30 / 117
第一章~子供扱編~
020 抑えきれない理性
しおりを挟む
「……んっ……あれ……? わたしなんで……ねむって……?」
真っ暗な部屋の中で目が覚めて、私はぼんやりとしている頭に手を当てて周りを見渡した。どうやら日中の騒動で大分精神をすり減らしていたようだ。フェルディナンの頭を胸元に引き寄せて――それから激しく口づけされたことまでは記憶しているけれど、その後のことがどうしても思い出せない。多分あのまま泣き疲れて意識を失って眠ってしまった気がする……
あの時はベッドの上に座っていたのに今はベッドの中にいて、ちゃんと布団が掛けられているってことは……フェルディナンさんが掛けてくれたのかな? そう言えばフェルディナンさん何処にいるんだろう?
フェルディナンを探して辺りをきょろきょろと見渡してみる。
「フェルディナンさん?」
名前を呼んでみても返事は返ってこない。部屋の中は蝋燭の火も消えていて、外からの青い月の光が照らしているだけの室内では見渡してみても正直あまりよく見えない。
「変なの……ここは地球じゃないのに一日の時間帯が24時間だとか朝と夜がちゃんとあるのも何か不思議な感じがする。それに夜の星空だとかそういうのは全部同じなんだよね。地球にある月に似た形のあの”青い月”といい、意外と基本的な部分では共通点が多いんだよね……」
空に浮かぶ青い月を眺めているとどうしても感慨深くなってしまう。この乙女ゲーム世界に来てから既に二ヶ月が経過している。元の世界と似たような共通点を発見する度に切なさに胸が震えた。
「お姉ちゃん……元気かな?」
元の世界にいる姉のことを思い出しながら外を眺めていてふと、あの夕刻過ぎの出来事からかなりの時間が経過していることに今更気が付いた。私が眠っている間にすっかり真夜中になっている。
「……目が覚めたのか」
薄闇の中から返ってきた声に、私はビクッと背中を丸めて思わず奇声を上げてしまった。
「ひゃあっ!?」
先程、一応名前を呼んでみたもののまさか返事が返ってくるとは思っていなかった。それも聞こえてきたのは私の眠っていたベッドの中のそれも真横からだ。
「フェ、フェルディナンさんっ!? どうして……っ!」
同じベッドの中にいるんですかっ!?
突っ込みどころがあまりにも多すぎる。
私を甘やかすのに長けているフェルディナンも流石に自分の部屋に戻っているだろうとそう思ったのに! 動揺と羞恥に私は慌てて布団の端を握りしめると一気に布団を口元まで引き上げた。赤面している顔をフェルディナンから隠してなんとか落ち着く。
私がこんなに慌てているのに一方のフェルディナンは身体を上半身だけ起こして片方の肘をベッドに付いた格好でこちらを見ていた。それも落ち着き払った様子で優雅にゆったりとベッドに横になって眺めているその様は、まるで小動物か何かを観察しているようにしかみえない。
――キスして下さいって頼んだ時はあんなに激しかったのに……今はもうすっかり子供扱いに戻ってる。
やっぱり私のことはとことん子供としか思っていないのだろう。あの口づけだって泣いて頼まれたから仕方なくしてくれたのだろうし。何といってもフェルディナンは天然タラシだ。そう言った経験はかなり豊富だろうし、口づけの一つや二つ大したことではないなんて思っていそうだ。
それにこうして添い寝しても手を出さないって――それが平気な位に私に魅力を感じないってことだろうし……あのキスは何だったの?
何だか少しガックリしてしまって私はフェルディナンに恨みの籠った目を向けた。
「落ち着いたか?」
そんな私の痴態を思う存分堪能して満足したのか、フェルディナンは優しく声を掛けてきた。
「……はい」
私ばっかりこんなに焦ってフェルディナンさんを好きで――好き過ぎて馬鹿みたいじゃない……
「あの……私……」
「――ああ、あのまま眠ってしまったからな。疲れが出たんだろう」
「そう、ですか……」
あのままって……私やっぱりキスしたまま眠っちゃったんだ……
これでは子供扱いされても仕方がない。文句を言う元気すら出てこない。
そして当事者のフェルディナンはというと、口づけしたことについては一切触れずに淡々と返事を返して私の頬に触れてきた。
フェルディナンは何時もとは違う恰好をしていた。普段から黒い甲冑に黒いマントを纏っている彼は黒将軍の異名を持つ武人で、その異名そのものの恰好で見る者を魅了しているのだが――今のフェルディナンは夜着を着ていた。
夜着とはいっても前回部屋を訪れた時に着ていたような上半身裸で下半身に布を巻いただけの姿ではなく、今回はちゃんと上半身にも布を巻き付けていた。それも古代ローマ人のように片腕だけ肌を出した状態で布を巻き付けている。
巻かれた布生地は薄くシルクのような艶めく生地には細かな刺繍がふんだんに施されており、最高級品であることが見て取れる。どうやらフェルディナンは以前私が何か羽織るなり着るなりしてほしいといったことをちゃんと守ってくれたようだ。
シンプルな装飾品が取り除かれた格好では、彼の左耳に一つだけ付けられた金色のループピアスがよく映えて妙に色っぽい。鍛え抜かれた肉体のラインがよく分かる薄い素材の夜着を着たフェルディナンを目前にして、私は逃げ出したい衝動に駆られた。
し、失敗したっ! そう言えばこの人、中途半端に体が見えるような恰好させると逆に色気が増すんだった――っ! ちゃんと厚手の生地の服を着てほしいって言うべきだった……それも露出が極力少ないものをっ!
