85 / 117
第三章~新妻扱編~
069 仲直りの後に
しおりを挟む
フェルディナンにこっぴどく怒られた私は、明かりも付けずに薄暗い自室で声を圧し殺して泣きながらベッドに突っ伏していた。怒らせるようなことをしたのは自分だ。それも元の世界を思い出すから懐かしくてククルに会いに行ってたなんて絶対に言えない。何の言い訳も出来ないくらい自分が悪いけれど、それでもやっぱり好きな人に怒鳴られるのは辛かった。
フェルディナンが帰ってくるまでに泣き止みたいのになかなかそれが出来なくて、でもそろそろ何時帰ってきてもおかしくはない夕刻の時間帯となっていた。
涙を流しているのを見られたくない。でも部屋を出てしまったらきっともっと悪い状況になることは分かるから、私はすっかり追い詰められていて夫の帰宅に怯えるような心境になっていた。
あとちょっとだけ待って欲しいそう思っていた矢先、部屋のドアが静かに開いてしまった。
「……っ!?」
何も言わずに部屋の中に入ってきたフェルディナンはベッドの上で枕を抱えて泣いている私の方に歩いてきた。フェルディナンがいまどんな表情をしているのか、確認するには涙を流し過ぎていて視界がぼやけて見えない。
そうしてベッドに座り込んだまま、フェルディナンから逃げることも言葉をかけることも出来なくて私は抱えている枕に顔を埋め込んで顔を隠した。フェルディナンをせめて見ないようにして大人しくしていると、私のすぐ近くに彼が腰を下ろす気配がした。
「……月瑠」
フェルディナンに名前を呼ばれてビクッと身体が強張る。緊張と言葉に出せない思いで頭の中が一杯で静かにしていたら、そっと頭を撫でられた。それでも動かないでいたら、身体をヒョイッと持ち上げられてフェルディナンの腕の中に丸ごと全部、すっぽりと覆われて抱き締められていた。
「っ!? ……やっ……!」
小さな声で拒絶してふるふると頭を横に振る。手でフェルディナンの胸元を押して突っぱねると手元にあった枕が落ちて床に転がってしまった。
「月瑠……」
「やぁっはなしてっいいのっ、わたしは平気だからほうっておいてっ!」
「月瑠!?」
フェルディナンが少し慌てた様子で私を押さえた。私が暴れた拍子に何処かにぶつけでもして傷付くのを恐れて上げるフェルディナンの声すら無視して、私はひたすらその腕から逃れようともがいた。
「やだやだはなしてっフェルディナンとはまだ話したくないの話せないのっ!」
「月瑠っ話さなくてもいい! だからそんなに暴れるな!」
「やぁっ触らないでっ!」
「月瑠!」
「フェルディナンなんかきらい!」
「こらっ暴れるなといって……」
「はなしてっ! きらいだもの! もうフェルディナンなんてきらいっ!」
「どうしてそう君は聞き分けがないんだ……」
「やっやめっぁっ……! んっ……ん……」
暴れていたら、最後は両手を掴まれて唇を奪われていた。唇を塞がれてそうして動きを全て封じられると少しずつ落ち着きが戻ってくる。そしてようやく暴れるのを止めた私の様子を見て、フェルディナンが唇をゆっくりと離した。
「そうして嫌がっている姿が君の本心だと、俺がそれを本気で信じると思っているのか?」
「……お願い一人になりたいの。まだ無理なの。話せないの……」
泣き濡れた顔を晒して、素直になれない私はとにかく逃げ出したくて必死だった。けれどフェルディナンは大人で、私がすることをその強い両手で捕らえたまま始終穏やかな様子で言い聞かせるように言葉を口にする。
「そうして一人で悩むのか? こんなに泣いてる君を置いて部屋を出ろと? 放せる訳がない。こんな状態の君を置いて行けるわけないだろうが。俺とまだ話したくない気持ちも分かるが、少しは俺の気持ちも察してくれないか?」
