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二分の三~ちょっと休憩~
♀Ⅱ.フェルディナンの困惑
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月瑠がようやく暴れるのを止めて大人しくなった。月瑠には逃げ癖が有り。今までにも事あるごとに隙を見てはフェルディナンから逃げ出そうとした。最近はようやく少し逃げなくなってきたと思っていたのだが、やはり長年培ってきた部分をそう簡単に変えるのは難しいようだ。今ではすっかりフェルディナンにも捕獲癖が付いて手元に置いておく為の退路断ちが日課になってしまった。
フェルディナンの腕に後ろから抱き締められているから逃げようがないのに、月瑠はそれでもどうにかして逃げようとさっきまで躍起だった。今は一応何とか落ち着きを取り戻したようで腕の中で大人しくしている。
それにしても月瑠は自ら行為を申し出たものの、どうにも踏み切れない気持ちがあるようで少し困り顔でへにょっとフェルディナンの胸元に寄りかかって複雑そうな表情をしている。
何か問題があるのだろうか? とフェルディナンとしても月瑠の考えている事が分からない事への苛立ちと思い通りにならない不自由さに苦笑してしまう。
相手が思い通りにならない事が分からないという感情がこんなにも嫌じゃ無い何てな……
その感覚が好ましくさえ思えて不思議とワクワクする。そんなことを思う日が来るとはフェルディナンも思っていなかった。
「……君は何をそんなに悩んでいるんだ?」
なるべく怖がらせないように、これ以上の警戒する要素を与えないように。フェルディナンは穏やかな口調で話し掛けた。そうしないとまた何時考えを変えて逃げ出そうとするか分からない。最小限の注意を払って接することが必要な位に大切な人が、そうしたいと思える人がいる。そんな感情があるのだとフェルディナンは月瑠と出会ってから初めて知った。
「あの、本当にいいの? 嫌じゃない? もしそうならそう言ってくれればわたし……」
「君が血を流しているからといって嫌だと俺がそんなことを思うと思うのか? 俺は軍人だぞ? 血が流れているからとそれ位のことで怯むような柔な神経は持ち合わせてはいない。逆にそれを見て心躍ると言うことはあってもな」
「えっと、ちょっとまって。フェルディナン血が好きとかまさかそんなんじゃ……」
「違う。どうして君はそう妙な方向へ誤解をするんだ」
月瑠の思考回路は時々、今まで会った事のある誰よりも独創的で掴み所が無い。生まれた世界が違うせいなのか。それとも元々月瑠が持っているものなのか。何れにしても掌握出来ない相手とはこうも面白いものなのかと関心してしまう。
「一応言っておくがそれは戦闘での話だ。それに今君が血を流している理由が怪我や病気だとしたら俺は冷静ではいられない」
「うん、……あのね、わたしもうちょっとだけこうしていたいな」
いい? と上目遣いに黒い瞳を向けられたら何でも叶えてやりたくなる。フェルディナンはチュッと月瑠の頭上に唇を落としてから優しく頬を撫でた。
「いいよ、おいで」
そう言うと月瑠は大人しくフェルディナンにその柔らかい身体を預けながらスリスリと気持ちよさそうに擦り寄ってきた。フェルディナンに優しくお腹をさすられながら安心して身体を重ねてくる姿はゴロゴロと喉を鳴らしている猫のようだ。暫くそうして月瑠の好きにさせていたら今度は小さい声で名前を呼ばれた。
「フェルディナン……」
「どうした?」
「……なんか気持ち良すぎて眠い」
「…………」
フェルディナンの胸元を力の抜けた指先でいじりながら頬を擦り寄せている月瑠は、トロンとした表情で今にも眠ってしまいそうな状態だった。
さてさて、どうしたものか。本当に想定外の行動ばかりとるな彼女は……
その眠そうな顔を眺めて。少しだけ時間を置いてからフェルディナンはそっと月瑠を抱き上げてベッドの上から下りた。
「フェルディナン……? 何処行くの?」
「入浴場に行く。君も身体を洗いたいだろう?」
「……た、たしかに汚れちゃったしそうなんだけど……でも、あの本気で?」
少し目が覚めたようで月瑠は縋るように胸元の服を握り締めている。若干頬を赤らめているのはただ入浴するだけではないという事を知っているからだ。逃げる隙を作るような時間を与えないようにフェルディナンは入浴場に向かって歩き出した。
「本気だ」
歩きながら話を進めると月瑠は一応観念したようで黙り込んでしまった。