そうは思ったものの、ちゃんとしっかり前回私が言ったことを守ってくれたフェルディナンに注文をつけるわけにもいかず、私は無言で彼から距離を取るしか仕様が無かった。
そうしてじりじりとベッドの上で少しずつ後退する私の行動に気付いたフェルディナンが私の腕を掴んだ。
「――おいで」
フェルディナンの声色は先程からずっと頗る優しい。心地よく耳に響く低音――でも有無を言わせない強制力を持ったその声に私はビクッとまた反応してしまう。
「で、でも……あの」
戸惑いの声を出して私は困り果ててしまった。だって、流石にそれは不味い。私を甘えさせることに長けているフェルディナンに、理性が吹っ飛んでもう一度キスをねだってしまいそうだ。それもねだったらねだったで、またフェルディナンは拒否することなく応えてくれそうだし……
何なのそのセフレみたいな関係は!? 冗談じゃないんですけどっ!?
それにフェルディナンは神様も異邦人も好きではなさそうだ。直接聞いたことはないものの、出会った当初の神様の話をした時のあの嫌そうな表情から容易に想像はつく。出来れば異邦人とだって関わり合いにはなりたくなかった筈だ。フェルディナンは優しいから私が傍にいることを許してくれたけれど――きっと彼は結婚も子供も望んではいない。いまのフランクな関係が限界ギリギリだとしたら?
そんなフェルディナンに私が恋心を抱いていると知られてしまうのは不味い――
もし、恋心を抱いていると知られてしまったら重いと思われてしまうかもしれない。そしたらきっと距離を取られてしまう。そして優しいフェルディナンのことだからほっぽり出すなんてことはしないにしても、もう私にこうして優しく話しかけてくれることはなくなってしまうかもしれない……
私は一頻り悪い未来を想像してから、一人でしょんぼりと項垂れてしまった。
フェルディナンに恋心を抱いていることを知られて嫌われたくない。そう思って俯いていると、フェルディナンに掴まれたままの手をぐいっと引っ張られた。
「えっ? きゃあっ!」
不意を突かれてポスッとフェルディナンの胸の中に納まってしまう。
「あっ、あの! フェルディナンさん放してくださいっ!」
フェルディナンに抱留められる形で私は彼の胸の中にいた。
これ以上刺激が強いのは本当に困るし不味いのだけど……
そう思いつつも喜びに心が震えている部分があるのも否定できない。好きな人の胸の中にいてそれもベッドの上でなんて嬉しくない訳がない。
「フェルディナンさん? 聞いていますか?」
「ああ、聞いているよ」
「だったら放して頂けると……」
「それは無理だ」
「どうしてですか?」
「放したら月瑠は逃げるだろう?」
「…………」
その通りですとは言えず私は口を閉ざしてしまうしかない。フェルディナンは私のそんな様子を見て眉根に皺を寄せると咎めるような目で私を見た。悪戯を知られてしまった子供のように、私は身を竦めてフェルディナンに謝った。
「ごめんなさい……でも私――」
貴方の事が好きだからこれ以上は困るんです! 理性が飛びそうだから、とは言えない。何だかこのパターンが次第に定着しつつある自分が悲しい。
口籠ったまま、私はこれ以上フェルディナンの目を見なくてすむように彼の胸に顔を埋めた。
「月瑠?」
少し心配そうなフェルディナンの声に誘われて私は思わず彼の逞しい体に手を回してギュッと抱きついてしまった。
――子供としか思われてないんだからこれくらい平気だよね?
