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甘すぎる新婚生活
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「音羽となら、どこへ行っても楽しめそうだ」
「え?」
「こうしてたくさん話をするようになって、音羽とは思いの外気が合うと感じている」
それは私も同じだ。
さっきのような意地悪な部分だって、ふてくされてはみたものの本気で怒っているわけじゃない。どんな形であれ、彼にかまわれることを喜んでしまう。
「わ、私も。碧斗さんといると楽しい」
未だに緊張もするけれど、一緒にいるのは心地いい。彼について新しい発見をするたびに、私の碧斗さんに対する好意が大きくなっていく。
「光栄だ。これからもっと、仲を深めていこう」
「はい!」
自分はどんな扱いを受けるだろうかという不安は、もう感じない。
碧斗さんとなら、きっと穏やかな家庭を築いているはず。彼の自然な笑みにそんな期待が膨らみ、晴れやかな気分になった。
「それで旅行だけど、仕事の関係で少し先になってしまうが、休みはしっかりもぎ取るつもりでいる」
その言い回しがおかしくて、笑いが込み上げてくる。
「ふふふ。もぎ取るだなんて、碧斗さんらしくない」
「普段の俺なんて、こんなものだよ。国内でも海外になってもかまわないから、音羽の行きたい場所を考えておいてほしい」
「その、迷惑じゃなければ、私の希望だけではなくて、碧斗さんの考えも聞きながら一緒に決めたいです」
勇気を出して提案してみたところ、わずかに目を見開いた碧斗さんは次に破顔した。
「迷惑なものか。そうだなあ。俺としては、音羽が過ごしたフランスの街を見てみたい。って、それでは行き慣れた音羽にはつまらないか?」
「いいですね! 都合が合えば、向こうで知り合った仲間に碧斗さんを紹介したいです」
あまりにも慌ただしくて、別れの挨拶もそこそこに帰国してしまったのが心残りになっている。
「音羽の夫だと紹介されるのは光栄だ。そのまま、近隣国を回ってもいいな」
〝夫〟に過剰な反応しそうになるのをなんとかこらえた。事実とはいえまだなじみは浅く、気恥ずかしさが上回る。
「ご、豪華すぎでは?」
彼が口にした計画は、いくら新婚旅行とはいえ費用を考えると腰が引けそうだ。
それに、日数もそれなりになってしまう。立場のある碧斗さんがそこまで長期の休暇を取るのは、なかなか難しいのではないか。
「結婚式では、音羽の意見をほとんど聞いてやれなかっただろ? だから新婚旅行くらいは、音羽を存分に楽しませてやりたい。社長にもそう話してあるから大丈夫だ」
懸念事項はともかく、碧斗さんにそこまで言われてしまえば反論するのは憚られる。
「……私は幸せ者ですね」
彼の気遣いに、胸がいっぱいになる。
「これくらいで満足してもらっては困るな。俺はこの先、音羽をもっと幸せにするつもりなんだから」
いったい彼は、どこまで私を喜ばせれば気が済むのだろう。
碧斗さんが私を気にかけてくれる以上に、自分も彼に返したいという気持ちが大きくなる。
「私も、碧斗さんを幸せにしたい」
「音羽」
ぽつりと本音をこぼすと、肩を引き寄せられて彼の腕に閉じ込められてしまった。
「俺と結婚したことを、絶対に後悔させないから」
碧斗さんには感謝するばかりで、後悔なんてするはずがない。
そう伝える代わりに彼の胸もとに身を寄せ、自身の腕を碧斗さんの背に回した。
「え?」
「こうしてたくさん話をするようになって、音羽とは思いの外気が合うと感じている」
それは私も同じだ。
さっきのような意地悪な部分だって、ふてくされてはみたものの本気で怒っているわけじゃない。どんな形であれ、彼にかまわれることを喜んでしまう。
「わ、私も。碧斗さんといると楽しい」
未だに緊張もするけれど、一緒にいるのは心地いい。彼について新しい発見をするたびに、私の碧斗さんに対する好意が大きくなっていく。
「光栄だ。これからもっと、仲を深めていこう」
「はい!」
自分はどんな扱いを受けるだろうかという不安は、もう感じない。
碧斗さんとなら、きっと穏やかな家庭を築いているはず。彼の自然な笑みにそんな期待が膨らみ、晴れやかな気分になった。
「それで旅行だけど、仕事の関係で少し先になってしまうが、休みはしっかりもぎ取るつもりでいる」
その言い回しがおかしくて、笑いが込み上げてくる。
「ふふふ。もぎ取るだなんて、碧斗さんらしくない」
「普段の俺なんて、こんなものだよ。国内でも海外になってもかまわないから、音羽の行きたい場所を考えておいてほしい」
「その、迷惑じゃなければ、私の希望だけではなくて、碧斗さんの考えも聞きながら一緒に決めたいです」
勇気を出して提案してみたところ、わずかに目を見開いた碧斗さんは次に破顔した。
「迷惑なものか。そうだなあ。俺としては、音羽が過ごしたフランスの街を見てみたい。って、それでは行き慣れた音羽にはつまらないか?」
「いいですね! 都合が合えば、向こうで知り合った仲間に碧斗さんを紹介したいです」
あまりにも慌ただしくて、別れの挨拶もそこそこに帰国してしまったのが心残りになっている。
「音羽の夫だと紹介されるのは光栄だ。そのまま、近隣国を回ってもいいな」
〝夫〟に過剰な反応しそうになるのをなんとかこらえた。事実とはいえまだなじみは浅く、気恥ずかしさが上回る。
「ご、豪華すぎでは?」
彼が口にした計画は、いくら新婚旅行とはいえ費用を考えると腰が引けそうだ。
それに、日数もそれなりになってしまう。立場のある碧斗さんがそこまで長期の休暇を取るのは、なかなか難しいのではないか。
「結婚式では、音羽の意見をほとんど聞いてやれなかっただろ? だから新婚旅行くらいは、音羽を存分に楽しませてやりたい。社長にもそう話してあるから大丈夫だ」
懸念事項はともかく、碧斗さんにそこまで言われてしまえば反論するのは憚られる。
「……私は幸せ者ですね」
彼の気遣いに、胸がいっぱいになる。
「これくらいで満足してもらっては困るな。俺はこの先、音羽をもっと幸せにするつもりなんだから」
いったい彼は、どこまで私を喜ばせれば気が済むのだろう。
碧斗さんが私を気にかけてくれる以上に、自分も彼に返したいという気持ちが大きくなる。
「私も、碧斗さんを幸せにしたい」
「音羽」
ぽつりと本音をこぼすと、肩を引き寄せられて彼の腕に閉じ込められてしまった。
「俺と結婚したことを、絶対に後悔させないから」
碧斗さんには感謝するばかりで、後悔なんてするはずがない。
そう伝える代わりに彼の胸もとに身を寄せ、自身の腕を碧斗さんの背に回した。
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