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第二章 死がふたりを分かつとも
第28話 ダビデの動揺
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「……貴様」
ダビデが不意に足を止めた。
声音は、あきらかに動揺している。
二の腕をダビデに掴まれたサリオンは、その場に崩れ落ちて膝を着き、人形のようにぶら下げられて項垂れた。周りでは、護衛兵も立ち止まり、息を呑むような気配がした。
けれども誰も腰の剣を抜こうとしない。
朦朧とする意識の端で、サリオンはそれを 訝しむ。
たった一人で一団の行く手を阻止した無謀な輩やからは誰なのか。
提督に対して剣を抜き、待ち構えてでもいたかのような暴漢を、なぜ誰も威嚇しようとしないのか。
「サリオンを、どうするつもりだ?」
気詰まりな沈黙を破った男の声音に、挑むような響きがある。
「……アルベルト」
よろめくように退いた、ダビデが発した一言に、サリオンは覚醒したように目を剥いた。
饗宴の間が連なる南館への入館を、渡り廊下の中央で、阻止していたのは皇帝だ。
軍人のダビデに引けを取らない、恵まれた体躯に優れた長身。
雄々しい神々を模した絵のように秀麗な美貌の持ち主が、火を噴きそうな顔つきで、そこにいた。
見間違いでも、聞き間違いでもなかったアルベルトが、そこにいる。
けれども、サリオンは目に飛び込んだ映像を、咄嗟に頭で否定した。ついさっき、アルベルトはレナの寝所に入ったばかりだ。
ベッドでレナにあらゆる手管で奉仕され、世継ぎ作りに専念しているはずだった。
真っ只中のはずなのに、 貫頭衣の上に、幾層にも丁寧に折り畳まれた絹のトガを重ね合わせ、左の肘で悠然と抱えている。
柔らかい亜麻色の髪も乾いたままだ。
レナとの情事を済ませたような痕跡は、何ひとつ見られない。
あっけにとられるサリオンに、慈しむような一瞥を向けた後、アルベルトは再びダビデを睨み据えた。
それだけでダビデは一歩更に後退した。
「ど……う、して、ここに。貴様はレナと……」
「その前にサリオンの腕を離せ。離して剣も床に置き、護衛兵を全員、本館に戻らせろ。俺は、お前と話がある」
ダビデが不意に足を止めた。
声音は、あきらかに動揺している。
二の腕をダビデに掴まれたサリオンは、その場に崩れ落ちて膝を着き、人形のようにぶら下げられて項垂れた。周りでは、護衛兵も立ち止まり、息を呑むような気配がした。
けれども誰も腰の剣を抜こうとしない。
朦朧とする意識の端で、サリオンはそれを 訝しむ。
たった一人で一団の行く手を阻止した無謀な輩やからは誰なのか。
提督に対して剣を抜き、待ち構えてでもいたかのような暴漢を、なぜ誰も威嚇しようとしないのか。
「サリオンを、どうするつもりだ?」
気詰まりな沈黙を破った男の声音に、挑むような響きがある。
「……アルベルト」
よろめくように退いた、ダビデが発した一言に、サリオンは覚醒したように目を剥いた。
饗宴の間が連なる南館への入館を、渡り廊下の中央で、阻止していたのは皇帝だ。
軍人のダビデに引けを取らない、恵まれた体躯に優れた長身。
雄々しい神々を模した絵のように秀麗な美貌の持ち主が、火を噴きそうな顔つきで、そこにいた。
見間違いでも、聞き間違いでもなかったアルベルトが、そこにいる。
けれども、サリオンは目に飛び込んだ映像を、咄嗟に頭で否定した。ついさっき、アルベルトはレナの寝所に入ったばかりだ。
ベッドでレナにあらゆる手管で奉仕され、世継ぎ作りに専念しているはずだった。
真っ只中のはずなのに、 貫頭衣の上に、幾層にも丁寧に折り畳まれた絹のトガを重ね合わせ、左の肘で悠然と抱えている。
柔らかい亜麻色の髪も乾いたままだ。
レナとの情事を済ませたような痕跡は、何ひとつ見られない。
あっけにとられるサリオンに、慈しむような一瞥を向けた後、アルベルトは再びダビデを睨み据えた。
それだけでダビデは一歩更に後退した。
「ど……う、して、ここに。貴様はレナと……」
「その前にサリオンの腕を離せ。離して剣も床に置き、護衛兵を全員、本館に戻らせろ。俺は、お前と話がある」
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