今度はフェルディナンの方が一瞬ビクッと硬直したような気がしたけれどきっと気のせいだ。
「なんでもないですよ~」
「……そうか」
私が明るい声で答えるとフェルディナンは短く返事をしてから、まるで壊れ物を扱うように私をそっと抱きしめ返してきた。その繊細な仕草とは対照的な彼の大きくてガッチリとした男の人の手が愛しくて仕方がない。その温かさと包み込むような感触は彼に常に守られているような感じがしてすごくほっとする。
「もう寝るぞ?」
「はい――って、ちょっと待って下さい。フェルディナンさんどうして一緒に毛布掛けようとしてるんですか! ……もちろん自分のお部屋に戻られるんですよね?」
作り笑いをなんとか顔に張り付けてニッコリそう聞くと、フェルディナンはキョトンとした顔をしてこちらを見た。
まさか、ですよね?
「どうして私が部屋に戻る必要があるんだ?」
今更だろう? という表情で逆に驚かれてしまった。
フェルディナンはどうやらこのまま添い寝を続行するつもりらしい。
「た、確かにさっきまで意識なかったとはいえ一緒に寝てましたよ? けどこれはちょっと違うというか、困るというか……どうしようフェルディナンさんが天然タラシなの忘れてた……」
「月瑠、先程から何を一人でブツブツ言っているんだ……?」
「へっ? あっいえ、そのですね」
「?」
「フェルディナンさんお部屋に帰りましょう!」
「何故だ?」
「……それ、本気で言ってます?」
「月瑠」
「はい」
「いい子だからもう寝なさい」
「……い、いい子じゃないから寝ませんっ!」
というか一緒に何て眠れるわけがない。私の頭をポンポン叩いて宥めているフェルディナンの手をどけて私は勢いよく噛みついた。
「月瑠? 一体どうしたんだ?」
「う~、もうっ! フェルディナンさんの馬鹿~っ!」
「……そういうことを言われたのは生まれて初めてだな」
なかなか思っていることが伝わらない歯がゆさに私はイライラした感情を爆発させてしまった。しかしそうしてムーと頬を膨らませて怒っている私とは正反対にフェルディナンは私を抱きしめたまま楽しそうにくすくす笑っている。
「フェルディナンさん悪口言われたのにどうしてそんな嬉しそうなんですか……」
「月瑠と一緒にいると色んなことが体験出来て新鮮で面白いと思ってな」
「し、新鮮……ですか」
確かにこの国最強の将軍と言われていて、それなりの地位にいる男性に対してこんな無遠慮に子供じみた罵声を浴びせる人なんて滅多にいないだろう。
そもそもそういう立場の人は高い矜持が邪魔をしてそんな発言自体許してはくれない気がする。フェルディナンのように寛容な人も相当に希少な存在のような気がした。
「月瑠はそんなに私と一緒に寝るのが嫌なのか?」
分かっていないと思っていたら突然、フェルディナンから核心を突いた発言が繰り出されてギョッとしてしまう。それも少し寂しそうな顔をされて考えるよりも先に思わず否定する言葉が口を出た。
「そ、そんな訳ないじゃないですかっ! 嫌ではないですよ! むしろ……」
勢いにまかせてうっかり本心を口にしてしまって、私は慌てて両手で口元を押さえ込むと続きの言葉を何とか飲み込んだ。
「そうか、なら問題はないな」
「えっ?」
さらっとそう言ってフェルディナンは私を軽々と持ち上げると自身の身体の上に乗せてベッドの上で横になってしまった。私の身体に手を回して抱きしめた格好のまま目を瞑ってしまう。あまりにも素早いフェルディナンの動作に思考が追い付かなくて私はフェルディナンになされるがままにされてしまった。
「おやすみ」
おやすみって……ちょっと待って! 何をあっさり言っているんですかフェルディナンさんっ!? この体勢で眠れとっ!? というかさっきの核心を突いた質問のタイミングといい、この人絶対に確信犯だ……
わざとその答えが出るように誘導されたことに私はやっと気が付いた。
「あ、ええっと、私重いですし――その、せめて隣で寝るかもしくは床かソファで寝ますからフェルディナンさんはベッドを使って下さい」
「……月瑠、君はどうしてそうなんだ?」
呆れたようなフェルディナンの声。閉じていた目を開けて半眼で私を見上げている。彼の綺麗な顔が少し困惑に影を落としている。常々思っていたことなのだが、フェルディナンが困っている時の表情は妙に色っぽくて、実はそれを見るのがけっこう好きだったりする。勿論そう思っていることはフェルディナンには内緒だ。
「どうしてって?」
「どうして私を優先して自分が二の次になるんだ。立場が逆だと前にも言っただろう」
「だってフェルディナンさん綺麗ですし」
やっぱり綺麗な人を優先したいです、はい。
「……君のそのよく分からない基準は何とかならないのか?」
「なりません」