「どうして? だってまだ怒ってるんでしょ? わたし自分でもちゃんと分かってる。言い訳も出来ないくらいのことしたって。なのになんで……」
「それでも君がこんなに泣いているのを放っておける訳がない。君を愛してるから放っておけない」
そこまで聞いて、ごめんなさいと眉尻を下げて目に涙を溜めたまま謝ると。フェルディナンが気遣わしげに頬に触れてきた。痛々しいものを見るように紫混じった青い瞳を細めて、顔を近づけてくる。
「……先程は怒鳴って悪かった。怖がらせて君を傷付けた。すまない」
「ううん、わたしも嫌いなんて言ってごめんなさい。勝手なことして心配かけてごめんなさい」
「君が自由気ままに行動するのには慣れてはいる。だが隠れて男の元に通われるのは流石にこれ以上黙認できないんだ」
「男って……ククルちゃん見た目は子供だよ? それにすごく可愛いし……」
「それでも年齢的には立派に成人した大人の男だ」
「……やっぱり、もうククルちゃんのところには行っちゃダメなんだよね」
「そのことだが……」
「なあに?」
「男の元に通われるのは困るから諦めて欲しい。だが城内にいる友人に会いに行くのは構わない」
「えっ?」
城内でと言われて、フェルディナンが言っている事を理解するのに少し時間がかかってしまった。
「それって……もしかしてククルちゃんもこれからはお城に住むって、そういうことなの?」
「ああ、それなら何時でも君が会いたいときに安全に会いに行けるだろう? 俺もそれの方が安心出来る」
「フェルディナンがあの後ククルちゃんにお城に住んで欲しいって頼んでくれたの?」
「君はククル・リリーホワイトが欲しいと以前言っていただろう?」
「うん言ったけど確かに言ったけど……」
まさかそこまでフェルディナンがしてくれるとは思ってもいなかった。それも私には全くそんなつもりはないけれど、フェルディナンにとってククルは妻が溺愛する男も同然だ。その相手を自身のテリトリー内に置いて、かつ何時でも会いに行っていいと言っている。私がククルに会いたい理由を言えないでいるのに。それを聞かずに。許してくれた。
一見すると夫がいる身で他の男に走るという(走ってない)地獄のような構図。どう考えたってそこまで寛容な対応をしてくれる人はなかなかいない。どれだけフェルディナンが我慢して受け入れてくれているのか。その懐深い温かさと優しさが身に染みてちょっと涙ぐんでしまう。
「……フェルディナン」
「ん?」
「本当に、いいの……?」
「ああ、そうすれば少しは君も心安らかに過ごせるんだろう? ならそうしない理由は何処にもない。俺にとっては君が何よりも大事だ」
そう言われて思わずう~と唸ってフェルディナンに抱きつくと、よしよしと背中を撫でられた。全く何処まで甘いんだとこちらが言いたくなるくらいフェルディナンは相変わらず私には甘い人だった。
「ありがとう……そう言えば、フェルディナンはわたしのことよく君って呼ぶよね? あまり名前で呼んでくれないのはどうして?」
「理由を知りたいのか?」
うん、と頷いてフェルディナンを見上げると意地の悪い笑みでふっと笑われた。その反応は何だかいやーな予感しかしない。
「君の名前をあまり呼ぶと抑制出来なくなりそうだからだ」
「えっとぉそれってつまりは……」
「君を抱きたくなるとハッキリ言えば伝わるのか?」
「あの、フェルディナン……もしかしてまだ怒ってる?」
「そうだといったら?」
どうするんだ? とフェルディナンは楽しそうにくすくす笑っている。もう完全に遊ばれていた。これでは体の良い玩具だ。