そうして入浴場に着いて浴室に入るといよいよ月瑠は身体を硬くしてギュッと抱きついて顔を隠してしまう。小さく温かく柔らかい存在が小刻みに肩を震わせているのが緊張のせいだと分かっているから、フェルディナンは落ち着かせるように穏やかな口調で話し掛けた。
「月瑠、そんなに抱きつかれたら入れないぞ?」
「だって……」
「それではこのまま入るか? 俺は構わないが……」
「えっ!? あ、あのわたし脱いでから入るからっ! おねがいおろして~!」
からかうようにフッとフェルディナンが笑うと月瑠は必死になって抱き上げられている腕の中から下りようと藻掻いて暴れ出してしまう。仕方なくフェルディナンはゆっくりと大理石の床に下ろしてそれからビクついている最愛の人に選択肢を提示することにした。
「どうする? 俺が脱がせるかそれとも君が……」
「わ、わたし自分で着替えるから! だからフェルディナンは先に入ってて!」
こちらを見ないでとフェルディナンを遠ざけようと月瑠は腕を突っぱねた。普段甘い顔をしているフェルディナンもあからさまに避けられるのは少々頂けない。だから距離を取るように離れる月瑠にフェルディナンは意地悪をしてしまった。
「どうせこれから全て見ることになるのにか?」
「~~~~っっ!!!」
月瑠の耳元で囁いてチロッとその柔らかい耳たぶを舐めると。顔を更に真っ赤にして烈火のごとく怒りだした。何やら色々と叫んでいる。その様子すらも小動物を相手にしているようで飽きない。
「ああ、それと俺をあんまり待たせるとこちらから迎えに行くことになるぞ?」
「もうっ! わかってるからっ! だからもういってください~!」
月瑠は感情が高ぶると何故か言葉が丁寧になる。それもこちらの世界に来た当初と同じように余所余所しくなるのは何故なのか。照れ隠しにしても不思議な現象だ。
「本当に君は見ていて飽きないな」
「フェルディナン~~!」
ははっと笑ってそう言うと月瑠はさらに頬を膨らませて怒った。行動の一つ一つが小さくて正直なところ、怒られてもじゃれつかれているような感覚しかない。そんなことを言ったら月瑠は更に怒るだろうなと思いながら、フェルディナンは怒っている月瑠を尻目に目の前でさっさと衣服を脱いでしまった。
「……っ!」
「何をそんなに驚いている? 流石にもう見慣れただろう? 君を今までどれだけ抱いたと思ってるんだ? 俺はもう君を抱いた回数を覚えていない。それくらい君を抱いたのにどうして裸を見たくらいで毎回恥ずかしがるんだ?」
「そ、そうだけど。そうなんだけどね? それとこれとはちょっと違うの……」
月瑠は今でもフェルディナンが全裸になると必ずと言っていい程、羞恥に頬を赤く染めてまごついてしまう。フェルディナンに抱かれて見慣れている筈なのに。何時までも初心な反応をする。
その言動全てが可愛らしいなと思いながらもフェルディナンはこれ以上月瑠に怒られる前に退散することにした。そうしないと本当にへそを曲げられて部屋に戻ると言い出しそうだったからだ。月瑠に言われた通り先に風呂に浸かって待つべく足を進めて、それから浴室を出る前にフェルディナンはくすっと笑いながら月瑠を振り返った。
「早くおいで。そうしないと待たされた分、君をどうするか分からない」
「うん……」
月瑠は困ったように口元に手を当てて頬をピンク色に染めながら上目遣いに遠慮がちにフェルディナンを見ている。薄い夜着1枚を着ただけの格好でいる月瑠は先程までのフェルディナンとの会話だけで、無自覚にも相手を誘うようなかなり色っぽい表情を浮かべてしまっている。それも物欲しそうな視線をフェルディナンに向けていることにまるで気付いていない。その官能的な姿を見て、フェルディナンは待つと言ったことを少し後悔した。
*******
全体を大理石で覆われた構造で部屋数個分はある広々とした入浴場。その湯にゆったりと浸かりながら天井を仰ぎ見ていると入り口の方からカタンと音がした。ユラユラと蝋燭の炎が照らし白い靄のような蒸気が占める中。数分程して月瑠が入ってきた。
「ようやく来たか……それもその布は必要なのか?」
広々とした風呂の縁に両腕を掛けてそちらを見ると身体に布を巻いている月瑠の姿が見えた。湯に浸かりしずくが滴り落ちる濡れた手をフェルディナンは徐に差し出してこちらへ来るようにと呼んだ。けれど呼ばれた月瑠は入浴場の端っこへと移動して更に距離を取るように動いて逃げてしまう。
……まいったな。彼女の警戒を解くにはどうしたらいい? 捕まえるにしても距離があり過ぎる。
月瑠からフェルディナンの傍に近づいてくれるのも。甘えてくれるのも。そのどちらもフェルディナンにとっては心地よい。けれど離れられるとどうしたらいいのか分からなくなる。そう思っていたら月瑠の方から話し掛けてきた。