顔を顰めて非難の視線を向けてくるフェルディナンを無視して、私はきっぱり言い切って逆に彼を強く見つめ返した。これだけは絶対に譲れませんと真っ直ぐに彼と目線を合わせる。
「君は本当に……仕方ないな。だがそれはそのうち直させるぞ?」
フェルディナンはまいったとでも言うように苦笑すると、彼を見下ろしている態勢の私の後頭部を掴んでグイッと自身の方へと近づけた。コツンと額に額を当てて私の身体に回す手に力を込めてから額に口づけた。
「……あの、私直りませんし直すつもりもありませんよ?」
「そうなのか?」
「そうなんです」
広いベッドに二人で横になりながら密着して恋人同士がするように、睦言を囁き合う気持ち良さに感化されてフェルディナンにもっと甘えたくなってしまう。
「そうか分かった――だが月瑠が直す気が無いというのなら私もそれを実行させるつもりはない」
「引くつもりはないってことですか?」
「ああ」
「フェルディナンさん……」
私はこれ以上言っても無駄だと分かって最終的にはジトーと目だけで訴えた。
「月瑠そんな目で見ても答えは変わらないぞ? ほら、もういい加減寝なさい」
背中をトントン叩いて眠るように促すフェルディナンに私は遂に降参して一緒に寝ることを許してしまった。
「……おやすみなさい、フェルディナンさん」
「おやすみ」
これって一体何の試練でしょうか? 私は仕方なくフェルディナンの体に回している手をそのままに、その厚い胸板に顔を埋めて無理矢理眠りについた。
*******
そして、そのままの態勢で小一時間程経過してから私はパチッと目を開けた。実は始終ドキドキしていてとても眠りになど付ける訳もなく寝たふりを続けていた。
こんな刺激の強い状況で眠れますか! と文句を言ってしまいたくなる。
「フェルディナンさん?」
おそるおそる小声で彼の名を呼んでみる。返事はない。どうやらしっかり眠っているようだ。私の体に回した手はそのままにフェルディナンは静かに寝息を立てている。
私は上半身を軽く起こした。上半身を浮かせてフェルディナンから少し体を離してみると、私の長い黒髪が彼の胸元に落ちてくるくると小さく渦を巻いた。
ベッドの上で完全に横になっているフェルディナンを上から見下ろす姿勢。部屋の外の世界を照らしている青い月の光が差し込んできて彼の顔を明るく照らしだした。
「綺麗な顔……」
フェルディナンの堀の深い、目鼻立ちのはっきりとした美貌に思わず感嘆の溜息をついてしまった。金の髪に触れてそれからその顔にそっと手を這わせて輪郭を指先でなぞってみる。
前回フェルディナンの頭を撫でていた時と同じ、見た目よりも柔らかい黄金色の髪の感触が心地良い。最後に眉尻の古傷に触れてから私はそっとその古傷に口づけた。
フェルディナンは普段からも45歳という実年齢よりもかなり若く見える。しかし眠っている顔は起きている時よりも更に数段若く見える。
こんな無防備な顔を見たことがあるのはきっと、私とフェルディナンさんの夜の相手をした人達だけなんだろうなぁ。過去の相手とはいえ、ちゃんと大人として相手をしてもらえた相手が羨ましい……
そう思うだけでもやもやとした複雑な感情と嫉妬心が湧き上がってくる。
「私はこれからどうしたらいいの?」
攻略対象キャラを好きにならないって決めたのに、フェルディナンにその決意をあっさりと崩されてしまった。帰れなくなるからそれだけは駄目だってそう決めていたのに。
「それだけは絶対に駄目なのにどうしてこんな――」
――どうしようもなく好きになっちゃったんだろう。
フェルディナンに惹かれる心は止めようがなくて私は衝動を抑えきれない自分の理性の弱さが嫌になる。
子供としか見られない自分が悲しくて思わず自身の体を見下ろす。何度見ても平凡で平均的なモブキャラ要素満載の体が、官能的な体付きに変わるわけもなく。それも相手を悩殺出来るようなテクニックも持ち合わせていないのに攻略なんて出来るわけがない。私はふぅっと溜息をついて、フェルディナンの無防備な顔に再び視線を戻した。
「好き……」
絶対に言えない思いを零して、私はフェルディナンの唇に唇を落とした。
やっぱり理性では抑えきれなかったようだ。
真っ暗な部屋の中で目が覚めて、私はぼんやりとしている頭に手を当てて周りを見渡した。どうやら日中の騒動で大分精神をすり減らしていたようだ。フェルディナンの頭を胸元に引き寄せて――それから激しく口づけされたことまでは記憶しているけれど、その後のことがどうしても思い出せない。多分あのまま泣き疲れて意識を失って眠ってしまった気がする……
あの時はベッドの上に座っていたのに今はベッドの中にいて、ちゃんと布団が掛けられているってことは……フェルディナンさんが掛けてくれたのかな? そう言えばフェルディナンさん何処にいるんだろう?