「わたしのこと許せない? あのっどうしたら許してくれるの?」
「どうすればいいと思う?」
そう聞いてはみたものの。
どうすればいいかなんて答えは疾うに決まっていた――
*******
仲直りから数日後、ククルが王城に引っ越してきて私の生活スタイルはだいぶ変わった。ククルの滞在している部屋に一日中入り浸るようなことは辛うじて避けたものの、それでもかなりの割合で私がククルの部屋にいるようになったのは確かだった。
「あっそうだ! ククルちゃんに1つ聞きたいことがあるの」
相変わらずククルを膝上に乗せてふわふわの緑の翼を撫でながら、お店のカウンター席の代わりにソファーの上でのんびりくつろぐようになった私は、ククルが越してきた部屋の中をぐるりと一望しながら質問した。
ククルの部屋の中にはお店の時ほどではないけれど、それでも訳の分からない道具が沢山積み上がっている。いったいどうやって持ち込んだんだと思うくらいのサイズのものまで大小合わせて優に千は越える数の品々だ。
それも鉄製でさび付いたパイプやら鉄くずの山と化しているジャンク品の山の中に、ビンテージものの高価な食器とおぼしき物やらお宝らしき物が混入している感じの風景には何というか幼き頃の子供心をくすぐられて。宝探しがやりたくなるような光景だった。
とはいえ、コポコポと変な音を立てて白い湯気のようなものを吐き出している魔女の毒入りスープのような絶対に危険だと思われる大きな茶色のいかにもな坪まで平気で置かれているし(いったい何に使うんだ)。かと思えば鋭利な刃物が抜き身の状態で転がっていたりと、正直かなり危険極まりないので間違ってもそのアイテムの山には近づかないのがベストだと流石に私も思っていた。
「お姉さんの聞きたいことってなんですか~?」
ククルがそれまで折りたたんでいた翼をフワーッと膨らませて、それから伸ばしてパタパタと小さく動かし始めた。そのまま上手にクルリと私の膝上で身体を反転させて向かい合う格好で膝立ちになり、小さな手を肩に乗せてくる。何か面白いことが始まりそうな予感にワクワクと期待している子供のような仕草に思わず笑ってしまう。
「この世界にあるか分からないんだけど、ジュースってあるかな?」
「ジュース、ですか……?」
「うん、わたしが元いた世界にはあったんだけど、こっちに来てからは全く見た記憶がなくて。たまに飲みたくなるんだけど。こっちの世界ではそういう食文化はないの?」
「そうなんですかぁ~それはもう生産していない貴重な品物なんです。お姉さんのいた世界にもあったんですね。でもそれを食文化としてこちらの世界では取り入れることはありませんでしたね」
「えっ? そうなの? 何だか不思議……なんでだろ? 普通に飲むものだと思ってたんだけど。もしかして味覚が違うのかな? それにしても貴重な品って……ジュースが?」
「はい。ちなみに僕、それを数本持ってますけどいりますか?」
「えっ? いいの?」
「はい、でもお姉さんはそれをどうするんですか?」
「もちろん飲むけど……」
「…………」
「ククルちゃん?」
何やら大きな黒い目をパチパチさせてしきりに何か言いたげと言うか。鳥の獣人だけに鳩が豆鉄砲を食ったような顔とでも言うべきなのか。どう伝えたらいいのか分からなくて悩んでいるようなククルの反応がこの時私は妙に気になった。
「いえ、何でもありません~。ほしいのなら差し上げますよ?」
「えっ? いいの? 貴重なものなんでしょ?」
「はい、でもこれを作ったのは僕なんで量産しようと思えばいくらでも作れますから~」
「そ、そうなんだ……」
この子って本当に何者……?
