戸惑った様子で振り向き始めると、そこで地面を這う人型達の姿を

目撃!…当然驚きを露わにする!…しかしその一方で更にフィロは徐に霊峰を指差す

と、シルビィーナにあるモノを見せ!…


「ほれ?…」


「…ッ?……ッ!…」


__ポゥ!…


「…あ、あれは?…」


フィロは霊峰の方を指差し、そこで何か灯りが点いて居る様子をシルビィーナに…

となるとシルビィーナもそんなフィロに唆されて目を凝らすとそれを見つけ!…

何か光りを放って居る…それは霊峰の三合目辺りであろうか?…それも風に揺らめ

いて踊って居る様にも見えてしまうと、次にはフィロにアレは何?と言葉を漏らす…

勿論そんな不可解な現象に理解が追い付かず戸惑って居ると、フィロは不敵に笑い

ながらその正体を明かし!…


「…お主も良く知って居る連中じゃと思うぞ?…

…アレは先程連中じゃな!…

…ここに寝て居る者達の気から位置を割り出し!…

ちょっかいを掛けて来た罰を…わっち自らがくれてやったのじゃ!…」


「ッ!?…な!?…」


「…それに先程からいけ好かん目でわっちらの事を見て来て居ったから…

別の同情の余地も無い!!…自業自得の結果と言う奴じゃな?…

…相手を殺そうとする事は…

また自分も殺されるかもしれないと言う覚悟を持つ事!!…

そしてその対価をあ奴らは払う羽目になってしまっただけの事!…

別に気に掛ける程でも無い…取るに足りん者達と言う事よ…

…同胞その手を掛けようとした罪!…

今あそこにて清算して居る様子がアレと言う事じゃ!…

…さて、これで漸くゆっくりと寝れると言うものじゃな?…」


フィロはその煌々と何かが灯っている様子を人と言い、自分が火を点けたと言葉を

続け!…その際どうやって火を付けたのかも軽く話し!…その話を聞いて途端に

シルビィーナが驚き戸惑った反応を露わにすると、更にフィロが話を続ける!…

なんでもフィロからすると最初にここへ来た時から感じて居たらしく、ずぅっと

気に喰わなかった事を話し!…何なら火を点けた事に対しても自業自得!と…一切

反省をしない!…それどころか向こうに非がある事を続けて話すと、自身の事を

正当化する!…その際シルビィーナが戸惑って居る様子に対しても軽く言葉で

刺して行くと、シルビィーナもビクッと!…


「ッ!?…ッ……」


「ふあ…あぁ~あ…

さて、シルビィーナよ?…」


フィロとしても別にシルビィーナの事を疑って居る訳ではない!…しかし何か敵に

対して同情をして居る様に見られた事から言葉を!…となるとそんなフィロからの

言葉に対してシルビィーナは戸惑い!…まるで図星を突かれた様にその場でピタッ

と固まってしまう反応を露わにして見せると、次には徐々に俯き…と、その一方で

フィロもやりたい事やって満足したよう!…徐に欠伸をして見せ!…続けて伸びも

少ししてシルビィーナに声を掛けて行くと、シルビィーナも戸惑った具合にハッと

する!…


「ッ!?…は、はい!!…ッ!…」


__ショボショボ…ショボショボ……ふあ…あぁ~あ……んにゃんにゃ…


慌てて顔を上げるとそこには眠そうにしている狐の幼女が…それは何からも残虐性

など微塵にも感じられないモノであり、寧ろ愛くるしくさすら覚えるモノであるの

だが…しかしいざ中身を開けてみるとしっかり魔王!…普段マサツグやくまさんに

叱られ!…シロと喧嘩をしているこの幼女が魔王とは改めて信じられない様子で

戸惑って居ると、フィロは構わず話を…眠い目を擦りながら寝ようとシルビィーナ

に持ち掛ける…


「わっち達はもう一眠りをしようではないか…

このまま寝不足であの高い山を登らされると持たなくなるからの…