フェルディナンを探して辺りをきょろきょろと見渡してみる。
「フェルディナンさん?」
名前を呼んでみても返事は返ってこない。部屋の中は蝋燭の火も消えていて、外からの青い月の光が照らしているだけの室内では見渡してみても正直あまりよく見えない。
「変なの……ここは地球じゃないのに一日の時間帯が24時間だとか朝と夜がちゃんとあるのも何か不思議な感じがする。それに夜の星空だとかそういうのは全部同じなんだよね。地球にある月に似た形のあの”青い月”といい、意外と基本的な部分では共通点が多いんだよね……」
空に浮かぶ青い月を眺めているとどうしても感慨深くなってしまう。この乙女ゲーム世界に来てから既に二ヶ月が経過している。元の世界と似たような共通点を発見する度に切なさに胸が震えた。
「お姉ちゃん……元気かな?」
元の世界にいる姉のことを思い出しながら外を眺めていてふと、あの夕刻過ぎの出来事からかなりの時間が経過していることに今更気が付いた。私が眠っている間にすっかり真夜中になっている。
「……目が覚めたのか」
薄闇の中から返ってきた声に、私はビクッと背中を丸めて思わず奇声を上げてしまった。
「ひゃあっ!?」
先程、一応名前を呼んでみたもののまさか返事が返ってくるとは思っていなかった。それも聞こえてきたのは私の眠っていたベッドの中のそれも真横からだ。
「フェ、フェルディナンさんっ!? どうして……っ!」
同じベッドの中にいるんですかっ!?
突っ込みどころがあまりにも多すぎる。
私を甘やかすのに長けているフェルディナンも流石に自分の部屋に戻っているだろうとそう思ったのに! 動揺と羞恥に私は慌てて布団の端を握りしめると一気に布団を口元まで引き上げた。赤面している顔をフェルディナンから隠してなんとか落ち着く。
私がこんなに慌てているのに一方のフェルディナンは身体を上半身だけ起こして片方の肘をベッドに付いた格好でこちらを見ていた。それも落ち着き払った様子で優雅にゆったりとベッドに横になって眺めているその様は、まるで小動物か何かを観察しているようにしかみえない。
――キスして下さいって頼んだ時はあんなに激しかったのに……今はもうすっかり子供扱いに戻ってる。
やっぱり私のことはとことん子供としか思っていないのだろう。あの口づけだって泣いて頼まれたから仕方なくしてくれたのだろうし。何といってもフェルディナンは天然タラシだ。そう言った経験はかなり豊富だろうし、口づけの一つや二つ大したことではないなんて思っていそうだ。
それにこうして添い寝しても手を出さないって――それが平気な位に私に魅力を感じないってことだろうし……あのキスは何だったの?
何だか少しガックリしてしまって私はフェルディナンに恨みの籠った目を向けた。
「落ち着いたか?」
そんな私の痴態を思う存分堪能して満足したのか、フェルディナンは優しく声を掛けてきた。
「……はい」
私ばっかりこんなに焦ってフェルディナンさんを好きで――好き過ぎて馬鹿みたいじゃない……
「あの……私……」
「――ああ、あのまま眠ってしまったからな。疲れが出たんだろう」
「そう、ですか……」
あのままって……私やっぱりキスしたまま眠っちゃったんだ……
これでは子供扱いされても仕方がない。文句を言う元気すら出てこない。
そして当事者のフェルディナンはというと、口づけしたことについては一切触れずに淡々と返事を返して私の頬に触れてきた。
フェルディナンは何時もとは違う恰好をしていた。普段から黒い甲冑に黒いマントを纏っている彼は黒将軍の異名を持つ武人で、その異名そのものの恰好で見る者を魅了しているのだが――今のフェルディナンは夜着を着ていた。
夜着とはいっても前回部屋を訪れた時に着ていたような上半身裸で下半身に布を巻いただけの姿ではなく、今回はちゃんと上半身にも布を巻き付けていた。それも古代ローマ人のように片腕だけ肌を出した状態で布を巻き付けている。
巻かれた布生地は薄くシルクのような艶めく生地には細かな刺繍がふんだんに施されており、最高級品であることが見て取れる。どうやらフェルディナンは以前私が何か羽織るなり着るなりしてほしいといったことをちゃんと守ってくれたようだ。
シンプルな装飾品が取り除かれた格好では、彼の左耳に一つだけ付けられた金色のループピアスがよく映えて妙に色っぽい。鍛え抜かれた肉体のラインがよく分かる薄い素材の夜着を着たフェルディナンを目前にして、私は逃げ出したい衝動に駆られた。
し、失敗したっ! そう言えばこの人、中途半端に体が見えるような恰好させると逆に色気が増すんだった――っ! ちゃんと厚手の生地の服を着てほしいって言うべきだった……それも露出が極力少ないものをっ!