「あ、あのね。わたしとりあえず身体洗うから。その、一緒に入るのはその後ということで……だからフェルディナンはこっち見ないでくれる?」
「そうか。そうくるか……」
彼女は何処まで引き延ばす気なのだろうか? 仕方が無いな……
フェルディナンがザバッと湯から出ると怯えたように後退されてしまう。無理矢理捕まえるような事になるのは避けたかったけれど、このままでは埒が明かない。鼬ごっこのようなことを続けるつもりはフェルディナンには更々無かった。
「フェルディナン……?」
入浴場の壁に背を付けて壁伝いにジリジリと逃げてはいるものの、月瑠はそこまで本気で逃げてはいないようだった。本気では嫌がっていない。戸惑っているだけで。だから簡単に壁際に追い詰めてその両腕を捕らえる事が出来た。
「あの、わたしまだ身体洗ってなぃ……」
「あまり待たせるとどうするか分からないと言っただろう?」
壁に月瑠の身体を強く押しつけながらフェルディナンはその花弁に手を伸ばす。まだ繋がっていない場所からは何時もと違うヌルッとした感触がある。
「……ぁ! ダメっ! 汚れちゃうから!」
本当に困った顔でフェルディナンを見て月瑠は焦って止めようとしていた。
「平気だ。何時もは俺が君を汚している」
「……っ! なに言ってるの!? とにかくダメだからっ! せめて身体を先に洗わせて……」
「それこそお断りだな。これ以上猶予を与えて君に逃げられるのは御免だ」
そこから手を引き上げると指先が赤に染まっていた。濡らそうとしなくてもすんなり入りそうな状態を確認して。フェルディナンはその場所へとモノを宛がうと一気に貫いた。
「ひぁあっ! ぃやぁっやめてっ」
悲鳴のような声を上げている月瑠の両腕をフェルディナンは壁に押さえ込んで、更に腰を強く打ち付けて立て続けに突き上げる。抑えていた分を解消するように容赦無く腰を動かしながら身体に巻き付けている布を剥ぎ取って互いの肌を重ね合わせた。すんなりとフェルディナンの巨大なモノを飲み込んでいる花弁を更に押し広げてズッと強く突き上げながら月瑠の様子を見ると。涙ぐみながら堪えるように潤んだ黒い瞳をフェルディナンに向けていた。
「っんぁ……ぁっふぁっ」
花びらのような形の唇を開けてフェルディナンの突き上げに喘ぎ声を上げて乱れるその姿が余計にフェルディナンのモノを大きくしていくのが月瑠には分からないようだ。
「……これ以上俺を待たせるな」
そう命令してから何度も激しく突き上げると月瑠の口から甘い声が漏れ始めた。
「あっ……ごめ、なさい……あっあっ……んっぁあっ」
湯気に紛れて熱い吐息がその唇から吐き出される度にフェルディナンが強く腰を打ち付けて深く結合すると、身体をくねらせて月瑠はフェルディナンから与えられる刺激から逃れようと藻掻いた。プルプルと震える乳房に食いつくように歯を立てると逃れられない快感に、身体が弓なりに反れて苦しそうに切ない表情を浮かべながら必死に月瑠はフェルディナンを呼ぶ。
時折聞こえてくる制止の声も無視して、フェルディナンは月瑠の背中を壁に押し付けながら閉じようとする股間を無理矢理開かせて。その秘所に巨大なモノを埋め込んで突き上げ続けた。そうして暫くの間攻め続けて。酷く泣かせた。
最愛の人に泣いて呼ばれると理性なんて軽く吹っ飛んでしまう。頬を伝う汗を拭おうともせずに、一度ズルッとフェルディナンは巨大なモノを月瑠の花弁から引き抜くと今度はその腰ごと月瑠の身体を全部持ち上げて、壁に強く押し付けながら無理矢理大きく足を左右に開くように自身の身体を割り入れた。そうしてまた強引に月瑠の身体を開かせると。フェルディナンは再度その場所へズッズッと挿入を開始した。
「ひっ! やだぁっやめ、あぁっっフェルディナンいやぁっ」
腰を掴んで秘所を強く引き寄せながらそこをグチグチと掻き回すと、更に月瑠は悲鳴のような声を上げてまた泣き始めてしまった。フェルディナンは月瑠の背中を壁に押し付けてその唇を唇で塞ぎながら腰を動かして激しく突き上げる。ユサユサと身体を揺らされながら必死にフェルディナンの巨大なモノを受け止めている花弁からは赤に混じって白濁した液体が流れ出ている。
「やっフェル、ディナンやぁっおなか、あっんっ、そんな、したら、あぁっこわれちゃうっ」
「……そんな可愛いことをいうな」
「ふぁっ、ぁっおねが、い……も、ぬいっ、て……あぁっ!」
「駄目だ」
互いの全身に伝う汗と蒸気が身体から発生する熱と混ざり合って酷く熱いのに。ずぶ濡れになった熱い身体が擦れ合う感覚のあまりの気持ち良さに酔いそうになる。互いを繋ぐ股間の熱が絶えず交わり合って動くと月瑠がフェルディナンのモノを強く締め付けてくる。
