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第1章

47. カラマス君のイタズラ

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「じゃあ、侵入者に間違えられてタジェット様に殴られたのか!?」

カラマス君はかなり驚いていた。

「まぁ、そうなんだけど悪いのは僕だから…。僕が無断で騎士団の宿舎に侵入したから悪いんだ。兄様はお仕事をしただけだよ。」

僕は兄様のイメージが悪くなるのを避けようと弁解した。

「それにしても殴るなんて…やりすぎだろ…?」

そうカラマス君は僕の頰を撫でる。

「大丈夫。頰の腫れは時間が経ったら治るものだよ。それより皆、心配しすぎだよ。もっと僕を攻めたらいいのに…。」

と僕が「いてて…。」と言いながら軽く笑うと、

「何言ってんだよ。フェルはまだ子供なんだから殴ったタジェット様の方が悪いだろ。」

と言われてしまった。

「(そう改めて子供だと言われると兄様との差を感じちゃうな…。)
ありがとう、カラマス君まで兄様を怒らないでね、これは僕のお願い。」

と僕はカラマス君をジッと見つめた。

「うっ…わかったよ…フェルに頼まれたら聞かざるを得ないな…。その代わり、これからは無茶しないでくれよ。いくら婚約が無くなったといえ、俺はフェルのことが好きなんだからこれ以上、傷付けられるのは嫌だ。」

真剣な目をしてカラマス君は言う。

「相変わらずカラマス君は男前だなぁ。」と感心しつつ「…ありがとう、カラマス君。」とお礼を言った。

「そうだ、フェル。元気になるおまじないがあるんだ、すぐに終わるから目を瞑ってくれ。」

そうカラマス君は思い出したかのように言う。

僕は「何なに~?」と言いながら目を瞑るとカラマス君に両手を握られる。

「目を開けていい?」と声をかけると「まだ!」と返され「え~…。」と笑うと「シッ!」と言われた。僕が黙るとまた沈黙。

「(何なんだろう…?)」と思っていると唇にチュッとされた。

僕が「えっ!?」と思い、目を開けると笑いを堪えているカラマス君の姿が…。

「クククッ!」と、とうとうカラマス君は笑いを堪えきれず声を上げた。

「もう!カラマス君、何で笑うの!?」

と僕が文句を言うと、

「だって…ずっと目を瞑ってるフェルの顔が面白くて…!」

「えぇ!?それって頰が腫れてるからでしょ!?」

「違う、違う!フェルの凄い期待してる顔が面白かったんだよ。」

「もう、カラマス君の意地悪…!」

と僕がプイッと顔を逸らすと、

「ゴメン、ゴメン。本当はすぐにでもするつもりだったけど、フェルの顔が可愛くて暫く見ていたかったんだ。」

カラマス君はニコッと笑って、そんな恥ずかしいセリフをサラッと言う。

「(こんなセリフ、普通に言えるカラマス君が凄いよ…。)」

と僕が恥ずかしがっていると、

「元気、出た?」

と笑顔で聞いてきた。

「う…うん。
(頰は痛いけどね。)」

僕は照れ隠しでカラマス君を睨む。





それから少し話をした後、カラマス君は帰って行った。最後にキスをするのも忘れずに。

「(僕…カラマス君に対して警戒心無さすぎだな…。)」







その夜、僕はタジェット兄様が部屋を訪れるのかとドキドキしていたが、仕事が立て込んでいるのか珍しく家にも帰ってこなかった。

次の日になるとだいぶ腫れも引いてきたので、父様に事情を説明する。さすがにBLウォッチングのことは言えないので、タジェット兄様に内緒でクッキーを渡そうと宿舎に入り込んだが、侵入者と間違われてしまった、ということにしておいた。結果的に兄様を悪者にしてしまう為、かなり心が痛んだが理由が理由なだけにそこは仕方ないと諦める。

父様に兄様に殴られたところまで説明すると「そうか…。」と頷かれた。

「父様、僕が宿舎に入ったことが悪いんだよ。だから兄様を怒らないでね!」

「わかっている、でも誰であっても子供を殴ることはやりすぎだ。それは注意しておく。」

「あの…父様…ごめんなさい。僕が宿舎に入らなかったらこんなことにはならなかったのに…。それに兄様にも悪いことしちゃった…。」

「大丈夫だよ、フェル。実際に侵入者はいたんだ。タジェットは仕事をしただけだよ。ただ、タジェットにとってフェルがいたことは予想外だっただろう。それに殴ったことを1番後悔しているのはアイツだからフェルもタジェットを許してあげてくれ。」

「…うん。
(そんなの僕が怒れる立場じゃないよ…。)」

「そういえば、だいぶ頰の腫れも落ち着いてきたね。腫れが引いたらまた学校へ行こう。今、タジェットは侵入者の件で忙しくしているみたいだから、なかなか会えないかもしれないけど…フェルは寂しいかい?」

父様は僕の頰を撫でた。

「うん…。けど兄様はお仕事だから大丈夫だよ。(正直、今会い辛いからある意味良かったのかな…?早く事件は解決して欲しいけど、兄様とは距離を置きたいな…。)」

それから父様は黙って頷くと僕の頭を撫でて部屋を出て行った。
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