復興しようよ没落公爵家!

山椒

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11:意識改革

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「まさか、そんなことが起きているとは……」

 奴隷となっていた獣人たちをちょうど掃除しておいた大部屋に布やら虫に食われていないベッドやソファを集めて休ませた。

 その後にフロスト家の方々にあの町の現状を包み隠さず伝えた。

「人間は自分が信頼できる人物に預けました。彼らの方は何も問題はないでしょう」
「あぁ、ありがとう。助かったよ」
「それで、いかがなさるのですか?」

 過激派の獣人がこれほどのことをしておいて何もしないはあり得ない。

 だから俺はジェイダン様にこれからのことを問いかける。

「彼らは、確かに悪いことをした。許されないことをした」
「はい」
「だが、それを招いた原因はこちら側にあるはずだ」
「こちら側とは、ディナトス王国のことですか?」
「あぁ」

 ……あぁ、なんだか腹が立ってくる感じになりそー。

「だからジェイダン様はお許しになられると仰られるのですか?」
「……あぁ」
「同じ獣人も奴隷の扱いを受けていたことはどうお考えですか?」
「……それ相応の謝罪をするつもりだ」
「放置すれば今後同じことが起きますよ。それでも放置するのですか?」
「……放置するのではない。今後このようなことが起きないように細心の注意を払うつもりだ」
「それは放置するのと同じですよ。奴らのやりたいようにやらせればまた悲惨なことが起きますよ」
「……だが、これはディナトス王国の罪だ」

 その言葉で俺はとうとうキレてしまった。

「ふざけんじゃねぇ!」

 周りの人たちが驚いた顔をしているが関係ない。今は言っておかなければならないからな。

「罪ってなんだよ! 獣人たちが始めた戦争だろうが! それを返り討ちにあって蹂躙しただけなのにディナトス王国が悪い? ふざけたことを抜かしてんじゃねぇぞこのくそジイイが!」
「だ、だが止めれただろう!」
「止めてどうなるんだよ! 結局つけあがってまたやってくるのが目に見えているだろ! 勝って当然だと思って攻めてくる奴らが悪くないわけないだろ! 確かに獣人にはディナトス王国内でひどい扱いをした」
「それは紛れもないディナトス王国の罪だろう!」
「そんなわけあるか! てめぇは襲いかかってくるモンスター相手に人間扱いするのか? バカか、その時代のディナトス王国の獣人は畜生だぞ。人間と同じ扱いをしろって方が無理だろうが!」

 種族が違い、敵対しているのに人間扱いしろっていうのが無理な話だ。

「ひどい扱いを肯定すると言うのか! やはり君は獣人が嫌いなのだな!」
「当時って言ってるだろ! それに俺はどうとも思ってないわ! 思ってるなら奴隷になっている獣人を助けないだろうが!」

 その言葉でジェイダン様は押し黙る。

「俺が一番キレてるのはなぁ、お前だけじゃなくて周りにもその贖罪をさえようとしていることだよ! お前は子供たちにそれを押し付けた! お前は領民よりも獣人を優先した! てめぇだけが贖罪をしているのならいい。だがそれを周りに押し付けるな!」

 マヤ様たちもそうだが、さっき助けた奴隷になっていた人間たち。

 もちろんこのフロスト家にちょっかいをかけている貴族たちが悪くて離れた領民もいる。だがそれを守れなかったことにも責任がある。それが貴族だ。

「だが! 誰かがそうしなければ誰も獣人たちの扱いを変えないだろう!?」
「んなもん知るかぁ! 獣人が弱いのが悪いんだよ! この世の純然たるたった一つのルールは弱肉強食だぞ! 強いやつが弱いやつを従わせるのは自然の摂理だろうが! それなのに弱者が強者に立ち向かうために意味も分からねぇ主張をしているんだろう! 弱者が嫌なら強くなればいい! 弱者のままでいたいのなら従え! それ以外になんの理屈がいるんだよ!」

 権利? 人権? そんなもの知るか。理性を持ってしまったから複雑なことを言って弱者であることを肯定しようとする。

 だからディナトス王国に勝てないんだよ。ディナトス王国は強くなるためにありとあらゆることを認めてきた。それこそ人の尊厳を無視した実験もやってきた。

 だがそのおかげでディナトス王国は強くなった。そんな覚悟もないのにディナトス王国と渡り歩こうなんて思ってるのなら死ねばいい。

「君は……そう考えているからそこまで強くなったのかい?」
「当然ですよ。両親を殺されたあの時から、力がすべてだと考えています。そうじゃなければ蹂躙されるだけ。ふっ、それを教えてくれたのが蹂躙された側の獣人とは皮肉なことですけど」
「それなら……獣人はこれから一生蹂躙されなくてはならないのか……?」
「はい。ディナトス王国が隙を見せているのならともかく、今でもイリオス合衆国に攻めようとしているのですよね? それならもうイリオス合衆国に未来はないでしょう。ジェイダン様もお分かりですよね? フロスト家がこのままどうにか手を回しても無理なことを」

 だからここまでフロスト家は没落していった。

「君でも、無理なのか……?」
「自分は獣人に一切興味がありませんから手段を考えようとしません。ディナトス王国に命じられれば国を一撃で落とすくらいに躊躇はありません」

 俺の手が届く範囲はディナトス王国だ。それにそもそも侵略を考えているやつらを助けようとするほど俺は善人ではない。敵意があれば殺す。そうしなければ俺の大切なものが傷つけられてしまうからな。

