雪・月・華 ー白き魂ー

誠奈

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番外編  ー白き腕ー 野瀬さと・作

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智樹を横たえると、我に返っている自分に気づく。

俺は…あんな汚い男たちとは…違うんだ…

「智樹…?俺は智樹とはあそばないよ…?」
「潤一…」

手ぬぐいを手にとって、潤一は智樹の精を拭った。
蕾の周りの掻きだした精も拭う。
きれいになると、乱れた襦袢を直した。
見上げる智樹の赤い目を、潤一は見つめた。

「お話しようね…」

そう言うと、懐で眠る五助を出した。
智樹に手渡すと、大事そうに抱きしめた。

「五助…」

頬ずりすると、膝の上に載せて白い手で五助を撫でた。
そんな智樹の隣に座ると、そっと細い肩を潤一は抱き寄せた。
智樹はその広い胸に凭れかかった。

「今日は…どんなお話をしてくれるの…?」
「そうだな…鉄道の話をしようか…」

最近お屋敷の近くに鉄道の駅ができた。
潤一は他の使用人に聞いた、陸蒸気の話をした。
親に売り飛ばされた潤一には藪入りに帰るところがない。
金に汚い主人の元では、外に出て藪入りを過ごすこともなかった。
だから、人から聞いた話を聞かせた。
智樹は目を輝かせてその話に聞き入った。

「じゃあ、人が動かさなくても動くの?」
「そうだよ石炭っていうので動くんだ」
「石炭…?」
「石がね…燃えるんだよ」

ろうそくの炎を眺めながら、智樹は思いを馳せていた。
智樹は陸蒸気というものがなんなのかもわかっていない。
わかっていないが、潤一の話に夢想するのが好きだった。
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