皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第二章 死がふたりを分かつとも

第57話 施政者としてのアルベルト

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 サリオンは、十八歳の男子にしては骨格からして華奢で細く、肌理の細かい白い肌に金髪だ。 
 気の強そうな、目尻の吊り上った二重目蓋の薄碧色の双眸は、少年らしい瑞々しい色香を醸かもしている。

 この容貌でアルファやベータを欲情させるフェロモンを発していたなのら、皇帝でなくとも一目で籠絡されたに違いない。ミハエルはサリオンを見据えたまま、冷やかすように唇の端を引き上げる。


 一方のサリオンは、次から次へと思いもかけない言葉の刃が突き刺さり、声も出せずに激しく瞳を震わせた。

 食事を取る手も止まってしまっていたのだが、ミハエルはディキャンタを持ち上げて、サリオンの空になったグラスにワインを注ぎ足した。


「体を売らなきゃならない俺の気持ちと、 つがいを殺されたお前の気持ちを、一緒にすることはできないのは、わかっている。お前の方が比べものにならないぐらい、この国そのものが憎いだろう。侵略軍を指揮した 施政者しせいしゃとしての皇帝も」


 真紅のワインがなみなみ残ったディキャンタを、窓辺の木製テーブルに置き、ミハエルはベッドの端に腰掛けるサリオンをじっと見た。
 楽天的な微笑みは、頬からも口元からも消えていた。

「だけど、侵略国の皇帝としてのアルベルトと、お前に一途に恋している、ただの男のアルベルトを、別々に考えてやってくれたらいいのに……、なんて、たまに思うよ。そんなこと。……でも、それは俺が全くの部外者だから、言えるだけかもしれないし。俺がお前の立場になったら絶対に、許せないかもしれないけど」


 やるせなさを眉の辺りに滲ませて、ミハエルは語尾を消え入らせた。

 サリオンも口を噤んだままだった。ミハエルが持参した手燭のロウソクも短くなり、薄暗い部屋が陰を深める。


 皇帝としてのアルベルトは、ミハエルが言った通り、侵略の軍勢を指揮した為政者だ。

 もしかしたら近隣国の遠征は、アルベルトの本意ではなかったのかもしれないが、アルベルトに略奪行為の責任は、なかったなどとは言わせない。

 軍を率いて指揮していたのは皇帝だ。

 サリオンは肉が盛られた銀の皿を、脇に置いた銀盆の上に戻してしまい、柳眉をひそめて伏し目になる。

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