「獣人でもいい人はいるのに、どうしてお前はそんなことが言えるんだ!」

 そう俺に怒声を向けてきたのはルナ様であった。

「そういう話ではありません。これは国と国同士の争い。個人がどうという話ではありません」
「でも! あたしたちを助けてくれたのは獣人だもん! 人間は何もしてくれなかった!」
「はい。助けてくれる心ある獣人もいるのでしょう。マチルダさんみたいに」
「それなら獣人たちに酷いことできないだろ!」
「そんな短絡的な話ではないのですよ。ディナトス王国とイリオス合衆国の古くから続く争いです。いい獣人がいるから仲良く、はできません」
「は? 意味分かんないんだけど!」

 ……意外とここの歴史を教えていないんだな。これを知らないと恥知らずって言われるぞ。

「マヤ様」
「……獣人と仲良くするということは知っておかなければなりません」

 マヤ様に確認をとれば頷かれたから俺はルナ様にお話しすることにした。

「ディナトス王国はいい意味でも悪い意味でも実力至上主義です。前はどんな種族だろうが受け入れる体制をとっていました」
「は? そんなわけ……」

 そう、今の他種族排斥思考では考えられないことだ。

「イリオス合衆国が建国した際にも和平を結ぼうとしていました」
「えっ……」
「当時の国王と王妃が和平のためにイリオス合衆国に赴きました。そこで事件が起こりました」

 おそらくこの場でこの事件を知っていないのはルナ様とレイラ様だけだろうな。

「獣人たちが国王と王妃を捕らえ、国王の目の前で王妃を凌辱するという事件が起きました」

 ルナ様がひどく驚かれているが話を続ける。

「国王はずっとそれを見せ続けられ、王妃を目の前で殺されました。その後に騎士団によって国王は救出されましたが、その時から国王はイリオス合衆国の滅亡を掲げました。イリオス合衆国の種が滅ぶまで、王妃の叫び声が消えるまで、そう宣言なされました」
「う、うそだよね……?」

 ルナ様がそう懇願するような顔を向けたのは獣人であるマチルダさんだ。

「事実だ。あたしたちの国で過激派のやつらが武勇のようにそれを伝えられている。……穏健派の一部は獣人たちが滅びないことにはこの連鎖は終わらないって言っているやつがいる。この争いは、獣人たちが引き起こした罪だ」
「そ、それじゃあ、どうして、お父様は獣人を守っているの……?」
「確かに最初は獣人が悪いよ。でもその罪は多くの命の蹂躙によって終わっているはずだ。これ以上、命を蹂躙する必要はないはずだ」
「それで獣人たちが反省しているのなら良かったのですよ。ですが過激派の獣人たちは未だに人間に勝てると思い込んでいます。それが救いようのない事実です」

 ジェイダン様の言葉に俺は反論した。

「結局は獣人が変わらなければこちらは変われませんよ。また同じ過ちが起こるだけです」
「そう、だね……」

 これがすべてだろ。俺は救える命は救える。でも救えない頭のやつは救わない。それだけの話だ。

 俺の大事な人たちが王妃と同じ目にあうと分かれば迷わずイリオス合衆国を滅ぼす。それくらいに今のイリオス合衆国は危ないと思える。

 精密な魔法を使う場合はそこにいかないといけないが大雑把な破壊ならそこにいかなくても攻撃することができるから可能だ。

「セオ様、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「はい」
「もし、救いを求める獣人を助けるとしたら、セオ様はどうなされますか?」

 マヤ様からそんなことを聞かれ少し考える。

「まあ、過激派が邪魔なので穏健派をすべてフロスト領に呼んでイリオス合衆国ごと吹き飛ばします」
「真面目に答えてますか?」
「答えてますよ。ここまで蹂躙されて止まらない過激派はもう救いようがない。そのあとは、フロスト家が独立して公国でも作りますか。獣人と人間が暮らせる他種族混合国を」

 俺のマジで考えた言葉で静寂が支配した。

「そうか、そういうこともできるのか……!」
「そうね、それならディナトス王国と事情を分けることができるわぁ」

 そんなこと考えもしなかったのかジェイダン様とフレヤ様はすごく納得した表情をしていた。

「それ、いいな」

 マチルダさんにも好評だった。

「マチルダさんはそれでいいのか? 俺は一応イリオス合衆国を滅ぼすって言っているんだぞ」
「あんな過激派の臭いが染み付いた国なんて知らねぇよ。こっちの方があたしの国だって言える」
「ホント!? マチルダここにずっといる!?」

 ルナ様はマチルダさんがここにずっといるとは思われていなかったようだ。

「ジェイダン様。それを叶えるためにもフロスト領を復興しないといけませんが。その前に悪行の限りを尽くしている獣人たちを罰しないといけません。よろしいですか?」

 俺があの場で獣人たちを消すことはできた。だがそれではジェイダン様の意識改革にならない。

 ここで悪い獣人は切り捨てる心をお持ちにならないことにはフロスト家に未来はない。

「……あぁ、分かった。それはセオ君に任せる」
「かしこまりました。フロスト家の安全はこのセオ・オースティンが死守します。あと、先程の無礼をお許しください」
「いや、気にしないでくれ。そもそも悪いのはこちらだ、君が言ってくれなければいつまでも覚悟が決まらなかったよ」

 そうだ、それでいい。

 これでマヤ様も少しは安心だろうな。とマヤ様の方を見れば何やら重い瞳でこちらを見ていた。

 しかも視界に入ったレイラ様もそんな目をしていたのだが。まあ気にすることではないな。
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