離れてはまた深く繋がって、白濁した液体と透明な液体が粘ついて花弁を濡らして互いの股間に糸を引く。その繰り返しで生み出される熱量とその圧迫感に月瑠はまたフェルディナンから泣いて逃げようとした。
「あぁっ……も、むりっ……ひあっ……もうはい、らなっ」
「悪いが、まだ抱き始めたばかりだ。ほんの序盤で止める訳がないだろう?」
「そんなっ……! ふぁ……ぁっやめっ……んっんっ」
最愛の人が上げる制止の声を悉く無視してフェルディナンは何度目かの射精を行った。何度も射精を繰り返して。そうして抱き続けている間も月瑠を見つめながらその華奢な身体を蹂躙することで得られる満足感に。自身の手元でガッチリと捕獲されて身動きが出来ず追い詰められて泣きながら見つめてくる愛する人の身体を刺し貫いたままフェルディナンは壁から離れた。
「フェル、ディナン……ぁっどこ、いくの……?」
激しい行為に疲れて拙い言葉を口にする月瑠はぐったりとフェルディナンの胸元に寄りかかっていた。行為が始まると繋がりをなかなか解いてくれないフェルディナンの事を月瑠はよく知っている。だからそれに関してはあまり文句を言わなくなっていた。行為の最中に欲情に流されまいと制止の声を上げて身体をよじらせて少しでもそれから逃げようとする事はあっても。無理矢理繋がりを解こうとはしない。されるがままにフェルディナンを受け入れながら言葉では嫌だと毒を吐く。
本当に困った人だな……
言葉と行動が一致していない。欲しいと思っているのに素直にそれを言えないでいる。よがり声を上げながら嫌がり泣く月瑠をそれでも抱き続けて、その残された理性を飛ばした後にしか本当に素直になってはくれないのだから。
「一緒に入ると君が言ったんだろう?」
「……うん、でもお湯が汚れちゃう」
「そんなことを気にする必要はない」
湯の中へとフェルディナンは月瑠を抱いたままゆっくり入った。チャポンと水音が立って温かい湯の中に浸かると、月瑠は少し安心したような表情を浮かべてスリスリとフェルディナンの胸元に上気した頬を擦り寄せてくる。お湯に少し深く浸かってみると月瑠の長い黒髪がふわふわと藻のように広がって妙に可愛い。少し行為を中断してゆったりと湯に浸かりながらフェルディナンは月瑠の様子を見ることにした。
月瑠は力を抜いて行為に疲れて熱く火照った身体をくったりとフェルディナンに預けて虚ろな瞳を漂わせている。湯に濡れてぬったりと光る身体を触れ合わせながら月瑠はフェルディナンの胸板にそろそろと遠慮がちに触れてきた。優し過ぎる位にそっと慈しむような仕草で胸板を撫でながら、時折盗み見るようにちらっとフェルディナンを見てくる。その月瑠の行動全てがフェルディナンを好きだと言われているような気がして愛おしくて堪らなくなる。身体を温かい湯に浸かりながら、心までもぬるま湯に浸かっているような気分にさせられる。
「可愛いな……」
「ふぇっ?」
思ったことがそのまま口から出てしまった。それにびっくりしたような顔をして反応した月瑠にフェルディナンはくすりと笑ってその頭を優しく撫でながらキュッと抱き寄せる。
「何故そんなに驚いた顔をする?」
「だってフェルディナンにそういうこと言われるのって、何ていうか……」
「何だ?」
「甘過ぎて身が保たないです……」
「甘い?」
「うん、普段は甘やかし過ぎだなって思うし。過保護なところ沢山見てきたからだいぶ慣れてはいるんだけど。その、言葉自体が甘いというか。あのっ、……フェルディナンって存在自体が甘いよね」
「……何だそれは」
「だからね。フェルディナンって抱いてる時は鬼畜だし強引だし凄く激しいのに、普段はもの凄く甘いの。落差があり過ぎて、あんまり摂取し過ぎると中毒になって離れられなくなるから困るというか。だからそれをセックスしている時にするのは無しにして? じゃないとわたしの身が保たないのっ」
「すまないが、君の言っている事が理解出来ない。君を抱くときは手加減すること無く、容赦無く抱けと言いたいのか?」
「ち、違うの! そう言う事じゃ無くて……」
食い下がる月瑠の考えている事が分からなくてフェルディナンは首を傾げた。
「単に甘やかされるのが嫌なのか?」
「ちがう~っ! そうじゃないのっ」
「何が違うんだ?」
「……も……の」
「月瑠?」
「ぜんぶ、気持ちごとフェルディナンに持って行かれそうになるからイヤなのっ!」
フェルディナンに心も身体も全部を支配されてしまうことを嫌がっているのだと。フェルディナンは月瑠が息を荒くして口にした言葉でようやく気が付いた。
「そんなに俺に心を預けるのは嫌か?」
「……っ! あっ、あのそうじゃないの。そうじゃなくて……」