そうすればマサツグや他の者にも迷惑が掛かる…」


「ッ!……」


それこそ自身が眠い事も露わにするのだが、それよりもマサツグ達に迷惑が掛かる

事を口にし…と言うのも他者に対しては圧倒的身勝手振りを見せる一方…やはり

マサツグ達の事が大切なのか、仲間を気遣う!…或いは迷惑を掛けたくないと言った

態度をシルビィーナに見せて行くと、そんなフィロの様子にシルビィーナが思わず

驚いてしまう!…何故なら目の前にはいまだに地面を這う同胞達の姿が!…そして

霊峰の方でもいまだに炎が揺らめいて居り!…そんな人を人とも思っていない様な

残虐性を見せる中、ただマサツグ達の事だけを気に掛ける姿にこれが魔王?と言った

反応を見せて居ると、更にフィロは言葉を続ける…


「休める時は休め…じゃ…」


__カコッ…カコッ…カコッ…カコッ…


「ッ!!…はい!…」


それはシルビィーナの事も気に掛ける様に声を掛けると、フィロは先に宿屋へと

戻り…何ならチラッと振り返るなり不敵に笑うのではなくやんわりと…まるで

仲間に話し掛けるよう好意的な反応を露わに!…さも自分達の仲間である事を

認めた様に接して行くと、これにはシルビィーナもハッ!と…フィロに認められた

様な気がしては無自覚に頬が緩み!…思わず少し笑みが零れる様なそんな表情を

浮かべて見せると、次にフィロに返事をする!…そしてシルビィーナもフィロの

後を追う様に宿屋に戻ると、本当に地面を這う人型達を放置し!…そして宿屋に

戻った二人は自室…ではなく!…マサツグとシロの居る部屋の方へと向かって行く

と、添い寝!…同衾を仕掛けて行くのであった!…


因みに後日その地面を這って居た人狼は、見事に寒さに耐えれなかった様子で

凍死…遺体を残す事無く消えて居り…その場にアイテムだけを残して行くと、

ちょっとしたミステリーと…街中にアイテムがドロップして居る事に冒険者プレイヤー

から疑問を持たれるのであった。


さて次の日マサツグ達がログインしてウルフロンドの宿屋で目を覚ますと…


__シュイイィィン………パチッ……グッ…ッ!…


「…はあぁ~……毎度の事ながらこの拘束力よ…

まるでエグ○ディア…って、体には拘束具は無いか…

それに足はフリーだし…」


そこにはいつもの光景が広がっていた。マサツグの両腕はフィロとシルビィーナで

ガッチリホールドされており、腹の上にはシロが陣取り!…この時勿論拘束から

逃れようと若干の抵抗を見せるのだが、これまた当然の如くその拘束が剥がれる

事は決してなく…とにかく完全拘束!…その様子にもはやいつも通りと…思わず

某・カードゲームのモンスターになった様な気分である事を漏らしながら溜め息を

吐いて居ると、次には泊って居る部屋の扉からノックが…


__コンコン!!…


「ッ!…ん?…誰だ?…多分ログインしてるのは俺とアイツだけだから…

まだモツと親父とくまさんでは無い筈…

となるとアヤとリーナ辺りが怪しくはあるが?…

でもそんな早朝から俺に用がある様な二人じゃ?…」


それは当然誰かが自分を尋ねに来ている様子のノックで有り、そのノックの音に

マサツグは誰?と…何ならログインをして居るのは自分とオリハだけである事を

確認しつつ…他の仲間達で無い事!…可能性としてアヤとリーナが最有力候補で

ある事を続けて考え漏らすして居ると、次にはその扉の向こうから…これまた

当然聞き覚えのある声が聞こえて来る…と言うのもそのノックをして来た人物と

言うのは…


「…私だ、パルシディアナだ。

付かぬ事を聞くがそちらにシルビィーナと言うメイドが行っては居ないだろうか?…

朝起きたら忽然と姿を消していて…