「えっとぉじゃあもらおっかな」
「はーい、じゃあ取ってきますね~」
「あの、ちなみにそれ飲み物なんだよね?」
何となく再確認してしまった。ジュースが飲み物以外の何になりようがあるのか分からなかったけれど。確認してしまいたくなるくらい、話が噛み合っているようで噛み合っていない気がした。
「はい、お姉さんの言うとおり飲み物ですよ~」
「そっか。じゃあ、ありがたく頂きます」
「は~い」
ククルは気の良い返事をして部屋の奥にパタパタと小さな緑の翼を広げて飛んでいった。そして戻って来た時には、何やらとても綺麗な細工の入ったガラス瓶を数本手にしていて。確かに液体状の飲み物が入っている。えらく高級感のあるジュースを手に私はその日、自室に戻ってからそれを口にすることにした。
*******
「さてと、フェルディナンがお仕事終えて戻ってくる前にのんびり本でも飲みながらもらったジュース早速飲んでみようかな」
ククルからもらったジュースは全部で三本。どれも大きさ的には手にすっぽりと入るお手頃サイズとなっている。部屋に戻ってから早速一本空けて、久しぶりだったからそれをグイッと半分くらい一気に飲んでしまった。けれど飲んだ後で猛烈に咳き込む羽目になった。
「ゲホッゴホゴホっ……なぁっ、な、なにコレ~っ! ケホッ……も、ものすぅっっっっごく酸っぱいっ!」
口元を押さえて吐き出しそうになるのを必死に押さえた。それくらい強烈な酸っぱさと、咳き込みに涙すら浮かんでくる。鼻を若干赤くして私は説明書きでもないものかとジュースの瓶をクルクル回して探してみたけれどもちろんそのような記載は一切ない。
「匂いもなんか酸味があるようなこの酸っぱさは……レモン? えっと違う、レモンというよりお酢? もしかしてククルちゃんのいうジュースって飲む酢のことだったの?」
どうりでククルが微妙な顔をしたわけだ。これだけ酸っぱいと口に合う人と合わない人がいるし、そもそも男性がダイエットで飲む酢を口にするイメージがあまりない。どちらかというと女性が好む飲料で、ようは男性しかいないこの世界では流行らなかったということなのだろうか? と妙に納得してしまった。とはいえ、健康的だしまあいいかとその日は、一瓶全部飲み干してから就寝することにした。
――そして翌朝。
「にゃ、にゃにコレ――――――――――ッ!」
私が上げた悲鳴にベッドですやすやと寝息を立てていたフェルディナンがガバッと跳ね起きた。
「月瑠っ!? どうしたんだっ!」
「ふぇっ……フェルディニャン?」
同室にある化粧台、その鏡の中に映る私の身体はすっかり変わっていた。白い尻尾に白い耳、そして白い体毛。瞳の色は桜色に染まり、言葉も何やら猫っぽい。
「……その姿まさかとは思うが、獣酢を飲んだのか?」
「にゃ、にゃにそれ?」
すっかり色変わりして涙ぐんだ瞳をフェルディナンに向けると、フェルディナンは数度瞬きしてそれから顎に手を当てて何やら考え込んでしまった。
「フェルディニャン?」
もう一度名前を呼ぶと、フェルディナンがふぅっと溜息交じりに聞いてきた。
「獣酢は獣人化する酢の事だが。知らずに飲んだのか? ……どこからそんな物を……ああ、そうかそれを君に渡したのはククルか?」
フェルディナンの問いかけに私はコクコクと必死に頷いた。
「じ、ジュースじゃないの? 私の世界にあったジュースは果汁とか入ってる甘い飲み物何だけど……」
「この世界のものとはだいぶ違うようだな……そもそもその君の世界で言うところのジュースとやらだが、それはこちらでは果実水と言うんだ。君はあまり欲しがらなかったからてっきり好きではないのかと思っていたが……」
「ふえぇっ……にゃ~」
