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第二章 死がふたりを分かつとも
第53話 運が悪い
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同じ奴隷身分でも、貴族の屋敷の単なる使用人になる者もいれば、都市の区役所に所有され、公衆浴場や円型競技場の雑務に携わるだけの労働者もいる。
しかし、ミハエルのように劣悪な主人に買われた運の悪い奴隷達は、『壊れる』まで酷使される運命だ。
壊れるとは、過労や病気や齢を取って衰弱死するか、主人の虐待が過ぎた結果、『つい、うっかり』殺される意味になる。
「ただ、俺の主人はアルファでも、オメガの男と寝る趣味だけはなかったからな。夜の相手をさせられない分、マシと言えばマシだった。俺も自分は運がいいと思っていたのは、それだけだったかもしれない。十五の時に、テオクウィントスの軍隊に侵略されるまでは、の話だけどな」
傾いだ木の椅子に腰かけたミハエルは自嘲した。
つまり、十五の時に、ミハエルの故国もテオクウィントスの属国にされ、軍に捕虜として連行されたミハエルは、奴隷商人に転売をされ、更に公娼に売られて性奴隷にさせられたと、言いたいのだろう。
幼い頃に娼館に売られ、性奴隷のオメガ達を間近に見ながら育ったサリオンやレナとは、男の劣情の捌け口にされる苦痛の度合いが違うのか。
ミハエルは寝所持ちとして優遇される今よりも、むしろ農場にいた頃の方を懐かしむような、遠い目をして黙り込む。
しかし、ミハエルのように劣悪な主人に買われた運の悪い奴隷達は、『壊れる』まで酷使される運命だ。
壊れるとは、過労や病気や齢を取って衰弱死するか、主人の虐待が過ぎた結果、『つい、うっかり』殺される意味になる。
「ただ、俺の主人はアルファでも、オメガの男と寝る趣味だけはなかったからな。夜の相手をさせられない分、マシと言えばマシだった。俺も自分は運がいいと思っていたのは、それだけだったかもしれない。十五の時に、テオクウィントスの軍隊に侵略されるまでは、の話だけどな」
傾いだ木の椅子に腰かけたミハエルは自嘲した。
つまり、十五の時に、ミハエルの故国もテオクウィントスの属国にされ、軍に捕虜として連行されたミハエルは、奴隷商人に転売をされ、更に公娼に売られて性奴隷にさせられたと、言いたいのだろう。
幼い頃に娼館に売られ、性奴隷のオメガ達を間近に見ながら育ったサリオンやレナとは、男の劣情の捌け口にされる苦痛の度合いが違うのか。
ミハエルは寝所持ちとして優遇される今よりも、むしろ農場にいた頃の方を懐かしむような、遠い目をして黙り込む。
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