「?」
フェルディナンを傷付けてしまったのかと月瑠は戸惑っていた。急いで言葉を否定してそれからこの後、困ったことにまた無自覚に人を煽る言葉を羅列し始めた。それも相当に強烈なやつを。
フェルディナンの腕に後ろから抱き締められているから逃げようがないのに、月瑠はそれでもどうにかして逃げようとさっきまで躍起だった。今は一応何とか落ち着きを取り戻したようで腕の中で大人しくしている。
それにしても月瑠は自ら行為を申し出たものの、どうにも踏み切れない気持ちがあるようで少し困り顔でへにょっとフェルディナンの胸元に寄りかかって複雑そうな表情をしている。
何か問題があるのだろうか? とフェルディナンとしても月瑠の考えている事が分からない事への苛立ちと思い通りにならない不自由さに苦笑してしまう。
相手が思い通りにならない事が分からないという感情がこんなにも嫌じゃ無い何てな……
その感覚が好ましくさえ思えて不思議とワクワクする。そんなことを思う日が来るとはフェルディナンも思っていなかった。
「……君は何をそんなに悩んでいるんだ?」
なるべく怖がらせないように、これ以上の警戒する要素を与えないように。フェルディナンは穏やかな口調で話し掛けた。そうしないとまた何時考えを変えて逃げ出そうとするか分からない。最小限の注意を払って接することが必要な位に大切な人が、そうしたいと思える人がいる。そんな感情があるのだとフェルディナンは月瑠と出会ってから初めて知った。
「あの、本当にいいの? 嫌じゃない? もしそうならそう言ってくれればわたし……」
「君が血を流しているからといって嫌だと俺がそんなことを思うと思うのか? 俺は軍人だぞ? 血が流れているからとそれ位のことで怯むような柔な神経は持ち合わせてはいない。逆にそれを見て心躍ると言うことはあってもな」
「えっと、ちょっとまって。フェルディナン血が好きとかまさかそんなんじゃ……」
「違う。どうして君はそう妙な方向へ誤解をするんだ」
月瑠の思考回路は時々、今まで会った事のある誰よりも独創的で掴み所が無い。生まれた世界が違うせいなのか。それとも元々月瑠が持っているものなのか。何れにしても掌握出来ない相手とはこうも面白いものなのかと関心してしまう。
「一応言っておくがそれは戦闘での話だ。それに今君が血を流している理由が怪我や病気だとしたら俺は冷静ではいられない」
「うん、……あのね、わたしもうちょっとだけこうしていたいな」
いい? と上目遣いに黒い瞳を向けられたら何でも叶えてやりたくなる。フェルディナンはチュッと月瑠の頭上に唇を落としてから優しく頬を撫でた。
「いいよ、おいで」
そう言うと月瑠は大人しくフェルディナンにその柔らかい身体を預けながらスリスリと気持ちよさそうに擦り寄ってきた。フェルディナンに優しくお腹をさすられながら安心して身体を重ねてくる姿はゴロゴロと喉を鳴らしている猫のようだ。暫くそうして月瑠の好きにさせていたら今度は小さい声で名前を呼ばれた。
「フェルディナン……」
「どうした?」
「……なんか気持ち良すぎて眠い」
「…………」
フェルディナンの胸元を力の抜けた指先でいじりながら頬を擦り寄せている月瑠は、トロンとした表情で今にも眠ってしまいそうな状態だった。
さてさて、どうしたものか。本当に想定外の行動ばかりとるな彼女は……
その眠そうな顔を眺めて。少しだけ時間を置いてからフェルディナンはそっと月瑠を抱き上げてベッドの上から下りた。
「フェルディナン……? 何処行くの?」
「入浴場に行く。君も身体を洗いたいだろう?」
「……た、たしかに汚れちゃったしそうなんだけど……でも、あの本気で?」
少し目が覚めたようで月瑠は縋るように胸元の服を握り締めている。若干頬を赤らめているのはただ入浴するだけではないという事を知っているからだ。逃げる隙を作るような時間を与えないようにフェルディナンは入浴場に向かって歩き出した。
「本気だ」
歩きながら話を進めると月瑠は一応観念したようで黙り込んでしまった。
そうして入浴場に着いて浴室に入るといよいよ月瑠は身体を硬くしてギュッと抱きついて顔を隠してしまう。小さく温かく柔らかい存在が小刻みに肩を震わせているのが緊張のせいだと分かっているから、フェルディナンは落ち着かせるように穏やかな口調で話し掛けた。
「月瑠、そんなに抱きつかれたら入れないぞ?」
「だって……」
「それではこのまま入るか? 俺は構わないが……」
「えっ!? あ、あのわたし脱いでから入るからっ! おねがいおろして~!」