そんなぁっと事態に付いていけなくて床に座り込んでさめざめと泣き出してしまった私にフェルディナンがベッドを下りて近づいてくる。手前まで来るとふわっと優しく抱き上げられた。
「それにしてもまた……随分と美猫になったな」
「にゃ?」
頭に生えてしまった白い耳をへにゃっとさせて、尻尾を力無くダラリと垂らして、桜色の瞳に涙を溜め込みながらフェルディナンを見返すと、安心するように背中をポンポン叩かれた。
そうして一見すると慰めているように見えるけれど、悲観的な私とは正反対のちょっと面白そうなフェルディナンの表情は、退屈な日常に突如発生したイベントを楽しんでいる風がある。
「フェルディニャン……もしかして楽しんでるにゃ?」
「……いや」
どんなに否定しても口元が緩んでいる。私が責めるような目を向けてもフェルディナンは変わらず白を切るしで。こうして仲直りの後に待っていたのはまさかの珍事だった。
フェルディナンが帰ってくるまでに泣き止みたいのになかなかそれが出来なくて、でもそろそろ何時帰ってきてもおかしくはない夕刻の時間帯となっていた。
涙を流しているのを見られたくない。でも部屋を出てしまったらきっともっと悪い状況になることは分かるから、私はすっかり追い詰められていて夫の帰宅に怯えるような心境になっていた。
あとちょっとだけ待って欲しいそう思っていた矢先、部屋のドアが静かに開いてしまった。
「……っ!?」
何も言わずに部屋の中に入ってきたフェルディナンはベッドの上で枕を抱えて泣いている私の方に歩いてきた。フェルディナンがいまどんな表情をしているのか、確認するには涙を流し過ぎていて視界がぼやけて見えない。
そうしてベッドに座り込んだまま、フェルディナンから逃げることも言葉をかけることも出来なくて私は抱えている枕に顔を埋め込んで顔を隠した。フェルディナンをせめて見ないようにして大人しくしていると、私のすぐ近くに彼が腰を下ろす気配がした。
「……月瑠」
フェルディナンに名前を呼ばれてビクッと身体が強張る。緊張と言葉に出せない思いで頭の中が一杯で静かにしていたら、そっと頭を撫でられた。それでも動かないでいたら、身体をヒョイッと持ち上げられてフェルディナンの腕の中に丸ごと全部、すっぽりと覆われて抱き締められていた。
「っ!? ……やっ……!」
小さな声で拒絶してふるふると頭を横に振る。手でフェルディナンの胸元を押して突っぱねると手元にあった枕が落ちて床に転がってしまった。
「月瑠……」
「やぁっはなしてっいいのっ、わたしは平気だからほうっておいてっ!」
「月瑠!?」
フェルディナンが少し慌てた様子で私を押さえた。私が暴れた拍子に何処かにぶつけでもして傷付くのを恐れて上げるフェルディナンの声すら無視して、私はひたすらその腕から逃れようともがいた。
「やだやだはなしてっフェルディナンとはまだ話したくないの話せないのっ!」
「月瑠っ話さなくてもいい! だからそんなに暴れるな!」
「やぁっ触らないでっ!」
「月瑠!」
「フェルディナンなんかきらい!」
「こらっ暴れるなといって……」
「はなしてっ! きらいだもの! もうフェルディナンなんてきらいっ!」
「どうしてそう君は聞き分けがないんだ……」
「やっやめっぁっ……! んっ……ん……」
暴れていたら、最後は両手を掴まれて唇を奪われていた。唇を塞がれてそうして動きを全て封じられると少しずつ落ち着きが戻ってくる。そしてようやく暴れるのを止めた私の様子を見て、フェルディナンが唇をゆっくりと離した。
「そうして嫌がっている姿が君の本心だと、俺がそれを本気で信じると思っているのか?」
「……お願い一人になりたいの。まだ無理なの。話せないの……」
泣き濡れた顔を晒して、素直になれない私はとにかく逃げ出したくて必死だった。けれどフェルディナンは大人で、私がすることをその強い両手で捕らえたまま始終穏やかな様子で言い聞かせるように言葉を口にする。
