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番外編【ディル編】

6. 王妃生活3

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「ファー風が気持ちいいね~。」

「そうだね。」

ようやく念願の海辺にやってきた。私は風で飛びそうになる帽子を手で押さえながら景色を楽しんでいる。しかし背後には私を抱き締める彼の姿があった。

あれ…?これはさっきとあまり変わらないんじゃ…?

「あっあのファー?この体勢も悪くないけど手を繋いで砂浜を歩かない?せっかく来たんだし。」

私の問いに彼は私の頰に口付けると「たしかにそうだね、ディルと手を繋いで散歩も悪くない。」と背後から離れる。

愛が重いと思いながら苦笑いで彼と手を繋いだ。彼の愛情の深さは今に始まったことではないが時々、怖くなることもある。なんせ彼は数年間、私をストーカーするくらいの熱量を持っている人物だ。

まぁでもそれだけ愛されてるんだとこの数年は思うようになってきた。若干、私の思考もおかしくなっているのは否めないが。

「こうやってゆっくりするのも久しぶりだね。最近は政務で忙しかったから…。」

私を見下ろしながら彼が呟く。

「うん…ファーがいつも頑張ってるのは知ってるよ。コッチにまでファーの良い噂が聴こえるくらいだし。」

「良い噂?」

「そう、次期王様がファーになってくれて本当に良かったとか王妃と仲睦まじいとか…。」

自分で言ってて恥ずかしい。

「そうか…私のディルに対する愛は他の者にも分かってもらえてるんだね。」

うん…十分ね。

「良かった、これでディルに手を出す者も早々は現れない…いや、でもディルの可愛さはそれだけじゃ隠しようがないからやはり監禁…?」

えっなんで⁉︎

「何言ってるの⁉︎監禁なんてやめてよね!私はこうやってファーと出掛けたりしたいんだから。」

「えっいや、しかし…。」

それでも渋る彼をなんとか宥め、僕達は夕陽の沈む浜辺をゆっくりと歩き続けた。






それから色んな国や都市を見て回り、新婚旅行としては十分な1週間だったと思う。しかし、毎晩盛ってくるファーの相手はとてつもなくしんどかった。

実はこの1週間前、彼は行きの馬車の中で子作り宣言をしていたのだ。「えっ、そんな急にはできないよ。」と笑って答えたが、その時不敵に笑う彼を私は本気にしていなかった。

そして1週間後…。

あぁ…なんだろう…妊娠してるかも…。

そんな想いが拭えない今日この頃だ。



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