からかうようにフッとフェルディナンが笑うと月瑠は必死になって抱き上げられている腕の中から下りようと藻掻いて暴れ出してしまう。仕方なくフェルディナンはゆっくりと大理石の床に下ろしてそれからビクついている最愛の人に選択肢を提示することにした。
「どうする? 俺が脱がせるかそれとも君が……」
「わ、わたし自分で着替えるから! だからフェルディナンは先に入ってて!」
こちらを見ないでとフェルディナンを遠ざけようと月瑠は腕を突っぱねた。普段甘い顔をしているフェルディナンもあからさまに避けられるのは少々頂けない。だから距離を取るように離れる月瑠にフェルディナンは意地悪をしてしまった。
「どうせこれから全て見ることになるのにか?」
「~~~~っっ!!!」
月瑠の耳元で囁いてチロッとその柔らかい耳たぶを舐めると。顔を更に真っ赤にして烈火のごとく怒りだした。何やら色々と叫んでいる。その様子すらも小動物を相手にしているようで飽きない。
「ああ、それと俺をあんまり待たせるとこちらから迎えに行くことになるぞ?」
「もうっ! わかってるからっ! だからもういってください~!」
月瑠は感情が高ぶると何故か言葉が丁寧になる。それもこちらの世界に来た当初と同じように余所余所しくなるのは何故なのか。照れ隠しにしても不思議な現象だ。
「本当に君は見ていて飽きないな」
「フェルディナン~~!」
ははっと笑ってそう言うと月瑠はさらに頬を膨らませて怒った。行動の一つ一つが小さくて正直なところ、怒られてもじゃれつかれているような感覚しかない。そんなことを言ったら月瑠は更に怒るだろうなと思いながら、フェルディナンは怒っている月瑠を尻目に目の前でさっさと衣服を脱いでしまった。
「……っ!」
「何をそんなに驚いている? 流石にもう見慣れただろう? 君を今までどれだけ抱いたと思ってるんだ? 俺はもう君を抱いた回数を覚えていない。それくらい君を抱いたのにどうして裸を見たくらいで毎回恥ずかしがるんだ?」
「そ、そうだけど。そうなんだけどね? それとこれとはちょっと違うの……」
月瑠は今でもフェルディナンが全裸になると必ずと言っていい程、羞恥に頬を赤く染めてまごついてしまう。フェルディナンに抱かれて見慣れている筈なのに。何時までも初心な反応をする。
その言動全てが可愛らしいなと思いながらもフェルディナンはこれ以上月瑠に怒られる前に退散することにした。そうしないと本当にへそを曲げられて部屋に戻ると言い出しそうだったからだ。月瑠に言われた通り先に風呂に浸かって待つべく足を進めて、それから浴室を出る前にフェルディナンはくすっと笑いながら月瑠を振り返った。
「早くおいで。そうしないと待たされた分、君をどうするか分からない」
「うん……」
月瑠は困ったように口元に手を当てて頬をピンク色に染めながら上目遣いに遠慮がちにフェルディナンを見ている。薄い夜着1枚を着ただけの格好でいる月瑠は先程までのフェルディナンとの会話だけで、無自覚にも相手を誘うようなかなり色っぽい表情を浮かべてしまっている。それも物欲しそうな視線をフェルディナンに向けていることにまるで気付いていない。その官能的な姿を見て、フェルディナンは待つと言ったことを少し後悔した。
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全体を大理石で覆われた構造で部屋数個分はある広々とした入浴場。その湯にゆったりと浸かりながら天井を仰ぎ見ていると入り口の方からカタンと音がした。ユラユラと蝋燭の炎が照らし白い靄のような蒸気が占める中。数分程して月瑠が入ってきた。
「ようやく来たか……それもその布は必要なのか?」
広々とした風呂の縁に両腕を掛けてそちらを見ると身体に布を巻いている月瑠の姿が見えた。湯に浸かりしずくが滴り落ちる濡れた手をフェルディナンは徐に差し出してこちらへ来るようにと呼んだ。けれど呼ばれた月瑠は入浴場の端っこへと移動して更に距離を取るように動いて逃げてしまう。
……まいったな。彼女の警戒を解くにはどうしたらいい? 捕まえるにしても距離があり過ぎる。
月瑠からフェルディナンの傍に近づいてくれるのも。甘えてくれるのも。そのどちらもフェルディナンにとっては心地よい。けれど離れられるとどうしたらいいのか分からなくなる。そう思っていたら月瑠の方から話し掛けてきた。
「あ、あのね。わたしとりあえず身体洗うから。その、一緒に入るのはその後ということで……だからフェルディナンはこっち見ないでくれる?」
「そうか。そうくるか……」
彼女は何処まで引き延ばす気なのだろうか? 仕方が無いな……