「そうして一人で悩むのか? こんなに泣いてる君を置いて部屋を出ろと? 放せる訳がない。こんな状態の君を置いて行けるわけないだろうが。俺とまだ話したくない気持ちも分かるが、少しは俺の気持ちも察してくれないか?」
「どうして? だってまだ怒ってるんでしょ? わたし自分でもちゃんと分かってる。言い訳も出来ないくらいのことしたって。なのになんで……」
「それでも君がこんなに泣いているのを放っておける訳がない。君を愛してるから放っておけない」
そこまで聞いて、ごめんなさいと眉尻を下げて目に涙を溜めたまま謝ると。フェルディナンが気遣わしげに頬に触れてきた。痛々しいものを見るように紫混じった青い瞳を細めて、顔を近づけてくる。
「……先程は怒鳴って悪かった。怖がらせて君を傷付けた。すまない」
「ううん、わたしも嫌いなんて言ってごめんなさい。勝手なことして心配かけてごめんなさい」
「君が自由気ままに行動するのには慣れてはいる。だが隠れて男の元に通われるのは流石にこれ以上黙認できないんだ」
「男って……ククルちゃん見た目は子供だよ? それにすごく可愛いし……」
「それでも年齢的には立派に成人した大人の男だ」
「……やっぱり、もうククルちゃんのところには行っちゃダメなんだよね」
「そのことだが……」
「なあに?」
「男の元に通われるのは困るから諦めて欲しい。だが城内にいる友人に会いに行くのは構わない」
「えっ?」
城内でと言われて、フェルディナンが言っている事を理解するのに少し時間がかかってしまった。
「それって……もしかしてククルちゃんもこれからはお城に住むって、そういうことなの?」
「ああ、それなら何時でも君が会いたいときに安全に会いに行けるだろう? 俺もそれの方が安心出来る」
「フェルディナンがあの後ククルちゃんにお城に住んで欲しいって頼んでくれたの?」
「君はククル・リリーホワイトが欲しいと以前言っていただろう?」
「うん言ったけど確かに言ったけど……」
まさかそこまでフェルディナンがしてくれるとは思ってもいなかった。それも私には全くそんなつもりはないけれど、フェルディナンにとってククルは妻が溺愛する男も同然だ。その相手を自身のテリトリー内に置いて、かつ何時でも会いに行っていいと言っている。私がククルに会いたい理由を言えないでいるのに。それを聞かずに。許してくれた。
一見すると夫がいる身で他の男に走るという(走ってない)地獄のような構図。どう考えたってそこまで寛容な対応をしてくれる人はなかなかいない。どれだけフェルディナンが我慢して受け入れてくれているのか。その懐深い温かさと優しさが身に染みてちょっと涙ぐんでしまう。
「……フェルディナン」
「ん?」
「本当に、いいの……?」
「ああ、そうすれば少しは君も心安らかに過ごせるんだろう? ならそうしない理由は何処にもない。俺にとっては君が何よりも大事だ」
そう言われて思わずう~と唸ってフェルディナンに抱きつくと、よしよしと背中を撫でられた。全く何処まで甘いんだとこちらが言いたくなるくらいフェルディナンは相変わらず私には甘い人だった。
「ありがとう……そう言えば、フェルディナンはわたしのことよく君って呼ぶよね? あまり名前で呼んでくれないのはどうして?」
「理由を知りたいのか?」
うん、と頷いてフェルディナンを見上げると意地の悪い笑みでふっと笑われた。その反応は何だかいやーな予感しかしない。
「君の名前をあまり呼ぶと抑制出来なくなりそうだからだ」
「えっとぉそれってつまりは……」
「君を抱きたくなるとハッキリ言えば伝わるのか?」
「あの、フェルディナン……もしかしてまだ怒ってる?」
「そうだといったら?」