私だけこの宿に置いて行かれたのかと心配になっているのだが?…」


{……魔王なのに置いて行かれて不安とは…

フィロと同じく本当に魔王かと疑ってしまうな…

…さて、如何やって返事をしたモノか?…

別に部屋に突入はされないだろうが?…}


マサツグ達の部屋の扉をノックして来たのはパルシディアナであった!…その際

パルシディアナはまず自身の誰なのか?と口にすると、続けて質問をし始め!…

なんでも朝起きたら隣に居る筈の人物が居ないと…その事に不安を覚えたのか

こうしてマサツグに確認を取りに来た事も続けて話すと、その言葉にマサツグは

困惑…思わず子供?と疑ってしまう!…と、その際フィロにもチラッと視線を

向けて行くと、そこには幸せそうな表情で涎を垂らしながら眠るフィロの姿が…

となるとそんなフィロの様子にマサツグも呆れ…さて如何返事をしたモノか?と

言った具合に悩もうとして居ると、次には更に言葉が…


「………。

やはり返事が無い…やはり私は置いて行かれたのか?…」


「…っと、そんな事を考えてる暇は無かったな…

不安がってるし早く返事を…」


__ガチャ!ガチャ!!…ガチャ!ガチャ!!…


「うおッ!……え?…」


悩む時間すらない程に扉の向こうからは不安がる声が…それは至って冷静を装って

居る様に聞こえるのだが、よぉく聞いてみるとその声は若干震えて居る様に聞こえ…

となるとマサツグも悩んで居る場合では無い!と…直ぐにパルシディアナにまだ

部屋に居る事を返事しようとするのだが、次には部屋のドアノブがガチャガチャと

荒ぶり!…するとそんな物音にマサツグも驚き!…これまた返事が遅れた様子で

戸惑って居ると、更にパルシディアナが暴走する!…


「…鍵が掛かっている……もうチェックアウトしたと言う事か?…

…こうなったら…ここをブチ破って中を確認した後!…

ロープウェイとやらの場所まで駆け抜けなくては!!…」


「……へ?」


「ハアアアアアア!!!」


「ッ!?!?…いやちょっと待って!!…」


パルシディアナは部屋に鍵が掛かって居る事を確認すると、徐に一人マサツグ達の

行動を推測し始め!…と、そこで自分が置いて行かれたと思い込み!…突如部屋の

扉をブチ破り中に突入する事を口にすると、何やら冷気を溜め始める!…すると

そんな様子に気が付いたマサツグとしても戸惑うばかりで、思わず気の抜けた言葉

を漏らし…だがその間にもパルシディアナは冷気をチャージ!…次には勇ましい

声で何かをぶっ放そうとして居る様子が伺えると、マサツグもハッとした様子!…

慌てて止める様に声を掛けようとするのだが!…


__カッ!!…ドゴオォォォォォォンン!!!……


「ッ!?…な…何じゃ!?…敵襲か!?…」


「マサツグ様!!…ご無事で!?…」


「ッ!?…ご…ご主人様!?…な、何が起きて……」


パルシディアナはマサツグの静止が聞こえなかった様子で氷塊をブッパ!…見事に

部屋の扉を粉砕し!…となるとそんな物が飛んで来た事で辺りに轟音が響き渡り!…

これには同じ部屋に居たシロが飛び起き!…同衾をして来たフィロとシルビィーナも

途端に驚いた様子で跳ね起きると、直ぐに警戒体勢へと入って行く!…それこそ

今日の未明の件が有った事も含めてシルビィーナが跳ね起きると、すぐさまマサツグ

ベッドの前へと立ち塞がり!…フィロもフィロで寝惚けながらも狐火を量産!…

まだ懲りて居ないのか!?とばかりに敵意を見せると、そこに居たのはパルシディ

アナ!…当然その様子に困惑する!…そしてマサツグも止められなかった事に

ガックリ折れると、言葉を徐に零し…


「…遅かった……」


__ギッ…ギッ…ギッ…ギッ…


「……ッ?…何だ居るのではないか?…

それに起きているのなら返事の一つ位してくれても良いでは無いか!…

…私は一人にされるのが嫌なのだ…」


「……こっちが返事をする前に乗り込んで来たと思うのだが?…」


無残な姿の扉に頭を抱え…これ幾らするのだろう?とばかりに嘆いて居ると、

その一方ではパルシディアナが!…扉をブチ破った事に反省せず!…堂々と

部屋に入りマサツグ達が居る事を確認すると、続けて文句を口にする!…

その際若干ホッとした様な反応を見せるとモジモジとした様子を見せつつ…

一人は嫌と言葉を漏らし!…と、そんな文句に対してマサツグも呆れた様子

で反論して見せ!…状況が飲み込めないフィロやシルビィーナがポカ~ンと

した具合に固まって居ると、他の仲間達も聞き付けたのか!…慌てて現場へと

集まり出す!…


「い、今の音は何や!?…まぁ大丈!!…ッ!?…」


「ヤブ!!…無事か!?……って、うわぁ!!…」


「お、お客さん!!…ご無事で!?……ッ!?…」


__何だ何だ!?…今の音!?…


__誰かが部屋の中で錬金術でもして爆発させた様な音にも聞こえたが!?…


「……ッ?…なぁ、玉藻前よ?…

何故この者達はこの様に奇妙な物を見る様な目で集まって来たのだ?…

別に可笑しい事等やってはいない筈なのだが?…」


後からログインして来たであろうマサキやくまさんが心配した様子で言葉を口に!…

そしてモツやアヤ、リーナも武器を手に警戒をした様子で部屋を覗き!…しかし

それだけには当然止まらず!…勿論店主も物音を聞き付けた様子で慌てて参上!…

更に他の冒険者達も何事!?と…現場はそれはもう見事なまでに混乱の渦に飲み

込まれるよう慌しくなってしまうと、パルシディアナは困惑!…さも原因が分かって

居ない様子で首を傾げ…次にはフィロにこれは何?と質問までし始めてしまうと、

フィロも徐々にハッキリとして来たのか!…呆れた様子を露わにする!…


「……はあぁ~……

…そう言う事かえ?……」


「…ッ?」


「お主!…まだ常識があの時代で止まって居るのか!!…

討ち入りに暗殺の時代は当の昔に終わって居るわ!!…

…箱入りにも程があるぞ!!…」


フィロは今一度冷静に辺りを軽く見回すと、マサツグの真似をする様に頭を抱え…

そして溜息を一つ吐いて見せ…コイツやりやがった!とばかりに呆れた態度を露わに

すると、その様子にパルシディアナが更に戸惑う!…それこそもう一度首を傾げる

様なそんな素振りを見せるのだが、次にはフィロがパルシディアナに文句を!…

と言うのもいつの時代の話をして居るのか?、とにかくパルシディアナが時代遅れで

ある事を口にすると、パルシディアナは当然ショック!…さもお決まりとばかりの

戸惑いの言葉を口にする!…


「ッ!?…なん…だと!?…」


「…それに!…その壊した扉は誰が弁償するのじゃ!?…

お主は再生魔法など持っては居らなかったよな?…

直す者の事も考えずに何をしてくれておるのじゃ!!!」


「グ…グゥ!!…」


いつもなら逆の立場に居るフィロが珍しくパルシディアナに説教をする!…そして

説教をされるパルシディアナも苦虫を噛んだ様な表情で悔しがるも、フィロの正論に

言い返す事が出来ず!…ただただ落ち込む様子でギュッと奥歯を噛み締め!…更に

徐々に徐々にとフィロに圧されて行ってしまうと、何やらプルプルと震え始める!…

となるとそんな光景にマサツグも堪らず驚いていると、思わずフィロにいつもの

お前!とばかりに言葉を…


「……ッ!…えぇ~っと…

…今日の<お前が言うかスレ>はここですか?…

それとも特大ブーメラン待ちですか?…」


「ッ!!…マ、マサツグは黙って居れ!!……とにかく!!…ッ~~~~…」


「…ッ!……あぁ~っと…ははは…

す、すみません!…部屋の弁償代は勿論出させて頂きますので!…」


「ッ!…申し訳ないけど…ウチのモンがちょっとやらかしたみたいですねん!…

別に事件とかでは無いんで…解散したって下さい!!…豪いすんませぇん!!…」


何ならその意味が伝わるかも怪しい所ではあるのだが、マサツグは呆れた様子で

言葉を口に…と、以外にもフィロもマサツグが言いたい事を理解した様子で…

マサツグの言葉に対してムッとして見せ!…そして戸惑い気味に振り返りながら

マサツグにも文句の言葉を漏らして行くと、パルシディアナに説教を続ける!…

その際モツも状況を理解した様子で苦笑いをすると、次にはマサツグの代わりに

宿屋の店主へ謝り始め…と、その一方でマサキとくまさんも状況を理解!…

その場に集まって来た冒険者達に事情を説明して行くと、何とか解散をして貰う…

その間事件の部屋に居たマサツグはシロを抱えたまま椅子の方に移動をすると、

座ってフィロの説教が終わるのを待ち…その傍らではシルビィーナがまるで二人の

警護する様に立って居り…そうしてフィロの説教が終わったのは三時間後の事!…

説教が終わる頃には本来ならクールキャラであろうパルシディアナが涙目でフィロの

説教に耐えて悔しがり!…その肝心のフィロは息切れを起こす事態になっていた!…


「グスッ!…ヒック!!…だっで!!…ざびじがっだんだもん!!…」


「ぜぇ!…ぜぇ!…えぇ~い!!…

お主はそんな[きゃら]ではなかったであろうに!!…」


「…何と言うか壮絶な説教だったな?……

魔王同士があんな説教をする所…今まで見た事が無いや…」


「……私も…本当にお二方が魔王と呼ばれている方なのか時々考え…

忘れそうになってしまいます…」


この時パルシディアナは見事に幼児化!…正座をしてグシャグシャに泣き…

その一方でフィロはツッコミの嵐!…その際今の常識等を叩き込み!…壮絶な

説教に終止符を打っていた!…何ならやはり納得が出来ない所等が出て来ると、

パルシディアナが一言反論をするのだが…それに対してフィロは十の言葉で

抑え付け!…否応なしに間違っている事を理解させると、尻尾を逆立て怒る

のであった!…そして漸くその場が落ち着きを見せ始めた所でオリハが登場して

来ると、然程先程からの騒動など気にしていない様子で…


__ギッ…ギッ…ギッ…ギッ…


「ふあ…あぁ……おはよ~…

…って、なぁにこれ?…」


「おはよ~…って…

お前は今まで何をしていた?…

これだけの騒ぎが有ったにも拘らず…」


「え?…いや…今日の服(アバター)を決めていたんだけど?…」


「……お前だったらどんな戦場でも絶対に生きて返って来そうな気がするわ……」


「…え?…あ、ありがとう?…」


呑気に欠伸をしながらマサツグ達に挨拶をして見せ…そしてこの現状は何?と眠い

目を擦りながら問い掛け出すと、そんな様子にマサツグ達が呆れて見せる!…

それそこマサツグがツッコミを入れる様に挨拶をすると、今まで何をして居た?と

逆に質問!…するとオリハは伸びをしながら悩んで居た!と…コーディネイトに

いつも通り力を入れて居た事を口にすると、その言葉にマサツグは呆れ…もはや

称賛の言葉を送り出す!…するとそんなマサツグの言葉を如何受け取ったのか?…

オリハは素直にお礼を言い…と、この様子に面々も苦笑い!…とにかくその場の後

処理を全員で済ませに掛かって行くと、出発の準備を整えるのであった!…

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