フェルディナンがザバッと湯から出ると怯えたように後退されてしまう。無理矢理捕まえるような事になるのは避けたかったけれど、このままでは埒が明かない。鼬ごっこのようなことを続けるつもりはフェルディナンには更々無かった。
「フェルディナン……?」
入浴場の壁に背を付けて壁伝いにジリジリと逃げてはいるものの、月瑠はそこまで本気で逃げてはいないようだった。本気では嫌がっていない。戸惑っているだけで。だから簡単に壁際に追い詰めてその両腕を捕らえる事が出来た。
「あの、わたしまだ身体洗ってなぃ……」
「あまり待たせるとどうするか分からないと言っただろう?」
壁に月瑠の身体を強く押しつけながらフェルディナンはその花弁に手を伸ばす。まだ繋がっていない場所からは何時もと違うヌルッとした感触がある。
「……ぁ! ダメっ! 汚れちゃうから!」
本当に困った顔でフェルディナンを見て月瑠は焦って止めようとしていた。
「平気だ。何時もは俺が君を汚している」
「……っ! なに言ってるの!? とにかくダメだからっ! せめて身体を先に洗わせて……」
「それこそお断りだな。これ以上猶予を与えて君に逃げられるのは御免だ」
そこから手を引き上げると指先が赤に染まっていた。濡らそうとしなくてもすんなり入りそうな状態を確認して。フェルディナンはその場所へとモノを宛がうと一気に貫いた。
「ひぁあっ! ぃやぁっやめてっ」
悲鳴のような声を上げている月瑠の両腕をフェルディナンは壁に押さえ込んで、更に腰を強く打ち付けて立て続けに突き上げる。抑えていた分を解消するように容赦無く腰を動かしながら身体に巻き付けている布を剥ぎ取って互いの肌を重ね合わせた。すんなりとフェルディナンの巨大なモノを飲み込んでいる花弁を更に押し広げてズッと強く突き上げながら月瑠の様子を見ると。涙ぐみながら堪えるように潤んだ黒い瞳をフェルディナンに向けていた。
「っんぁ……ぁっふぁっ」
花びらのような形の唇を開けてフェルディナンの突き上げに喘ぎ声を上げて乱れるその姿が余計にフェルディナンのモノを大きくしていくのが月瑠には分からないようだ。
「……これ以上俺を待たせるな」
そう命令してから何度も激しく突き上げると月瑠の口から甘い声が漏れ始めた。
「あっ……ごめ、なさい……あっあっ……んっぁあっ」
湯気に紛れて熱い吐息がその唇から吐き出される度にフェルディナンが強く腰を打ち付けて深く結合すると、身体をくねらせて月瑠はフェルディナンから与えられる刺激から逃れようと藻掻いた。プルプルと震える乳房に食いつくように歯を立てると逃れられない快感に、身体が弓なりに反れて苦しそうに切ない表情を浮かべながら必死に月瑠はフェルディナンを呼ぶ。
時折聞こえてくる制止の声も無視して、フェルディナンは月瑠の背中を壁に押し付けながら閉じようとする股間を無理矢理開かせて。その秘所に巨大なモノを埋め込んで突き上げ続けた。そうして暫くの間攻め続けて。酷く泣かせた。
最愛の人に泣いて呼ばれると理性なんて軽く吹っ飛んでしまう。頬を伝う汗を拭おうともせずに、一度ズルッとフェルディナンは巨大なモノを月瑠の花弁から引き抜くと今度はその腰ごと月瑠の身体を全部持ち上げて、壁に強く押し付けながら無理矢理大きく足を左右に開くように自身の身体を割り入れた。そうしてまた強引に月瑠の身体を開かせると。フェルディナンは再度その場所へズッズッと挿入を開始した。
「ひっ! やだぁっやめ、あぁっっフェルディナンいやぁっ」
腰を掴んで秘所を強く引き寄せながらそこをグチグチと掻き回すと、更に月瑠は悲鳴のような声を上げてまた泣き始めてしまった。フェルディナンは月瑠の背中を壁に押し付けてその唇を唇で塞ぎながら腰を動かして激しく突き上げる。ユサユサと身体を揺らされながら必死にフェルディナンの巨大なモノを受け止めている花弁からは赤に混じって白濁した液体が流れ出ている。
「やっフェル、ディナンやぁっおなか、あっんっ、そんな、したら、あぁっこわれちゃうっ」
「……そんな可愛いことをいうな」
「ふぁっ、ぁっおねが、い……も、ぬいっ、て……あぁっ!」
「駄目だ」
互いの全身に伝う汗と蒸気が身体から発生する熱と混ざり合って酷く熱いのに。ずぶ濡れになった熱い身体が擦れ合う感覚のあまりの気持ち良さに酔いそうになる。互いを繋ぐ股間の熱が絶えず交わり合って動くと月瑠がフェルディナンのモノを強く締め付けてくる。
離れてはまた深く繋がって、白濁した液体と透明な液体が粘ついて花弁を濡らして互いの股間に糸を引く。その繰り返しで生み出される熱量とその圧迫感に月瑠はまたフェルディナンから泣いて逃げようとした。
「あぁっ……も、むりっ……ひあっ……もうはい、らなっ」
「悪いが、まだ抱き始めたばかりだ。ほんの序盤で止める訳がないだろう?」