どうするんだ? とフェルディナンは楽しそうにくすくす笑っている。もう完全に遊ばれていた。これでは体の良い玩具だ。
「わたしのこと許せない? あのっどうしたら許してくれるの?」
「どうすればいいと思う?」
そう聞いてはみたものの。
どうすればいいかなんて答えは疾うに決まっていた――
*******
仲直りから数日後、ククルが王城に引っ越してきて私の生活スタイルはだいぶ変わった。ククルの滞在している部屋に一日中入り浸るようなことは辛うじて避けたものの、それでもかなりの割合で私がククルの部屋にいるようになったのは確かだった。
「あっそうだ! ククルちゃんに1つ聞きたいことがあるの」
相変わらずククルを膝上に乗せてふわふわの緑の翼を撫でながら、お店のカウンター席の代わりにソファーの上でのんびりくつろぐようになった私は、ククルが越してきた部屋の中をぐるりと一望しながら質問した。
ククルの部屋の中にはお店の時ほどではないけれど、それでも訳の分からない道具が沢山積み上がっている。いったいどうやって持ち込んだんだと思うくらいのサイズのものまで大小合わせて優に千は越える数の品々だ。
それも鉄製でさび付いたパイプやら鉄くずの山と化しているジャンク品の山の中に、ビンテージものの高価な食器とおぼしき物やらお宝らしき物が混入している感じの風景には何というか幼き頃の子供心をくすぐられて。宝探しがやりたくなるような光景だった。
とはいえ、コポコポと変な音を立てて白い湯気のようなものを吐き出している魔女の毒入りスープのような絶対に危険だと思われる大きな茶色のいかにもな坪まで平気で置かれているし(いったい何に使うんだ)。かと思えば鋭利な刃物が抜き身の状態で転がっていたりと、正直かなり危険極まりないので間違ってもそのアイテムの山には近づかないのがベストだと流石に私も思っていた。
「お姉さんの聞きたいことってなんですか~?」
ククルがそれまで折りたたんでいた翼をフワーッと膨らませて、それから伸ばしてパタパタと小さく動かし始めた。そのまま上手にクルリと私の膝上で身体を反転させて向かい合う格好で膝立ちになり、小さな手を肩に乗せてくる。何か面白いことが始まりそうな予感にワクワクと期待している子供のような仕草に思わず笑ってしまう。
「この世界にあるか分からないんだけど、ジュースってあるかな?」
「ジュース、ですか……?」
「うん、わたしが元いた世界にはあったんだけど、こっちに来てからは全く見た記憶がなくて。たまに飲みたくなるんだけど。こっちの世界ではそういう食文化はないの?」
「そうなんですかぁ~それはもう生産していない貴重な品物なんです。お姉さんのいた世界にもあったんですね。でもそれを食文化としてこちらの世界では取り入れることはありませんでしたね」
「えっ? そうなの? 何だか不思議……なんでだろ? 普通に飲むものだと思ってたんだけど。もしかして味覚が違うのかな? それにしても貴重な品って……ジュースが?」
「はい。ちなみに僕、それを数本持ってますけどいりますか?」
「えっ? いいの?」
「はい、でもお姉さんはそれをどうするんですか?」
「もちろん飲むけど……」
「…………」
「ククルちゃん?」
何やら大きな黒い目をパチパチさせてしきりに何か言いたげと言うか。鳥の獣人だけに鳩が豆鉄砲を食ったような顔とでも言うべきなのか。どう伝えたらいいのか分からなくて悩んでいるようなククルの反応がこの時私は妙に気になった。
「いえ、何でもありません~。ほしいのなら差し上げますよ?」
「えっ? いいの? 貴重なものなんでしょ?」
「はい、でもこれを作ったのは僕なんで量産しようと思えばいくらでも作れますから~」
「そ、そうなんだ……」
この子って本当に何者……?
