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第三章 争奪戦
第40話 間違いなかった
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サリオンは弾かれたように振り向いた。
噴水近くにベンチがあった。
そのベンチのひとつに貫頭衣を着た、ベータらしき男が一人で座っていた。
それは公園に着いた直後に気づいていた。
男は立ち上がり、衣の尻の辺りの埃を払う。
長身で肩幅もあり、半袖膝丈の貫頭衣から剥き出しになった手足は太く、逞しい。
まさか、と思った。
急上昇する胸の鼓動が苦しくて、硬直したまま瞬きだけをくり返す。
ベータでも富裕層の人間なら、外出時には左肩から腰まで覆い隠すトガを着る。
ましてや王侯貴族がトガもまとわず徘徊するなど、裸で出歩くような醜態だ。
あり得ない。
けれども男が大股で正面までやって来た。
「どうした? サリオン。俺の顔を忘れたか?」
アルベルトは腰を屈め、斜め下から顔を覗き込んでくる。
と同時に、赤毛の縮れ毛のかつらも取り去った。
アルベルトは自身の金に近い茶色のゆるい巻き毛を、掌でくしゃくしゃと掻き混ぜる。
間違いなかった。
そもそも間違えようがない男。ここにいるのは皇帝だ。
目を丸くするサリオンに、アルベルトは肉感的な唇を横に引いて微笑んだ。
「……どうして、ここに」
サリオンは瞬きしながら、か細い声で問いかけた。
噴水近くにベンチがあった。
そのベンチのひとつに貫頭衣を着た、ベータらしき男が一人で座っていた。
それは公園に着いた直後に気づいていた。
男は立ち上がり、衣の尻の辺りの埃を払う。
長身で肩幅もあり、半袖膝丈の貫頭衣から剥き出しになった手足は太く、逞しい。
まさか、と思った。
急上昇する胸の鼓動が苦しくて、硬直したまま瞬きだけをくり返す。
ベータでも富裕層の人間なら、外出時には左肩から腰まで覆い隠すトガを着る。
ましてや王侯貴族がトガもまとわず徘徊するなど、裸で出歩くような醜態だ。
あり得ない。
けれども男が大股で正面までやって来た。
「どうした? サリオン。俺の顔を忘れたか?」
アルベルトは腰を屈め、斜め下から顔を覗き込んでくる。
と同時に、赤毛の縮れ毛のかつらも取り去った。
アルベルトは自身の金に近い茶色のゆるい巻き毛を、掌でくしゃくしゃと掻き混ぜる。
間違いなかった。
そもそも間違えようがない男。ここにいるのは皇帝だ。
目を丸くするサリオンに、アルベルトは肉感的な唇を横に引いて微笑んだ。
「……どうして、ここに」
サリオンは瞬きしながら、か細い声で問いかけた。
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