そうは思ったものの、ちゃんとしっかり前回私が言ったことを守ってくれたフェルディナンに注文をつけるわけにもいかず、私は無言で彼から距離を取るしか仕様が無かった。
そうしてじりじりとベッドの上で少しずつ後退する私の行動に気付いたフェルディナンが私の腕を掴んだ。
「――おいで」
フェルディナンの声色は先程からずっと頗る優しい。心地よく耳に響く低音――でも有無を言わせない強制力を持ったその声に私はビクッとまた反応してしまう。
「で、でも……あの」
戸惑いの声を出して私は困り果ててしまった。だって、流石にそれは不味い。私を甘えさせることに長けているフェルディナンに、理性が吹っ飛んでもう一度キスをねだってしまいそうだ。それもねだったらねだったで、またフェルディナンは拒否することなく応えてくれそうだし……
何なのそのセフレみたいな関係は!? 冗談じゃないんですけどっ!?
それにフェルディナンは神様も異邦人も好きではなさそうだ。直接聞いたことはないものの、出会った当初の神様の話をした時のあの嫌そうな表情から容易に想像はつく。出来れば異邦人とだって関わり合いにはなりたくなかった筈だ。フェルディナンは優しいから私が傍にいることを許してくれたけれど――きっと彼は結婚も子供も望んではいない。いまのフランクな関係が限界ギリギリだとしたら?
そんなフェルディナンに私が恋心を抱いていると知られてしまうのは不味い――
もし、恋心を抱いていると知られてしまったら重いと思われてしまうかもしれない。そしたらきっと距離を取られてしまう。そして優しいフェルディナンのことだからほっぽり出すなんてことはしないにしても、もう私にこうして優しく話しかけてくれることはなくなってしまうかもしれない……
私は一頻り悪い未来を想像してから、一人でしょんぼりと項垂れてしまった。
フェルディナンに恋心を抱いていることを知られて嫌われたくない。そう思って俯いていると、フェルディナンに掴まれたままの手をぐいっと引っ張られた。
「えっ? きゃあっ!」
不意を突かれてポスッとフェルディナンの胸の中に納まってしまう。
「あっ、あの! フェルディナンさん放してくださいっ!」
フェルディナンに抱留められる形で私は彼の胸の中にいた。
これ以上刺激が強いのは本当に困るし不味いのだけど……
そう思いつつも喜びに心が震えている部分があるのも否定できない。好きな人の胸の中にいてそれもベッドの上でなんて嬉しくない訳がない。
「フェルディナンさん? 聞いていますか?」
「ああ、聞いているよ」
「だったら放して頂けると……」
「それは無理だ」
「どうしてですか?」
「放したら月瑠は逃げるだろう?」
「…………」
その通りですとは言えず私は口を閉ざしてしまうしかない。フェルディナンは私のそんな様子を見て眉根に皺を寄せると咎めるような目で私を見た。悪戯を知られてしまった子供のように、私は身を竦めてフェルディナンに謝った。
「ごめんなさい……でも私――」
貴方の事が好きだからこれ以上は困るんです! 理性が飛びそうだから、とは言えない。何だかこのパターンが次第に定着しつつある自分が悲しい。
口籠ったまま、私はこれ以上フェルディナンの目を見なくてすむように彼の胸に顔を埋めた。
「月瑠?」
少し心配そうなフェルディナンの声に誘われて私は思わず彼の逞しい体に手を回してギュッと抱きついてしまった。
――子供としか思われてないんだからこれくらい平気だよね?
今度はフェルディナンの方が一瞬ビクッと硬直したような気がしたけれどきっと気のせいだ。
「なんでもないですよ~」
「……そうか」
私が明るい声で答えるとフェルディナンは短く返事をしてから、まるで壊れ物を扱うように私をそっと抱きしめ返してきた。その繊細な仕草とは対照的な彼の大きくてガッチリとした男の人の手が愛しくて仕方がない。その温かさと包み込むような感触は彼に常に守られているような感じがしてすごくほっとする。
「もう寝るぞ?」
「はい――って、ちょっと待って下さい。フェルディナンさんどうして一緒に毛布掛けようとしてるんですか! ……もちろん自分のお部屋に戻られるんですよね?」
作り笑いをなんとか顔に張り付けてニッコリそう聞くと、フェルディナンはキョトンとした顔をしてこちらを見た。
まさか、ですよね?
「どうして私が部屋に戻る必要があるんだ?」
今更だろう? という表情で逆に驚かれてしまった。
フェルディナンはどうやらこのまま添い寝を続行するつもりらしい。
「た、確かにさっきまで意識なかったとはいえ一緒に寝てましたよ? けどこれはちょっと違うというか、困るというか……どうしようフェルディナンさんが天然タラシなの忘れてた……」
「月瑠、先程から何を一人でブツブツ言っているんだ……?」
「へっ? あっいえ、そのですね」
「?」
「フェルディナンさんお部屋に帰りましょう!」
「何故だ?」
「……それ、本気で言ってます?」
「月瑠」
「はい」
「いい子だからもう寝なさい」
「……い、いい子じゃないから寝ませんっ!」
というか一緒に何て眠れるわけがない。私の頭をポンポン叩いて宥めているフェルディナンの手をどけて私は勢いよく噛みついた。
「月瑠? 一体どうしたんだ?」
「う~、もうっ! フェルディナンさんの馬鹿~っ!」
「……そういうことを言われたのは生まれて初めてだな」
なかなか思っていることが伝わらない歯がゆさに私はイライラした感情を爆発させてしまった。しかしそうしてムーと頬を膨らませて怒っている私とは正反対にフェルディナンは私を抱きしめたまま楽しそうにくすくす笑っている。
「フェルディナンさん悪口言われたのにどうしてそんな嬉しそうなんですか……」
「月瑠と一緒にいると色んなことが体験出来て新鮮で面白いと思ってな」
「し、新鮮……ですか」
確かにこの国最強の将軍と言われていて、それなりの地位にいる男性に対してこんな無遠慮に子供じみた罵声を浴びせる人なんて滅多にいないだろう。
そもそもそういう立場の人は高い矜持が邪魔をしてそんな発言自体許してはくれない気がする。フェルディナンのように寛容な人も相当に希少な存在のような気がした。
「月瑠はそんなに私と一緒に寝るのが嫌なのか?」
分かっていないと思っていたら突然、フェルディナンから核心を突いた発言が繰り出されてギョッとしてしまう。それも少し寂しそうな顔をされて考えるよりも先に思わず否定する言葉が口を出た。
「そ、そんな訳ないじゃないですかっ! 嫌ではないですよ! むしろ……」
勢いにまかせてうっかり本心を口にしてしまって、私は慌てて両手で口元を押さえ込むと続きの言葉を何とか飲み込んだ。
「そうか、なら問題はないな」
「えっ?」
さらっとそう言ってフェルディナンは私を軽々と持ち上げると自身の身体の上に乗せてベッドの上で横になってしまった。私の身体に手を回して抱きしめた格好のまま目を瞑ってしまう。あまりにも素早いフェルディナンの動作に思考が追い付かなくて私はフェルディナンになされるがままにされてしまった。
「おやすみ」
おやすみって……ちょっと待って! 何をあっさり言っているんですかフェルディナンさんっ!? この体勢で眠れとっ!? というかさっきの核心を突いた質問のタイミングといい、この人絶対に確信犯だ……
わざとその答えが出るように誘導されたことに私はやっと気が付いた。
「あ、ええっと、私重いですし――その、せめて隣で寝るかもしくは床かソファで寝ますからフェルディナンさんはベッドを使って下さい」
「……月瑠、君はどうしてそうなんだ?」
呆れたようなフェルディナンの声。閉じていた目を開けて半眼で私を見上げている。彼の綺麗な顔が少し困惑に影を落としている。常々思っていたことなのだが、フェルディナンが困っている時の表情は妙に色っぽくて、実はそれを見るのがけっこう好きだったりする。勿論そう思っていることはフェルディナンには内緒だ。
「どうしてって?」
「どうして私を優先して自分が二の次になるんだ。立場が逆だと前にも言っただろう」