「えっとぉじゃあもらおっかな」
「はーい、じゃあ取ってきますね~」
「あの、ちなみにそれ飲み物なんだよね?」
何となく再確認してしまった。ジュースが飲み物以外の何になりようがあるのか分からなかったけれど。確認してしまいたくなるくらい、話が噛み合っているようで噛み合っていない気がした。
「はい、お姉さんの言うとおり飲み物ですよ~」
「そっか。じゃあ、ありがたく頂きます」
「は~い」
ククルは気の良い返事をして部屋の奥にパタパタと小さな緑の翼を広げて飛んでいった。そして戻って来た時には、何やらとても綺麗な細工の入ったガラス瓶を数本手にしていて。確かに液体状の飲み物が入っている。えらく高級感のあるジュースを手に私はその日、自室に戻ってからそれを口にすることにした。
*******
「さてと、フェルディナンがお仕事終えて戻ってくる前にのんびり本でも飲みながらもらったジュース早速飲んでみようかな」
ククルからもらったジュースは全部で三本。どれも大きさ的には手にすっぽりと入るお手頃サイズとなっている。部屋に戻ってから早速一本空けて、久しぶりだったからそれをグイッと半分くらい一気に飲んでしまった。けれど飲んだ後で猛烈に咳き込む羽目になった。
「ゲホッゴホゴホっ……なぁっ、な、なにコレ~っ! ケホッ……も、ものすぅっっっっごく酸っぱいっ!」
口元を押さえて吐き出しそうになるのを必死に押さえた。それくらい強烈な酸っぱさと、咳き込みに涙すら浮かんでくる。鼻を若干赤くして私は説明書きでもないものかとジュースの瓶をクルクル回して探してみたけれどもちろんそのような記載は一切ない。
「匂いもなんか酸味があるようなこの酸っぱさは……レモン? えっと違う、レモンというよりお酢? もしかしてククルちゃんのいうジュースって飲む酢のことだったの?」
どうりでククルが微妙な顔をしたわけだ。これだけ酸っぱいと口に合う人と合わない人がいるし、そもそも男性がダイエットで飲む酢を口にするイメージがあまりない。どちらかというと女性が好む飲料で、ようは男性しかいないこの世界では流行らなかったということなのだろうか? と妙に納得してしまった。とはいえ、健康的だしまあいいかとその日は、一瓶全部飲み干してから就寝することにした。
――そして翌朝。
「にゃ、にゃにコレ――――――――――ッ!」
私が上げた悲鳴にベッドですやすやと寝息を立てていたフェルディナンがガバッと跳ね起きた。
「月瑠っ!? どうしたんだっ!」
「ふぇっ……フェルディニャン?」
同室にある化粧台、その鏡の中に映る私の身体はすっかり変わっていた。白い尻尾に白い耳、そして白い体毛。瞳の色は桜色に染まり、言葉も何やら猫っぽい。
「……その姿まさかとは思うが、獣酢を飲んだのか?」
「にゃ、にゃにそれ?」
すっかり色変わりして涙ぐんだ瞳をフェルディナンに向けると、フェルディナンは数度瞬きしてそれから顎に手を当てて何やら考え込んでしまった。
「フェルディニャン?」
もう一度名前を呼ぶと、フェルディナンがふぅっと溜息交じりに聞いてきた。
「獣酢は獣人化する酢の事だが。知らずに飲んだのか? ……どこからそんな物を……ああ、そうかそれを君に渡したのはククルか?」
フェルディナンの問いかけに私はコクコクと必死に頷いた。
「じ、ジュースじゃないの? 私の世界にあったジュースは果汁とか入ってる甘い飲み物何だけど……」
「この世界のものとはだいぶ違うようだな……そもそもその君の世界で言うところのジュースとやらだが、それはこちらでは果実水と言うんだ。君はあまり欲しがらなかったからてっきり好きではないのかと思っていたが……」
「ふえぇっ……にゃ~」
そんなぁっと事態に付いていけなくて床に座り込んでさめざめと泣き出してしまった私にフェルディナンがベッドを下りて近づいてくる。手前まで来るとふわっと優しく抱き上げられた。
「それにしてもまた……随分と美猫になったな」
「にゃ?」
頭に生えてしまった白い耳をへにゃっとさせて、尻尾を力無くダラリと垂らして、桜色の瞳に涙を溜め込みながらフェルディナンを見返すと、安心するように背中をポンポン叩かれた。
そうして一見すると慰めているように見えるけれど、悲観的な私とは正反対のちょっと面白そうなフェルディナンの表情は、退屈な日常に突如発生したイベントを楽しんでいる風がある。
「フェルディニャン……もしかして楽しんでるにゃ?」
「……いや」
どんなに否定しても口元が緩んでいる。私が責めるような目を向けてもフェルディナンは変わらず白を切るしで。こうして仲直りの後に待っていたのはまさかの珍事だった。
1
あなたにおすすめの小説
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる