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王都でも渦中
048:王都到着。
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ランスロット家を出て三日が経過した。
馬車での移動はアニメとか魔道具では時間を潰すのに飽きて本当に退屈だったが、ベラに膝枕してもらったりグリーテンに胸枕をしてもらったりおよそ普通の男ができないことをしてもらったから良かったです!
山を越えたり幅が広い川があるから遠回りしないといけないとか、そういうところがあるから王都まで時間がかかってしまう。
まあそこは飛行船を作れば問題ないと思うが、道を整備して人の行き来を活発にした方がいいこと尽くしな気がする。
「見えて来たわね」
「あれが……」
馬車の窓から外を見ると、高い城壁に囲まれている中で高い王城が建っている国が見えてきた。あそこがブリテン王国の王都。
大きさで言えば間違いなくうちの街よりか大きく、人口密度が高い。
それだけ多くの人がいるということは、それだけ経済が回っているし珍しいものがあるかもしれないと少なからず心躍っている。
まあ普通に珍しい物ならメルシエさんが持ってきてくれるのだが、それでもそういう雰囲気がいいと思うところはある。
「大きいね……!」
「大きいだけよ。そんなに大したところではないわ。まだランスロット家の方が楽しめるわ」
「人が多くいればそれだけ交流があるというだけで、あまり大したものはありません」
あのね? そういうのは行ったことがある、暮らしたことがある人が言うことなんだよ。行ったことがない俺からすれば、しかも前世でこういうところに全く行かなかった俺なんだから王城なんて見たくて仕方がないんだよ。
「アーサーさま、くれぐれもお一人で動かないでください。最初に言っておきます。アルノさまからも言われると思いますが、私からも言っておきます」
「さすがに王都で一人にはならないよ……」
「私は不安ですよ」
「あー、うん。一人にはならない」
俺には前科があるからあまりベラに信用されていないからなぁ。
「大丈夫よ、今回は私がアーサーの付き添いをするから」
「それは大丈夫ではありません。あなたが一番危険です」
「なによそれは? 私がアーサーに危害を加えるわけがないじゃない」
「そう言ことを言っているのではありません」
うん、またベラとグリーテンのやり取りが始まってしまった。
別に俺はグリーテンに食われてもいいと思っているし、歳の差なんて気にしないからベラも食べたいくらいなんだが。
城壁が目の前まで近づいて行くと衛兵による検問が行われていた。貴族であるランスロット家の馬車は商人や一般人とは違い別の列で検問が行われる。
先頭馬車に乗っているお父上様が馬車から降りて衛兵と何か話している。
「地上だとこうやって検問をしているけど、飛行船だとどうなるの?」
ふとした疑問をベラにぶつける。
「飛行船だと七聖法が検問に当たっています」
「七聖法……グリーテンさんもしたことがあるの?」
「私はないわよ。それはあのジジイがすることよ」
「よく言いますね、あなたよりも年下なのに」
「見た目の話よ」
確かこの国にはグリーテンと、あと一人七聖法がいるんだったか。
七聖剣、七聖法、七聖具が世界中で選ばれた武器と魔法と魔道具に優れた人たちのことだが、案外七聖法の一人と会えているから他の人たちとも会えそうだ。
「まあ公爵家だからあのジジイに会うことがあると思うわよ」
「王さまに仕えているんでしたっけ?」
「そうそう。もしあのジジイに何かされたらすぐに私に言いなさい、すぐに潰してあげるから」
「あー、うん、その時はお願いします」
グリーテンがどれほどの地位を持っているのかは分からないが、それでも後ろ盾があるのに越したことはない。
「アーサーさま、お分かりになられていると思いますが、本当に頼ってはダメですよ?」
「失礼ね。私は悪魔じゃないわよ」
「そういうことではありません。あなたは特別大公の地位を持っているのですから、あなたの言葉一つでどれだけ人を動かせると思っているのですか」
特別大公……大公!? 公爵家よりも地位が高いぞ!?
「えっ? グリーテンってウチよりも地位が高かったの?」
「えぇそうよ。国としてはアヴァロンの住人である私を手放したくないから特別大公という地位をくれたのよ」
「それなら何でお父さんに敬語を使ったり、お父さんが敬語を使わなかったりしているの?」
「一応私の雇い主だから、そこら辺を区別しているのよ。雇い主と言っても、私にお願いしてきたのだけどアーサーがいて本当に受けていいと思っているわ」
へぇ、そういうことだったのか。でもアヴァロンのことを知ったらグリーテンを特別大公にするのに納得してしまう。
そう話している内にこちらの馬車にお父上様が来た。
「検査をするから降りてくれ」
「うん、分かった」
馬車の検査を軽くするため俺たちは降りて衛兵の人に検査してもらうが、結局荷物は空間魔法で収納しているからそれって普通に無意味なんじゃ……。
「空間魔法があるから無意味って思っている顔ね?」
「えっ、うん、思ってる顔をしてる」
こっそりとグリーテンに耳打ちされたから素直に答えた。
「そうよ、無駄なのよ」
「無駄なんですか」
「でも空間魔法を使える人は数多はいないわけで、空間魔法があるからって検査をしないわけにもいかないからしているのよ」
「そういうものですか」
「そういうものよ」
まあそうだよな、空間魔法を持っていない人が何か悪さを企んでいるのは阻止できるわけだからな。
「はい、問題ありません。ご協力ありがとございます」
「いえ、ご苦労様です」
衛兵の人に通されて俺はようやく王都に入ることができた。
王都は賑やかで、活気ある人たちで溢れていた。王城まで続く道には多くの馬車は人が行き交いしている。
「うわぁ……王都だ……」
「ふっ、こういう反応をしたのはウチの子供たちではアーサーだけだったな」
「えぇ、そうねぇ~。二人ったら~、すぐに帰りたいって言っていたものね~」
シルヴィー姉さんとルーシー姉さん、この景色を見てそう思っているとはベラといいグリーテンといい……あれ? もしかして王都を見て圧巻されているのは俺だけ? 普通に俺がおかしいのか?
「お父さん、お母さん、王都を見て回らないの!?」
いや違う。俺がおかしいはずがないから、五歳のように見て回ることをお父上様とお母上様に聞いてみる。
「予定通りに王都にたどり着いたから、明後日に行なわれるパーティーにはまだ時間がある。それにパーティーが終わっても俺に予定があるから、時間がある時にでもベラとグリーテンと一緒に行くといい」
「ほんと!? それなら今行ってもいい!?」
「今は先に宿に向かわないといけないから、また後でだ」
「はーい」
よし! これでベラとグリーテンとのデートができるようになった。
ふふふっ、どれだけ『叛逆の英雄』のマンガが広まっているのかを見ておきたいところだ。
何か王都でしか見られないものがあるかもしれないから、そういうものを見てみたいところではある。
しかし……かなり目立っているな。公爵家なんだから、まあ目立っても仕方がないと言える。
「さすがはランスロット家ね、他の貴族とは目立ち方が違うわ」
俺の右隣にいるグリーテンがそう独り言なのか、俺に言っているのか分からない声で言葉を発した。
「はい、ランスロット家ということもありますがアルノさまの戦果も大きく関わって来ています」
あー、それなんかベラとの授業で聞いたことがある。
俺はおろかシルヴィー姉さんも生まれてない頃、隣国であるアガルタ帝国との戦争が起きていた。その戦争でお父上様は敵将を何人も打ち取り、操っていた魔物も殺し、その数は数えきれないほどだと聞いている。
その時にかなりすげぇ人なんだなと認識した。見た時から認識はしていたんだが、聞くのとでは印象は違う。
今はアガルタ帝国と停戦状態になっているようだが、いつアガルタ帝国から攻撃を受けてもいいようにしているらしい。
メンドウなことをしてくれるな、マジで。
「あれ? それってお父さんの息子である僕も注目の的ってこと?」
「はい、その通りでございます。今更ですが」
「でもアーサーが心配することはないわ。あなたの功績が世に知られたらあなたの父親の功績なんて霞むわよ」
「グリーテンさまの言葉はともかく、アーサーさまは自信を持っておられれば構いません」
「うん……頑張る」
はぁぁ、公爵家に生まれただけじゃなくて、すげぇ公爵家に生まれたんだよな、俺って。
まあ俺のことを下に見てきてもいい……いやダメだな。お父上様が築き上げた株が落とされるのか。それなら俺のことを見下せないように堂々としておくのが正解なのだろう。
それにアンリ・ペンドラゴンまで相手をしないといけないとなると……かなりハードそうだがまあ俺ならなんとかできる。そのための全能だ。
馬車での移動はアニメとか魔道具では時間を潰すのに飽きて本当に退屈だったが、ベラに膝枕してもらったりグリーテンに胸枕をしてもらったりおよそ普通の男ができないことをしてもらったから良かったです!
山を越えたり幅が広い川があるから遠回りしないといけないとか、そういうところがあるから王都まで時間がかかってしまう。
まあそこは飛行船を作れば問題ないと思うが、道を整備して人の行き来を活発にした方がいいこと尽くしな気がする。
「見えて来たわね」
「あれが……」
馬車の窓から外を見ると、高い城壁に囲まれている中で高い王城が建っている国が見えてきた。あそこがブリテン王国の王都。
大きさで言えば間違いなくうちの街よりか大きく、人口密度が高い。
それだけ多くの人がいるということは、それだけ経済が回っているし珍しいものがあるかもしれないと少なからず心躍っている。
まあ普通に珍しい物ならメルシエさんが持ってきてくれるのだが、それでもそういう雰囲気がいいと思うところはある。
「大きいね……!」
「大きいだけよ。そんなに大したところではないわ。まだランスロット家の方が楽しめるわ」
「人が多くいればそれだけ交流があるというだけで、あまり大したものはありません」
あのね? そういうのは行ったことがある、暮らしたことがある人が言うことなんだよ。行ったことがない俺からすれば、しかも前世でこういうところに全く行かなかった俺なんだから王城なんて見たくて仕方がないんだよ。
「アーサーさま、くれぐれもお一人で動かないでください。最初に言っておきます。アルノさまからも言われると思いますが、私からも言っておきます」
「さすがに王都で一人にはならないよ……」
「私は不安ですよ」
「あー、うん。一人にはならない」
俺には前科があるからあまりベラに信用されていないからなぁ。
「大丈夫よ、今回は私がアーサーの付き添いをするから」
「それは大丈夫ではありません。あなたが一番危険です」
「なによそれは? 私がアーサーに危害を加えるわけがないじゃない」
「そう言ことを言っているのではありません」
うん、またベラとグリーテンのやり取りが始まってしまった。
別に俺はグリーテンに食われてもいいと思っているし、歳の差なんて気にしないからベラも食べたいくらいなんだが。
城壁が目の前まで近づいて行くと衛兵による検問が行われていた。貴族であるランスロット家の馬車は商人や一般人とは違い別の列で検問が行われる。
先頭馬車に乗っているお父上様が馬車から降りて衛兵と何か話している。
「地上だとこうやって検問をしているけど、飛行船だとどうなるの?」
ふとした疑問をベラにぶつける。
「飛行船だと七聖法が検問に当たっています」
「七聖法……グリーテンさんもしたことがあるの?」
「私はないわよ。それはあのジジイがすることよ」
「よく言いますね、あなたよりも年下なのに」
「見た目の話よ」
確かこの国にはグリーテンと、あと一人七聖法がいるんだったか。
七聖剣、七聖法、七聖具が世界中で選ばれた武器と魔法と魔道具に優れた人たちのことだが、案外七聖法の一人と会えているから他の人たちとも会えそうだ。
「まあ公爵家だからあのジジイに会うことがあると思うわよ」
「王さまに仕えているんでしたっけ?」
「そうそう。もしあのジジイに何かされたらすぐに私に言いなさい、すぐに潰してあげるから」
「あー、うん、その時はお願いします」
グリーテンがどれほどの地位を持っているのかは分からないが、それでも後ろ盾があるのに越したことはない。
「アーサーさま、お分かりになられていると思いますが、本当に頼ってはダメですよ?」
「失礼ね。私は悪魔じゃないわよ」
「そういうことではありません。あなたは特別大公の地位を持っているのですから、あなたの言葉一つでどれだけ人を動かせると思っているのですか」
特別大公……大公!? 公爵家よりも地位が高いぞ!?
「えっ? グリーテンってウチよりも地位が高かったの?」
「えぇそうよ。国としてはアヴァロンの住人である私を手放したくないから特別大公という地位をくれたのよ」
「それなら何でお父さんに敬語を使ったり、お父さんが敬語を使わなかったりしているの?」
「一応私の雇い主だから、そこら辺を区別しているのよ。雇い主と言っても、私にお願いしてきたのだけどアーサーがいて本当に受けていいと思っているわ」
へぇ、そういうことだったのか。でもアヴァロンのことを知ったらグリーテンを特別大公にするのに納得してしまう。
そう話している内にこちらの馬車にお父上様が来た。
「検査をするから降りてくれ」
「うん、分かった」
馬車の検査を軽くするため俺たちは降りて衛兵の人に検査してもらうが、結局荷物は空間魔法で収納しているからそれって普通に無意味なんじゃ……。
「空間魔法があるから無意味って思っている顔ね?」
「えっ、うん、思ってる顔をしてる」
こっそりとグリーテンに耳打ちされたから素直に答えた。
「そうよ、無駄なのよ」
「無駄なんですか」
「でも空間魔法を使える人は数多はいないわけで、空間魔法があるからって検査をしないわけにもいかないからしているのよ」
「そういうものですか」
「そういうものよ」
まあそうだよな、空間魔法を持っていない人が何か悪さを企んでいるのは阻止できるわけだからな。
「はい、問題ありません。ご協力ありがとございます」
「いえ、ご苦労様です」
衛兵の人に通されて俺はようやく王都に入ることができた。
王都は賑やかで、活気ある人たちで溢れていた。王城まで続く道には多くの馬車は人が行き交いしている。
「うわぁ……王都だ……」
「ふっ、こういう反応をしたのはウチの子供たちではアーサーだけだったな」
「えぇ、そうねぇ~。二人ったら~、すぐに帰りたいって言っていたものね~」
シルヴィー姉さんとルーシー姉さん、この景色を見てそう思っているとはベラといいグリーテンといい……あれ? もしかして王都を見て圧巻されているのは俺だけ? 普通に俺がおかしいのか?
「お父さん、お母さん、王都を見て回らないの!?」
いや違う。俺がおかしいはずがないから、五歳のように見て回ることをお父上様とお母上様に聞いてみる。
「予定通りに王都にたどり着いたから、明後日に行なわれるパーティーにはまだ時間がある。それにパーティーが終わっても俺に予定があるから、時間がある時にでもベラとグリーテンと一緒に行くといい」
「ほんと!? それなら今行ってもいい!?」
「今は先に宿に向かわないといけないから、また後でだ」
「はーい」
よし! これでベラとグリーテンとのデートができるようになった。
ふふふっ、どれだけ『叛逆の英雄』のマンガが広まっているのかを見ておきたいところだ。
何か王都でしか見られないものがあるかもしれないから、そういうものを見てみたいところではある。
しかし……かなり目立っているな。公爵家なんだから、まあ目立っても仕方がないと言える。
「さすがはランスロット家ね、他の貴族とは目立ち方が違うわ」
俺の右隣にいるグリーテンがそう独り言なのか、俺に言っているのか分からない声で言葉を発した。
「はい、ランスロット家ということもありますがアルノさまの戦果も大きく関わって来ています」
あー、それなんかベラとの授業で聞いたことがある。
俺はおろかシルヴィー姉さんも生まれてない頃、隣国であるアガルタ帝国との戦争が起きていた。その戦争でお父上様は敵将を何人も打ち取り、操っていた魔物も殺し、その数は数えきれないほどだと聞いている。
その時にかなりすげぇ人なんだなと認識した。見た時から認識はしていたんだが、聞くのとでは印象は違う。
今はアガルタ帝国と停戦状態になっているようだが、いつアガルタ帝国から攻撃を受けてもいいようにしているらしい。
メンドウなことをしてくれるな、マジで。
「あれ? それってお父さんの息子である僕も注目の的ってこと?」
「はい、その通りでございます。今更ですが」
「でもアーサーが心配することはないわ。あなたの功績が世に知られたらあなたの父親の功績なんて霞むわよ」
「グリーテンさまの言葉はともかく、アーサーさまは自信を持っておられれば構いません」
「うん……頑張る」
はぁぁ、公爵家に生まれただけじゃなくて、すげぇ公爵家に生まれたんだよな、俺って。
まあ俺のことを下に見てきてもいい……いやダメだな。お父上様が築き上げた株が落とされるのか。それなら俺のことを見下せないように堂々としておくのが正解なのだろう。
それにアンリ・ペンドラゴンまで相手をしないといけないとなると……かなりハードそうだがまあ俺ならなんとかできる。そのための全能だ。
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