「だってフェルディナンさん綺麗ですし」
やっぱり綺麗な人を優先したいです、はい。
「……君のそのよく分からない基準は何とかならないのか?」
「なりません」
顔を顰めて非難の視線を向けてくるフェルディナンを無視して、私はきっぱり言い切って逆に彼を強く見つめ返した。これだけは絶対に譲れませんと真っ直ぐに彼と目線を合わせる。
「君は本当に……仕方ないな。だがそれはそのうち直させるぞ?」
フェルディナンはまいったとでも言うように苦笑すると、彼を見下ろしている態勢の私の後頭部を掴んでグイッと自身の方へと近づけた。コツンと額に額を当てて私の身体に回す手に力を込めてから額に口づけた。
「……あの、私直りませんし直すつもりもありませんよ?」
「そうなのか?」
「そうなんです」
広いベッドに二人で横になりながら密着して恋人同士がするように、睦言を囁き合う気持ち良さに感化されてフェルディナンにもっと甘えたくなってしまう。
「そうか分かった――だが月瑠が直す気が無いというのなら私もそれを実行させるつもりはない」
「引くつもりはないってことですか?」
「ああ」
「フェルディナンさん……」
私はこれ以上言っても無駄だと分かって最終的にはジトーと目だけで訴えた。
「月瑠そんな目で見ても答えは変わらないぞ? ほら、もういい加減寝なさい」
背中をトントン叩いて眠るように促すフェルディナンに私は遂に降参して一緒に寝ることを許してしまった。
「……おやすみなさい、フェルディナンさん」
「おやすみ」
これって一体何の試練でしょうか? 私は仕方なくフェルディナンの体に回している手をそのままに、その厚い胸板に顔を埋めて無理矢理眠りについた。
*******
そして、そのままの態勢で小一時間程経過してから私はパチッと目を開けた。実は始終ドキドキしていてとても眠りになど付ける訳もなく寝たふりを続けていた。
こんな刺激の強い状況で眠れますか! と文句を言ってしまいたくなる。
「フェルディナンさん?」
おそるおそる小声で彼の名を呼んでみる。返事はない。どうやらしっかり眠っているようだ。私の体に回した手はそのままにフェルディナンは静かに寝息を立てている。
私は上半身を軽く起こした。上半身を浮かせてフェルディナンから少し体を離してみると、私の長い黒髪が彼の胸元に落ちてくるくると小さく渦を巻いた。
ベッドの上で完全に横になっているフェルディナンを上から見下ろす姿勢。部屋の外の世界を照らしている青い月の光が差し込んできて彼の顔を明るく照らしだした。
「綺麗な顔……」
フェルディナンの堀の深い、目鼻立ちのはっきりとした美貌に思わず感嘆の溜息をついてしまった。金の髪に触れてそれからその顔にそっと手を這わせて輪郭を指先でなぞってみる。
前回フェルディナンの頭を撫でていた時と同じ、見た目よりも柔らかい黄金色の髪の感触が心地良い。最後に眉尻の古傷に触れてから私はそっとその古傷に口づけた。
フェルディナンは普段からも45歳という実年齢よりもかなり若く見える。しかし眠っている顔は起きている時よりも更に数段若く見える。
こんな無防備な顔を見たことがあるのはきっと、私とフェルディナンさんの夜の相手をした人達だけなんだろうなぁ。過去の相手とはいえ、ちゃんと大人として相手をしてもらえた相手が羨ましい……
そう思うだけでもやもやとした複雑な感情と嫉妬心が湧き上がってくる。
「私はこれからどうしたらいいの?」
攻略対象キャラを好きにならないって決めたのに、フェルディナンにその決意をあっさりと崩されてしまった。帰れなくなるからそれだけは駄目だってそう決めていたのに。
「それだけは絶対に駄目なのにどうしてこんな――」
――どうしようもなく好きになっちゃったんだろう。
フェルディナンに惹かれる心は止めようがなくて私は衝動を抑えきれない自分の理性の弱さが嫌になる。
子供としか見られない自分が悲しくて思わず自身の体を見下ろす。何度見ても平凡で平均的なモブキャラ要素満載の体が、官能的な体付きに変わるわけもなく。それも相手を悩殺出来るようなテクニックも持ち合わせていないのに攻略なんて出来るわけがない。私はふぅっと溜息をついて、フェルディナンの無防備な顔に再び視線を戻した。
「好き……」
絶対に言えない思いを零して、私はフェルディナンの唇に唇を落とした。
やっぱり理性では抑えきれなかったようだ。
1
あなたにおすすめの小説
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる