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エピローグ
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真犯人である堀迫の事は、それから連日マスコミをにぎわした。
中には梶浦家の事に触れたコメンテーターもいたが、すぐに黙殺に近い扱いになり、黙った。そんなものだろうとセレは思ったし、変に騒がれても迷惑でしかない。
正義感に駆られて「訴えを起こそう」などと言う人も中にはいたが、セレは断って無視した。
「いいのか」
モトが訊いて来る。
ここは海の上、釣り用レンタルボートの上だ。ターゲットはインターネットを利用して窃盗をしている男で、海の上に浮かべた釣り船から出て来ない。そこで、釣り客に偽装して船に接近し、狙撃する事にしたのだ。
「この赤と緑の?うん、あたりは多いな」
一応本当に釣りはしている。ヤリイカを狙う、イカメタルとオモリグという釣りだ。
「仕掛けの話じゃねえよ」
言いながらも、モトは黄色のリグを赤と緑のものに変えた。
「堀迫は捕まえられただろ。無理に、こんな仕事を続ける事も無いんじゃねえか。常識的に考えて、まともな進路じゃねえしな」
セレは仕掛けを落としてしゃくりながら、
「まあ、真犯人が逮捕されたのは、区切りではあるけどな。でも、これを始めたのは、そういうためじゃないし」
と言い、あたりに合わせて大きくしゃくってかけると、仕掛けを巻き上げた。
『どうだ?』
「ヤリイカが絶好調だ。明日はイカの刺身だな」
リクの声にセレが答えると、モトは苦笑した。
「そうか。
おう、リク。ビール冷やしておいてくれよ」
『おう!セレも早く大人になれよ。一緒に飲もうぜ』
セレとモトがクスッと笑った時、リクが言った。
『船の右舷側を前方からゆっくり近付いて来る船が見えるか。ターゲットの船だ』
明るいライトを点けた船が漂うように近付いているのが見える。
「ああ、見えた。あれか」
『ドローンで確認したら、やつも甲板で釣りをしてやがるぜ』
「了解」
セレは竿を竿立てに立て、ロッドケースからライフルを取り出した。
「ああ、いるいる。
距離600メートル、無風。いつでもいいぞ」
モトも竿を竿立てに立て、双眼鏡を覗いている。
スコープの中、男が見えた。
元々は、騙されて全財産を失い、今乗っている船だけが残ったという詐欺の被害者だった男だ。しかしその後、自分がパソコンを使って銀行から他人の預金を盗んだり、金でハッキングを請け負ったりするようになった。海の上で暮らすのは、その方が逃げやすいからと、落ち着くかららしい。
(こいつも、被害者側から、加害者側に踏み越えたんだな)
男も釣りをしていた。
呼吸を止め、引き金を絞る。
男はイカを取り込もうとしたところだったが、頭の一部が爆ぜ、硬直したようになると、前のめりになりようにして海に落ち、沈んで行った。
「さあて。そろそろ帰るか」
「そうだな」
ライフルをしまい、続けて釣り道具を片付ける。
(立ち位置なんて、あやふやなものだな。こうしていても、いつ僕らだって、邪魔になったからって処理されるかわからない)
セレはそう考え、主をなくして漂う船を見た。
「行くぞ」
モトが言って、船のエンジンをかけた。
自分の人生という船の行き先は、まだ見えない。
中には梶浦家の事に触れたコメンテーターもいたが、すぐに黙殺に近い扱いになり、黙った。そんなものだろうとセレは思ったし、変に騒がれても迷惑でしかない。
正義感に駆られて「訴えを起こそう」などと言う人も中にはいたが、セレは断って無視した。
「いいのか」
モトが訊いて来る。
ここは海の上、釣り用レンタルボートの上だ。ターゲットはインターネットを利用して窃盗をしている男で、海の上に浮かべた釣り船から出て来ない。そこで、釣り客に偽装して船に接近し、狙撃する事にしたのだ。
「この赤と緑の?うん、あたりは多いな」
一応本当に釣りはしている。ヤリイカを狙う、イカメタルとオモリグという釣りだ。
「仕掛けの話じゃねえよ」
言いながらも、モトは黄色のリグを赤と緑のものに変えた。
「堀迫は捕まえられただろ。無理に、こんな仕事を続ける事も無いんじゃねえか。常識的に考えて、まともな進路じゃねえしな」
セレは仕掛けを落としてしゃくりながら、
「まあ、真犯人が逮捕されたのは、区切りではあるけどな。でも、これを始めたのは、そういうためじゃないし」
と言い、あたりに合わせて大きくしゃくってかけると、仕掛けを巻き上げた。
『どうだ?』
「ヤリイカが絶好調だ。明日はイカの刺身だな」
リクの声にセレが答えると、モトは苦笑した。
「そうか。
おう、リク。ビール冷やしておいてくれよ」
『おう!セレも早く大人になれよ。一緒に飲もうぜ』
セレとモトがクスッと笑った時、リクが言った。
『船の右舷側を前方からゆっくり近付いて来る船が見えるか。ターゲットの船だ』
明るいライトを点けた船が漂うように近付いているのが見える。
「ああ、見えた。あれか」
『ドローンで確認したら、やつも甲板で釣りをしてやがるぜ』
「了解」
セレは竿を竿立てに立て、ロッドケースからライフルを取り出した。
「ああ、いるいる。
距離600メートル、無風。いつでもいいぞ」
モトも竿を竿立てに立て、双眼鏡を覗いている。
スコープの中、男が見えた。
元々は、騙されて全財産を失い、今乗っている船だけが残ったという詐欺の被害者だった男だ。しかしその後、自分がパソコンを使って銀行から他人の預金を盗んだり、金でハッキングを請け負ったりするようになった。海の上で暮らすのは、その方が逃げやすいからと、落ち着くかららしい。
(こいつも、被害者側から、加害者側に踏み越えたんだな)
男も釣りをしていた。
呼吸を止め、引き金を絞る。
男はイカを取り込もうとしたところだったが、頭の一部が爆ぜ、硬直したようになると、前のめりになりようにして海に落ち、沈んで行った。
「さあて。そろそろ帰るか」
「そうだな」
ライフルをしまい、続けて釣り道具を片付ける。
(立ち位置なんて、あやふやなものだな。こうしていても、いつ僕らだって、邪魔になったからって処理されるかわからない)
セレはそう考え、主をなくして漂う船を見た。
「行くぞ」
モトが言って、船のエンジンをかけた。
自分の人生という船の行き先は、まだ見えない。
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みんなの感想(4件)
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こちらの作品を読了し、今ひとこと申し上げたく。外連味なくフラットな調と思いきや描写はリアル且つ的確で適量。流されていないのが見事です。ジャンルの多さに圧倒されつつ、自分ファンタジーは食わず嫌いですが、それでも多数の貴作があるので次はどれを拝読しようか嬉しく迷っております。ありがとうございます。
読んでいただき、また過分な感想までありがとうございます。とても嬉しいです。どこまで描くかって迷いますよね。私は志賀さんの作品を今順に楽しませていただいてます。そうそう、ゲーム。私も戦闘機のゲームをすると、上半身が右に左に揺れに揺れます。そういうクスリと笑えるところも、矛盾に対する怒りややるせなさなんかを緩和してくれる要素で好きです。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~
ありがとうございます!嬉しいです。どうか最後までお楽しみください。
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ありがとうございます!嬉しいです。最後までどうかお楽しみください。