「そんなっ……! ふぁ……ぁっやめっ……んっんっ」
最愛の人が上げる制止の声を悉く無視してフェルディナンは何度目かの射精を行った。何度も射精を繰り返して。そうして抱き続けている間も月瑠を見つめながらその華奢な身体を蹂躙することで得られる満足感に。自身の手元でガッチリと捕獲されて身動きが出来ず追い詰められて泣きながら見つめてくる愛する人の身体を刺し貫いたままフェルディナンは壁から離れた。
「フェル、ディナン……ぁっどこ、いくの……?」
激しい行為に疲れて拙い言葉を口にする月瑠はぐったりとフェルディナンの胸元に寄りかかっていた。行為が始まると繋がりをなかなか解いてくれないフェルディナンの事を月瑠はよく知っている。だからそれに関してはあまり文句を言わなくなっていた。行為の最中に欲情に流されまいと制止の声を上げて身体をよじらせて少しでもそれから逃げようとする事はあっても。無理矢理繋がりを解こうとはしない。されるがままにフェルディナンを受け入れながら言葉では嫌だと毒を吐く。
本当に困った人だな……
言葉と行動が一致していない。欲しいと思っているのに素直にそれを言えないでいる。よがり声を上げながら嫌がり泣く月瑠をそれでも抱き続けて、その残された理性を飛ばした後にしか本当に素直になってはくれないのだから。
「一緒に入ると君が言ったんだろう?」
「……うん、でもお湯が汚れちゃう」
「そんなことを気にする必要はない」
湯の中へとフェルディナンは月瑠を抱いたままゆっくり入った。チャポンと水音が立って温かい湯の中に浸かると、月瑠は少し安心したような表情を浮かべてスリスリとフェルディナンの胸元に上気した頬を擦り寄せてくる。お湯に少し深く浸かってみると月瑠の長い黒髪がふわふわと藻のように広がって妙に可愛い。少し行為を中断してゆったりと湯に浸かりながらフェルディナンは月瑠の様子を見ることにした。
月瑠は力を抜いて行為に疲れて熱く火照った身体をくったりとフェルディナンに預けて虚ろな瞳を漂わせている。湯に濡れてぬったりと光る身体を触れ合わせながら月瑠はフェルディナンの胸板にそろそろと遠慮がちに触れてきた。優し過ぎる位にそっと慈しむような仕草で胸板を撫でながら、時折盗み見るようにちらっとフェルディナンを見てくる。その月瑠の行動全てがフェルディナンを好きだと言われているような気がして愛おしくて堪らなくなる。身体を温かい湯に浸かりながら、心までもぬるま湯に浸かっているような気分にさせられる。
「可愛いな……」
「ふぇっ?」
思ったことがそのまま口から出てしまった。それにびっくりしたような顔をして反応した月瑠にフェルディナンはくすりと笑ってその頭を優しく撫でながらキュッと抱き寄せる。
「何故そんなに驚いた顔をする?」
「だってフェルディナンにそういうこと言われるのって、何ていうか……」
「何だ?」
「甘過ぎて身が保たないです……」
「甘い?」
「うん、普段は甘やかし過ぎだなって思うし。過保護なところ沢山見てきたからだいぶ慣れてはいるんだけど。その、言葉自体が甘いというか。あのっ、……フェルディナンって存在自体が甘いよね」
「……何だそれは」
「だからね。フェルディナンって抱いてる時は鬼畜だし強引だし凄く激しいのに、普段はもの凄く甘いの。落差があり過ぎて、あんまり摂取し過ぎると中毒になって離れられなくなるから困るというか。だからそれをセックスしている時にするのは無しにして? じゃないとわたしの身が保たないのっ」
「すまないが、君の言っている事が理解出来ない。君を抱くときは手加減すること無く、容赦無く抱けと言いたいのか?」
「ち、違うの! そう言う事じゃ無くて……」
食い下がる月瑠の考えている事が分からなくてフェルディナンは首を傾げた。
「単に甘やかされるのが嫌なのか?」
「ちがう~っ! そうじゃないのっ」
「何が違うんだ?」
「……も……の」
「月瑠?」
「ぜんぶ、気持ちごとフェルディナンに持って行かれそうになるからイヤなのっ!」
フェルディナンに心も身体も全部を支配されてしまうことを嫌がっているのだと。フェルディナンは月瑠が息を荒くして口にした言葉でようやく気が付いた。
「そんなに俺に心を預けるのは嫌か?」
「……っ! あっ、あのそうじゃないの。そうじゃなくて……」
「?」
フェルディナンを傷付けてしまったのかと月瑠は戸惑っていた。急いで言葉を否定してそれからこの後、困ったことにまた無自覚に人を煽る言葉を羅列し始めた。それも相当に強烈なやつを。
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